東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

ブログ

Archive for 2月, 2017

2017.02.27

2月29日に「障害のある方のための特別鑑賞会」ティツィアーノとヴェネツィア派展を開催しました。

当日は878名の多くの方々にご来場いただきました。

開室時間の前から、たくさんの人たちが待ってくれていました。

特別鑑賞会では、とびラーが受付や動線のご案内、エレベーター乗り降りのサポートをしています。また、卒業したとびラー(アート・コミュニケータ東京)の方々もこの日はサポートに入ってくれています。ですので、たくさんの人たちの経験値が引き継がれて、常にバージョンアップしています。

学芸員の方によるワンポイントトークの時間にも、手話通訳が入ります。

展示室の中でもとびラーたちが、鑑賞の伴走役となって来館者のサポートをします。目が不自由な方には、一緒に作品を鑑賞しながら、とびラーの目を通して来館者は作品を味います。

休室日の時間を使った、贅沢な時間が展示室に流れています。

この日は車椅子をご利用になる方が多くいらっしゃるので、作品運搬のための大型エレベータも稼働させます。

この日は、展示室の入り口に「ヴェネツィア・カーニバル フォトスポット」が出現しています!
仮面やマントをつけて扮装しながら、ヴェネツィアに行った気分になって写真撮影ができます。最初は遠慮気味な人も、とびラーたちが積極的に勧誘して衣装を身につければ、すっかりヴェネツィアへ行った気になっていました。

 

障害のある方のための特別鑑賞会では、毎回開催を心待ちにしてくれている人も多く、とびラーがいることが来館者にとっての安心できる場の要素になっています。来館者ととびラーは「お客とスタッフ」という関係ではありません。
今後もとびらプロジェクトでは、こうした人と人とのアートを介したコミュニケーションデザインをこれからも実践し、更新し続けていきます。

(東京藝術大学美術学部特任研究員 奥村圭二郎)

2017.02.18

「Museum Start あいうえの」のファミリー向けプログラム、「あいうえの日和」が2月18日(土)に東京都美術館のアート・スタディルームで開催されました。

午前の回と午後の回の、計2回開催される「あいうえの日和」は、上野公園の9つのミュージアムを楽しく冒険するコツを伝授する90分のプログラ ム。 今年度さいごの「あいうえの日和」では、38組79名のファミリーがプログラムに参加し、冒険の道具「ビビハドトカダブック」を使って、アート・コミュニ ケータ(通称とびラー)と冒険の記録を作成するまでの一連の体験をしました。それでは、当日の活動についてお伝えしていきます。

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

2017.02.12

『ヨリミチビジュツカン』へようこそ!

ここでは、いつも自分が過ごしている場所からちょっと離れて、ゆったりとビジュツカンにヨリミチして過ごす時間があります。
その場に集った人たちと、作品を前に感じたことや考えたことを自由にお話していくと、思わぬ発見があったり、深まったり。
ひとりで来る時とは違う美術館でのひと時をゆるりと過してもらえたらと、これまでは金曜日の夜間開館の時間帯に行ってきました。

 

ですが今回はいつもと違うのです。
『ティツィアーノとヴェネツィア派展』での開催は2月の日曜日の昼下がり。
寒い中にも少しずつ春の気配を感じる光が美術館の窓からやわらかく差し込んでいます。

集合は、北欧家具が並ぶ一階の佐藤慶太郎記念アートラウンジです。

 

参加者の皆さんはなんと全員女性。遠方からお越しくださった方もいらっしゃいました。

まずは最初に『カード』を使ってアイスブレイク。選んだカードに記されているお題と共に自己紹介をします。その一言にその方の雰囲気やお人柄が伝わってきて段々と場も和んでいきます。そして一緒に展示室を巡る少人数のグループに分かれます。

展示室に出発する前に、「ヨリミチカード」をお渡しします。
このヨリミチカードは展示室内での気づきなどのメモに使っていただくもの。とびラーたちが展示会ごとに趣向を凝らして制作しているのです。
今回のテーマは『惹かれるまなざし』です。

『ヨリミチビジュツカン』は2部構成となっていて前半は作品鑑賞、続く後半はカフェタイムです。

 

では展示室に向けて出発しましょう。
『ティツィアーノとヴェネツィア派展』では、ティツィアーノが活躍した時代を中心に大きく三つの時代がフロアごとに構成されています。
テーマの「惹かれるまなざし」を探りながらグループで巡っていきます。

最初のフロアはアーチをくぐり15世紀の水の都ヴェネツィアへいざなわれる様に始まります。

ここでは多くの聖母子像が並びます。
その聖母マリアについて着目する参加者もいらっしゃれば
「少し硬さを感じる表情とまなざし」
「母子の視線が絡まっていない」
対する子イエスの表情について気になるという方も。
「堂々とした目」
「自信ありげな表情」
同じ作品を見ていても視点は各々違っています。

グループごとに気になる作品の前で立ち止まってみます。
みなさんから発せられる感じたこと、考えたことをとびラーが言葉をひろいつつ対話を深めていきます。

 

次のフロアでは正面にこの展示の広報でもおなじみの『フローラ』など女性の肖像が並び、また少し進むと男性の肖像画が待っています。この時代の女性や男性の描かれ方に女性ならではの視点も上がります。



女性の肖像画に対してはこんなコメントも。
「私を見て!と自信たっぷり」
「こんな人になりたい」
「香りがしそう」
「美しいけど現実離れしている」
「男性から見た女性の理想だろうか?」

男性の肖像画に対しては
「リアルな感じ」
「鋭い視線で目が離せない」
などなど、どの人物が好みでどんなタイプなのだろうか、また先ほどの女性の肖像画に比べて描写についての違いに触れた意見も出て、話が弾んでいきます。

最後のフロアでは『教皇パウルス3世』の鋭いまなざしに出迎えられます。
「信頼してなんでも相談ができそうな目」
「ずっと見ていたい」
「長い年月の積み重ねを感じる」
などの感想が上がります。

 

展示室での時間もあっという間に過ぎ、もう少し作品を見ていたい気持ちもありますが、後半はアートスタディルームに移動しお話の続きはそちらで。

 

とびラーが温かいお飲み物やお菓子をご用意してみなさんのお帰りを待っています。好きな飲み物を選んだらカフェタイムの始まりです。

いくつかのテーブルに分かれて、ゆるやかに会話が広がっていきます。

図録を使って展示室内のふり返りをしたり、付箋に感想を書いたり。

 

他のグループではどんな感想が出たのでしょうか?この左の写真の中の男性の肖像画は各テーブルでも話題に。

 

テーマの『惹かれるまなざし』について他のグループではどんな作品に立ち止まって、どんな話が出てきたのか、図録で確認しつつ共有する中で、またそこで新たな気づきが生まれ、そんな風に思ってもみなかったなどいろんな話が展開していきます。
参加された皆さんからは
「ひとりで見ていたら“美しい”だけで響かなかった。」
「他の人の気づきにハッとした。」
「複数の方と鑑賞できて新たな見方を発見できてよかった。」
「ひとりなら通り過ぎてしまう作品にも一緒に立ち止まってみることで面白さがあった。」
など、初めて出会った人とも作品の前で過すと、ひとりの時よりも新しい視点が生まれ展開があったり、そしてコミュニケーションが広がっていく楽しさがあるという声が聞かれました。
とびラーにとってもこのことは面白く魅力のある事と感じています。
その場で出会った方たちと作品とで生まれるコミュニケーションの魅力。
一人でなく何人かで一緒に見ることで広がる視点や人の出会いの面白さ。

 

そんないつもとは違った美術館でのヨリミチ時間はいかがでしたでしょうか?
参加してくださった皆さん、ありがとうございました。


執筆:大川芳江(アート・コミュニケータ「とびラー」)

2017.02.11


マルカルミュージアムは様々な国籍や文化背景を持つ人たちが美術館に集まって、一緒に作品を鑑賞するプログラムです。今回は「書」をテーマに、大東文化大学書道学科卒業制作展を鑑賞します。みんなで一緒に素材に触れて、お話しながら書を見て、あなたのお気に入りの作品を見つけましょう。書の世界は奥深くも楽しいのです。どうぞお気軽にご参加下さい。

 

Come to the Museum and let’s enjoy communication beyond the word!
The world of Japanese Calligraphy “Sho”  is very deep, and so interesting! Once you enjoy the exhibition of Japanese Calligraphy with other people, you can find a favorite work.
Mul-Cul Museum” is a program aiming to communicate with other people who has “multicultural” background through Art.
Please feel free to join and apply for the program!

 

日時|2017年2月26日(日) 13:00〜15:00(13:00 集合)
会場|東京都美術館「大東文化大学書道学科卒業制作展」、アートスタディルーム
集合|東京都美術館 LB 階(ロビー階)ミュージアムショップ前
対象|18歳以上の母国語が日本語以外の方で、簡単な日本語を話せる方
定員|10名 *先着順。定員に達し次第、受付を終了します。
参加費|無料
参加方法|専用フォームからお申し込みください。


Date|Sunday, February 26, 2017
Time|13:00 – 15:00
Venue|Tokyo Metropolitan Art Museum
Meeting place|Lobby entrance
Eligible applicant|More than 18 years old and able to speak simple Japanese
Participation fee|Free charge

*定員に達し次第申し込み受付を終了いたします。
The application will be closed as soon as the number of participants reaches the limit.

*プログラムは簡単な日本語で行います。
We will use simple Japanese.

*広報・記録用に撮影を行う場合があります。ご了承ください。
We apologize in advance for taking photographs in the aim of record and publicity.

2017.02.10

アート・コミュニケータ(とびラー)が「JOSHIBISION 2016 “アタシの明日”(女子美術大学 大学院・大学・短期大学部 学生選抜作品展)」をご案内します。

さんぽのような気軽な気持ちで展示室をめぐり、みんなで作品を鑑賞しませんか?

作者やとびラーとの交流を楽しみたい方、ご参加をお待ちしています!

 

JOSHIBISION 2016 “アタシの明日” 女子美術大学 大学院・大学・短期大学部 学生選抜作品展

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日時|2017年3月5日(日)①10:00~11:00 ②15:00~16:00

(※プログラム開始10分前に受付)

会場|東京都美術館 公募展示室

受付場所|東京都美術館 ロビー階ミュージアムショップ前

定員|10名(先着順)
参加費|無料
参加方法|当日受付
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前回の様子はコチラをご覧ください。

※広報、記録用に撮影を行います。ご了承ください。

2017.02.10

 

感じたこと、考えたことなどをお話ししながら、みんなでじっくり作品を鑑賞します。他の人の見方に触れることで、作品の見え方が広がったり、深まったりするかもしれません。一人で見るのとは一味違う鑑賞体験を通して、いっしょに作品の魅力に迫ってみませんか?

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日時| 2017年3月5日(日) ①13:30~14:30 ②15:30~16:30

(※各回の開始10分前より受付)

会場| 東京都美術館 ギャラリーC

受付場所| 展覧会会場入口でご案内します

定員| 各回10名程度(先着順)
参加費| 「都美セレクション 新鋭美術家 2017」展の入場料
参加方法| 展覧会チケットをお持ちの上、直接展覧会場にお越しください
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展覧会情報:都美セレクション 新鋭美術家 2017

※作品の解説会ではありません。

※広報・記録用に録音・撮影を行う場合があります。ご了承ください。

 

2017.02.08

「ティツィアーノとヴェネツィア派展」で、缶バッジ・ワークショップを開催します。ヴェネツィア派の特徴と言える背景描写のうち、今回は特に「空」に着目します。鑑賞した作品の中で印象に残った空を、オイルパステルを使って表現してみてください。あなたが描いた「ヴェネツィアの空」を缶バッジに仕立てて、鑑賞の思い出とともに持ち帰りましょう。

 

日時|2017年3月20日(祝・月) 午前11:00〜午後4:00
(受付終了 午後3:30・先着300個限定、缶バッジがなくなり次第終了)

会場|「ティツィアーノとヴェネツィア派展」 展示室2階 休憩スペース
対象|「ティツィアーノとヴェネツィア派展」 来場者の方 どなたでも
参加費|無料(但し、高校生以上は展覧会観覧券が必要です)
参加方法|当日受付・事前申込不要

2017.02.04


平成29年2月4日に開催した「とびらプロジェクト」フォーラムは終了しました。ご来場頂いたみなさま、ありがとうございました。

フォーラム当日の記録映像が出来上がりましたので公開します。是非ご覧ください。

 


 

とびらプロジェクトフォーラム「美術館から社会的課題を考えるーする / される をこえて」
詳細はコチラ

 

1. とびらプロジェクトとは?・・・大谷郁

 

 

2. クロストーク・・・西村佳哲×稲庭彩和子
「一緒に冒険をする、ということ」

 

 

3. パネルディスカッション・・・日比野克彦・西村佳哲・森司・稲庭彩和子・伊藤達矢
「未来をつくらないコミュニケーション、つくるコミュニケーション
― アート・コミュニケータへの期待」

 

 

  • 日比野克彦 東京藝術大学教授 とびらプロジェクト代表教員
  • 西村佳哲 働き方研究家 リビングワールド代表 とびらプロジェクト・アドバイザー
  • 森司 アーツカウンシル東京 事業推進室 事業調整課長 とびらプロジェクト・アドバイザー
  • 稲庭彩和子 東京都美術館学芸員 アート・コミュニケーション担当係長
  • 伊藤達矢 東京藝術大学特任准教授 とびらプロジェクト・マネージャ

2017.02.03

日曜午後は美術館にヨリミチ!

ヨリミチVI

 

一人でみる展覧会もいいけれど、だれかと一緒におしゃべりしながらみると、ぐっと味わい深くなる。ヴェネツィア派の作品があなたと誰かをつないでくれます。展覧会を楽しんだあとは、展示室で話しきれなかったことをおしゃべりするカフェタイムです。美術の詳しい知識はいりません。おひとりでも、お友達同士でも、お気軽にどうぞ。日曜日の美術館へヨリミチしてみませんか。

◼︎過去の回のブログはコチラ

日時|2017年2月12日(日) 15:00〜17:00(14:45 受付開始)
会場|東京都美術館「ティツィアーノとヴェネツィア派展」、アートスタディルーム
集合|東京都美術館 1階 アートラウンジ
対象|18歳以上
定員|10名 *定員に達し次第、申込を終了します。
参加費|「ティツィアーノとヴェネツィア派展」チケット代(各種障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方一名までは無料)
参加方法|用フォームからお申し込みください。
定員に達したため受付を終了いたしました。
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※作品解説のガイドツアーではありません。
※定員に達し次第、申込み受付を終了いたします。
※「ティツィアーノとヴェネツィア派」展のチケットを購入したのちに集合場所へお越しいただきますようお願い致します。
※広報・記録用に録音・撮影を行う場合があります。ご了承ください。

2017.02.01

1月、取材のその日は快晴。

総合工房棟のエレベータから降りる。廊下越しに、ふいに…そこはガラス貼りの明るい空間だった。

 

(…うーん…オープンな空気だなぁ。)

ここは卒業制作の中間発表会や、講評会に使われる場所で、今回のインタビューのためにこの場所に発表時の再現をして下さったのだとか。

 

(あ、街のミニチュアだ…)

空から見た風景の中に、明るいグレイ色のうねうねとしたものが横たわっている…。

_MG_5659

「これは日本橋で、首都高速の…」

と明るい声で説明をはじめてくれたのは、今回の取材に応じて下さった建築科の樽澤眞里子さん。

どことなく、ふんわりとしていて、素敵な笑顔の明るいかただ。

 

そうか、これは空想ではなく、現実の場所なんだ…。

よく考えてみると、建築とはひとつの巨大な作品とも言える。

 

ときと場合によっては、ひとつの街や都市といったスケールが作品になるという、とてつもなく大きなもの…。それは動き、人が中に入って生活を営むこともあり、ドラマあるいは出来事と言っても良いのかも知れない。しかもほとんどの場合、現実に形にする時には自分で作るわけにいかず、その指示を設計図や、時にはスケッチというコミュニケーションツールを駆使して、様々な役どころの人たちに伝えなくてはならない。法律や生産技術、流通、いろいろ考慮することが山ほどある。そして出来上がったのちに、時という時代の中でやがて変化してゆく。

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「建築では、実際には作れないものを模型や計画図で説明してゆきます。講評会では自分のイメージしているものや考えていることを、どう表現するかが問われています。教授や専任教員や助手の方たちが出席している中で質疑に受け応えてゆくので、緊張します。」

 

「言葉は限定的なので難しい。…実は、私はプレゼンテーションはあまり得意ではないんです。(笑)」とおっしゃる樽澤さん。だが、なかなかどうして、よどみなく経験に基づく様々な例を挙げながら、とても明るくオープンに楽しく話してくださった。

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『他の人と交わりながら、形づくられる』

「他人からどのような意見が出てきても、このアイデアのほうがいいんじゃないかと言われても、ひるまない。しかしその言葉を尊重し頭から否定することなく、冷静にとらえ、それから自分の主張を述べるようにする」とのこと。

「なかなか、そうはいかない事もありますけどね…」とおっしゃっていた。

ただ、経験豊富な方から、こうしたほうがいいんじゃないか、と助言をいただいた時は、まずやってみることにしているそうだ。いろいろやってみて初めて気づくこともある。それと同時に、自分の考えや解釈を加えてゆく…とのこと。

 

美術の世界とは、物を作る職人のようなもので、そんなに人と関わらなくてもいいのかと思っていた。けれど、実際に大学で制作をはじめてみて、全然そうではなかった、と樽澤さんは笑いながら言う。人に自分の作品について話しをすると、アドバイスをいただいたり、そうしているうちに次のアイデアが出てきたりする。人との関わりがとても大事だと、4年間の中で感じたそうだ。そしてご本人を見ていると、そのような予期せぬ出会いの出来事自体を楽しんでいらっしゃるように感じた。

このような「対話」の積み重ねの経験の中で、磨かれてゆくものもあるのかもしれない。

_MG_5727 _MG_5794 _MG_5857 _MG_5886

『内側から外を見ること』

建築特有のインサイドな視点。自分がもしそこに居たとしたら、周りがいったいどのように見えるのか、という見方。逞しく想像力をはたらかせる。

模型の中で自分を小さくしてゆき、そっとそこに置いてみる…。

そこにいると光はどこから射してくるのか。音はどんなふうに聞こえてくるのか。風は、どのように…。_MG_5790 _MG_5835 _MG_5754

『傾斜・屋根・人の視点・内と外との曖昧』

インタビューに伺う前に、樽澤さんの建築計画を見せていただいていた。そのときに気づいたのだが、「傾斜と人との関係」「屋根とその下の空間と人との関係」「互い違いの傾斜を持つスラブと人間の視点」「室内に入ってくる光、内と外が曖昧な場所もある」・・・など、樽澤さん独自の考え方が、描かれたスケッチにははっきりと表れている。

今回の卒業制作の計画を考える基盤に、この考え方が活きている。卓抜したアングルを探す目。

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「首都高速道路」はただの「壁」といったモノではなく、人と人とをつなぐ関係性の「綱」のようになっている。

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『神輿のようなものが見える…』

例えば、日本橋地区で古くからおこなわれている祭りの賑わいや、人々に担がれる神輿など、日本橋の上と下で人々の視線が行き交う造りになっている。橋の上から下へと臨む劇場空間、道の先がだんだん高くなってゆくスロープ歩道、カフェのようなロビー空間…。有機的に空間がつながってゆく。

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もともとこの首都高速道路のカタチには特別な事情があるとのこと。日本橋の川は徳川幕府によって恣意的に「への字」に曲げて作られたもので、首都高速はその日本橋川に沿って建てられたという、歴史的な意味合いをカタチにしたともいえるそうだ。

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躯体コンクリートの床の上には、カーペットが敷かれて、ソファといったもので構成された空間に…と樽澤さんは大胆な発想で計画している。人と人を繋ぐ、居場所のような、人間スケールの空間を創り出す方法を考えているのかも知れない。

_MG_5833

『原風景』

建築への入り口はさまざまで、芸術大学や美術系大学の建築専攻と、工学系大学と建築分野では、どこが違うのだろうか。そんな漠然とした問いを、樽澤さんに問いかけてみた。

 

子供のころは幼稚園も小学校も家からは遠く離れていて、近所の子と遊ぶというよりは、自分の家とその周りはすべて庭であり、そこでいろいろな想像をしながら、遊ぶのが常だったという。小さい時から、自分の家を自分で設計して作るのが夢で、その過程に今はあるとのこと。これは樽澤さんの原風景であり原初体験とも言えるのでは…。

 

そして、美術系の建築と工学系のそれとの違いは、たぶん最終形はあまり変わらないかも知れないが、最初にイメージするものが違うのではないか、とおっしゃっていた。

_MG_5700

「考えるときにまず『風景』というものをかんがえます。人はそこにいてどういう状況になるのか…。スケッチブックに図やダイヤグラムのようなもの、人のいる風景を描き、そこからサイズやスケールを考えたりし、スケッチや模型を何度も繰り返しながら進めてゆきます。」という。

これは、完成形としての精緻な模型ではなく、考えたり、確認したりするための実験ということだろう。理想あるいは考えていることと現実との落差もここでわかるのだろう。ああ膨大な作業だ…。

 

「水彩でスケッチを描くこともありますが、リアルにならないので、理想形でしかないような状態になりやすいんです。」

別の機会に樽澤さんの水彩画を拝見したことがあるが、何をやりたいのかが建築のスケッチとしてシンプルにはっきりとわかる。目指している方向や「風景」がすっきりわかる。図面や模型は情報量が多すぎて、時には言いたいことが伝わりにくく隠れてしまうことが多いと思う。

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…いろいろなお話を伺っているうちに、樽澤さんの考えている建築への考え方や風景周辺に対する理想のことなどが、何となく少しわかってきたような気がする。

_MG_5766 _MG_5793

そして、樽澤さんは、ご自分の卒業制作についてこのような言葉を書いている。

 

『…都市の間を縫うように創られた空中の道路

既存のインフラの躯体の中に人間スケールの空間を見つけ出し

減築または増幅させた中でプログラムを挿入する。

首都高速の自在な曲線に着目

首都高速が『壁』のように地域を分断するものから『居場所』のように

人と人とを繋ぐものへと変化させるため、空間を創造したい。

かつての記憶をつぶすことなく再構築しつつもその気配を大切に

そして新しい機能を潜入させていく。

普段見慣れた風景に中に潜む要素を取り上げ、その中の一つである高速道路を

舞台に日常の豊かな風景を周囲から引き込み

新しい価値として再発見させる。…』(一部抜粋)

 

 

『これからのこと』

卒業した後、この春から藝大の大学院で東洋建築の分野に身を置くことになっていて、そこで日本庭園の研究をする予定だそうだ。なるほどそう言えば、樽澤さんの以前の計画案で、東京愛宕山の地区設計の計画があり、その中で、廻遊式庭園の見え隠れする景観の計画のことに触れていて、その場合の植栽と建物が見事に「不等辺三角形」の配置となっていて庭園風景を造ることに言及されていた。まさにこのことと繋がっているように感じた。

_MG_5738

 

樽澤さんの大学院での研究、そしてそこでの経験からの気付きについて、ぜひまたお話を伺いたいと思う。

 

樽澤さんのような建築の方の活躍の場がますます拡がり、新たなものを造るだけではなく、いまある資源や価値を掘り起こし、再発見する。そしてこの地球という星を考え計画することで、世界にさまざまな夢を繰り広げてゆくのだろう。そのような夢を見ているのは私だけではないと思う。近い将来そんな日がやってくることを期待している。_MG_5888

 

インタビュー・執筆:園田俊二(アート・コミュニケータ「とびラー」)

撮影:峰岸優香(とびらプロジェクト アシスタント)

園田さん写真

園田 俊二(そのだ しゅんじ)

空間計画・建築や場作りに関して、調査から企画・製作・フィードバック・教育など一貫してモノを作るために必要なことをやっていました。これをベースに現在は新たなワークの実験を開始するために… 創造性のトビラを開く…を合言葉に準備中。

 

 

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