東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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Archive for 7月, 2017

2017.07.02

2017年度のアクセス実践講座が始まりました。
内容の概略をここでご紹介します。

まずは、伊藤さんから、講座の目的や関連するプログラムの「障害者のある方のための特別鑑賞会」と「ミュージアム・トリップ」についてのプログラム説明がありました。

【前半】

つぎに、東京都美術館の稲庭さんから「ミュージアムにおける社会包摂的活動」と題してお話がありました。
「ミュージアムにおける社会包摂的活動」稲庭彩和子(東京都美術館)

今、美術館には、社会包摂的機能、多様性を保つ場としての機能が求められています。東京都美術館がリニューアルを行なった際には、21世紀の美術館に求められる役割をプラスしました(ご参考:東京都美術館「使命と4つの役割」)。常にミッションに立ち返りながら、活動を行なっていくことになります。

 

●「教育普及」から「関わり合い(Engagement)」へ
美術館では「教育普及」活動と呼ばれる活動があります。作品の情報をわかりやすく伝えたり、美術館の持つコンテンツを教育的に扱ったり、普及する活動です。今現在、美術館と社会との回路を考えた時に、学校との連携などの教育活動(Education)や、作品を介してそれぞれの人の主体的な学び(Learning)を誘発するようなワークショップなどが増えていきました。そして、2000年代になってよく使われるのは、美術館を社会参加の場と考え、社会参加を促す「関わり合い(Engagement)」を誘発する活動です。では、ミュージアムは、公的機関、もしくは公共空間として「関わり合い」をどのように作っていかれる可能性があるのでしょうか。
人間は社会的動物なので、一人では生きていけません。人との関わり合いが丁度よく充実することは、その人の幸福度に密接に関係しているといわれています。ミュージアムでは、人と人が関わる回路を増やしていくために作品を介した「対話(Dialogue)」が起こしていくことが考えられたり、そうした関わり合いを増やしていくことで、人をケアしていく機能にも関心が集まっています。

 

●「ケアをする」
美術館の展示企画することを「キュレーション」するといったりしますが「キュレーション」の語源は、ラテン語の「curare」にあります。意味は、対象について「ケアをする(take care)」ことです。「大事にする」「大切に見守り育む」という意味を含みますが、つまるところ、ものを大事に次の世代に渡していく役割が美術館にはあります。「ものをケアする」というと、物理的なケアを考えますが、その作品が持つソフトの部分がともにケアされる必要があります。つまり、美術館は作品ををハード的にもソフト的にもケアする施設なわけです。ケアが行き届いた公的空間において、作品と鑑賞者の間にケアの往還が起こることにつながります。

 

●他者の世界と自己の世界をケアする
美術館で作品を鑑賞すると、日常のことを忘れて作品を見る時間が訪れます。その時、自分と誰かとの対話が始まったり、自己の内面との対話が始まります。対話をしていくうちに、自分と他者がそれぞれ異なる存在でありながら、自らの一部として他者を感じる感覚(相互主観性、共同的な主観性)が生まれます。それぞれ人は個別のアイディアがありますが、絵を何人かで見ていくときに、色々な人の意見があって、聞いていくうちに、違うけれども生まれてくる共同的な主観性が、私たちに安定感を与えるのです。共同的主観性は、社会で平和な関わり方を作っていく時に大切だといわれています。

●ミュージアムの非日常性
ミュージアムは、今自分がいる時間と場所から解放され、過去と現在を行き来できる場所になりうる可能性がある場所です。時間と場所から解放されることは、今の現代社会の社会的尺度や差異がいったんゼロにされて、もう一度考え直せる場所(社会的包摂の場)としての特性があります。

 

●ミュージアムでの社会包摂的活動:海外の事例
Meet ME MoMA(アメリカ)
アルツハイマーの方と家族のためのプログラム
美術館と医療機関の連携

House of memories(イギリス)
地域博物館での「ハンドリング・オブジェクト(触れる収蔵品)」
貸出可能な収蔵品を、介護士の人たちが高齢者に触ったりしながら、回想法によって成果を出している。4000人の介護士が参加し、介護施設で活動している。

ホームレスへの働きかけ(イギリス)

Met Escapes(アメリカ)
庭園の美しい美術館で、認知症の方たちが五感を刺激するようなプログラムを行い、展示室で鑑賞を行う。一番の効果は、作品や中立的な立場のファシリテーターを媒介に、同じ病を持つ患者やその介護者、といった問題を共有できる人々との関わりができた。作品を見て対話をすることが、社会への参加となっている。

 

●とびらプロジェクトでの実践
障害のある方のための特別鑑賞会
「アクセシビリティー調査報告書」
・Museum Start あいうえの
のびのびゆったりワークショップ(平成25年度)
ミュージアム・トリップ

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