東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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第4回基礎講座<上野公園とミュージアム&大学>

今年度の第4回基礎講座のテーマは、<上野公園とミュージアム&大学>。
「とびらプロジェクト」と連動する「Museum Start あいうえの」の基礎的な知識を学びながら、上野公園という自分たちの活動の場に改めて目を向け、考える時間でした。

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最初は、稲庭さんによる『キュッパのびじゅつかん』展のお話から始まります。
『キュッパのびじゅつかん』展は、「Museum Start あいうえの」の活動から発展して生まれ、東京都美術館で2015/7/18(土) – 10/4(日)に開催される企画展です。

ノルウェーの新進作家オーシル・カンスタ・ヨンセンの絵本『キュッパのはくぶつかん』を出発点にした展示で、
物集めが大好きな丸太の男の子・主人公キュッパのように、「物を見つめ、集め、並べてみることから始まる、私たちの住む世界とのコミュニケーション」がテーマになった、体験・参加型の作品の多い展覧会になっています。

※ 展覧会の詳細はこちら
ノルウェーから東京・上野へ!
キュッパのびじゅつかん―みつめて、あつめて、しらべて、ならべて

“公園での石の観察”と”美術館での絵画の鑑賞”というと、その2つは隔たりのあるまったく別の物だと感じてしまいがちですが、その間をもっと行き来できるような視点をもってみようといったお話もありました。
そして、今回の基礎講座は、実際に”物を見つめ、集め、並べてみる”ワークショップを中心に進んでいきます。

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日比野克彦さんによる、今回のワークのレクチャー。
『キュッパのびじゅつかん』展は、多世代間のコミュニケーション、持続可能な社会の人々のつながりを支える、新たなミュージアム像を想像する場として、「とびらプロジェクト」のコンセプトとも通じる、といったお話がありました。
今年度からとびラーになった4期生も、キュッパが森に出たように、実際に上野公園に出かけてモノを探しにいくところからはじまります。

まず午前中は、「上野公園に落ちているものを1つ拾ってくる」というお題です。

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一斉に上野公園に散らばっていくとびラーたち。

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落ち葉をかきわけたり、砂をはらいながら、目をこらして探していきます。

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きれいな実を拾った人も。

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鳥の巣の欠片も見つけました。

 

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東京都美術館のアートスタディルームに戻ったら、白い紙の上に自分の拾ったものを置いて、キャプションを書いてみます。

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テーブルごとに自分が拾ったものを紹介しながら、色、形、性質など、さまざまな視点からの分類わけを考えます。

一見、どんな分類になっているのか分からないような新しい分類を探ります。

 

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似たような2つの木の枝でも、自分で拾った枝と公園にいた親子からもらった枝では、それぞれの枝をここまで持ってきたストーリーが違うという話をしているグループもありました。

 

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そのあとは他のグループの並べた分類を見て、どんな視点で分類されたものなのか、予想をしていきます。

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じっくり観察して見比べてみます。なかなか他のグループの分類を当てるのは難しかったようです。

 

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全てのグループをまわり終えると、グループごとに、それぞれの分類の予想と種明かしをしていきました。

表と裏で素材感が違うものと、同じのもの

熱加工してつくられたものと、そうでないもの

落としたときにひらひら落ちるものと、ストンと落ちるもの

グループによってさまざまな分類方法を見つけていました。

 

そして午後は、1人で複数のアイテムを拾います。

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午前中にやった分類の視点を思い出しながら、お弁当の箱のような薄い木箱に、拾ったものを並べていきます。

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午前中はひとつに絞る難しさがありましたが、

午後は、箱の中でバランスを見たり、どのような分類を作れるか、並べ方も考えながら拾います。

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集め終わったら、上野公園の噴水前に集合。

自分のつくった箱にキャプションをつけて、蚤の市のように並べていきました。

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すぐそこに落ちていてさっきまで気づかれていなかったものが、こうして分類してフレームに入れることで、”見せる”ものへと変化します。

普段何気なく通り過ぎてしまう上野公園でも、よく観察しながら歩いてみると、思いがけないモノたちと出会うことができました。

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とびラーが地面に並べていると、通りすがりの方も足をとめて、興味をもって見てくださっていました。

中には、しゃがんでじっくり中を観察する人も。

どのコレクションが気になるかで、その人の視点が垣間見えます。

 

上野公園には9つのミュージアムが集まり、さまざまな人がそれぞれの場所の展示やイベントを見ようと目的をもって来られます。

今回とびラーたちがモノを集め、蚤の市を開催した上野公園の開けたスペースは、そうした本来の目的からは少し外れた、思いがけない出来事に出会うおもしろさが潜んでいる場所でもありました。

場所とモノの魅力を再発見して、この日の蚤の市は終了しました。

とびラーたちは、他の人が作ったコレクションの中からお気に入りを1つ選び、東京都美術館へと戻ります。

 

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アートスタディールームに戻ると、ハガキサイズの紙に、自分が選んで持ってきたコレクションの絵とメッセージを書きました。

そのコレクションを作った人への絵はがき作り。みなさん、集中して書いていました。

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これまでは部屋の中での座学やワークショップが多かった基礎講座ですが、この日は日差しの眩しいなか、外で実際に行動してつくっていくワークショップを軸に、体を動かし頭を動かす充実した1日でした。

普段は見逃しがちな場所に目を向けてみたり、自分がなかなか想像していなかった視点をもってみる、そうやってさまざまな価値観がある場所を実際に行き来してみることで初めて気づくことも多いように感じられます。

今回体験したことが、これからの実践講座やとびラーの活動で生かされていくといいですね。7月からのキュッパ展も楽しみです!

(とびらプロジェクトアシスタント ニカモトハンナ)

2015.05.23

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