東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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アート・コミュニケーション・アーカイブ研究(前半)

「アート・コミュニケーション・アーカイブ研究 東京都美術館とアート・コミュニティー『造形講座』と『自主造形講座』そして『とびらプロジェクト』」が開催されました。これは、1978年から10年間に渡り東京都美術館(以下:都美)にて行われた「造形講座」と、「造形講座」が廃止された後にその受講生たちがたちあげた「自主造形講座」の歴史を、残されたアーカイブ資料をもとに再考し、現在行なわれている「とびらプロジェクト」との接点を見いだすことから、アート・コミュニティーの本質を考えることに主眼が於かれたアーカイブ研究会です。

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会のはじめはアートコミュニケーション担当係長の稲庭さんから、本会の趣旨や1978年当初からの「造形講座」の概要や流れについてお話を頂きました。

 

続いて、「造形講座」担当学芸員だった河合さんより、当時の様子についてお話を頂きました。当時の「造形講座」は、日本の美術館の教育普及活動としては非常に先鋭的な試みであり、また美術館教育の歴史に於いても注目される優れた試みであったとのこと。その特徴としては、一方的に情報を伝えるレクチャーではなく、学び手が主体的に参加するワークショップの手法を取り入れた最初の美術館教育であったことが報告されました。

 

そして、当時このワークショップを牽引していたのが及部克人先生(現 東京工科大学教授)でした。講座は、週2回を5週間(午後6時から9時まで)、計10日間1セットという密度の濃い講座ながらも、定員の60名(昼の部30名、夜の部30名)はすぐに埋まり、抽選となるほどの人気を博した企画であったそうです。こうした活動は1986年まで(10年間)継続しますが、その後、東京都現代美術館の設置に伴い、都美内の第一アトリエに東京都現代美術館の設置準備室が置かれると、ワークショップを行うアトリエ面積が少なくなり、教育普及活動も次第に収束したとのこと。しかし驚くべきは、この「造形講座」の受講生らが、講座廃止後に都美で行なわれていた活動を自主的に引き継ぎ、美術館外でおこなう「自主造形講座」を立ち上げ、凡そ5年間にも及ぶ活動を展開したことでした。

 

「造形講座」で及部先生と共に講師をされていた米林雄一先生(東京藝術大学名誉教授)にも、当時の講座の様子を振り返って頂きました。米林先生は彫刻を専門とされており、「造形講座」に於いてもさまざまな立体作品の指導なのどをされていました。印象的であったのは「造形講座」の講師を勤めたことが、その後の自分の人生にも大きく関わってきたとのコメントでした。人と人とを繋ぐ役割の大切さを「造形講座」を通してより深く感じられたとのこと。米林先生のその後の藝大での研究や活躍に反映されていったお話を伺うことができました。

 

後半は、当時の「造形講座」の受講生だった方々にご登壇いただきました。受講生の視点からみた「造形講座」と「造形講座」が廃止になってから「自主造形講座」を立ち上げた経緯や、ご苦労された点など赤裸々に語っていただきました。

 

聞き手は茂木一司先生(群馬大学教授)と僕(伊藤)です。受講生だった方々へのインタビューという形で進めさせて頂きました。

 

最後に、当時の受講生だった方々と、講師だった及部先生、林先生、担当学芸員だった河合さんとで当時を振りました。印象的だった話としては、講座廃止後、受講生であった面々で「ルノワール」という喫茶店に集まり、喧々諤々と美術館の外で自分たちの手でつくり上げる「自主造形講座」の定期的な開催に向けて会議を重ねたそうです。
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こうした、モチベーションは、都美が主催した「造形講座」のプログラムが魅力的であったというだけでなく、講座に参加した個々人が、講座での出来事を「自分」という物語の大切な一部として心の中に位置づけていたからに他ならないのでは無いかと感じました。「造形講座」で得た人との出会いと、体験を通したコミュニケーションは、参加者にとって、大切な財産となり、参加者それぞれの心に「小さな物語」を残していったのではないでしょうか。

 

研究会終了後の様子。2階のアートスタディールームには、「造形講座」に参加されていた受講生や、講師が持っていた資料などが展示されました。30年後の今「造形講座」にまつわる数々のアーカイブがのこされているのはまさに奇跡だといっても過言ではありません。これは、美術館が主導的役割を果たして保存したアーカイブ資料ではなく、「造形講座」の講師や受講生たちが、個々人の意思で保存した資料たちの集積です。この資料をもとにこの研究会は次週10月29日へと続きます。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤 達矢)

2012.10.22

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