東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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アクセス実践講座④⑤「ワークショップデザイン入門 体験を通して学びを深める場作りとは?」

2016年9月25日(日)アクセス実践講座④⑤
「ワークショップデザイン入門
体験を通して学びを深める場作りとは?」
講師:舘野泰一 氏(立教大学経営学部助教)

 

この日のアクセス実践講座では、ワークショップメイキングの基礎的知識や方法論、他者への伝え方について、立教大学の舘野泰一さんをお招きし、1日かけてレクチャーをしていただきました。とびラーたちは舘野さんから事前に出された課題に取組み、当日を迎えました。
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まずは東京都美術館学芸員の稲庭彩和子さんより、今回の講座の意図をお話しいただきました。
とびらプロジェクトでは、体験的・協同的な学びの場づくりを行っていますが、とびラー自身がワークショップ自体を真正面から学ぶ機会はありませんでした。任期満了になったとびラーが輩出され、とびらプロジェクトが社会に出て行くにあたり、その取り組み内容を言語化して伝える場面や必要性が求められています。

続いて、この日の講師である舘野泰一さんにマイクが移ります。
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大学時代に舘野さんは教育を専門とされていて、大学や企業の中における「教育」をどのように変えていくか、協同的に学ぶ場をどのようにデザインしていくか、ということをこれまで実践的に研究されてきました。
今回の講座では理論的な話と、実践的な「場」の作り方をご自身の経験から話していただきます。

この日を迎えるにあたっては、舘野さんの著書「アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ」から課題が出されていました。この著書の中に書かれている、3つのワークショップの事例について、担当となった章を読み込み、「この資料を読んでいない人」に対して口頭でその内容を説明できるようにしてくる、というものです。

この日の講座では「体験を通して学ぶ授業をどのようにデザインするか」「ワークショップの伝え方について」ということに目的が据えられています。

ここまでは導入で、ここから具体的な講座の部分に入っていきます。
午前中はワークショップメイキングの基礎についてです。

まずはアイスブレイクです。

A4の白紙を4等分して、
1 普段そんなことをしているか、
2 今日どんなことを学んでみたいか
3 楽しく「遊んだ」と思うときのことを思い出す。どんな時だったか?
4 よく「学んだ」と思う時のことを思い出す。どんな時だったか?
ということを5分間で記入し、グループで共有します。その際にはタイムキーパーを必ず一人立てます。共有の時間には、3と4について重点して聞いていきます。

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舘野さんによると、体験型の学びの中で大事にするのは、「遊び」「学び」の二つの要素を上手にブレンドすることだそうです。アイスブレイクの設問の意図についても分かりやすく説明していただきました。

 

続いて、事前に出されていた課題を扱ったワークです。
進め方は、
・3つの資料の説明をする(各班2人ずつ協力しながら説明の仕方を考える)
・3つの資料を統合して考える
です。

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途中、ワークショップメイキングについての理論的な話を舘野さんからしていただきます。

・なぜ今回の講座形式(グループごと、事前課題を相互に説明し合う)で進めるのか?
・そもそも人が学ぶとは?
・どんな時に人は知識を統合させるのか?

今日の講座の下敷きには、ジグソーメソッド(Learning by teaching)という理論があります。
人に教えることで学びが深まる、わからないことはわからない、と言った方がより学びが深まるとされていて、全員に同じ資料を渡さない、何か一つの問いを設定する、他者と考えを統合する、という方法論が特徴です。近年では、埼玉県の小学校でも取り入れられているそうです。

続いて、3つの資料を統合して考えるワークです。
・プログラムの基本構造として共通するところ
・意識して作っているポイント
・自分なりの発見や自分が取り入れてみたいと思ったところ
以上の点についてテーブルごとに模造紙を使って整理していきます。

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この日までに出されていた事前課題のワークショップには、共通する設計がありました。

①導入→②アイスブレイク→③メインワーク→④振り返り→⑤ミニレクチャー

基本はサンドイッチのように、メインワークを挟んであげるのがポイントです。
メインワークのことばかりを考えがちですが、こうすることにより、楽しい活動(メインワーク)と「なぜ」やっているかということが結びつくようになります。

 

『OARR(オール)を握る。』
O:Outcome(目標やゴール)
A:Agenda(進め方)
R:Role(ファシリテーター・参加者の役割)
R:Rule(参加のルール)
(引用:「ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ」/著者:中野 民夫ほか/岩波書店)

 
はじめにこれらを抑えておくのがものすごく重要です。
この後、導入、アイスブレイク、メインワーク、振り返り、ミニレクチャーの其々について、構成する際のポイントの説明が舘野さんからありました。

以上で、午前中の講義は終了です。


 

午後は課題で出されていたうちの一つ「カード de トーク いるかもこんな社会人?」のワークショップの一部分を皆で実際に行いました。

このワークショップを通じて、日常は知ることの出来ない、お互いの価値観を知る機会になります。

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「一緒に働くのは、ちょっと抵抗がある」というテーマでカードを他の人には見られないように3枚選びます。その際選んだ理由も書いておきます。
このワークを通じて単一的に捉えられがちな仕事のロールモデルについて、自分のキャリアによって活用法が異なること、目的に応じてロールモデルを応用していくことを学びます。

最後に、ワークショップの目的、仕事観などを話をして終了です。

 

続いて、舘野さんからワークショップの作り方についてのレクチャーです。

まずはメインワークについてです。
ポイントは「似た構造」の体験をさせてあげることです。事前課題で出されていた「就活ヒッチハイク」では、全く違うものの、構造的に似ている部分をセットすることで、別のアプローチから楽しく体験してもらうののに仕立てています。
もう一つのポイントは「対話に仕掛け」を取り入れることです。共有の時間など、自由に話してもらうと話し合いがどこに行くかわかならくなりがちですが、フレーム(今回はカード)を用意してあげることで、トピックが定まり、意図した話し合いが保たれています。

 

続いて、振り返りについてです。
学習目的と活動を統合させる問いかけを工夫すること。一人の時間を大切にして、全員が同じ結論に至る必要はなく、個人の時間を必ず持ってあげるようにすると良いそうです。
繰り返しおっしゃっていたのが、活動(遊び)をアイスブレイクと振り返りで挟むということです。アイスブレイクの工夫としては、いろんなパターンを知っておく。メインワークから「逆算」して考えるようにします。

最後に5つのポイントが挙げられました。

1、安心せる 心理的に安全な環境を作る
2、引き出す 問いかけをして説明させる
3、深める 一歩深い思考を促す
4、広げる 他の解釈を考えるように促す
5、つなげる 関係性に気づかせる

ワークショップを作るポイントは、とにかく自分たちで試してみることだそうです。最初から完璧を目指すのではなく、随時バージョンアップさせていく。そのために、プレ実践時の様子は必ず記録撮影しておくようにすると良いとのことでした。

— — — — — —

続いて「ワークショップの伝え方」についてです。

まず、
・どうやったら相手を説得できるか?
・ワークショップの意義や内容を伝えるためにはどのような点を意識すればよいか?
・ワークショップを伝えるために、どんな項目が入っていると良いのか?
という点について、個人で考えたのち、グループごとに共有します。

舘野さんのまとめ
・学習目的と対象
・背景、なぜ今それが重要なのか
・具体的に何をするのか
・期待される効果
・必要な道具やスケジュール・広報手段、実現性

グループごとに出ていた項目には、舘野さんのまとめも含まれているものが多かったようでした。

 

また「授業とワークショップの違い」という問いが挙げられて、
前者は〈参加前提、広報必要なし〉
後者は〈来てくれたことに感謝する、広報必要あり〉
と分類できることから、参加者がプログラムに参加する前提も考える必要性があることもおっしゃっていました。

他に「受け入れ団体にとってのメリットも考える」「広報チャネルと見せ方」についても検討が必要です。また、企画をやらせてもらう時、終わった後の報告のためにも、写真と記録の重要性に触れられていて、講座では「写真を撮るコツ」を具体的に示していただきました。

最後にとびラーからの質問を受け付けて、舘野さんの講座は終了しました。

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学びの場づくりをしていくと、日常の中の遊びがワークに取り入れられるようになったり、学んだことに気づく瞬間がわかるようになるそうです。
「日常の生活の中で学んだ経験を上手にミックスして場づくりを楽しんでください」と最後に舘野さんからコメントをいただきました。

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プロジェクトはこれから後半戦へ突入していき、様々な場面でこの日の学びを活かす瞬間が出てきます。
舘野さんによる即効性のあるレクチャー、これからの「とびらプロジェクト」「Musesum Start あいうえの」に活かしていきます!

(東京藝術大学美術学部特任研究員 奥村圭二郎)

2016.09.25

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