東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー④」マッドサイエンティストの非日常を探る…!編

とびラーの大澤です。

毎日暑い日が続いていますが、“平成最後の夏”……みなさま如何お過ごしでしょうか?

うだるような暑さに年代を問わず多くの人が辟易しているのが現状のようにも思えますが、そんな中でも東京藝術大学の上野キャンパスには、学生による他とは一種異なった闘志エネルギーが充満しているようです…。

 

↑東京藝術大学美術学部(通称:美校)敷地内には,既に今年のテーマ“ほてり”のメインビジュアル看板が設置されていました。藝祭の公式Webサイトや公式Twitterによれば、「乱反射による異様な熱に浮かれ、衝動的な夢錯覚に陥る…」ようなイメージがもとになっているそうです。瞳や電磁波のような曲線が印象的でかっこいい…!

 

例年は計8基の御輿を制作していたそうですが、今年度からは4基となるそうです。実際に現場を回ってみると、4科合同制作に対して学生たちからネガティブな意見が出ることは全くなく、逆にパフォーマンス時間が長くなる等の利点を指摘する学生も複数いたため、我々にとっては予想外でした。

 

 

さて,このレポートで取り上げるのは『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームによる“MAD SCIENTIST”がテーマの御輿です。

チームの隊長・副隊長を務めるのは、デザイン科の神出さん(写真右)と山口さん。そして、デザインを考案したのは同じくデザイン科の杉山さん(写真左)です。今回は写真のお二人をメインにインタビューを行いました。

神出さんは立候補して隊長となられましたが、複数の中から選出されたというわけではなかったそうです。最初隊長に名乗りをあげていた他の人たちが立候補を取り止めていってしまった結果、彼以外にやりたい学生がいなくなってしまったという不思議な経緯があるとお聞きしました。

 

神出さんが統率する当チームは、大きく分けて「法被隊」「御輿隊」「店舗隊」の3つで構成されています。

店舗とは、いわゆる屋台の出店を手掛ける部隊で今年はかき氷を販売するそうです。味やトッピング等含め全て学生のオリジナルなので、「ぜひ多くの来場者に食べに来てもらいたい!」とのこと。Twitterの宣伝画像を見てみると、確かに食欲をそそられるフレーバーがデザインセンス抜群の広告風に紹介されていました。今すぐ食べたい…!!という欲望を藝祭当日まで抑えていられるかどうか……笑

 

当初はマッドサイエンティストのイメージとかき氷とを掛け合わせたアイデアもあったそうですが、予算の関係でマッドなかき氷を制作するのは断念し、見た目の可愛さと美味しさを兼ね揃えたフレーバー数種類に決定したそうです。でも、やっぱり毒々しいかき氷もそれなりに面白い出来ばえになったのかも…と想像を膨らませてしまいます。

 

さて、ここで再び御輿の話に戻ります。

御輿を制作するテントは、どのチームも学生が一から組み立てたものです。傍から見れば、業者にやってもらったのだろうと素通りしてしまうかもしれませんが、藝大生は何でも自らの手で作り出してしまうのだなぁ…と改めて魅力的に感じました。

御輿自体は7月の終わりから制作を始め、8/10時点では2週間ほどが経過したとのことでした。

 

↑道具箱の中には色々な物が入り混じっています。まさに,工事現場さながら!

 

台風の影響等を聞いてみると、それほど被害は受けなかったものの、テント上部から若干の雨漏りがあったそうです。御輿そのものは発泡スチロールを削り取って形にしていくのですが、水に濡れると電熱線が入りにくくなることから、やはり気配りは必要だと感じました。

 

従来の御輿はモチーフやイメージが単体で独立していたものが多かったのですが、こちらのグループは御輿制作までの過程にストーリー性を取り入れている点が見どころだそうです!

ストーリーの主人公は、その名もケン・エスポジート・カミーデ博士。あれ、そう言えば隊長の名前って………!笑

 

それはさておき、彼こそがマッドサイエンティストと称される人物。『マッドサイエンティストの日常(@MS_Ken_e_k)』というTwitterアカウントも随時更新されており、自身の研究所を拠点に怪しげな実験を繰り返す博士と助手たちの活動を垣間見ることができます!

『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームの御輿情報アカウント(@omikoshi2018)と並行した情報発信が行われているだけでなく、ツイート内の写真や動画は小道具にもこだわって制作されたものなのでクオリティーが素晴らしく、初見の人でも思わずストーリー展開に引き込まれてしまいそうになるのでは?!

↑これがマケットと呼ばれる御輿のミニチュア版模型。御輿全体のバランス等を確認するために活用されていました。まだ完成はしていないそうですが、この時点でも既にクオリティーの高さに驚かされるほどです…。

 

マケットを見ておおよそ想像がつく通り、御輿本体のモチーフは博士が生み出したモンスターとなっています。鮮やかなグリーンと紫の組み合わせは、視覚的にも刺激があって効果抜群だと感じました。モンスター誕生の詳しい経緯に関しては、藝祭当日に明かされるかも…!とのことでした。

 

また、博士が力を入れている実験が仮に成功した暁には、モンスターを光らせることが可能かもしれないとの情報もゲットしました! 当日の出来ばえや御輿全体の完成図を目にするのが待ち遠しい!

↑お話を伺う様子。広報媒体(Twitter)の具体的な活用法について、デザイン案を担当した杉山さんが説明してくださいました。

 

Twitterに載せられている画像の中には、博士がガスマスクを被っていたり、実験室らしき部屋の中で白衣姿に試験管を片手に持つ助手たちの姿が頻繁に登場します。

もちろん小道具類は学生自らが用意した品々で、ガスマスクに関しては隊長の神出さんが自費で購入した物だそうです。元々、ガスマスクに憧れていたとも仰っていましたが、フォルムのかっこよさに何となくでも共感できる方は多いのではないでしょうか?

 

諸々のお話を聞いていて、連想したのが『フランケンシュタイン』のストーリーです。自らが生み出したモノが有する脅威的な力に対する科学者の素直な脅え、親であり創造主でもある人間の期待を裏切るかたちで成長を続け、怪物と化した一種の生命……  しかも、『フランケンシュタイン』作者・Mary Shelleyの人生においては周囲の人々の死が大きな意味合いを持っているという点も、マッドサイエンティストの発端とつながります。(博士の身の上に関する詳しい説明はここでは省きますが、興味深い内容なのでぜひTwitterを見てみてください! あ~‼となるはずです。)

 

ちらっとフランケンシュタインの話題を出してみると、お二人は「確かに似ているかも…」「そうですね!」と反応してくださいました。

↑御輿の一部に落書きのようなものがあったので尋ねてみると、これらも作品の一部として残されると教えてくれました。研究所の仲間から博士に向けた寄せ書きのようなものなのでしょうか…?

 

演出力の高い『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームですが、Twitter更新のための写真撮影等は御輿制作の合間を利用して行っているそうです。多忙なスケジュールの中で、学生同士が協力しながら一つの物事に取り組む姿は誰の目にも魅力的に映るはずです。

 

8基から4基へと規模が縮小となり、各チーム員数が多くなった点について聞いてみると、パレード時間が去年までよりも長く確保できることはアピールを行ういい機会だとも捉えられるので、ある意味良かったという答えが返ってきました。一方、資金面に関しては従来と変わらないそうなので、うまく融通を利かせる工夫も必要かもしれませんね…。

 

同じチームの作曲科の学生たちには、パフォーマンス時のダンス音源制作をお願いしているそうで、当日の演出がどういったものになるのかドキドキです。

 

最後に、デザインの原案を制作した杉山さんに、隊長・神出さんの魅力についても聞いてみました。

仕事をふるのが上手、作品制作にかける思い、御輿への愛がとてもある、チーム員一人一人への配慮がある…等々、沢山出てきました! やはり人望があるからこそ、仲間の協力が得られるだけでなく、和気あいあいとした現場の雰囲気を創出できるのだとこちら側も気づかされました。

 

↑黄緑のTシャツを着ている方が副隊長の山口さん(デザイン科)です。

 

↑各御輿制作テント内にはありがたそうなお札が設置されており、知る人ぞ知る恒例の存在となっています。

 

以上、今回は隊長と御輿デザイン原案を担当したお二人にインタビューを行いました。

外部の人間ながら、想像以上に活気のある現場にお邪魔することができ、本当に楽しいひと時を過ごすことができました! 次回以降は、また別の学生のお話も聞けるかもしれませんので,この記事に目を通していただいた方も再度、随時更新されていく御輿レポートをチェックしていただければと思います。

 

私自身も様々な学生との出会いを大切にしつつ、日々着々と準備が進む御輿の全貌を覗き見る楽しさをより多くの方にお伝えできるようにすることを目標に、ひとまずここで筆を置かせていただきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

To be continued…👾


 

執筆:大澤桃乃(アート・コミュニケータ「とびラー」)

とびラーの活動を始めてから、芸術に対する関心は高まる一方。

平成最後の夏は、まさに“ほてる”くらいアートに浸る…そんな時間を過ごしたい!

インタビューを通して得体の知れないマッドな(?)藝大生の素性を暴いていく過程がこれから先どうなるのか楽しみです。

 


★藝大生やとびラーが活躍する「藝祭2018」を一緒に楽しみませんか?

公式サイト→(http://geisai.geidai.ac.jp/2018/index.html)

開催期間:9/7(金)8(土)9(日)9:00〜20:00  / 東京藝術大学上野校地にて

2018.08.19

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