東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑬」いよいよ明日は…本番!編

2018.09.06

みなさんこんにちは!いつも私たちとびラーによる、「御輿制作インタビュー」をお読みいただきありがとうございます!

東京藝術大学の「藝祭(http://geisai.geidai.ac.jp/2018/index.html)」は、いよいよ明日から幕開けです。

八月の初めから制作が始まり、藝大生たちが作り上げた一夏の結晶が、いよいよ上野公園でお披露目となります!

今回は藝祭直前スペシャルということで、各チームに「ここぞ!」という見所や、印象的なエピソードをお聞きしてきました。

ぜひ明日からの藝祭では、本物を目に焼き付けてくださいね!


★『日本画・工芸・邦楽・楽理』チーム★

1.完成間近の御輿を前にして今の感想は?

まずは間に合ってよかった!と安心しています。

工芸の細部への質感のこだわりと、日本画の色や模様へのこだわりで、予想以上に迫力のある仕上がりになっています。

烏天狗と龍が対峙するリアルな様子は見ものです。

 

2.御輿作りに取り組んで来たチームメンバーの様子はどうでしたか?

この一週間、時間が無くなっていく中で、みんなが担当する部分を自発的に決めて進めてくれました。

みんなが自発的に進めてくれることを頼もしく思う一方で、隊長としてまとめきれているのだろうか・・・という悩みもあったのですが、みんなが優しくてここまでくることができました。

 

3.当日のパフォーマンスの見所は?

楽理・邦楽の人たちが作曲した、テンポが異なる3曲を是非お聴きください。

御輿の仕掛けや、踊りもお楽しみに。

山本隊長(日本画)が肩に、中川隊長(工芸)が背中に乗りますよ!


 

★『油画・建築・声楽・指揮・打楽器・オルガン・チェンバロ・リコーダー』チーム★

1.完成間近の御輿を前にして今の感想は?

作ってみるとすごく圧を感じます。色も、元気な色彩になりました。

足の裏にも注目です。法被と同じレタリングで、左足は建築、右足は油画となっています。

  1. 御輿作りに取り組んで来たチームメンバーの様子はどうでしたか?

上野で御輿を作る意味にこだわり、コンセプト、形づくりを、最初のマケット制作の段階からとことん話し合いました。それが今回の御輿のキーになりました。

・上野にやってきた最初の3頭の象が再生する物語。

・象は神様の使い。

・御輿作りに参加した8科にちなんで、象の背中には八角形の社を乗せました。

 

3.当日のパフォーマンスの見所は?

御輿を中心に、360度から楽しめます。

平和な今を未来に伝えていく、というメッセージを伝えるパフォーマンスになっています。流す曲は、神聖な曲にはじまり、ポップな曲に変わっていき、踊り手もたくさん参加します。声楽の歌も聴きどころです。お楽しみに!


 

★『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チーム★

Q1.発砲スチロールのかたまりだったところから現在の状態の御輿を見た今、どんな気持ちですか?

できた『それ』を見て衝撃を受けました。

ただ、色の具合がイメージしていたものと違うので、残りの時間でもう少し修正していきたいです。

 

Q2.御輿づくりに取り組んできた中で、心に残ったエピソードを教えてください。あと、チームメンバーに対して一言どうぞ。

『それ』の周囲に、ホルマリン漬けの怪しい物体が浮かぶ容器を配置するのですが、その容器が完成した時が一番心に残っています。

怪しげな物体が浮かぶ様子をどう表現するか等悩みつつの作業だったのですが、出来上がった容器の中に仕込んだLEDライトをつけた瞬間、イメージしていた雰囲気が見事に表現できていて感動しました。

積極的に動いてくれるメンバーは限られていたように思うけど、いつもみんな何かしら関わってくれてありがたいなと思っています。

最後までついてきてくれてありがとう。

御輿づくりを担当するメンバーそれぞれにつくりこみたい部位があり、そのこだわりが最終的には全て反映される形となりました。

言い換えると、それぞれのパーツがメンバー一人一人のこだわりでできています。御輿を見ていただく時は、そういう視点でも見てもらえたら嬉しいです。

 

Q3.当日のパフォーマンスではここを見てほしい!というポイントを一言。

博士の助手たち、そしてモンスターたちのダンスを見てほしいです。

また、博士が『それ』にチューブを差し込む場面がハイライトなので、そこも見逃さないようにしてください。

パフォーマンスとは違いますが、この御輿は暗くなってくるとライトアップもする予定です。

歴代の御輿でライトアップというものはないと思うので、夕方までいらっしゃるようでしたら、ぜひ『デザイン・芸学・作曲・弦楽』チームの御輿にもお立ち寄りください。

 

 


★『彫刻・先端・管楽器・音環・ピアノ』チーム★

Q1.発砲スチロールのかたまりだったところから現在の状態の御輿を見た今、御輿についてどういう感想を持っていますか?

制作中は『間に合わないのでは・・・』という不安が常につきまとっていましたが、今こうして御輿を見ていると、本当にちゃんとできあがるんだということを実感しています。

造形がすばらしいと改めて思いました。彫刻が頑張ってくれたおかげです。

先端が担当した色塗りも納得のいくものになったと思っています。

ちなみに、前日の台風は御輿づくりが始まって一番の強さだったので、作業中は身の危険を感じるほどのものでした。

けど、御輿とメンバーどちらにも被害がなかったことを今朝確認し、安堵しました。

 

Q2.御輿づくりに取り組んできた中で、心に残ったエピソードを教えてください。あと、チームメンバーに対して一言どうぞ。

 

みんな、お疲れ様です。

夏休み前くらいまでは御輿やマケットづくりに積極的な人が少なく心配していましたが、夏休み以降はみんな活発に意見を言いはじめ、まとまらない時もあるくらいでした。それを乗り越え、今があります。

彫刻と先端、それから音楽学部のみんなと組めてよかったです。

 

Q3.当日のパフォーマンスではここを見てほしい!というポイントを一言。

御輿の造形と色彩表現、そしてパフォーマンスでの魅せ方に流れる音楽・・・9月7日のパフォーマンスには藝大に関する全てがつまっています。これが藝大!ぜひ見てくださいね。

それから、私たちの御輿については、台座にも注目してほしいです。

風化した、砂漠を感じさせる質感を表現したくてジオラマ専用の砂を使おうと思っていたのですが、高かったので断念したんです。

代替案を考えている時に、冗談で砂浜から調達しようという話があがったのですが、彫刻のメンバーの一人が湘南に住んでいるということでその話が現実のものになりました。

そのメンバーとお父さんに砂浜で砂を集めてもらい、他のメンバー1人と共に現場まで運んできてくれました。

進め方については、木工用ボンドを塗った台座に砂をそこにまぶし、その上から茶系の色を数種類、スポンジで叩きつけるように重ねていきました。

発泡スチロールとは思えない、石のような質感、見た目になり満足しています。

 

あとは、ハピコレ(法被コレクション)5連覇を目指し、そちらの練習も頑張ってきました。なので9月9日のハピコレもぜひ見てください!

 

***

【おまけエピソード】

御輿隊長の二人と話していたら、何やら見知らぬ男性がこちらに近づいてきました・・・・!

あれ?この人は。

なんと!伊藤隊長のバイト先の店長とのことでした。

それまでのクールな印象から一変、「来ないで!って言ってたのに親が来たみたいな感じで恥ずかしい!」とうろたえる伊藤隊長を尻目に、店長にもインタビュー決行です。

右に写っているのが店長さん。「藝大生っぽく見えるよう首にタオルを巻いてきました!(笑)」とのこと。

「メンバーもお店によく来てくれます。御輿づくりについて、弱音も含め話をいろいろと聞いていましたが、制作現場に来るのも、御輿を見るのも今日が始めて。こんなすごいものをつくっているのかと驚きました。

伊藤さんには、一生に一度しかないことだからバイトを休んででも御輿づくりに専念しろと言っています。」

 

・・・が、隊長曰く、「『バイトを休んででも御輿づくりに専念しろ』なんて言われてませんよ!」とのこと。

先日も、シフトに入っていないけれど人手不足だったから応援に駆け付けたそう。伊藤さんの責任感の強さ、優しさを感じることができました。

アルバイトも制作も、悔いのないようにがんばってくださいね!

 


一夏かけてお届けしてきた記事はいかがでしたか?

これを読んでくださった皆様が、藝大生の夏に親しみを持ってくださったら嬉しい限りです!

それぞれの御輿の完成形が楽しみですね。

それでは、明日からの藝祭でお会いしましょう!

(今日の取材とびラーメンバーで一枚!この夏取材に参加したとびラーのみなさんも、暑いなかお疲れ様でした。)


取材・執筆:とびラボ「御輿インタビュー」のメンバー

撮影・編集:峰岸優香(とびらプロジェクト アシスタント)


★藝大生やとびラーが活躍する「藝祭2018」を一緒に楽しみませんか?

公式サイト→(http://geisai.geidai.ac.jp/2018/index.html)

開催期間:9/7(金)8(土)9(日)9:00〜20:00  / 東京藝術大学上野校地にて

【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑦」カミーデ博士の助手編

2018.09.06

みなさまこんにちは。とびラーの上田です。

 

大きい台風がいくつも日本を訪れておりますが、みなさまご無事でお過ごしでしょうか。

激しい天候に攻撃され続ける夏は、もうこりごり。穏やかな日々を過ごしたいなぁと思うのですが、本音を言うと夏は大好き。そんなとびラー上田が、『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームの御輿レポートをお届けします。

 

取材当日は前日通り過ぎた台風の影響がまだ残っており、ものすごい強風が吹き荒れていました。特に、この『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームのテントのある場所は一番風当たりが強く、取材中もテントの幕がバタバタとものすごい音をたてていました。この風で制作は大丈夫かしら?とちょっと心配に。

 

テントのそばへ行くと、「あれ?」テント前に白い服を着た銅像が・・・。

「なんだろう?」と、疑問に思ったところにガスマスク?をつけた神出隊長が登場。インパクト大!

 

 

そして次に気がついたのは・・・・!!

「天井がない!」「はい、天井落ちました。笑」

昨晩の台風の強風で、天井が落ちてしまったそうです。

 

青空が見えてますね。笑。

 

そんな現場でも、全然めげていない神出隊長(デザイン科)にお話を伺いました。「研究室は壊れましたが、実験は順調です。」とおっしゃる隊長。形が少し狂っているのを発見したので、そこを調整し直し顔を作り出したところだそうです。見るとだいぶ形ができています。発泡スチロールに青や緑の線が引いてあるので、「この線はなんですか?」と訊くと、彫っていくときの凹凸の目安だと教えてくれました。青い部分を凹ませ、緑の部分が出っ張る部分になるそうです。ほおお、なるほど。

 

「制作過程では何が1番大事ですか?」との問いには、「体調管理です!」

なるほど、この連日の暑さですものね。誰か1人欠けても制作は大変になりますから、体調管理は大切ですね。さすが隊長です。隊長だけに体調管理??あれ?ホントは管理隊長だったの???

 

 

それはさておき、今制作中の『それ』になった経緯などを聞いてみました。

教授からは「風神雷神や動物など今までに何度も御輿のモチーフになったものはやめたら?」というアドバイスを受けて、今までにないめちゃくちゃな案をいくつか出したそうです。『それ』に決まるまでは『サーカス』や『自撮りするJK(女子高生)』『アステカの遺跡』等の案が出ましたが、1番『エモい』モチーフで、かつ光るものをつくりたいという希望があったので、『それ』に決まったそうです。そして『それ』の名前はまだ内緒だそうです。マケットも進んでいました。わー、怖い感じ!でも惹かれる。

 

 

『それ』の正体が何なのか、なぜ生まれたのかはTwitterで追ってくださいね、とのこと。

Twitterの画像がとても凝っていて、ドラマ仕立てで『それ』が出来上がっていく様はとても興味深くて面白いです。

Twitterも要フォロー!

  • マッドサイエンティストの日常(@MS_Ken_e_k)
  • 『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームの御輿情報アカウント(@omikoshi2018)

 

 

さて、ここで先ほど、あれ?と思った白い服を着た銅像について聞いてみました。

「なぜ、銅像が白い服を着てるのですか?」

「ああ、あれは、助手です。安井先生を助手にスカウトしました!」

さすが、神出隊長です。目の前の安井曽太郎先生の銅像さえも助手にしてしまう!!マッドな研究に参加させてもらって安井先生もさぞかし楽しい思いをしてらっしゃると思います。

 

ここで、神出隊長・山口副隊長と安井助手の記念撮影、パチリ。

チームワークばっちりですね!

 

「何か心温まるエピソードなんてありますか?」の問いには

「う〜〜〜ん。」とちょっと悩んでから、「スイカの差し入れがありました。先輩が持ってきてくれたんですが、スイカを手渡された後ポケットから塩を出して『ハイッ』って。」

先輩がおもむろに塩を「ハイッ」って出してきたことに感激したようです。そしてそのスイカを食べた後、種を蒔いたそうです。そして来年そのスイカを収穫して後輩に差し入れするという計画だそうで・・・(笑)。大きなスイカがなるといいですね〜。

 

今後の御輿制作の予定は、この2、3日で荒削りを終え細かいところの制作へ移ります。9月に入ったら着色に入りたいということでした。神出隊長は自分にかなりのプレッシャーをかけて制作に臨んでいるそうですので、このまま順調にいくといいですね。応援しています。

最後に、取材中に悲惨な屋根の近くで『それ』の上に乗っていた今村さんをパチリ。

屋根がなくても頑張ってくださいねー!

 

 

そして帰り際に発見!これは、もしや・・・・!!

 

To be continued…

 


執筆:上田さち子(アート・コミュニケータ「とびラー」)

藝祭の御輿インタビューも3年目になりました。来年はもうインタビューに来られないと思うとちょっと寂しい。でも御輿は追い続けようと心に誓うのであーる。『世界に笑いと幸せを』をモットーにアートとコミュニケーションの場をいつまでも追求します。

 

 


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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑥」鳥天狗が羽ばたく日は…編

2018.09.03

こんにちは。とびラーの鈴木康裕です。お盆休みも明け、8月20日から再開した御輿づくり。『日本画・工芸・邦楽・楽理』チームの「烏天狗」御輿の第2回取材を8月24日に行いました。緩んだと思っていた暑さがぶり返し、折しも19・20号のダブル台風の影響でときおり強風に見舞われながらのインタビューでした。

蝉時雨が響く音校(※音楽校地)敷地内を進み、記憶に新しい巨大テントの前に立つと、風を避けるように出入口が閉ざされていました。声をかけると、テントの中からおなじみの仲良し二人組が出てきてくれました。人よんで「隊長シスターズ」といったところでしょうか?

 

山本さん(日本画)と中川さん(工芸)です。ねじり鉢巻きを解き、発泡スチロールの細片を払ってインタビューに応じてくれましたが、手には大根おろし器を曲げて作った「ヤスリ」が・・まさに作業も佳境に入っているようです。

 

(ヤスリは包丁などとともに先輩から受け継がれている由緒正しき(?)アイテムです。)

 

前日の大雨でテント上部に大量に水がたまり、雨漏りもあったとか。発泡スチロールは濡れると水を吸って重くなって乾きにくく、電熱線を使って切断したり削ったりすることが難しいため、なかなか思うように進まないそうです。進捗状況を聞くと「だいぶ遅れています。今は本体部分の大きなカタチを出しているところで、来週からディテールに入りたいです!」とのことでしたが、天幕をあげ中の様子を見せていただきました。以前よりもカラスの嘴や全体の造形がハッキリしてきています。天狗と絡む「龍」の頭部のつくり込みも進み、お盆休みに入る前の取材からの進捗ぶりがわかります。

(「龍」が上を向いている様子。どんな表情になるのでしょう。)

 

10人でシフトを組んで作業しているとのことですが、テント内を見上げると天狗サマの右肩あたり・・・なんと、さりげなくスマホが刺してあって、そこから音楽が響いています。「テンションアップしています!」一昨日は筝曲を流したとか。40度を超えることもある暑いテントの中での作業。ついついだらけたり、イライラしてぶつかり合ってしまったりすることもあるそうです。そんな過酷な条件下の雰囲気づくりや、日本の伝統的なモチーフのイメージづくりにむけた隊長の心配りが感じられました。この御輿は今年制作される4基の中で、唯一和風のものになるそうです。

 

(何でも発泡スチロールに刺しちゃいます。スマホが音源です。)

 

テントの外に目を向けると、6本の幟の上部に載せる「目」の造形を絶賛制作中。その近くにいたのは楽理科の2人。制作現場で片づけや掃除などでサポートするほか、パレードでは「天狗の手下」として踊るので、別の場所でその稽古もしているそうです。10人の手下が舞い踊るなか、烏天狗が白煙を上げて羽ばたく姿が見られそうです。その時に流れる音楽はもちろん邦楽がベース。邦楽・楽理が連携して新曲を作曲し、既にスタジオ録音が完了しているとか。「御輿づくりまでは全く知らなかった美校の友人がたくさんできました!」と、とてもうれしそうに語ってくれました。

(楽理のお二人。「サンバパレードも是非見てください!」)

 

藝祭まであと2週間をきりました。遅れていると危機感を募らせつつも、ディテールの造形に入ってゆくこれからが工芸・日本画の腕の見せどころ。「細かいところは任せて!」という頼もしい言葉も聞けました。総力を結集した高い完成度が期待できそうです。御輿ばかりでなく、幟や法被、音源やパレードの練習など、いろいろな準備が同時進行しています。これからの二週間でどんな盛り上がりがみられるでしょうか。ワクワクしますね!


執筆:鈴木康裕(アート・コミュニケータ「とびラー」)

アートの真髄は作品を介した作家と鑑賞者とのコミュニケーションだと思います。自分が楽しみながら、少しでもそのお手伝いをしたくてとびラーになりました。藝祭はまさにそんな双方向のコミュニケーションが生まれる場です。ぜひ足を運んでみてください!


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【あいうえの連携】あいうえの日和(2018.7.24,25)

2018.07.26

夏休みの上野公園、今年度最初のプログラム「あいうえの日和」が開催されました。
「あいうえの日和」は、45分間でミュージアム冒険のコツをマスターする、ファミリー向けプログラム。7月24日・25日の2日間で125組250名のこどもと保護者が参加しました。

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

 

基礎講座⑥|「会議が変われば社会が変わる」

2018.06.27

とびラーの自主的な活動には、とびラー同士が直接コミュニケーションをとるミーティングの場のあり方がとても重要です。ひとりひとりが主体的に関わるミーティングの場をつくるために、具体的な手法を学ぶのが今回の講座のねらいです。レクチャーとワークショップを通して、「ミーティング」の理想的なスタイルを学びます。


講師は「ミーティング・ファシリテーター」の青木将幸さん。青木さんが進行を手がける会議は、家族会議から国際会議まで、多岐にわたるのだそう。

 

日常や社会生活のなかでたびたび起こる「話し合い」。とびラーの活動のなかでは、「とびラボ」の企画をかたちづくるプロセスや、様々なプログラムのふりかえりなど、多様な場面でFace to Faceの議論が活動の核となっています。

今回の講座会場は、なんと藝大の体育館!?机や椅子がないため、自然と人との距離が近くなり、意見を出し合ううえでの対等さ=「フラット」な関係を感じられる効果があったようです。思い思いの姿勢をとって、のびのびと話し合いにのぞむなかで、自然と身体の向きが相手に変わったり、前のめりになったりする様子がみられました。

講座の最初は青木さんの自己紹介からはじまり、まずは「歩き回ってとにかくいろんな人に挨拶をする!」というアクティブな場ほぐしからはじまりました。「目があった人にはとにかく声をかけてみて!」と青木さん。朝一番のかたかった雰囲気から一変、徐々に賑やかな声が場にあふれていきます。

次に、3人組をつくって「良い会議」と「悪い会議」のイメージについて意見を出し合います。

まずは個人でノートに書き出す時間があり、次に3人の意見を交換。そして、3人全員が合意できる意見をいくつかピックアップしてみます。

 

ここで青木さんが強調していたのは「『同意』と『合意』は違います!」ということ。一つの意見に対して「それいいね!」「賛成!」と相手が受け入れるのが「同意」それぞれ意見を出し合ったあとでお互いに納得する状態にたどりつくことが「合意」です。

会議をすすめていくうえで、この「合意」がひとつのキーになります。発言したことのうち、何に合意したのか?話し合いを進める軸として、参加している人たちの意思を明確にすることは非常に重要です。

ここで、各グループから出てきた「良い会議」のイメージを青木さんが模造紙に書き出しました。

ポイントは多々ありますが、大切なのは、その場に集まったメンバーで合意された要素に従ってすすめること。会議を始める前にこれらの点を読み上げることも、参加の意識付けとして有効な手段なのだそうです。

様々な観点が出てきたところで、個人的に気に入ったアイデアを4つ選んで、シール投票。一度投票のかたちをとると、ここにいる人たちの価値観が総計としてみえてきます。

 

ここまでのワークをふりかえりつつ、青木さんから良い会議をするためのポイントのまとめがありました。

1. 個人で書いてから集団で話す

=発言の準備ができた状態をつくる。全員の発言の準備を促す。

2. 3人組で話し合う

=社会の「最小単位」からはじめる

3. 何に合意したのか?を明らかにする

=花丸をつける、赤の二重線をひくなどしてポイントを明確にする

4. 発言を板書する

=内容を可視化する

5. みなさんの傾向を掴む工夫を取り入れる

=シール投票やグラデーション挙手などで傾向を見る

 

また、質疑応答の場面では、実際に仕事やプロジェクトをすすめることを想定した問答がありました。

・議論をすすめていくうちに、「おかしいな」と思ったら・・・?
=「違和感を表明できる」ことが議論の磨き石になりうる・上下関係がはっきりしている会議だと、発言しにくいことも・・・
=上層部にこそ、「どんなミーティングが理想ですか?」と聞いてみる

・メールや掲示板など、オンラインでのやりとりなど「顔を合わせない」やりとりもふえているが・・・
=重要なことほど顔を合わせた場所で決める


ここでお昼休みを挟んで、午後はワークショップ形式でいくつかのパターンの「会議実習」を行います。

まずは4人1組をつくるところからスタート。このグループで、3つのワークを行いました。

(1)いいねぇ会議
・誰かが何かひとつアイデアを話す。(例:「海にいってみませんか?」)
・それに対して、まず「いいねぇ」と言う。
・話したことに対して、次の提案をする。思いつきや、突拍子のないものもOK。(例:「じゃあ、洞窟探検にいくのはどう?」)
【ルール】でもね、うーん、など、アイデアを否定することはしない。
(2)交代で昔話づくり
・始めの人が「むかしむかしあるところに・・・」につづく一文を考えて話す。
(例:むかしむかしあるところに、おじいさんと〇〇がいました)
・次の人は、それに続く形で次の一文を話す。
(例:おじいさんは海にワカメをとりに、〇〇は〜にいきました。)
・この一文リレーを繰り返す。(例:すると〜◉×△!)
(3)解決社長
・4人のうち1人が「社長役」、のこり3人は「部下役」。
部下「社長、大変です!(〜トラブルや困ったことの報告をする〜)」
社長「それはちょうどいい!じゃあ、こうしよう
(〜トラブルを活かした提案をする〜)」
部下「さすが社長!」
・〜部下役、社長役を交代する。〜
・社長は「校長」や「大臣」などに変わっていってもOK。

これら3つのワークに共通しているのは、「相手の意見がどんなものであっても否定せず、アイデアを活かして話をすすめていく」こと。「イエス・アンド〜」の姿勢をもって話をきくことが、アイデアの芽を育てていく環境をつくります。日常生活のなかでトラブルや予想外のことは、そもそも「起きる」もの。起きたときにどう考え行動するか、どうポジティブに織り込んで考えていくか、を楽しんで追体験するワークです。

実際にやってみたとびラーからは「クリエイティブな気持ちになれる」「周りに影響されるおもしろさ」「突拍子もないアイデアを楽しめる」「ダメ出し会ではたどりつけないアイデア」といった声があがりました。

さて、講座の最後のワークは「MM法=みんなで持ち寄るミーティング法」。
「Q 今日、ここにいる皆さんに聞いてみたいこと、話し合ってみたいことは?」を1人1テーマ考え、紙に書き出します。
内容は日常生活のこと、価値観のこと、社会のこと、それぞれの話したいテーマはさまざま。
お互いのテーマを書いた紙が見えるように歩き回りながら、関心事が近かったり、気になる内容をもつ人同士で5人1組をつくります。

できた5人組で座組をつくり、それぞれのテーマを10分ずつ話しあいました。
自分の議題のファシリテーターになるのは自分。
今日の講座で学んだ方法を取り入れながら、小さい単位での話し合いに挑戦してみます。
「たった10分だけど、思っていたよりも深い話し合いになった!」「やっぱりまだ話し足りない」「もっと人の意見をとりいれてみたい」など、それぞれの実感を抱えて本日の講座は終了。

「良い会議」のイメージを持ち続け、一緒に進める人と明確に共有していくこと。
他人の意見を否定せず、アイデアを活かした話し合いをふくらませていくこと。
大切な点は単純明快ですが、健全に組織を運営することや、順調に企画をすすめることの難しさは、誰もが何らかのかたちで感じたことがあるでしょう。

 

「会議が変われば社会は変わる」ならば、どんな社会に変えていく?

全6回にわたる基礎講座はこれにて最終回となりますが、とびらプロジェクトとしては、いよいよここからが活動本番のスタートラインです。今年度も人と人、人と作品を通してどんなクリエイティブなつながりが育めるのか、さまざまなトライ&エラーの場を「話し合い」からはじめていければと思います。

 

(とびらプロジェクト アシスタント 峰岸優香)

【開催報告】「マインドマップで味わうアート」をプーシキン美術館展で開催しました!

2018.06.17

2018年6月17日 日曜日の午後、事前に申し込みいただいた参加者の方々をお迎えして「マインドマップで味わうアート」を開催しました。

 

ビジネスや教育の現場で定着しつつある、マインドマップの手法を活用しながら作品の鑑賞を楽しみ、発見して、誰かと語り合おうという、「対話を通した作品鑑賞xビジネスツール」の新しい体験の試みです。

 

作品と向き合う中で生まれた自分の考えや気づきを、マインドマップを使って整理してみることで、鑑賞で感じたことを少し時間が経っても思い出すことができます。それをさらに言語化して家族や友達に伝えることができれば、鑑賞の体験がより深まるのでは?という期待感をもって準備を重ねていきました。

プログラムは、参加者の皆さんに、都美のアートスタディルームに集まっていただき、マインドマップを描いて自己紹介をすることからスタート!
進行役のとびラーが、自分の自己紹介をしつつ、マインドマップの描き方の基本をお伝えします。

マインドマップを描くのは初めて!という方もいらっしゃいましたが、思い思いのマップには、その方をあらわすキーワードが散りばめられていて、既に、コミュニケーションを後押しているように感じました。

マインドマップが初めての方にも参考になるよう事前に用意した、とびラーの自己紹介マップ

▲マインドマップが初めての方にも参考になるよう事前に用意した、とびラーの自己紹介マップ

 

次に「プーシキン美術館展」を鑑賞するための基本情報を、マインドマップを描きながらキーワードやイラストを交えて説明しました。

プーシキン美術館とは?フランス風景画とは?

そして皆さんそれぞれが展覧会で発見したり、感じてみたいこと(マイテーマ)は?

その後、展覧会の各章のテーマとキーワードに紐づけて、15枚の作品がどの章に属するのかを推理して選んでいただくというゲームをしました。

ここでも、作品のどこからそう判断されたのかや、自分はどの作品が気になる、など、自然に参加者の皆さんの間で会話が始まっています。

 

ゲームの後は、今日じっくりと鑑賞したい1作品を選びます。

次に、今回の参加者の皆さんも楽しみにされていた対話を通した鑑賞を体験していただきます。

今日取り上げた作品は、プーシキン美術館展に出品されているクロード・モネの《草上の昼食》(1866年)です。

「仲がよさそうなグループだけど、右端に一人、輪に入れない男の人がいる。」

「飲み物はワインだけだろうか?」

 

少人数のグループだったので、皆さん、自由に発言をされていました。

今回の参加者の皆さんは対話を通した鑑賞への関心が高い方も多く、

その説明にも興味をもっていただいたようです。

 

その後、いよいよ、展示室へと移動します。

 

まずは2つのグループに分かれて、案内役のとびラーと3フロアから成る展示室を一巡。その間にも、先ほどゲームをした作品を見つけると、参加者の皆さんの足が止まり、大変熱心な様子が伝わります。とびラーが見つけた各章の面白い見所などについても会話が弾みます。

 

それぞれのグループごとに、時間をとって1作品を鑑賞します。

1グループはルイジ・ロワール《パリ環状鉄道の煙(パリ郊外)》(1885年)、もう片方のグループはピエール・ボナール《夏、ダンス》(1912年)。どちらも見ごたえのある大作です。

その後は、マインドマップを作成するための個人での鑑賞の時間です。

それぞれがもっと見たいと思った作品のもとに向かい、発見や気づきをメモしてきます。

 

その後、アートスタディルームに戻り、本日の鑑賞をもとにマインドマップを作成します。

約30分、カラーペンを使って思い思いにまとめていきます。

最後に、描き上げたマインドマップを見せながら、今日の鑑賞体験を一人ずつ発表していただきました。

「絵の緑が非常に美しくて印象深かった。」

「私は、展覧会を見て“道“をいう言葉が浮かびました。」

「展覧会を通していろんな“旅”があることが分かった。」

その他にも、キュレーションに関心があるというご意見や、とびラーがこの企画実施にたどり着くまでの過程の“旅”に参加できてよかった、という励ましのメッセージまでいただき、大変感動しました。

 

プログラムはこれで終了。

 

実施後のとびラーのふりかえりでは、今回の参加者のみなさんの様子を思い返しながら、時間配分や、描いたマインドマップの共有方法についてを話し合い、マインドマップというツールと対話を通した鑑賞の融合について考える時間を持ちました。

参加者の皆さんが回答してくださったアンケートでは、

「マイテーマを持つことは面白い」

「想像を超えて楽しかったです!マインドマップが思考の整理、記憶の定着、意識の向け方に役立ちそう。」

「会場で少し説明が欲しかった。」

「対話型鑑賞を会場でもう1点できるとよかった。」など、

具体的によかったところや改善の余地がある点があきらかになりました。

今後のプログラムづくりにぜひ活かしていきたいと思います!


執筆:中元千亜樹(アート・コミュニケータ「とびラー」)
大人も子供も作品について語り始める時のキラキラした表情をみるのが、とても好きです。
お気に入りの美術館はTate Modern(英国)Kiasma(フィンランド)。

基礎講座④|「作品を鑑賞するとは」

2018.06.02

アートの作品はたくさんありますが、はたして「作品を鑑賞する」とは、どのような活動なのでしょうか?

ただ何かを「見る」だけではなく、自分の目と頭を使って、そこにある表現に迫ること。

美術館での体験や学びとはどのようなものか、今回の講座では「鑑賞」について、理論と実践の両面からそのあり方を考えていきます。


今回の講師を務めるのは東京都美術館学芸員 アート・コミュニケーション係長の稲庭彩和子さん。

講座の前半は3つの映像を見て、気づいたことをひもときながら話し合います。

 

(1)「美術館の展示室で物語をつむぐ」

(2)「Thinking Through Arts」

(3)「Museum Start あいうえの スペシャル・マンデー・コース」

この3つの映像を順番に視聴しながら、それぞれ気づいたことや疑問に感じたことをシェアしあい、稲庭さんがコメントバックする形で午前の講座はすすんでいきました。ここではそれぞれの動画のポイントを簡単に紹介します。

 

(1)「美術館の展示室で物語をつむぐ」

メトロポリタン美術館の館長である、トーマス・キャンベル氏のプレゼンテーション。作品を知識によって見ていくのではなく、個人の発見や気づきから、共感をもって見ていく、鑑賞者が中心となる美術館での体験について語られています。

映像のスクリプトも読みつつ、気になった部分についてグループで話し合い、いくつかの論点を全体でも共有しました。

たとえば「どの作品も当時は現代美術だった」、「リアリティをもって作品に出会う」、「美術館での体験とはどうあるか」・・・など。

アートや作品が好きで美術館を訪れる人も、普段はなかなか美術館に来る機会がない人もいるなかで、「作品を見て考える体験」について俯瞰した視点から考えていきます。

 

(2)「Thinking Through Arts」

次に視聴したのは、イザベラ・ガードナー・スチュアート美術館で行なわれている対話による鑑賞を使った手法(Visual Thinking Strategies)の取り組み。こどもたちが作品について、素直な視点で発言していく様子が紹介されています。

人間には、言葉を使って思考を構築していく習慣があります。視覚情報が豊かであればあるほど、言葉で伝えるのが難しかったりするもの。だからこそ豊かな解釈が生まれ、言語表現はより発達したものへと変容していきます。

また、多様な考え方や価値観を保持しながら「対話」をすすめていくうえで重要なのが「ファシリテーター」という役割。中立的に場を進行する人がいる状態が、異なる考えを持つ人たちが共存することを可能にしていることに注目しました。

 

(3)「Museum Start あいうえの スペシャル・マンデー・コース」

実際にとびらプロジェクトで取り組んでいる、スクールプログラムの様子です。

展示室のなかで、アート・コミュニケータがこどもたちに伴走する事例が紹介されており、展示室での活動が子どもと大人の「学び合い」の場であることについて見ていきました。

現代のアクティヴ・ラーニングに必要なのは、こどもに教え諭すだけではなく、ともに議論しながら考えていく姿勢。個人の年齢や背景が異なるからこそ、違う意見や価値観があり、多様な解釈が生まれるもの。ミュージアムにあるたくさんの「もの」や「作品」を、それぞれの視点から考え、共有していく取り組みが、いま世界の各地で起こっています。

様々な人のまなざしを知ることは、互いの背景を重んじあい、共存を認めあう、文化的な理解を深めるプラクティスでもあるのです。

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午後は実際に自分の目と頭をつかって作品を見るワークから、「対話による作品鑑賞」を体験していきます。ここから進行は、各グループの進行役「ファシリテータ」が担います。

まずは作品を使ったアートカードで「なっとく!ゲーム」を行いました。

たくさんの作品を見比べながら並べ、絵の中の共通点を探し、伝え合うコミュニケーション・ツールです。

ここからは実際に、展示室にある作品を見に行きます。

訪れたのは公募展示室で開催中の「第84回 旺玄展」。会場には見応えのある作品が所狭しと並びますが、今日は各グループにつき2作品ずつを、集中して鑑賞します。

1作品あたりの鑑賞時間は約20分。

「1枚の絵の前でそんなに立ち止まるの!?」と始めは驚かれる方もいらっしゃいましたが、絵をよく見て、話し始めてみたら「あっという間だった!」「もっと見て話してみたい」との声も。

講座の終盤では展示室から戻り、今日の体験を振り返ってみます。

「自分では気づかなかったことに気づいた」

「作品について話したり、聞いたりするうちに、絵がどんどん変わって見えた」

「話している人の人柄も見えてくるようだった」

一つの作品を見て、それぞれの気づきを共有していくことで、「誰かの気づきを自分がどう思うか?」という相対的な視点をいつのまにか獲得していることに気がつきます。

講座の最後には、参加したとびラーからこんな発言が。

 

「たいていの場合において、議論とは意見がぶつかりあって、闘争になるもの。
でも、作品をみていると、意見がぶつかるのではなく『どんどん重なっていく』という発見があった。
意見の交換や、積層によって、どんどん発見が増え、深まっていくという実感に驚いた。」

 

そう、これこそが「複数人で話しながら作品を見る」醍醐味であり、ポイントなのです!(・・・と、進行していた学芸員の河野さん。)

どんなに解釈が違っても、同じ作品をみて、同じことを捉えた延長にそれぞれの思考があります。意見の正誤を問うのではなく、「異なる視点を共有する」体験が、対話による鑑賞で得られるもの。全く同じ観点ではなくても、自然とまなざしが重なり、自分とは違う他者の在り方を確認することができるのです。

見ること、考えること、言葉にすること、他の人とやりとりすること。

作品や人と対話し、交流を深めていくと、新しい視野が開けるような体験に出会うことがあります。そんな機会にふれ、また次の誰かに届けていくためのきっかけに、今日の講座がなっていたらいいなと思います。

 

(とびらプロジェクト・アシスタント 峰岸優香)

【開催報告】iPad@プーシキン美術館展“障害のある方のための特別鑑賞会” 開催しました。

2018.05.28

2018年5月28日、「プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画」障害のある方のための特別鑑賞会で、「iPad@プーシキン美術館展」を開催しました。

iPadを使ったプログラムはこれまでの「障害のある方のための特別鑑賞会」でも、「視覚に障害のある方も車椅子の方も、作品を見ることを楽しんでもらいたい」という思いで、とびラボとして企画、実施されてきました。

作品の画像データを取り込んだ東京都美術館のiPadを持ったアート・コミュニケーター(以下とびラー)がそれぞれの階の展示室内に2名程度滞在し、iPadの画面上で画像を拡大したり、手元で見せることで、より鑑賞を楽しんでいただけるようにする鑑賞サポートプログラムです。

「この絵のこの色が良く見たかったの」と具体的に見たいものをとびラーにお伝えしてくださる方や、「杖をついていると絵の近くまで寄りづらいから、こうして見せてもらえるのはありがたい」との言葉や、「これは何が描かれてるの?」とiPadで拡大した画像と本物の絵を見比べながら、それぞれ思っていたものとの違いを楽しんだり、絵について話しているうちに、美術館へ来ることへの思いを話してくださったり。さまざまなコミュニケーションがうまれる場となりました。

今回、このプログラムに参加したとびラーは25名。「喜んでもらえたのが嬉しかった」「お話し出来たのが楽しかった」と、とびラー自身も楽しんでいました。

絵画を鑑賞することは個人的な経験になりがちですが、iPadという道具を介して、作品×人のコミュニケーションがたくさん生まれる機会となったことは、とびラーにとっても発見でした。

障害がある、ないに関わらず、「心のゆたかさの拠り所」を目指す東京都美術館で、このような場があることが改めて素敵に感じました。

次回の障害のある方のための特別鑑賞会では、どんな出会いがあり、どんなコミュニケーションが生まれるのか、ワクワクしています。 


執筆:今村 昭浩(アート・コミュニケータ「とびラー」)

アート×福祉×地域を探求すべく、とびラーとなって、早3年目。アートを通じて、人がつながる機会があちこちで生まれることを目指して、奮闘中です!

障害のある方のための特別鑑賞会:「プーシキン美術館展」

2018.05.28

2018年5月28日、「プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画」で障害のある方のための特別鑑賞会が行われ、1,111名の来館者をお迎えしました。休室日の展示室を、障害のある方のために開室する特別な1日。この日に関わったアート・コミュニケータは、現役とびラーと、3年の任期を満了した元とびラー、あわせて総勢62名。総出で、朝から準備に取り掛かります。

 

 

展示室の中では、「車椅子の方や視覚に障害のある方にも、作品の細部を近くで見てもらいたい」という思いから生まれた“とびラボ”(とびラー発の企画)「iPad@プーシキン美術館展」が実施されました。アート・コミュニケータが来館者に、iPadに取り込んだ作品画像の細部を拡大してお見せすると、それをきっかけにコミュニケーションが生まれていました。

展示室入口のホワイエでは、学芸員による「ワンポイント・トーク」が行われ、展示のみどころなどが紹介されます。「ワンポイント・トーク」には、手話通訳が付いています。

より多くの方に、トークの内容が伝わりやすくなるように、トークの要点をスライドで表示する“とびラボ”(とびラー発の企画)「文字表示プロジェクト」も実施しました。文字表示のスライド作成は、とびラーの手によるものです。

視覚障害のある方といっしょに展示を鑑賞しているアート・コミュニケータもいます。当日ご要望があった場合には、お話をしながら鑑賞をご一緒させていただくこともあります。

この日に東京都美術館に足を運んでくださった方が、安全かつ有意義に展覧会を楽しんでいただけるよう、アート・コミュニケータひとりひとりが考え、心を配る、「障害のある方のための特別鑑賞会」。今回も無事、終了しました。
またのご参加をお待ちしております。

(東京藝術大学美術学部特任助手 越川さくら)

基礎講座③|「上野公園のアクセシビリティを考えよう」

2018.05.12

第3回目となる基礎講座。今回の舞台は、ずばり上野公園。

ホームである東京都美術館だけではなく、上野公園内の文化施設をグループごとにリサーチに行きます。

◯1日の流れ

くじをひき、行き先を決める(グループ作成)

10:00-10:40 本日の課題発表、活動の説明

10:40-13:20 グループワーク   各所に出かけ、リサーチを行う

案をまとめる

13:20-15:00 プレゼン・講評・まとめ

 

くじをひき、グループが決まったら講座スタートです。

東京都美術館(以下:都美)学芸員の稲庭さんからアクセシビリティの基本的な考え方や様々なプログラムの事例についてお話しを聞きます。

 

そもそもアクセシビリティとは?

 

一般的にアクセシビリティ(accessibility)とは「近づきやすさ」「得やすさ」などと訳される言葉です。

高齢者や障害を持った方などいわゆる社会的弱者と言われる方々を含め、どんな状況におかれた人でも支障なくサービスを利用できることが大切です。

アクセシビリティを阻害する原因は、身体的なこと、心理的なこと、あるいは物理的、社会構造的なことなど様々ありますが、何よりまずその原因に気づくことが大変だったりします。自分が支障なくできている事柄に対して、その人の状況をよく想像し、アクセシビリティを高めていこうとすることは簡単なことではありません。自分の思わぬところが人によってはとても苦労するということもあるからです。

そういった問題に、海外のミュージアムが取り組むアクセシビリティにまつわるいくつかのプログラム事例があげられました。また、とびラーもかかわる東京都美術館の「障害のある方のための特別鑑賞会」についても紹介がありました。

そしていよいよ講師の日比野克彦さんと森司さんから本日のテーマと課題の発表です。

本日のテーマ:「上野公園のアクセシビリティを考えよう」

課題:「あなたは2050年の未来から2018年に来てしまいました。2050年にはあって、2018年の世界にはない、美術館・博物館・上野公園についてのアクセシビリティに関連する知恵、ソフトコンテンツ、コミュニティ、技術があれば教えてください。」

数十年先の未来に予想されている、超高齢化社会など、いろいろな問題を抱える日本の姿・状況。そういった未来で必要されるアクセシビリティのあり方とはどのようなものなのでしょうか。

日比野さん、森さんからお二人が考えるアクセシビリティについてお話がありました。 

日比野さんから出たキーワードとして「質量0のアクセシビリティ」という話がありました。重さのある物理的な移動・アクセス以前に、まず考えたり想像することが大切だということです。

すべての始まりはイメージをすること。イメージが世界を作り上げている。視野を広げて、拡張できるだけする。

自分自身が開拓者になったつもりで様々なことに興味を持つ。そしてその中で違和感や、やりにくさを感じたら、そこに答えが隠れている。まずは柔軟な姿勢で考えてみることが大切です。 

日比野さんと森さんからリサーチのポイントやヒントをもらい、いよいよフィールドに出発です。

今回みなさんが出かけるミュージアムは5つです。

●東京国立博物館

●恩賜上野動物園

●国立西洋美術館

●国際こども図書館

●国立科学博物館

 

こちらは科学博物館に行くグループ。

「科学博物館ってどこにあるの?」

駅から向かうと少し奥に隠れている科博。

そんなところも2050年のアクセシビリティを考えるヒントになるのかもしれません。

 

 

 

こちらは西洋美術館にでかけたグループです。

常設展を観に行く模様。

 

東京国立博物館のグループは観るものが多くて楽しそうです。

建物の内の造りや収蔵品、2050年に果たしてどのようなかたちで残っているのでしょうか…。

 

各自外でのリサーチが終わったら、昼食を取りながら午後の発表について打ち合わせを行います。

感じたこと、考えたことを食事を取りながらだと気軽に話せます。

皆さん和やかな雰囲気です。

 

各グループ模造紙に今回の課題、2050年の未来図をまとめていきます。

まとめていく段階でそれぞれの個性がみられました。まとめ方も様々で、ポストイットを貼り付けいくグループや町の構造を絵で表したグループなど、同じ場所に行ったグループでも全然違う意見が出ていました。

 

最後に、各グループまとめを発表します。

2050年にはもう美術館は存在しない、というグループや恩賜上野動物園では、動物の生態系が展示されるというものも。

各グループに日比野克彦さんと森司さんによるコメントがあります。

全体を通して物理的な面を取り上げたグループも多かった今回。

公園内の移動も自動車椅子ならそれほど苦労しなくてもいけるね、などすでに2018年にあるものも多く、それほどにテクノロジーはすでに発達していると改めて実感できたのではないでしょうか。

AI文化が進んだ今、果たして人ができることはなんなのか。質量の0のアクセシビリティとは人間のコミュニケーション。気楽に意見を言い合える空気感。

実践的な体験を受けて新しい考え方を見つけるヒントになったのではないでしょうか。

 

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とびらプロジェクトアシスタント下澤希望

 

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