東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

ブログ

アクセス実践講座③| 「当事者研究:障害者と文化的活動」「視覚障害者とつくる鑑賞プログラム」

2017.09.17

「人と人を考える」をテーマに、多様な人々が芸術につながれる「回路」をデザインしていくこの講座、2017年度の「アクセス実践講座」もいよいよ3回目となりました。今回のキーワードは「身体と障害」。講座前半には、東京大学先端科学技術研究センター准教授 熊谷晋一郎さんのレクチャー(昨年度のアクセス講座)をVTRで視聴し、後半には、視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップより林建太さん・木下路徳さんを迎え、美術鑑賞と障害について考えていきました。

 

【前半】
「当事者研究:障害者と文化的活動」熊谷晋一郎(東京大学先端科学技術研究センター准教授)

(*写真は昨年度の様子)
 
車いすにのった男の子が階段の前で立ち止まっています。障害はどこに宿っているように考えられるでしょうか? 優等生は階段を指さします。街に段差があることが障害だ。車いすを指さす人もいます。段差を超えられる機能がないのがいけない。あるいは、もしかすると、まわりに手助けしてくれる人がいない環境が悪いのかもしれない。熊谷さんによれば、これらすべてが正解です。障害が人々を取り巻く社会の側に宿っているとするこのような立場は、専門用語では「社会モデル」と呼ばれるそうですが、もちろん視点をずらせば違った考え方もできます。近頃は発言すると「悪者」になりかねない「男の子の足に障害があるからいけない!」という考え方がそれ。障害が当事者の身体の側に宿っているとする立場「医学モデル」です。「近頃は」と記しましたが、社会モデルが台頭するようになったのは最近の話であり、少し前の時代までは、医学モデルが当たり前だったとのこと。例えば、熊谷さんが生まれつきもっている脳性麻も1970年代頃までは治療・リハビリ次第で治るものだと考えられており、健常者に近づくべく障害者に努力が求められていたこのことからも、医学モデルの優位が窺えます。障害の所在に対する人々の考え方が大きく変化したのが1980年代。その背景には「自立」に対する考え方の変化、「自立生活運動」がありました。
 
「自立」というのはどういう意味でしょうか? 難しい言葉ではあるものの、反対語は比較的容易に浮かびそうです。子どもたちに聞くと真っ先に返ってくるというのが「依存」。納得の行きそうな言葉ではあるものの、熊谷さんはこの「自立生活運動」においては特に、「自立」の反対語に「依存」を置くことを強く否定しています。熊谷さんは東日本大震災時、建物の5階から避難するにあたって、自分が依存できる逃げ道が作動しなくなったエレベーターに限れていることに気づき、助からない可能性に頭が真っ白になったと言います。梯子や階段、ロープ等、健常者には複数見つけられる依存先が、障害者である自分には限られている。健常者は複数の依存先を有しているために、それぞれへの依存度は低くなるものの、障害者はその逆。数限られた依存先へ依存の度合いも集中します。複数の逃げ道に向かって細く伸びる数多くの矢印と、エレベーターに向かって太く伸びるただ一つの矢印、この差を埋めること、すなわち「細いベクトルを数多く」持てるようになることこそが「自立」なのではないか。地震体験を通して「依存」と「自立」の逆説的な関係性を実感したそうです。

 


(*写真は昨年度の様子)
 
依存先を複数有しておく必要性は、何も災害時の逃げ道に限ったことではありません。日常的な生活環境、対人関係についても同様のことが言えます。熊谷さんによれば、「自立生活運動」が支持されるようになる1980年代まで、障害者が頼れる相手は、実家の年老いた両親か人里離れた施設の職員に限られていたとのこと。昼食に何を食べるか、いつ食べるか、日常的な行為のすべても介助者の顔色を伺いながらであり、障害者本人の主体性が軽視されていたことも指摘します。もちろん顔を合わせる人間の少なさは、「細いベクトルを数多く」持つこととは相容れません。介助者に対する障害者の依存度の拡大は、必然的に代替の効かない関係性を作り出し、逃げ場のない環境は暴力発生のリスクを高めます。障害者の自立支援において大切なのは、対人においても彼らの「依存先」の複数化に努めること。介助においては一対一の関係を避け、常にチームでアプローチすることの重要性を熊谷さんは強調します。
 
チームでのアプローチは、美術館でのプロジェクトの実施にも結びつきます。熊谷さんは、美術館に来場された障害者の方への対応を例に挙げますが、同様の考え方は、何も障害の有無に限ることなく、すべての人に共通しうるようには言えないでしょうか。美術館の来場者に向けて、多人数でアプローチすることにより、できる限り数多くの「依存先」を提供すること。「多様性」を「多様性」で迎えることは、人々の芸術への回路を検討する上での大きなヒントになるようにも考えられます。今回とびラーたちが視聴したVTRは、昨年度のアクセス実践講座にて、熊谷さんが講演された際のものです。その時の様子がこちら。レクチャーの詳しい内容をあわせてご覧ください。

 
【後半】
「視覚障害者とつくる鑑賞プログラム」林建太・木下路徳(視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ)
 
2012年の発足以来、北は宮城県から南は沖縄県まで、全国の美術館や学校にて百回を超えるワークショップを行っている団体「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」。彼らは団体名にあるように「障害者」との「美術鑑賞」を実践していますが、重要視していることとして「障害者」と「美術鑑賞」を結びつける「とつくる」の部分を掲げています。これはどういうことなのでしょうか?

同団体が美術館等と連携しながら毎月数回ずつ開催しているワークショップは、進行の都合上、定員に縛りは設けるものの、「見えている人」「見えていない人」の別は問わず、誰もが参加できるようにしています。ワークショップの内容は、参加者全員で作品を鑑賞し、対話を深めるというシンプルなもの。ひとつの作品に30分程度の時間をかけじっくりと向き合いますが、ここでも「見えている人」「見えていない人」の別は問われません。これを可能にしているのが、「見えることと見えないことを言葉にしてください」というファシリテーターの言葉。色や形といった「見えること」、印象や思い出といった「見えないこと」、双方について自由に意見を交わすことが、実際に作品が目に映っているかを問わず、全員が同じように参加可能なプログラムを成り立たせていると言います。
 
「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」について、プロジェクト発足の直接のきっかけは2007年にまで遡れるとのこと。視覚障害者である友人の美術館訪問に、林さんが作品説明のサポート役として同行したことが契機となったと話します。しかしながら、これが大変難しく、早々に挫折することになったそう。目に映った美術作品を客観的に説明することなんて出来ないのではないか。客観的とはそもそもなんだ? そこで開き直って今度は主観的に、作品に対する意見を言ってみたところ、それは説明になってはいないものの、自分と友人との間でなにかが共有されたことを実感できた。説明役である「サポートする側」と説明を受ける「サポートされる側」の壁を取り去ることで、「見えること」への責任を負うことなしに相互に影響し合える。林さんは一方通行ではない「相互のやりとり」が持つ可能性を強調します。

それでは参加者たちは具体的に、どんなことを共有されるのでしょうか。林さんは東京都現代美術館での事例を話しました。ある時、舟越桂の彫刻作品を前にした二つの感想、「寂しそうな感じ」と「安心している感じ」に、見えていない人は戸惑ったそうです。視覚障害を持つファシリテーターの「どうしてそう思ったの?」の問いかけに、前者は他作品からの距離感に、後者は作品にあたる陽光に、寂しさと安心感の原因をいわば「後づけ」で求めましたが、ここから分かるのは、見えている人同士では「どうして」が省略されることが多いということ。目の見えている者同士であっても、作品の映り方や感じられ方はそれぞれ異なる。言葉の介在によって見えていなかったものが立ち現れる瞬間がある。「見る」ことを取り巻く差異を実感するなかで面白さが共有されたことを指摘しました。
 
対する木下さんは、見えていない人の立場から面白さを話します。例えば「かっこいい」という作品の形容ひとつを考えても、「かっこよさ」の原因は多数見つけられる。そういった多数の情報を自分の経験に紐づけた結果、頭の中にイメージが浮かび上がるわけで、他者の言葉と自分の記憶が結びついて完成する作品像の魅力と、そこから得られる達成感を木下さんは強調します。加えて、浮かび上がったそのイメージをもとに、見えている人と同じ話を共有できるという楽しさや喜びについても指摘。確かに見えている人と全く同じ経験はできないけれど、他者の目を介して経験を得ることはできる。見えている人の作品に向かう姿勢を俯瞰することによって、「見る」という経験を知ることができる。東京都写真美術館にて鑑賞した佐内正史の作品を例に挙げて話します。

自分たちもワークショップを企画する立場にあるとびラーたちにとってとりわけ気になるのが「主催者側」の視点です。プロジェクトを展開させる際に、多様性を広く受け入れるための特別な工夫はあるのでしょうか。林さんが一例として取り挙げたのが、サポートにいらっしゃった介助者にも一参加者として発言を促すということ。講座前半の話と結びつけるならば、作品に関する情報の発信主の複数化、すなわち「依存先の複数化」を目指すチームでのアプローチがここでも採用されているわけです。林さんの言葉を借りるならば、説明が細かくなりすぎて止まらない「説明ループ現象」、無言が続く「誰も何も言えなくなっちゃう現象」、面白い発言を求めて作品からどんどん離れてしまう「大喜利現象」等、ワークショップを数重ねれば重ねるだけ、解決すべき多様な課題も見つかるそうですが、なによりも大切なのは、「見る」という多様な経験を互い考え互いに共有すべく常に立ち返るということ。一人ではなく複数の人間が、互いにコミュニケーションを取り合うという意味で、障害者と美術鑑賞をつなぐ「とつくる」の部分の重要性を、林さんと木下さんは指摘しています。
 
(東京都美術館・インターン 角田かるあ)

【あいうえの連携】うえの!ふしぎ発見:けんちく部

2017.08.11

8月10日にファミリー向けプログラム「うえの!ふしぎ発見:けんちく部」が行われ、17組32名の親子と共に12名のアート・コミュニケータ(とびラー)が活動しました。「うえの!ふしぎ発見」は上野公園の様々な文化施設が連携するプログラムで、毎回一つのテーマのもと、参加者がミュージアムを横断的に体験することができます。

 

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

【あいうえの連携】夏のあいうえのスペシャル

2017.08.06

今年度初の「あいうえのスペシャル(旧ホームカミングデイ)」が、こどもたちの夏休み中の8月5日(土)に開催されました。東京都美術館のアートスタディルームとスタジオを拠点に開催された「あいうえのスペシャル」は、これまでの「あいうえの」プログラムに参加し、ミュージアム・デビューを果たしたこどもたちとその家族が、ふたたび上野の冒険を楽しむ一日です。

 

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

【当日受付!】8月の建築ツアー

2017.08.04

親子もウェルカム!「トビカン・トワイライト・ツアー」

今月はトワイライト版も開催します!夕暮れ時の東京都美術館を散策するツアーです。だんだんと夜の風景に移りゆくひとときを一緒に楽しみませんか?親子でのご参加も大歓迎です!

日時|2017年8月11日(金・祝)16:30-(30分程度)
集合場所|東京都美術館 ロビー階ミュージアムショップ前
対象|どなたでも
定員|15名 (当日先着順)
参加費|無料
参加方法|開始15分前より、当館ロビー階ミュージアムショップ前で受付をします。(事前申込不要)
*ツアーの内容は小学生以上向けです。

 

夏の夜こそ「トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー」

ライトアップされた東京都美術館を散策するツアーです。とびラーがガイドを務め、素敵なツアーにご案内いたします。

日時|2017年8月25日(金)19:15-(30分程度)
集合場所|東京都美術館 ロビー階ミュージアムショップ前
対象|どなたでも
定員|15名 (当日先着順)
参加費|無料
参加方法|開始15分前より、当館ロビー階ミュージアムショップ前で受付をします。(事前申込不要)

 

【あいうえの連携】平日開館コース:台東区ハートラボ高校合同授業

2017.08.03

2017年8月2日、学校向けプログラム「平日開館コース」が行われました。

今回は台東区内の5つの高校の合同授業で、生徒たちは有志で参加するという、夏休みならではのプログラムとなりました。

参加してくれたのは、都立浅草高等学校、都立足立西高等学校、都立荒川工業高等学校、私立岩倉高等学校の全5校です。高校生23名が参加し、彼らを迎えるアート・コミュニケータ(以下、愛称:とびラー)9名と共に活動しました。

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

【あいうえの連携】ミュージアム・トリップ:NPO法人多文化共生センター東京

2017.07.29

2017年7月29日、あいうえのファミリープログラム「ミュージアム・トリップ」が行われました。

「ミュージアム・トリップ」とは、さまざまな状況にあるこどもたちにミュージアム・デビューの機会を提供するインクルーシブ・プログラムです。 児童養護施設や、経済的に困難な家庭のこどもを支援している団体、海外にルーツを持ちカルチャー・ギャップなどの困難を抱えるこどもを支援している団体など、各分野の専門機関と連携して実施しており、今回は「NPO法人多文化共生センター東京(以下、多文化共生センター東京)」という、海外にルーツを持つこどもたちの支援を行っている団体と連動して実施しました。

 

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

【あいうえの連携】ミュージアム・トリップ:NPO法人キッズドア[中高生]

2017.07.28

7月27日、2017年度1回目の「ミュージアム・トリップ」が行われました。「ミュージアム・トリップ」とは、さまざまな状況にあるこどもたちがアート・コミュニケータ(以下とびラー)と共にミュージアムを楽しむインクルーシブ・プログラム。児童養護施設や経済的に困難な家庭のこどもを支援する団体、海外にルーツをもつこどもを支援する団体など、各分野に専門的に取り組む方々と連携し、2016年度より実施しています。

 

プログラムの様子はこちら→

(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

アクセス実践講座②|「経済格差とこどもたちの文化的状況」「多文化コミュニティーとミュージアム的機能」

2017.07.09

7月9日(日)、アクセス実践講座の2回目を開講しました。
今回は2つのレクチャーを通して、ミュージアムが社会的課題に関わる方法を考える糧にしていきます。
・NPO法人キッズドア・松見幸太郎さん「経済格差とこどもたちの文化的状況」
・秋田公立美術大学・岩井成昭さん「多文化コミュニティーとミュージアム的機能」

 

アクセス実践講座1回目からつづくこれらのレクチャーを通して、とびラーがこの夏つくりあげていくのがMuseum Startあいうえのミュージアム・トリップ」のプログラム。こどもたちを取り巻く社会のことや、さまざまな現場で起こっていること、実践されている取り組みについて学び、とびらプロジェクトでの活動に活かしていきます。

» さらに詳しく読む

基礎講座 番外編|「Good Meeting」

2017.07.08

7月8日(土)、新規とびラーに向けた基礎講座の番外編を開催しました。
今回の講師はミーティング・ファシリテーターの青木将幸さん。テーマは「Good Meeting」ーよい会議、よい話し合いとは?を考え、実践していくための内容です。

午前はそれぞれの経験から「よい話し合いにするためのポイント」をひもとき、午後はグループごとにテーマを決め、実際に話し合いを実践することで、1日を通して「会議」への取り組み方を考えていきます。

学校や会社、家族のなかなど、日常生活におけるさまざまな場所で行われる「話し合い」。その質や内容は多岐にわたりますが、意見を交換・共有して物事をすすめていくプロセスは、社会生活の基盤であるといえるでしょう。とびらプロジェクトでも「とびラボ」をすすめるミーティングが、とびラーにとって重要な話し合いの場となっています。

青木さんの自己紹介や、それにまつわる質問から講座はスタート。明るく気さくな雰囲気のある青木さんのトークに場が和みます。

まず最初にホワイトボードの片隅に書かれたのは「質問・発言 いつでも歓迎!」の文字。この一言がいつでも目の片隅に入るようにすることで、わからないことの聞きづらさを軽減してくれます。『ひとりが「聞きたい」と思っていることは、この部屋のみんなが「聞きたい」と思っていることかもしれません』と、青木さん。

 

そしてさっそく、本日最初の話し合いに入っていきます。3人組をつくって話すテーマは、「普段のミーティングや会議、話し合いで気をつけていることはありますか?」という問いかけ。

『気軽なおしゃべりや雑談も交えながらでOK!』と青木さん。話が脱線したり、思わぬ展開になったとしても、それによって新しい発見ができたり、相手の意外な面を知ることもあります。10分くらいの時間をかけ、それぞれの経験を振り返りながら、さまざまな話し合いの状況について考えていきます。

それぞれの話し合いのなかで出てきた工夫には、たとえばこんなものがありました。

・できるだけ相手の話を最後まできく
・相手の話を否定しないできく
・ひとりでしゃべりすぎない
・先に自分の意見を言ってから他の人に意見をきいてみる
・段取りをつくって会議にのぞむ
・会議の時間を区切る、示す
・会議は認識を共有する場所にする
・その場にいる人がわかる言葉で話す
・新しくきた人や日の浅い仲間も大切にする
・アイスブレイクをする
・反対意見を述べるときの言い方に注意する
・板書をする
・盛り上がってきても、客観的な目を持つようにする
・全員に意見をきく
・お茶やお菓子がある環境にする

これらの観点に、青木さんがひとつひとつその良さと抱え得るリスクについて言及しながら、フィードバックしていきます。そしてこの共有を通して、それぞれがもつ「よい会議」のイメージを具体的に広げていきます。

ここで一度質疑応答をはさみ、午前の部のまとめへ。

青木さんによると、話し合いには「共有→拡散→混沌→収束」の4つの段階があり、この全体像を意識することで、会議がうまく扱えるようになっていくのだそうです。それぞれの段階を十分に深め、合意をとってすすめていくことが、よい会議のキーになっていくのだとか。

 

 

さて、お昼休みをはさみ、いよいよ午後の部では話し合いの実践です。お昼休憩のあいだに、午前中に出てきた「話し合いで気をつけていること」の項目に対して、「実践してみたい」と思ったものにしるしをつける、というワークがありました。これによって、講座に参加している人の価値観が見えてきます。

さあ、さっそく会議・・・の前に。

みんなで体を動かしながらできる、アイスブレイクをいくつかやってみます。アイスとは初めてあった人との間に生じる緊張状態のこと。これをほぐしていくことで、より話しやすい、参加しやすい場づくりが生まれていきます。

まずはファシリテーターの動作に合わせて手を叩く方法。誰でも簡単に参加でき、他の人と一体感や共感を得られるのがアイスブレイクの面白さです。

次は「キャッチ」、手を使ったゲームです。数人で円になり、片手の指を隣の人の手の上におきます。ファシリテーターが「キャッチ」と言ったら開いている手で隣の人の指を掴もうとしますが、自分の指は捕まらないように上に逃す、というルール。不意に「キャッチ!」の言葉がかかるので一瞬の気も抜けません。

今度は全員で大きな円をつくり、先ほどのルールを応用して全員で「キャッチ」をやってみます。

ひとしきり盛り上がって、場がなごんできたところで、7〜8人のグループに分かれて、いざ話し合いの場づくりへ。ちなみにグループの分け方は、「好きなおにぎりの具」で決めました。

今日の話し合いは2部構成。まず15分間で「どんなことをテーマに話すか?」の課題設定を決めていきます。そして次の30分間で、そのテーマの内容に関して話し合います。

ミーティングのスタイル(椅子や机の置き方、議事録の取り方)も各グループで設定します。持ち寄りのお菓子コーナーも充実!日常的なテーマから深刻な話題まで、多様な話し合いが展開されました。

午前中にあがった観点や、よい会議にするための心がけを意識しながら、話し合いをすすめていきます。

限られた時間のなかでどれだけの進度があったかを振り返り、最後に「自分にとってよい話し合いだったかどうか」を腕のあげ具合で表示。今日の講座全体をふりかえり、どんなことが起きていたか、これから活かせる視点があったかを探ります。

 

最後に講座のなかで生まれた疑問から、青木さんと質疑応答のセッションをして終了。

 

午後の部のまとめでは、青木さんが「よい会議、よい話し合いに出会うと、参加している人は自然と元気な様子になる。いきいきと話す姿になっていく」とおっしゃっていました。

生活のさまざまな場面であらわれる「話し合い」に、新たな視点を持って取り組める講座となりました。

これからも「よい話し合い」を模索しながら、その場づくりを考え、実践しつづけていくことが、アート・コミュニケータの活動を支えていくでしょう。

 

(とびらプロジェクト・アシスタント 峰岸優香)

アクセス実践講座①|「ミュージアムにおける社会包摂的活動」、「子どもの貧困・孤立の現状と課題」

2017.07.02

2017年度のアクセス実践講座が始まりました。
まずは、伊藤さんから、講座の目的や関連する実践となる「障害者のある方のための特別鑑賞会」と「ミュージアム・トリップ」についての確認がありました。

【前半】
「ミュージアムにおける社会包摂的活動」稲庭彩和子(東京都美術館)

今、美術館には、社会包摂的機能、多様性を保つ場としての機能が求められています。東京都美術館がリニューアルを行なった際には、21世紀の美術館に求められる役割をプラスしました(ご参考:東京都美術館「使命と4つの役割」)。常にミッションに立ち返りながら、活動を行なっていくことになります。

 

●「教育普及」から「関わり合い(Engagement)」へ
美術館でよくいわれるのが、文化を普及する「教育普及」です。学校との連携や教育(Education)が含まれ、それぞれの人の学び(Learning)が起こっているかに関心が移ってきています。ここ数年着目されているのが、「関わり合い(Engagement)」で、本当に関わり合いをつくれているでしょうか。人間は社会的動物なので、一人では生きていけません。関わり合いが上手くいくことが、幸福度に密接に関係しているといわれています。関わり合いを作っていくためには、「対話(Dialogue)」が起きていかなければならないです。一般的に「ケアリング(Caring)」というと、看護とか介護を想像するかもしれないが、基本的な行為は「深く対象に心を向け続けること」です。

 

●「ケアをする」
美術館の機能を考えると、「キュレーション」の語源は、ラテン語の「curare」にあります。意味は、対象について「ケアをする(take care)」ことです。「大事にする」「大切に見守り育む」という意味を含み、ものを次の世代に渡していく役割が美術館にはあります。「ものをケアする」というと、物理的なケアを考えますが、何を次の世代につなげたいかというと、その作品が作られた時の作家のアイディアを次につなげたいのです。本質的には作品に含まれるそのひとの営みということ自体を伝える価値があります。だから、作品を見ることでケアされるのです。

 

●他者の世界と自己の世界をケアする
美術館でも、日常のことを忘れて、集中して作品を見る時に癒されるという経験があります。自分と誰かとの対話が始まったり、自己の内面との対話が始まります。対話をしていくうちに、自分と他者がそれぞれ異なる存在でありながら、自らの一部として他者を感じる感覚(相互主観性、共同的な主観性)が生まれます。それぞれ人は個別のアイディアがありますが、絵を何人かで見ていくときに、色々な人の意見があって、聞いていくうちに、違うけれども生まれてくる共同的な主観性が、私たちに安定感を与えるのです。共同的主観性は、社会で平和な関わり方を作っていく時に大切だといわれています。

 

●ミュージアムの非日常性
ミュージアムは、時間と場所から解放され、過去と現在を行き来できる場所になりうるのではないでしょうか。社会的尺度や差異がいったんゼロにされて、もう一度考え直せる場所(社会的包摂の場)としての特性があります。

 

●ミュージアムでの社会包摂的活動:海外の事例
Meet ME MoMA(アメリカ)
アルツハイマーの方と家族のためのプログラム
美術館と医療機関の連携

House of memories(イギリス)
地域博物館での「ハンドリング・オブジェクト(触れる収蔵品)」
貸出可能な収蔵品を、介護士の人たちが高齢者に触ったりしながら、回想法によって成果を出している。4000人の介護士が参加し、介護施設で活動している。

ホームレスへの働きかけ(イギリス)

Met Escapes(アメリカ)
庭園の美しい美術館で、認知症の方たちが五感を刺激するようなプログラムを行い、展示室で鑑賞を行う。一番の効果は、作品や中立的な立場のファシリテーターを媒介に、同じ病を持つ患者やその介護者、といった問題を共有できる人々との関わりができた。作品を見て対話をすることが、社会への参加となっている。

 

●とびらプロジェクトでの実践
障害のある方のための特別鑑賞会
「アクセシビリティー調査報告書」
・Museum Start あいうえの
のびのびゆったりワークショップ(平成25年度)
ミュージアム・トリップ

» さらに詳しく読む

カレンダー

2017年10月
« 9月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

カテゴリー