東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

ブログ

「パパトコ・ミュージアムトリップ」トライアル実施報告

2017.02.17

週末にご家族でお出かけしようとした時、どこに行きますか?公園、動物園・・・でも美術館は敷居が高いなぁと思われる方もいるかもしれません。この企画は、美術館をパパとこどものお出かけの場所にしてもらおう!子育てをきっかけに大人達にも美術館が身近に楽しめる場所になったらいいな、という思いから始まりました。

 

今回、とびラーでトライアル企画「パパトコ・ミュージアム」を開催しましたので、その様子をお伝えします。今回の企画は、東京都美術館から近い、国立西洋美術館の常設展を親子で鑑賞してもらい、その結果を絵本にまとめるという内容です。とびラーの紹介で、3組のパパとこども達、ママも併せると9人の方々に参加いただきました【こども4人(1才2人、4才、6才)/大人5人】。

 

まずは東京都美術館に集合。とびラーからの挨拶、企画の目的や流れをお話した後、自己紹介タイムです。
そして、国立西洋美術館に行く前の予習として、紙芝居をしました!紙芝居の中では、パパとこどもが国立西洋美術館に行きます。そこで見つけた9つの作品を紹介しながら、とびラーから「絵の中に何を見つけたかな?」「この絵は何に見えるかな?」と問いかけていきます。「桃を見つけた!」「赤い丸は地球?梅干し?」こども達も元気に参加してくれました。紙芝居は、参加者の皆さんにこれから鑑賞する作品を楽しんでもらうきっかけにしていただければと思って作ったものです。

 

 

次に、いよいよ鑑賞です。参加者の方々は、親子3組がそれぞれとびラーと一緒に国立西洋美術館に行き、作品を楽しみました。国立西洋美術館では、紙芝居で紹介された作品を見つけて、駆け寄っていくこどもも。初めて見る作品もたくさんあります。こども達が作品を見てどんな反応をしてくれたでしょうか・・・大人にとって意外な反応もたくさんありました。

 

 

そして鑑賞を終えて、再び東京都美術館に戻ってきました。皆さんそれぞれ一休みしながら感想を話されています。鑑賞後、絵本づくりで使いたい写真を5枚程選んでもらい、メールで送信していただきました。

 

休憩後、パパとこども達で鑑賞を振り返り、絵本づくりを行いました!こども達が作品を見た時の感想も取り入れて、作品や鑑賞時の写真、また一言を書いたアルバム形式の絵本を作成していきます。宗教画を選ぶこどももいます。「この杖がかっこいい!」

 

 

最後に、パパとこどもで作った絵本を、参加者の皆さんの前で発表しました。

 

 

彫刻もありました。困っているのかな、「いい子、いい子」と頭をなでてあげる子も。

 

 

大好きな果物も見つけてくれました。

 

 

皆で行った記念写真も絵本に。

 

 

トライアルを振り返って、参加したパパ達からは、「最初の紙芝居でこども達が作品に興味を持ってくれた」「絵本を親子で話しながら作ることができて良かった」「こどもが作品を見た時の反応が楽しかった」「美術館を親子のお出かけ場所にできるかも」との感想をいただきました。終わった後、参加してくれたこども達が絵本を大切に抱えて、喜んで持って帰ってくれた姿が印象的でした!

今回はトライアルでしたが、参加してくださった方々、本当にありがとうございました!鑑賞の前後に紙芝居と絵本づくりをすることで、パパもこどもも興味を持ってくれたり、鑑賞を親子で楽しむきっかけになったり。企画したとびラーの私達にとっても、パパ達、こども達の思いもよらない作品の見方を教えていただき、また素晴らしい絵本づくりに感動し、楽しい時間となりました。今後も美術館をもっと色々な方々に楽しんでいただけるよう、様々な企画に活かしていければと思います。

 


執筆:松山大美(アート・コミュニケータ(とびラー))
とびらプロジェクトに参加して1年目、多様な方々との出会いに感謝しています!

「見慣れた風景の中に潜む要素を取り上げ、新しい価値を吹き込む」藝大生インタビュー2016|建築科4年・樽澤眞里子さん

2017.02.01

1月、取材のその日は快晴。

総合工房棟のエレベータから降りる。廊下越しに、ふいに…そこはガラス貼りの明るい空間だった。

 

(…うーん…オープンな空気だなぁ。)

ここは卒業制作の中間発表会や、講評会に使われる場所で、今回のインタビューのためにこの場所に発表時の再現をして下さったのだとか。

 

(あ、街のミニチュアだ…)

空から見た風景の中に、明るいグレイ色のうねうねとしたものが横たわっている…。

_MG_5659

「これは日本橋で、首都高速の…」

と明るい声で説明をはじめてくれたのは、今回の取材に応じて下さった建築科の樽澤眞里子さん。

どことなく、ふんわりとしていて、素敵な笑顔の明るいかただ。

 

そうか、これは空想ではなく、現実の場所なんだ…。

よく考えてみると、建築とはひとつの巨大な作品とも言える。

 

ときと場合によっては、ひとつの街や都市といったスケールが作品になるという、とてつもなく大きなもの…。それは動き、人が中に入って生活を営むこともあり、ドラマあるいは出来事と言っても良いのかも知れない。しかもほとんどの場合、現実に形にする時には自分で作るわけにいかず、その指示を設計図や、時にはスケッチというコミュニケーションツールを駆使して、様々な役どころの人たちに伝えなくてはならない。法律や生産技術、流通、いろいろ考慮することが山ほどある。そして出来上がったのちに、時という時代の中でやがて変化してゆく。

_MG_5882

「建築では、実際には作れないものを模型や計画図で説明してゆきます。講評会では自分のイメージしているものや考えていることを、どう表現するかが問われています。教授や専任教員や助手の方たちが出席している中で質疑に受け応えてゆくので、緊張します。」

 

「言葉は限定的なので難しい。…実は、私はプレゼンテーションはあまり得意ではないんです。(笑)」とおっしゃる樽澤さん。だが、なかなかどうして、よどみなく経験に基づく様々な例を挙げながら、とても明るくオープンに楽しく話してくださった。

_MG_5770

『他の人と交わりながら、形づくられる』

「他人からどのような意見が出てきても、このアイデアのほうがいいんじゃないかと言われても、ひるまない。しかしその言葉を尊重し頭から否定することなく、冷静にとらえ、それから自分の主張を述べるようにする」とのこと。

「なかなか、そうはいかない事もありますけどね…」とおっしゃっていた。

ただ、経験豊富な方から、こうしたほうがいいんじゃないか、と助言をいただいた時は、まずやってみることにしているそうだ。いろいろやってみて初めて気づくこともある。それと同時に、自分の考えや解釈を加えてゆく…とのこと。

 

美術の世界とは、物を作る職人のようなもので、そんなに人と関わらなくてもいいのかと思っていた。けれど、実際に大学で制作をはじめてみて、全然そうではなかった、と樽澤さんは笑いながら言う。人に自分の作品について話しをすると、アドバイスをいただいたり、そうしているうちに次のアイデアが出てきたりする。人との関わりがとても大事だと、4年間の中で感じたそうだ。そしてご本人を見ていると、そのような予期せぬ出会いの出来事自体を楽しんでいらっしゃるように感じた。

このような「対話」の積み重ねの経験の中で、磨かれてゆくものもあるのかもしれない。

_MG_5727 _MG_5794 _MG_5857 _MG_5886

『内側から外を見ること』

建築特有のインサイドな視点。自分がもしそこに居たとしたら、周りがいったいどのように見えるのか、という見方。逞しく想像力をはたらかせる。

模型の中で自分を小さくしてゆき、そっとそこに置いてみる…。

そこにいると光はどこから射してくるのか。音はどんなふうに聞こえてくるのか。風は、どのように…。_MG_5790 _MG_5835 _MG_5754

『傾斜・屋根・人の視点・内と外との曖昧』

インタビューに伺う前に、樽澤さんの建築計画を見せていただいていた。そのときに気づいたのだが、「傾斜と人との関係」「屋根とその下の空間と人との関係」「互い違いの傾斜を持つスラブと人間の視点」「室内に入ってくる光、内と外が曖昧な場所もある」・・・など、樽澤さん独自の考え方が、描かれたスケッチにははっきりと表れている。

今回の卒業制作の計画を考える基盤に、この考え方が活きている。卓抜したアングルを探す目。

_MG_5735

「首都高速道路」はただの「壁」といったモノではなく、人と人とをつなぐ関係性の「綱」のようになっている。

_MG_5748

『神輿のようなものが見える…』

例えば、日本橋地区で古くからおこなわれている祭りの賑わいや、人々に担がれる神輿など、日本橋の上と下で人々の視線が行き交う造りになっている。橋の上から下へと臨む劇場空間、道の先がだんだん高くなってゆくスロープ歩道、カフェのようなロビー空間…。有機的に空間がつながってゆく。

_MG_5773 _MG_5771 _MG_5775

もともとこの首都高速道路のカタチには特別な事情があるとのこと。日本橋の川は徳川幕府によって恣意的に「への字」に曲げて作られたもので、首都高速はその日本橋川に沿って建てられたという、歴史的な意味合いをカタチにしたともいえるそうだ。

_MG_5901

躯体コンクリートの床の上には、カーペットが敷かれて、ソファといったもので構成された空間に…と樽澤さんは大胆な発想で計画している。人と人を繋ぐ、居場所のような、人間スケールの空間を創り出す方法を考えているのかも知れない。

_MG_5833

『原風景』

建築への入り口はさまざまで、芸術大学や美術系大学の建築専攻と、工学系大学と建築分野では、どこが違うのだろうか。そんな漠然とした問いを、樽澤さんに問いかけてみた。

 

子供のころは幼稚園も小学校も家からは遠く離れていて、近所の子と遊ぶというよりは、自分の家とその周りはすべて庭であり、そこでいろいろな想像をしながら、遊ぶのが常だったという。小さい時から、自分の家を自分で設計して作るのが夢で、その過程に今はあるとのこと。これは樽澤さんの原風景であり原初体験とも言えるのでは…。

 

そして、美術系の建築と工学系のそれとの違いは、たぶん最終形はあまり変わらないかも知れないが、最初にイメージするものが違うのではないか、とおっしゃっていた。

_MG_5700

「考えるときにまず『風景』というものをかんがえます。人はそこにいてどういう状況になるのか…。スケッチブックに図やダイヤグラムのようなもの、人のいる風景を描き、そこからサイズやスケールを考えたりし、スケッチや模型を何度も繰り返しながら進めてゆきます。」という。

これは、完成形としての精緻な模型ではなく、考えたり、確認したりするための実験ということだろう。理想あるいは考えていることと現実との落差もここでわかるのだろう。ああ膨大な作業だ…。

 

「水彩でスケッチを描くこともありますが、リアルにならないので、理想形でしかないような状態になりやすいんです。」

別の機会に樽澤さんの水彩画を拝見したことがあるが、何をやりたいのかが建築のスケッチとしてシンプルにはっきりとわかる。目指している方向や「風景」がすっきりわかる。図面や模型は情報量が多すぎて、時には言いたいことが伝わりにくく隠れてしまうことが多いと思う。

_MG_5720 _MG_5683 _MG_5805

…いろいろなお話を伺っているうちに、樽澤さんの考えている建築への考え方や風景周辺に対する理想のことなどが、何となく少しわかってきたような気がする。

_MG_5766 _MG_5793

そして、樽澤さんは、ご自分の卒業制作についてこのような言葉を書いている。

 

『…都市の間を縫うように創られた空中の道路

既存のインフラの躯体の中に人間スケールの空間を見つけ出し

減築または増幅させた中でプログラムを挿入する。

首都高速の自在な曲線に着目

首都高速が『壁』のように地域を分断するものから『居場所』のように

人と人とを繋ぐものへと変化させるため、空間を創造したい。

かつての記憶をつぶすことなく再構築しつつもその気配を大切に

そして新しい機能を潜入させていく。

普段見慣れた風景に中に潜む要素を取り上げ、その中の一つである高速道路を

舞台に日常の豊かな風景を周囲から引き込み

新しい価値として再発見させる。…』(一部抜粋)

 

 

『これからのこと』

卒業した後、この春から藝大の大学院で東洋建築の分野に身を置くことになっていて、そこで日本庭園の研究をする予定だそうだ。なるほどそう言えば、樽澤さんの以前の計画案で、東京愛宕山の地区設計の計画があり、その中で、廻遊式庭園の見え隠れする景観の計画のことに触れていて、その場合の植栽と建物が見事に「不等辺三角形」の配置となっていて庭園風景を造ることに言及されていた。まさにこのことと繋がっているように感じた。

_MG_5738

 

樽澤さんの大学院での研究、そしてそこでの経験からの気付きについて、ぜひまたお話を伺いたいと思う。

 

樽澤さんのような建築の方の活躍の場がますます拡がり、新たなものを造るだけではなく、いまある資源や価値を掘り起こし、再発見する。そしてこの地球という星を考え計画することで、世界にさまざまな夢を繰り広げてゆくのだろう。そのような夢を見ているのは私だけではないと思う。近い将来そんな日がやってくることを期待している。_MG_5888

 

インタビュー・執筆:園田俊二(アート・コミュニケータ「とびラー」)

撮影:峰岸優香(とびらプロジェクト アシスタント)

園田さん写真

園田 俊二(そのだ しゅんじ)

空間計画・建築や場作りに関して、調査から企画・製作・フィードバック・教育など一貫してモノを作るために必要なことをやっていました。これをベースに現在は新たなワークの実験を開始するために… 創造性のトビラを開く…を合言葉に準備中。

 

 

「地の下から湧きあがるかたち」 藝大生インタビュー2016|大学院修士2年 彫刻科 鈴木弦人さん

2017.01.27

11月中旬 秋晴れで空がどこまでも高くつきぬける中、

僕は東京藝術大学 上野キャンパスにいました。

うっそうと生い茂った木々。

時々聞こえる何かを叩くような音。

そこは大学というより、初めて訪れる町のような感覚でした。写真1

インタビューを依頼したのは、鈴木弦人さん。

東京藝術大学 大学院 彫刻科に在籍され

現在は卒業制作に打ち込んでいるとのことで

お話を伺いに来ました。

 

待ち合わせの場所に到着し、

鈴木さんらしき人を探します。

すると、10メートル先にある大きな工場のようなところから

背の高く、それでいてがっしりとした男性が出てきました。

 

もしかして!と思い 「鈴木さんですか?」と尋ねると

「はい。」との返事が。

黒いパーカーに、ところどころシミがついた黒いズボン。大きく丈夫そうで存在感のあるブーツ。首にかけた黒いタオル。目を凝らしてパーカーを見ると、左胸部分にミッキーマウスのデザイン。

それは、自分が想像していた、いわゆる「街中のアパレルで揃えたかのような学生の服装」というよりも

まるで職人が 自身の作業に打ち込む際に 無駄なく、作業に没頭できるように動くことのできるような佇まいでした。

写真2

鈴木さんが出てきた工場の入り口には広いスペースがあり、

そこに堂々と立っていた 見たこともない植物のような、金属製の2~3メートルあるオブジェこそが

鈴木さんが、大学院生活の最後の制作物として取り組んでいる作品でした。

写真3

とにかく、大きい。

まるでCG映画のワンシーンを一時停止したかのような光景。

全体は銀色で、枝のように伸びている部分に顔を近づけると、鏡のように反射して映るボディ。

「素材はアルミ金属を使って、制作物をつくっています。完成までもう少し大きくなるかな。一度に大きくはつくれないので、それぞれの部分を繋ぎ合わせて一つの大きな形にしていっていますね。

写真4

この独特な造形は“間欠泉”がイメージの元になっているとのこと。

土の下から湧き出てくる、熱くて激しいエネルギーが

上にむかって立ちのぼる様子を想像しながら制作しているそうです。

写真5

東京藝術大学 彫刻科に入学して、最初の2年間は木彫・石彫り・金属など様々な方面から彫刻を体験された鈴木さん。その中でも一番“金属が楽しい”と感じたそう。

 

「木材や石を使う彫刻制作は、一番最初に決めた通りに制作を進める必要があるんです。けれど金属は、進めていく途中で『あ、やっぱりここはこうしてみたいな』と思った部分に手を加えることができて、そこが面白いなって。」

 

素材に手を加える点では同じでも、木材や石を彫ることはいわばマイナスの作業。しかし金属は溶接を通してかたちを変えることもできるプラスの作業でもあるんですね。

写真6

「大きな材料がなくても、今ある小さな素材を繋ぎ合わせることができるんです。この作品も、近くに落ちているアルミの破片をくっつけて作っている点が何か所もあるんですよ。」

写真7

 

写真8

作品の傍に、鈴木さんの名前である“弦人”と大きく書かれた道具を発見。これは、なんですか?

「これですか、これはバッファーという道具ですね。」

 

写真9

23年間の人生で初めて出会う未知の道具。いったいどのような使い方をするのでしょう。

 

「素材のツヤを出す時に使います。布のようなものが付いた先端部分が回転して、触れた部分を高速で磨き上げる感じですね。ちょっと実際にやってみましょうか」

写真10

写真11

電源を入れると、さっきまで静かだったバッファーの先端部分が威勢よく動き出しました!

写真12

キューーンという音をあげて大回転!なかなかの迫力です。アルミの部分に当てると…??

写真13

お分かりいただけるでしょうか。写真中央のバッファーを当てた箇所が

まるで納車したての車の如くピカピカに輝いております。

ちなみに、そっとあてただけでかなりの効果でした。思わず自分も大興奮。

 

「最終的には、作品のすべての部分にバッファーを当てて、光沢を出せればなって考えてます。なので卒展に展示する頃には、今より見たときの印象もだいぶ変わるんじゃないですかね。」

 

バッファーの他にも、アルミ部分を叩いて表面の質感を変える(手作りの)金槌や、溶接作業の際に出る火花から守ってくれる革の手袋など

まさに「仕事道具」とも呼ぶにふさわしい 使い古されているのに何故か品性すらも感じさせる道具が多くありました。

 

写真14

写真15

「たまに、作品の傍で見に来てくれた方と話す機会があるんですけれど

作品について、自分の口から伝えたいことはあまり多くなくて。

でも、この金属を叩くのに使った金槌、こんなに重たいんですよって

道具の話は伝えたくなっちゃいますね。」

 

それにしても大きな造形物を製作されている鈴木さん。

“いったいいくら費用がかかるんだろう?”

素朴に思ったこの疑問にも、鈴木さんは優しく答えてくれました。

自身で材料を全て調達するので、素材の値段によって比例していくそう。

 

「ただ、作るだけじゃなくて、必要以上にお金をかけなくても制作はすることができるんだなって。他の仲間が作った作品よりも 費用を抑えて作ることができたら、個人的にはちょっと達成感を感じますね」

写真16

 

東京藝術大学に進学されたきっかけをお聞きすると

中学生の頃には既に”日本画”に興味を持っていたとのこと。

 

「当時好きだった漫画家さんが、美大の日本画科出身だったんです。それで興味を持って高校でも絵を描いたりしたんですけれど 絵を描いた後に絵の具が乾くのが待てなくって。『性格的にも向いてないのかも』とか思いつつ、デッサン等に取り組んでいました。」

 

浪人生活を経て、見事東京藝術大学に進学された後は、木彫や金属など様々な表現に触れ、

休みのときは取手キャンパスの草原を仲間とただひたすら走り回るなど

まさに柑橘色の学生生活を過ごした鈴木さんの原点は

尊敬するアーティストの方によるものでした。

写真17 写真18

1時間ほどお話を伺ってる最中も、常にどこかから色々な音や人の声が聞こえてきた東京藝術大学。夕焼け時間も相まって、思わず自分の大学祭前日の光景とシンクロしたかのような感覚になりました。

最後に、この作品は卒展で展示された後どうされるのかをお聞きしました。

 

「実は、今まで制作してきた作品はほぼ手元には残ってないんです。」

 

えっ!?なんとも意外な答え。制作し終わった作品はどうしてるんですか?

 

 

「もう大体壊しちゃってますね。飽き性なんですかね。目の前の作品を制作している最中でも、頭の中では次はもっと違うのつくろうかな~とか考えちゃってたりもして。ずっと形に残し続けることにこだわりはあまりないんです。」

 

成程。形に残すことよりも、作品と向き合っている瞬間が作り手として大切な時間なのかと、納得しました。

 

「でも、これはとっとこうかなと思います。これからはなるべく残していけたらな~って。最後だし、一応なんですけれど。」

 

写真19

自身が打ち込んできたことを、集大成として形にする体験を

人は生きているうちに何度行うことができるのでしょうか。

 

“卒業”という言葉を聞くと、少し感傷的に感じたりすることもありますが

鈴木さんの、少しクールに聞こえる言葉や、道具を手に取る姿を見ると

いつも通り、ただ、真っ直ぐ作品と向き合い

制作の日々を過ごされているように感じました。

 

秋晴れの透き通った空気の中

鈴木さんが丹精をこめてつくった彫刻は、

まるで天に向かって立ちのぼるかのように

その動きを携えて、今か今かと完成を待っています。

 

この滑らかなかたちが、余すことなく光りかがやくとき。

初春のころ、僕はまた新しい気持ちで

この作品と向き合うことになるのでしょうか。

 

執筆:三木星悟(アート・コミュニケータ「とびラー」)

 

「アイディアを考え続けること、誰かに伝えること〜スーツ生地の可能性をひらく」藝大生インタビュー2016|デザイン科修士2年・竹之内洋平さん《RE SUIT》

2016.12.16

 

★藝大生インタビュー
「第65回東京藝術大学卒業・修了制作展」に向けて制作に励む藝大生をとびラーが訪ね、作品が創出される現場を取材しています。
____
「グラフィックが好き」という言葉からはポスターなど平面で紙媒体の作品を作っている方なのかな、と想像されるかもしれません。ですが、竹之内さんは木や車、布などの様々なマテリアルを使い、平面から立体まで多くの作品を制作されています。
在学中に広告賞など様々な賞を受賞するなかで「自分が良いと思ったもの」と「実際に評価されるもの」の違いを受けとめ、常にアイディアを考え続けている姿勢が印象的な方でした。デザインに対する想いにしっかりと芯が通っており、情熱を感じるお話を伺ってきました。

 

■卒展の作品について
藝大内にあるアトリエに伺ってまず、竹之内さんが卒展に出展される作品をみせていただきました。デザイン科の方なので、作品が平面なのか、立体なのか、全く想像が付いていなかったのですが、現れたのはなんと家具でした(それも複数)!

_mg_3967
「普段はグラフィックでやっていることを、布に応用しました。全てスーツの生地で、全部20年ほど前の古いものです。本来なら古すぎて捨てられてしまうような、製品にはならない物なんですけど。ほとんどウール100%で、元々質が良いものなので、ちゃんと保管しておけば状態の良いものがいっぱいあるんです。プリントは全てシルクスクリーンを使っています。強いメッセージを込めたい為に、直接的なデザインになっています。
作品名は「RE SUIT」で、「RE」はリターンやリサイクルなどの「再生」の意味。スーツの生地を、スーツではない違うものにして生まれ変わらせることができるんじゃないか、スーツの生地の可能性を更に広めるられるんじゃないかと考えました。」

–生地はどこで手に入れたのですか?
「実は実家がスーツのお店で、そこで捨てられずにずっと取っておかれていた物です。この布に出会ってから、この作品を作ろうと思いました。布を使った作品を今までにもいくつか作っていて、扱いには結構慣れています。自分はスーツはあまり着ないけど、実家がそういうことをやっているから、自分の中では身近な、遠くない存在です。普通の布ではなく『スーツの布』というのがポイント。」

–(グラフィックの中で)インクが垂れているように表現されているのは?
「グラフィティっぽくしたくて。ストリートの落書きみたいな自由な発想・表現というのをこのグラフィックに込めています。手書きっぽくてペンキが垂れているような。スーツの生地を、スーツではない色んなものに置き換えられるような自由な発想、というのを表現しています。(本格的な生地のスーツには)手が届かないよ若い年代の人でも、マガジンラックやサイドテーブルなどに再利用されたものだったりすると身近に感じられるんじゃないかな、という思いもあります。」

_mg_3981
–制作期間はどれくらいですか?
「そんなに長くないかも。(プリントを)刷るのは結構大変で、家でひたすらやっていました。刷ってしまえば組み立てるだけなので、そんなに時間はかかってないです。縫製も自分で。サクサク進みました。」

–家具の作り方は自己流ですか?
「自己流です。木材を切るのは学校でやりました。木を扱うのは慣れていますが、ソファを作るのは初めてだったので、作り方をめちゃくちゃ調べて。でも自分でやれることには限界があるので、どういう風に工夫すればできるのかをすごく考えました。今回の作品は初めてのことづくしです。実用性に耐えられるかどうかまでは計算してはいませんが、多分大丈夫でしょう(笑)。家具としてのデザインも自分がいいと思えるものにしました。」

–布にも色々な柄や色が入っていて、プリントに使われている色も様々ですが、組み合わせは最初からしっかり決めていたのですか?
「やりながらですね。生地の色や柄を見て、自分の中で感覚的に決めています。他の作品ではすごく考えて慎重に決める時もあれば、直感的にパッと決める時もあり、それはバランスを見て考えている所です。」

–家具に使用している木材も異なる種類を使用されていますが、それも意識してのことですか?
「そうですね、統一感の部分は布で出せばいいので。ソファは家具としては新しく見えるけれど、他のものに使用する木は少し古く見えるものにしたり、意識して使っています。」

–実際に展示される際は、空間を作るというイメージですか?
「全体でどう見えるかという感じを大切にしています。(生地やプリントの)色が様々なので、いい意味でまとまりがあるようにする。ただ、ありすぎると微妙。置き方次第で伝わり方が変わるので、悩みどころです。
他には小物も作っていて、カード入れ、ブックカバーなど、自分がいいと思えて、他の人にも使ってもらえるものも作りたい。使う人をイメージしたりもします。どういう人が使うかと考えると、作るものも変わってきたりして、ポップなんだけどお年寄りの人が使ったら面白いかなとか考えたり。これ(小物の作品)はほんの一部だけど、色のイメージで自分の中で分けていて、ピンクなら女の人かなとか。色からのイメージは結構強いです。」

_mg_3984
「今は家具の印象が強いけれど、もっと他のものに置き換えたくて。展示までには家具だけじゃなくて、イメージがもっと離れていって欲しいので、色々作ろうと今考えています。スーツは作らないですけど(笑)、洋服以外の何かに。当日のお楽しみということにしておきます。
家具は展示が終わったら自分で使おうかなって。自分だったらどれくらいの大きさが欲しいかなって考えてサイズを決めました。欲しいっていう人が現れたら、それはその時で考えます。」

–今回の作品は親御さんのお仕事がきっかけなので、喜ばれたのでは?
「そうですね、どうなったのってすごい聞かれます。」

–卒展当日は、来た方に直接説明されるんですか?
「はい。学部4年生の卒展の時も色んな方が来てくれて、話すのが結構楽しかったので、なるべくその場に居るようにします。」

 

■制作について
《RE SUIT》の様に家具やグラフィック、小物などを制作することもあれば、車を使った鑑賞者巻き込み型の展示をされたり、また企業のプロダクトを課題にしたポスターデザインで賞を受賞されていたりと、表現の幅がとても広い印象があります。制作していく上での竹之内さんの考えやその背景について、もう少し詳しく伺ってみました。

–今回の《RE SUIT》の様に作品に自由さを感じさせるというのは、竹之内さんの制作のテーマだったりする?
「う~ん、毎回結構やることは変わるのでいつもこういう感じというわけではなく。結構派手な作品もあったり、かっちりしたものを壊すようなものもあります。」

–一つのテーマが自分の中にあって、それを作品に投影して、伝えたいことを伝える、という一連の流れが他の作品にも共通している?

「そうですね、並べて自分の作品を見るとまとまりの無いように感じるけど…例えば布、車、紙など。でも自分の中では軸を持っていて、伝えたいことを伝えるためのアウトプットになっています。」

–2016年の藝祭に出展されたワゴン車を使用した作品「JOURNEY」のインタビュー内で、美術以外のこともやりたいとおっしゃっていましたが、今何か考えていることはありますか?
「やりたいことはいっぱいあって、どういうものにしたら自分が考えていることが一番伝わるのかをいつも考えていて、作品ごとにやっていることが様々でした。ワゴンも(共同制作者と)二人で色んなことをやりたいねと言っていました。今でもワゴンの展開は考えているけど、ストップしてしまっています。置き場所などの問題もあって難しいです。」

–今までに様々な賞(第31回読売広告大賞、JAGDA学生グランプリ2015、第62回朝日広告賞など)を受賞されていますが、それらの様に課題を与えられてそこから考えるのと、先程のお話にあった様に伝えたいことがあって、そのために考えるのとどちらが得意ですか?
「自分が好きなのはアイディアの部分で、アイディアから考えるのが好きです。ものを作るのが好きだけど、それよりも何か新しいアイディアとか、面白いことを考えるのが好きです。そのためにすごく考えます。ひたすら考えて、何個も何個も考えて…やれないこともいっぱいあるし、時間との戦いだったりもします。自分は広告が好きで、来年の4月から広告デザイナーの仕事に就職が決まっているんです。広告は伝えたいことがひとつバーンとあって、ストレートかつシンプルに、面白く伝えるみたいなアイディアがとても好きで。自分の作品でもそういった要素が共通しています。」

_mg_3964

–色々な人と組んで制作されたり展示されたりしていますが、一人でやるのと誰かと一緒にやるのとでは全然違いますか?
「違いますね。単純に意見が食い違うこともあるしなかなか合わない。特に芸大生とだと、みんな結構我が強いので(笑)。ただデザイン科だと、課題はグループワークが多いです。自分だけの作品は自主制作のものが多かった。」

–自分だけで作りたいという欲求はある?
「あります、あります。」

–今まで色々な作品を作られてきた中でも一番好きなもの、思入れのある作品は?
「そうですね・・・(しばらく考える)難しいですね。選べないかも。」

–今まで、数で言うとどれくらいの作品を制作されてきましたか?
「中途半端に終わったものも沢山あるし、数えられないけど、自分の中で満足して「いいな」と思って作れたものは少ないかも。その時は満足しても、後からやっぱり違うと思うこともめちゃくちゃあります。人に見せる機会も多いので、そこで色々言われて、自分の中でいいなと思っていたことが伝わっていなかったり、もっとこうしたほうがいいんじゃないと言われることもあるし。」

–竹之内さんの生活の中心は制作?
「そう言いたいですね(笑)。多分そうです。常に考えている、と言いたいです(笑)。」

–じゃあ、趣味はありますか?
「難しいですねー。多分全部(制作に)繋がってきているし、大体作っているし、制作と趣味の境目はあんまりないかも知れません。」

–《JOUNEY》で使用したワゴン車《MEDIA WAGON CAMEL》で音楽と結びつけたワークショップをされていましたが、音楽は好きですか?
「好きです。ワゴンをやっている時はいろんな出会いがあって、学校の敷地内で作品のために車を改造していたらたまたま建築の人たち(建築科の学生)に声をかけられて、こういうイベントあるんだけど一緒にやらない?となり。じゃあ建築の人達と一緒にやるときに自分たちは何をやればいいんだろうってなって、そこでまた音楽の人たちと出会いがありました。『車と音楽を掛け合わせて何かやりたいんだけど』っていう感じで色んな人との出会いがあって楽しかったです。
普段聴く音楽は色々。いい意味でも悪い意味でも自分は飽き性なんで、一つのアーティストのファン、ということはあまりないんです。アーティストのライブに行くというよりは、フェスに行っていろんな人たちの歌を聴きたいという感じなんで、オールジャンルです。」

–影響を受けた人や作品などはありますか?
「影響を受けた人は本当にいっぱいいます。この人が好き、とかそういう感覚じゃなくて、『この人のこういう作品が好き』とうかんじが強い。一人の人が作っているその全てが好き、というわけじゃなくて、作品と人とは別に捉えているんですよね。」

–美術館には行きますか?
「結構行きます。デザインの展覧会とかには行くようにしています。グラフィックデザイナーの展覧会が中心ですね。ポスターの展示とか、そういうのが好きです。」

–周りにも制作をしている学生が沢山いる環境ですが、ライバル意識はある?
「そこまでないかも」

–昔からデザインが、その中でもグラフィックが好きということですが、グラフィックに本格的に進んだきっかけなどはありましたか?
「自然とそうなっていきました。学部の1年生ぐらいは色んなことを自由にやっていたんですけど、3年生ぐらいから本格的に取り組むようになりました。コンペも積極的に出すようになり、何作品も出しました。面白いのが、自分の中では『微妙だな』と思うのが賞を取ったり、イチ推しで『面白い!』と思っていたのが落ちたり、色々出品するなかでわかってきて。自分でも客観的に見たいという気持ちはあるんですが、それもなかなかうまくいってないなと思ったりしました。」

–自分の中で気合が入った作品が選ばれなかったらやっぱりショック?
「悔しいですね。一つ一つ思い入れがあるので。」

–グラフィックの作品だと、『ここが完成』というのは自分の中でしかわからないものだと思うのですが。
「グラフィックは、出来上がっても何日か置いてまた見るようにしています。次の日まで時間をおくだけでも変わって見えるので、そこは出来るだけ冷静に見るように意識しています。」

–誰かの意見を聞いたりしますか?
「聞かないですね。自分の中で突き詰めます。」

–作っていてどういう瞬間が楽しかったり、盛り上がりますか?
「やっぱり最終的にできた時ですね。今回の家具の作品だと、形になった時ですね。」

–自分が制作を始めてから今に至るまで、変化はありましたか?今まで話を聞いた印象ではあまりブレは無さそうですけれど。
「でも、ありますよ。出来上がって、違うなと思う時とか。家に(RE SUITシリーズの)椅子と机があるんですけど、これはダメだなと思って。あれは出さないです。形になってからじゃないとわからないことってありますね。単体で見たらよくても、他のものと並べてみてやっぱり違うな、と思ったり。」

_mg_3982

–学部4年生の卒展ではどんな作品を制作されたのですか?
「今回とは全然違うもので、大きい壁を作ってスピーカーを30個ぐらい埋め込み、そこに映像を投影しながら音を出すというインスタレーションの作品を作りました。」

–一つのことにこだわりがあるというよりは、色々やりたい?
「そうですね」

–見に来られる方とお話しするのが楽しいということですが、《MEDIA WAGON CAMEL》の時みたいに、『見にくる人も巻き込んで一つの作品になる』のは今後もやってみたい?
「やってみたいです。本当は何も説明しないでも全てが伝われば、一番いいんですけど。それをもっとわからない人に伝えたりとか、その人の新鮮な意見を聞きたいとか、色々思います。単純に褒めてもらえると嬉しかったり、自分では思っていなかった事を全然違うような視点から言ってもらえたり。学部4年生の時の作品で、渋谷の映像を流してた時に、自分は若い世代としての視点で流していたんですけど、観に来ていたおじいさんがそれに共感してくれたりして、全然違う年代でも同じようにいいと思えるんだとか、自分では思いもよらないような意見が聞けて、すごく良かったと思いました。」

–そういう意見は作品作りに生かされていますか?
「そうですね、なるべく忘れないようにしたいです。」

 

■藝大を目指すまでのこと、藝大生になってからのこと
ご存知の方も多いと思いますが、藝大への入学は狭き門。竹之内さんがデザインを本格的に学ぼうと藝大を受験するまでに至ったきっかけや子どもの頃のエピソード、そして藝大入学後の学生生活のことなども伺いました。藝大を目指している方にとっては気付きがあるお話かもしれません。

–小さい頃は絵を描くのが好きだったということですが。
「図工の時間が好きでした。一番好きでした。絵だけじゃなく、粘土や工作など、全般的に好きでした」
–小さい頃から身近に服を作っている環境があって、それが自分の道につながっていますか?
「小さい頃からミシンを触っていて、自分で服を作ったりしてました。そう考えると人よりも布を触っていたのかなって。身近にあったので。《RE SUIT》の縫製も全部自分でやりました。」

–でも、ファッションじゃなくて色々できるデザインの方に進んだということですよね。
「そうですね」

–それを『仕事にできるかも』と思ったことや、藝大受験に至ったきっかけはありますか?
「高校は私立の進学校に通っていて、その流れのままだと受験して大学に行くんだろうなと思っっていました。けれど、自分の将来を見つめ直したときに、『好きなことやりたいな』と考えて、色々調べて、近くに美大の予備校があったのでそこに入りました。両親の反対はありませんでした。母親も美術系で油絵を描いたりしていて。なので、結構協力的で、応援してくれました。直接的な理由では無いかもしれないけど、絵を描くのが好きだから、試験で絵を描くことは嫌いじゃなく楽しめるかなとも思いました。藝大を目指すきっかけは、デザインがすごく好きで。例えばファッションにしても、服だけではなく、ランウェイの空間もデザインだし、とにかくいろんなデザインが気になって。それでデザインを学びたいなとなったんですけど、他の大学だとグラフィックデザイン科とかプロダクトデザイン科とか、入り口でもう分けられちゃうんです。受験するときに自分の中でまだ絞れてなくて、『入った後に選択肢があるよ』と藝大の先輩に言われたので、それで藝大に行こうと思いました。」

–作品をご両親に見せることは?
「しますね、展覧会にも来てくれるので。」

–学生時代の思い出はありますか?
「思い出ですか?思い出はー、(悩むそぶりを見せて)辛かったのは就活。めちゃくちゃ大変でした。広告業界を志望したので、作品をいっぱい作って、納得できないものもいっぱい作ったし、とにかく難しかったです。ポートフォリオをまとめて、実際に選考の場に作品を持っていってセッティングする、ということを受けた社数だけやりました。バンを借りて、手伝ってくれる人も呼んで。今は終わってホッとしています。4月からはすごく楽しみ。もう全部楽しみです。」

–大学院に進もうと思ったのは、もっとデザインについてご自身の中で深めたかったからですか?
「そうですね、学部の時はその時なりに精一杯やっていたんですけど、いざ卒業が見えてきた時に、まだまだだなと。ここでもうちょっと自由に楽しくやりたいなと思いまして。大学院の2年間もあっという間だったんですけど。可能であればまだまだやりたいことも沢山あるけど、でも来年(広告デザイナーのお仕事)もすごく楽しみです。」

–学生生活で楽しかったことはありますか?
「大学院に入ってから、学部の頃よりも自由にできることが多くて、課題が少ない分自主制作に力が入ったので、そこはすごくよかったかなと。あと、大学院に外の大学から来る人もいて、その出会いも楽しかったです。」

_mg_3979

卒展の作品「RE SUIT」を含め、今までに発表されている竹之内さんの作品を見ると、一人のアーティストが作ったことに気付く人は少ないかもしれません。そのくらい表現の幅が広く、ご本人も色々なことに興味を持ち、何よりも竹之内さんが「やってみたい」意欲に溢れている人だということが今回のお話から感じられました。来年4月からは広告デザイナーとしての作品を、どこかで見かける機会があるかも知れません。
インタビューの中でもあるように、卒展ではできるだけ見に来られた方と直接お話ししたいとのことだったので、ぜひ竹之内さんの作品を見て、お話してみてください。写真にある作品はまだまだ一部とのことなので、当日どんな展示になるのかとても楽しみです。

執筆:鈴木清子(アート・コミュニケータ「とびラー」)


★あなたもアートを介したソーシャルデザインプロジェクトに参加しませんか?
「第6期とびラー募集」
banner_b2017L

第7回鑑賞実践講座:<見てきたこと・実践してきたことからふりかえる>

2016.12.12

2016.12.12(月)
<見てきたこと・実践したことからふりかえる>

img_5661

=============
13:30〜17:30
■外部プログラム見学のふりかえり
・外部プログラムに参加した人からのシェア
・♡良かった点(とびらプロジェクトに活かせそうなこと)と△悪かった点(もやもやしたこと・疑問に思ったこと)をグループごとにまとめて、シェア

■三ツ木さんによるレクチャー:VTSの基本を見つめ直そう
・映像観察(小学生の例)
・レクチャー①:ファシリテーションをプラスアップさせるための2つのキーワード
<コンディショナル・ランゲージとフレーミング>
・映像観察(ウェズリー美術館:大学生の例)
・レクチャー②:ファシリテーションをプラスアップさせるための2つのキーワード
<メタ認知とコビト論>
・映像観察(幼稚園の例)
=============

 

■前半:それぞれが参加してきた外部プログラム見学のシェア
img_5646

img_5651

img_5652

・グループごとに「良かった点(とびらプロジェクトに活かせそうなこと)と悪かった点(もやもやしたこと・疑問に思ったこと)をまとめるワーク
img_5658

その後、全体でポイントを共有しました。

上がったキーワードは以下の通り。

 

<導入部分について>
アイスブレイクが効果的だった!
はじまるまでの時間や環境を活かした世間話や自己紹介を実施
名札の活用(名前を覚えられていたのが嬉しかった)
どんな質問がいいのか?(プライベートな内容は避けた方が良いケースがある)
名札は万能ではないのでは?(プログラムの性質によって使い分けが必要)

 

<チーム分けについて>
多様なメンバーだと、対話が活性化された
仲良し同士が一緒だと、そこだけで盛り上がってしまっていた。

 

<ファシリテーションについて>
ファシリテーターも多様だと鑑賞が豊かになった
鑑賞者からの気づきによって上手にキャプションの情報を伝えていた
サポートとの連携がチームで良くできていた(事前準備がしっかりできている)

 

<その他・場のデザインについて>
今までの発言が言葉になっている仕掛け→一人で行っても対話が楽しめる
集合場所がわかりにくい。事前案内などちょっとした配慮、もてなしの気持ちが伝わるかが大事。

 

 

■後半:三ツ木紀英さんによるレクチャー

3つの映像を見ながら、VTSファシリテーションの基本やプラスアップのためのアイディアについて考察しました。
img_5673

img_5678

 

鈴木智香子 (東京藝術大学 美術学部特任助手)

【あいうえの連携】冬のあいうえのスペシャル

2016.12.11

今年度さいごのMuseum Start あいうえののメンバー向けプログラム「あいうえのスペシャル」が、東京都美術館のアートスタディルームを舞台に開催されました。

_mg_4375

年に3回開催される「あいうえのスペシャル」は、「Museum Start あいうえの」のプログラムのなかでも、過去のプログラムに参加したこどもや保護者を対象とするもので、ミュージアムをめぐるための拠点としてアートスタ ディルームを活用しながら、その場に居合わせたあいうえのメンバーやとびラー(アート・コミュニケータ)がともに活動する特別な一日プログラムです。

 

第3回目の「あいうえのスペシャル」は、12月11日に開催されました。総勢282名の参加者を迎え、過去最大規模で行なわれた今回のプログラムでは、 ミュージアムでの鑑賞体験をかきこむことのできる「ビビハドトカダブック」を用いた活動のほか、東京都美術館で開催中の「ゴッホとゴーギャン展」の作品の 色づくりから生まれるオリジナルバッジの作成など、多彩な活動をおこないました。

 

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

アクセス実践講座⑦

2016.11.27

11月27日に年内最後のアクセス実践講座を行いました。

前回(10/9)の講座では、年間課題を取り組んでいくためにグループごとに分かれて企画書をつくるワークを行いました。
年間課題に取り組んでいってもらうために、今回の講座では舘野泰一さんの「ワークショップ・メイキング」に関するレクチャーの復習と、企画書をつくるためのプロセスを順序立てて考えるワークを行いました。
まずは、とびらプロジェクトマネージャの伊藤達矢さんと一緒に舘野さんのレクチャーを振り返ります。

_mg_3805 _mg_3809_mg_3850

 

続いて、グループごとに年間課題に取り組むワークに入っていきます。

この日は、企画書の構造を考えるにあたってツール(ワークシート)を用意しました。

このワークシートは5枚で構成されていて、
「ワークショップを通じて伝えたいことは?」「募集する対象者を具体的にイメージする」「ワークショップの内容を決める」「場を設定する」「企画の通し方をつかむ」というフレーズが書かれているものです。この一連の流れに沿って企画を考えていくと、舘野泰一さんのレクチャーが活かされている企画書を作成できる、というものです。とびらプロジェクトでは、アクセス実践講座に限らず全ての講座でこうしたツールを随時開発していて、とびラーがより深い学びを経験できるようにしています。
_mg_3812

_mg_3814 _mg_3816 _mg_3819 _mg_3825 _mg_3828 _mg_3834

 

企画書のブラシュアップをした後は、前回同様にワールドカフェ形式で、他のグループの取り組みを聞きます。
付箋にコメントバックをして、その場で出されたコメントを随時整理しながら進めていきます。

_mg_3836 _mg_3848

この講座を終えた後はいよいよ企画書の提出です。
どんな対象者を設定して、その人たちのために有効なアプローチをとびラーたちが考えます。提案された企画が全て実現するわけではありませんが、内容によってはトライアル実施されるものもあります。一般公開する企画ではありませんが、トライアル実施されたものについては、またブログをご報告していきます。

_mg_3853

執筆:奥村圭二郎(東京藝術大学美術学部特任研究員)

【開催報告】「アート筆談de対話鑑賞」耳の聞こえない人⇔聞こえる人 /ゴッホとゴーギャン展

2016.11.26

「アート筆談de対話鑑賞」耳の聞こえない人⇔聞こえる人 /ゴッホとゴーギャン展
【日時】11月26日(土)13:30~16:00
【会場】東京都美術館 ゴッホとゴーギャン展、アートスタディルーム

****************************************

耳の聞こえない人と聞こえる人が、一緒に作品を見て鑑賞したら、どんな対話が生まれるのでしょう。
今回は、「アート筆談」という、いつもとちょっと違う方法を使って対話鑑賞を実施しました。さてさて・・・どんな世界が広がったのでしょうか?

 

_mg_4692

まずは、「初めまして」の自己紹介。
アイスブレイクのお題は「ゴッホと言えば何?」
東京都美術館にいつも設置している磁気ボード「とびらボード」を使って伝え合いました。
そのあとは「ゴッホとゴーギャン展」の展示室へ。
生憎この日は混んでいたため、各自でグループの「共通の作品」を鑑賞し、またそれぞれ「気になった作品」を選んでもらいました。
鑑賞後は再びアートスタディルームへ。
いよいよメインワークの「アート筆談」が始まります。

_mg_4711

_mg_4772最初は戸惑いながら、でもだんだん慣れてきて、さまざまな画材を使っての対話が繰り広がっていきました。
聞こえない人が聞こえる人に手話を教えたり、ジェスチャーを使ったりとさまざまなコミュニケーションを交えて対話はどんどん盛り上がっていきました。

_mg_4720

_mg_4768

すごいと思ったのは、アート筆談は普通の言葉の会話より、「作品のどこからそれを感じたのか?」「どんなイメージが浮かんだのか?」視覚的に一目瞭然に捉える事ができます。
また、参加者が個々に描く絵や文字から「その人らしさ」が見えてきます。普段の会話では見えない部分です。
さらに、一度話したことが消失せず、支持体に残っているので、遡って話をつなげたり、会話を膨らませることができます。時間軸、空間、概念(イメージ)・・・などなど、
メインワークはまるで「三次元」「四次元」の世界の対話のようでした。

_mg_4745

最後は各グループの「アート筆談」の痕跡(板ダンボール)を前に、どんな対話が広がったのか発表してもらいました。

あるグループは4人の描いた絵から、新たなストーリーが出来上がり、「アート筆談」から新たな作品が生まれる?ような対話もあったようです。
参加者は「描くことによって、よりゴッホの気持ちが深く理解できたように感じた」とコメントしました。また「男性の感じ方と女性の感じ方が違いがあるのかも。」など、さまざまな視点が広がったようでした。

_mg_4635

今回は、全体説明では手話通訳だけではなく、とびラーによるPCの文字情報保障もつけました。またメインワークで少しでも対話の時間を増やすために、ファシリテーターの質問カードを作成したり、椅子を丸椅子に変えて動きやすくするなど工夫しました。前回のトライアルの反省点を踏まえてとびラーで何度もミーテイングを重ねてきた内容を、今回はいくつも実現できたように思います。

_mg_4832

最後に今回の参加者16名全員にアンケートを記入して頂き、「満足した」の回答を100%頂くことができました。

 

【聞こえる人のアンケートコメント】(一部抜粋)
・「最初は聴覚障がい者の人とどう接すればいいかわからなかったけれど、いろいろなコミュニケーションができて楽しかった。」
・「童心に戻ったように、夢中になった」
・「アート筆談だと、話しているのと同じような気分になった」
・「フラットに話ができて、あらたな気づきを得られました。」

【耳の聞こえない方からのアンケートコメント】(一部抜粋)
・「まったく手話ができない聴者とも一緒に楽しめた。」
・「美術館は観るところと思っていましたが、描く・書く、楽しさを味わいました。」
・「実際見るだけよりも、描いた方がいろんな発見がありました。」
・「新たな人間関係を築いていける方法として大変効果的だと思いました。」
・「耳が聞こえないというハンデを忘れることができました。」

 

【おわりに・・・】
初めて出会う聞こえない人と聞こえる人が、作品を見て一緒に対話鑑賞するにはどうしたらいいのだろう。
案外知られていないのですが「聞こえない人」といっても手話のできる人、できない人、発話できる人、文字が苦手な人、さまざまな人がいます。みんなで一緒に対話するにはどんな工夫が必要になるのだろう・・・そんなことを考えるうちに「そもそもコミュニケーションって何?」「言葉って何だろう」と改めて原点に立ち戻るきっかけにもなりました。

コミュニケーションとは「伝え合うこと」。普段の何気ない会話でも、伝え合う事って難しいと感じることは良くありますよね。「どうして伝わらんないんだろう」と思ったり、逆に伝わったときは喜びを感じます。
今回の「アート筆談de対話鑑賞」で一番大きな発見は「アート筆談は言葉になる前の概念(イメージ)を言葉にすることができる」という事でした。
人が相手に一番「伝えたい」ことって「言葉になる前の概念(イメージ)」だったりしませんか。
またひとつ「アート筆談」の新たな可能性を感じた一日でした。
ご参加くださった方、お手伝い下さったスタッフ、とびラーさん本当にありがとうございました。

 


執筆者:瀬戸口裕子(とびラー・アートコミュニケータ)

【あいうえの連携】あいうえの特別企画

2016.11.20

img_4027_s
「あいうえの特別企画:今日からはじまるミュージアム冒険。ミュージアム・スタート・パックを手に入れよう!」が、11月19日(土)・20(日)の2日間に渡り、計4回開催されました。この特別企画は、Museum Start あいうえののプログラムをより多くの方にご参加いただけるよう、新たな試みとして企画した45分のプログラムです。

 

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

【開催報告】とびラボ・よく見て話して

2016.11.20

「よく見て話して」は、何かのきっかけで都美にやって来た人達ととびラー達が共に過ごすことで、美術館を訪れた経験をより豊かなものにしていただくための活動プログラムです。

 

プログラムの実施
11月20日(日曜日)千葉県の長生村から37名の方々が「ゴッホとゴーギャン展」を見学に来ることになり、プログラム「よく見て話して」を実施することになりました。

_mg_3314-%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%94%e3%83%bc

参加者の特徴
参加者の中には「ゴッホとゴーギャン展を見たい」という人達ばかりではなく、「見学会ツアーに参加して美術館に行ってみたい」という人達もいます。また、「初めて美術館に行くのに、一人で行くより村の見学会ツアーの方が安心」という人達や、「友達に誘われたから」という人もいます。
年齢層はこれまでのとびラボに見られなかったご高齢の方々です。
(40歳代2名、50歳代3名、60歳代9名、70歳代20名、80歳代3名)
その他、いくつかの特徴があります。
・広報誌による募集なので、参加者同士知らない人も多い
・夫婦8組、親子1組を含む
・男性10名、女性27名
・美術館デビュー7名、これまで都美を訪れたことがある15名

 

参加者に合ったプログラムを考える
今回、長生村の企画の主旨は「展覧会見学会」なので、作品鑑賞をメインに新たな体験の機会を作るプログラム内容にしました。また、年齢の高い方の参加申し込みが多かったので、移動時間に余裕を持たせたスケジュールを考えました。
「作品鑑賞の前に、学芸員さんによるゴッホとゴーギャン展の見どころについてのレクチャーを受ける」、「少人数のグループに分かれて作品鑑賞と振り返りを行う」などの体験活動を盛り込みます。
また、都美のある上野公園内の文化施設を知っていただくため、とびラーによる「上野公園ツアー」をプログラムに加えることにします。

 

プログラム内容を伝える
プログラムにスムーズに参加し充実した鑑賞の時間を持つために、村から都美に向かう移動時間に参加者の皆さんに鑑賞の準備をしていただきます。大きな文字で見易く作った資料を使い、プログラムの内容を具体的に伝えます。展示室でのルールについてやさしく書いた資料を使い、初めての方でも躊躇することなく展示室に入れるように説明をします。これまで美術館に行ったことのある方でも、見易い資料です。

%e3%81%8a%e3%81%a8%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a1%e3%81%ae%e3%83%81%e3%83%a9%e3%82%b702-1

%e5%b1%95%e7%a4%ba%e5%ae%a4%e3%81%a7%e3%81%ae%ef%bc%96%e3%81%a4%e3%81%ae%e3%83%ab%e3%83%bc%e3%83%ab

展覧会の図録を、事前に見ることはあまり無いことですが、全員に展覧会の図録を回覧して、これから行われるプログラムへの興味や作品鑑賞意欲が高まるよう工夫をします。
また、今回のプログラムでは18名ものとびラー達が一緒に活動することを伝え、これによってプログラムへの期待感と親近感が生まれたと思います。
また、終了後にアンケートへの記入をお願いし、体験を振り返る機会としていただきます。

 

「よく見て話して」実施プログラム
タイムテーブルと活動のようす
9:50 池田家上屋敷表門付近到着
10:00 アートスタディルーム到着
学芸員による見どころレクチャー
10:20 グループごとに「ゴッホとゴーギャン展」展示室へ
11:20 アートスタディルームに戻り、鑑賞を振り返る
11:50 上野公園ツアーについての案内
12:00 上野公園ツアー出発
12:30 西洋美術館前にてプログラム終了

 

 

時間通りに池田家上屋敷表門近くに到着し、6名のとびラーが長生村の皆さんをお迎えしました。
お天気も良く、参加者にとっても、とびラーにとっても、新しい体験の始まりです。
アートスタディルームに到着すると、すでに移動中に伝えてあったグループに分かれていただき、とびラー達と対面していただきました。
今回のプログラムのスペシャルの1つ、学芸員による「ゴッホとゴーギャン展の見どころ」のお話を聞きました。短い時間でしたが、分かり易く盛りだくさんの内容で、参加者もとびラー達も話に引き込まれていました。ゴッホやゴーギャンが、あたかも自分たちの知り合いだったかと錯覚するほど彼らを身近に感じたのではないでしょうか。レクチャーがあることを事前に知らせたことと、最適な資料を用意したことによって、鑑賞に向かうための貴重な時間になりました。
4,5名のグループに分かれて展示室に向かいます。
その前に、とびラー達から参加者に鑑賞方法について2つの提案がありました。
1つは「お気に入りの作品をみつけてくること」、もう1つは「指定された作品をよく見てくること」です。
鑑賞後それぞれについて話をする時間を持つことを伝え、新たな活動の説明をしました。
これについても、事前に知らせてありましたが、参加者に少し緊張した様子も見られました。
鑑賞時間は1時間ほど予定していましたが、展示室に向かうのに手間取っているグループがありました。どうやら、トイレタイムが原因のようです。移動時間は余裕を持ったつもりでしたが、いろいろな場面で予想以上の時間がかっていました。
さらに、この日は「家族ふれあいデー」が催されていて来場者が多く、展示室に行列ができ、最終グループは予定を20分近く遅れた入室になってしまいました。展示室内も混雑していて、混雑した展示室でのとびラーの伴走について課題を残しました。
鑑賞後に、作品についてみんなで話をするということは、参加者にとってはおそらく初めての経験です。作品について誰もが話をしてくれるかと心配がありましたが、活発な話し合いが行われました。参加者から積極的にとびラーに話しかける姿も見られました。

016o

鑑賞、話し合いの後は、気持ちを切り替えて、上野公園にある文化施設を巡るツアーに出かけます。10名程の4つのグループで行動します。ツアーガイドとびラーによる「上野公園ツアー」はとても興味深い内容です。
参加者の年齢を考えてゆったり巡る25分間のツアーは、作品鑑賞とは違った美術館の印象となり、参加者ととびラーとの間でも様々な会話が生まれました。上野公園ツアーから全員が戻ったところで、今回のプログラムは終了しました。

_mg_3378o

 

プログラムを終えて
いただいたアンケートの中には、「以前のように自由な活動のほうが良かった」、「展覧会だけゆっくり見ていたかった」いう意見もありましたが、「ゴッホやゴーギャンの本物の作品を見ることができて感激した」、「展示室でとびラーさんと一緒だったので安心でした」、「見どころの説明を聞いて鑑賞が深まった」、「作品の感想を受け止めてくれてありがたかった」、「いろんな意見が聞けて、絵の中の物語を見たようでした」「知らない人同士でも意見が多く出るものだと感じた」「話をすると絵の印象がいつまでも残るような気がする」「今までにない体験で、また参加したい」「美術館、公園、アートに親しみました」など、プログラムに参加して得た新たな体験を喜ぶ意見もいただいました。

混雑した展示室での過ごし方や、移動時間の設定などについての反省課題もありましたが、それによって、私達とびラーが考えるプログラムと参加者が参加しやすいプログラムとの違いも見えてきました。
また、地域や年齢に関わりなく、展覧会で作品を見たときのたくさんの気付きは、聞く人がいることによって豊かに表現されていくものだと、改めて知らされました。

 


文 : とびラー4期 中島惠美子

カレンダー

2017年3月
« 2月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

カテゴリー