開扉したとびラーの声

「そこにいる」ぐらいな感じ

人と作品、人と人、人と場所をつなぐ。とびラー活動を体現している、この言葉。「つなぐ」なんて大層なものでなく「そこにいる」ぐらいな感じ。でも、とびラーがいることで、つながりを作ることにちょっとだけ貢献できる。そんな３年間の活動だったと思います。アートの専門家でもない僕たちが、そんなことできるの？先輩とびラーの活動を見て当初は不安になりました。でも、とびラーとしての基礎的な考えを共有する場を通して「ただ一緒に楽しめばいいんだ」ってことが分かると、そこからは子どもたち始め来館者と触れ合うプログラムが楽しみになりました。

仲間と一緒に、試行錯誤しながら作っていく

とびラーには多種多様なバックグラウンドを持った方たちが参加しています。その仲間と一緒に、人や作品や場所を「つなぐ」ための活動を考え試行錯誤しながら作っていく。自分のタイミングで自分のできる範囲で参加できるとびラーですが、もっと熱心に関わっておけば良かったな～と開扉した今、思います。

“きく力”って、どういうこと？

1年目に受講する基礎講座では“きく力”について学びます。話し手の言葉を頭で理解しようとするのではなく、話し手自身に関心を持ち、どう思い、どう感じているかに意識を向ける。
最初にこの講座を受けた時は、それってどういうこと？というのが率直な感想でした。
とびらプロジェクト、そしてとびラーが参加するプログラムには年齢・属性も様々、アートが好きな人もそうでない人も、多様な人々が集まります。

アートの力と、対話

一緒に作品を見ながら、語り合う。同じものを見ているはずなのに、一度でしっくり腑に落ちることばかりではありません。そんなときは、どのあたりからそう思ったの？つまりこういうこと？恐れず聞いてみると、なるほど！！が増えていきます。
アートの前では誰もが平等です。そんなアートの力を借りて、先入観を捨て、お互いが向き合い、言葉を交わし、歩み寄る。これが“対話”なんだと実感できるようになった3年間でした。

「アート・コミュニケータ」という肩書き

とびらプロジェクトについて初めて聞いたときの第一印象は、「アート・コミュニケータ」というカタカナの肩書きが格好いい……でした。自分も「アート・コミュニケータです。」と名乗ってみたい、と軽い気持ちで飛び込みました。
実際に入ってみると、「アート・コミュニケータ」や「とびラー」の肩書きは活かしつつも、東京都美術館・東京藝術大学を中心として、上野公園全部を舞台に、想像以上に多様な活動が繰り広げられていました。

「きく力」が大切にされる場所

活動するにあたって全員が最初に講座形式で教わるのは「きく力」。
目の前の人の言葉を真摯にききたい。その姿勢がここではとても大切で、そこを外さなければ、けっこう自由な活動が許されている。
「きく力」を大切にする人たちに囲まれて過ごすのはとても心地よい体験でした。
開扉しましたが、とびらプロジェクトのような心地よいコミュニケーションの場をつくりたいという思いがいつも頭にあります。

「伊庭靖子展　まなざしのあわい」東京都美術館　撮影：中島佑輔

新たな経験や学びに感動した3年間

3年前によくわからないまま「とびラー」の活動に参加して、なんとか皆さんの後を追いかけているうちに3年が経ったような感じです。その間、楽しく、時に追い込まれたり、新たな経験や学びに感動したりの日々でした。今となれば、様々な背景や年代の人たちとフラットに付き合える貴重な場だったと思います。

開扉してからもここでの経験が大きく影響しています

開扉してからの活動も、まさにとびラーでの経験が大きく影響をしていて、人前で話すことが苦手な私が、まさか対話による美術鑑賞事業のボランティアに参加するとは自分でも驚きです。また、50歳以上向けの大学のプログラムに参加したのも、とびらプロジェクトの様々な講座で社会問題に強く関心を待ったからでもあります。この年齢になって新たな自分を引き出せるのも「とびラー」になれたから。私のように年齢を重ねてから自分再発見のとびラーさんたちが、どんどん生まれているのだと思うとわくわくしますね。

多くのとびラボに参加した、とびラー時代

とびらプロジェクトに参加したいと思ったのは、仕事ばかりの日々の中で自分の力では太刀打ちできない体験をしたときでした。このままではないどこかに行きたいと思い志望しました。
とびラー活動の中では、美術館で企画をするということに興味を持ち、多くのとびラボに参加しました。

違うところに行くのではなく、戻っている

ラボの中では、自分が好きだったことを思い出し、他者の興味や意思を聞き対話する場面が多く、まるで学生の頃に戻ったようでした。
「なんだ、違うところに行くんじゃなくて戻るんだ」と目が覚めたような体験でした。
ふとした時に何かと出会う、そんな場所。ぜひ扉を開けてみてください。

「伊庭靖子展　まなざしのあわい」東京都美術館　撮影：中島佑輔

一つの正解よりも、それぞれの価値観への理解

価値観が広がり、幸せだなぁ（well-being）が深まる3年でした。「正しい答えは、一つだけ」それまでの、私の思考（まなざし）は、意識、無意識ともに設問に対して常に一つの解を探す出すことでした。ところが芸術作品では、鑑賞者ひとりひとりの観点で発せられる言葉、そのことばが、ひとつずつ作品になります。それでよい、だから安心する。「どこからそう思ったの？」と、理解をしたいという意思が自分に届く。だじろぎ、言葉をひねり出す。そうすると、「うん、そこからそう思ったんだね」。すがすがしい空気が流れる。多様性には矛盾も丁寧に包み込まれていて、受け容れにはwell-beingがくっついてくる。

今後について

とびらプロジェクトに参加したことは、あらたな人生のはじまりでTurning Point、起点だったと思います。どこにでも向かえます！

撮影：中島佑輔

長いようでいて短い3年間

3年という期間の、長いようでいて、何かをやり切るには少し短い。あともうちょっとあったら、せめてあと半年、、、と任期の終わりが見えてきた頃に後ろ髪を引かれるような気持ちになったのは僕だけではないと思います。
基礎講座から始まり、傾聴し対話を積み重ねていくことを学び、この指とまれで仲間を集め、想いに賛同してくれた人達の十人十色の思いを言葉に現して、何か形にしていく。
紆余曲折を経てたとえ何か形になることがなくても「とびラボ」を通して試行錯誤（実験）してみた。それだけでも、というかそれこそがこの3年間でしか経験できないことなのではと僕は思います。

巡り合わせた不思議な縁

きっとここにこなければ出会うことがなかった人達に、知ることもなかった他人の言葉に、たまたま巡り合わせた不思議な縁を感じてその縁を切らさないよう、これから何をしていこう。誰もが居心地の良い空間を、自分の興味とかけ合わせて作り出せたらいいな。

みんなと一緒に学んで遊んで３年間部活動のような時間

私は学校的なものが苦手で、放課後も帰宅部をつらぬき、一匹狼として生きてきたのですが、とびラーでは学生時代にもどったみたいにみんなと一緒に学んで遊んで３年間部活動のような時間を過ごせました。部活と違うのは先輩後輩はなく、フラットな関係の中、お互いの意見を否定せず聞き合いながらものごとを進めるところ。思慮深い人、勢いのある人、準備周到な人、様々な個性が混ざることで新しい価値が生まれる瞬間になんども立ち会いました。

自分の中に蓄えられたもの

自分がしていない経験を相手を通じて得ることができ、自分の経験もまた相手にわけることができる。人生の時間がそこだけ早回しになったようです。そして美術館のプログラムで出会った子どもたちとの時間は一瞬でしたが、そのまなざしや経験の共有は失われることがなく自分の中に蓄えられています。

東京藝術大学を開けたら、DOORがあった。
DOORを開けたら、とびらがあった。
とびらを開けたら、

学生時代から色々なアート関係者との出会いはあった。
でも、とびらプロジェクトやDiversity on the Arts Project（通称：DOOR「アート×福祉」をテーマにした東京藝大のプロジェクト）では、様々な職業や世代や国籍や障害の有無を問わない出会いもあった。

とびらプロジェクトは、多様性を包摂するミュージアムみたいな場所？
とびラーは、ごちゃ混ぜのアートのような存在？

ラボはいつも予想通りにはいかないけれど、きっとそれは想像以上に人とアートのパワーがあるから。
そんな学びと遊びを繰り返しているうちに、多種多様な来場者のことを、人ごとではなく私たちごとに出来た。

とびらを開けたら、出口は入口だった。
アートを通して安心して共生できるような世界を、これからもみんなと創ってゆきたい。

新しい自分に出会った

友人からの誘いがすべての始まりでした。
充実した講座や、個性的ですてきな先輩と後輩、独創的でおもしろみ満載のラボ。
この三年間、すべてが新鮮でとても充実していました。
人の話を真剣に聞くとはどのようなことなのか。
他人に本当に興味を持っているのか。
簡単そうに見えるが、思ったことを正確に伝えるにはどれほど難しいのか。
毎回、気づかされたことがとにかく多かったですが、
毎回、少しだけ新しい自分に出会えたように思います。
目の不自由な子供から受け取った温かみはきっと一生忘れられない。
外国ルーツの子供との触れ合いで、この国で外国人として生きている自分を、
いま一度見つめなおしたようにも思いました。
ここに誘ってくれた友人に感謝します。
ここで出会ったすべての人々に感謝します。
ここでかかわったすべてのでき事にも感謝します。
これからも人とのかかわりを大切にし、また新しい自分に出会えることが楽しみです。

3年間を振り返って

「何だろう？面白そうだな」と思って参加した「とびラー活動」でした。3年間を振り返って印象に残った事がいくつもあります。
まずは、孫たちが参加した「あいうえの」プログラムです。孫たちがプログラムに参加するのを横目で見ながら、私も「とびラー」として参加することができました。
また、とびらプロジェクトの藝大の代表教員である日比野克彦さんの「色彩学」では、「色に関する100の指令」を受け、「色」についてひたすら考えた3日間が忘れられない時間になりました。
様々なとびらプロジェクトの講座や、プログラム、「とびラボ」で色々な人達と出会い、フィールドワークを体験したことも印象に残っています。上野公園での大花見大会や上野山という文化ゾーンについてもよく知るきっかけになりました。

今まで聞いた事の無い様な社会と現実を聞く

Diversity on the Arts Project（通称：DOOR「アート×福祉」をテーマにした東京藝大のプロジェクト）ととびらプロジェクトの交流プログラムであるダイバーシティ実践論では、様々な社会的背景を持つ方から「今まで聞いた事の無い様な社会と現実」を聞きました。そんな中、写真家・登山家・作家の石川直樹氏がダイバーシティ実践論「地球を旅する 生きるための技術＝芸術へ」の中で言及した、『登山で白いキャンパスに美しいライン（足跡）を描く＝芸術』が印象的でした。
とびラー活動・足跡そのものがアートなのかもしれません。

フラットに肯定し合える場

とびラーになったのは、何気なく開いた東京都の広報がきっかけです。会社組織に慣れた私には、年齢や背景が違う人々がフラットな関係で意見を出し合い、肯定されるような場が新鮮で驚きでした。また、社会的課題に美術館はどう関われるかを考え実践する工房のようにも思えました。ここでの学びは貴重な自己変革の機会でした。

思い出深い「CozyCozyラボ」

3年目に「発達障害の子どもたちとなにか（仮称）」を立ち上げ、勉強会や意見交換をし、「CozyCozyラボ」としてプログラムを企画・実施した10か月は波乱万丈で、とても思い出深いものになりました。困難な時は「とびラーを信じよう」と気持ちを立て直し進めていたことを思いだします。プログラム当日、参加した子どもたちと関われたとびラーは10人でしたが、開催までの道のりの中で何十人ものとびラーが支えてくれた事が感慨深いです。

3年間で得たこと

3年はあっという間でした。ここで得た挑戦の気持ち、人と繋がろうとする力、アートへの好奇心を大切に生きていきたいです。

とびラーの情熱と実行力

とびらプロジェクトに関わって最も驚いたこと。それはとびラーのアートに対する熱意や、アートへの思いを形にする斬新なアイディアと実行力でした。都美へ行くたびに「アートを自分だけで楽しむのではなく、誰かと共有したい」という情熱を目の当たりにし、私自身も何かできるのではないかという気持ちになりました。

アートを通じて

そんな私がとびラーとして熱心に取り組んだものは『対話型鑑賞』です。子ども達やとびラーと一緒に、時には自分でファシリテーションをしながら対話を重視して作品を観ていきました。最近ではオンラインでの鑑賞にも参加するなど、回を重ねるごとにその楽しさや新しさに魅了されていきました。『対話型鑑賞』の魅力はその場で生まれた対話から、人々の多様な考えを知ることで、アートに正解はなく自由でいいのだと気づかせてもらえることです。これからもアートを通じて、色々な人々や考えに出会っていけることを楽しみにしています。

いろんなコトや人との出会い

3回目の応募でやっと始まった「とびラー」の3年間。自分流が信條の私には、基礎講座の『きく力を身につける』の回でカルチャーショックを受けることから始まりました。振り返るといろんなコトや人との出会いがあり、ちょうど開扉（とびラーの任期満了）で古希を迎えました。基礎講座中、仕事40年で固まった自分・自分の生き方に大きな危機感を感じる日々！しかしなんともならず、これならと参加した建築ツアーで東京都美術館の建築を設計した前川國男を知り、建築ツアーのガイドをしていく中で、新たな疑問や不思議が生まれてきました。

前川建築への興味、広がりと深掘り

その疑問や不思議が、とびラボ「都美館伝説・なに？なぜ？なんで！」の立ち上げの動機になりました。とびラボは一人舞台になりがちな時もありましたが、それでも見守ってくれる人たちがいて最後まで続けられました。そうした皆さんの一言や情報があって、都美建築に関する“伝説”の広がりや深掘りに繋がり、とびラーみなさんに感謝です！今考えると、とびらプロジェクトで行っているVisual Thinking Strategiesの鑑賞で進行役が行う「なにが起きて・・・なぜそう思った？他には！」という問いかけと、「なに？なぜ？なんで！」とは、最後が他に広げるか、深掘りかの違いはありますが、似てる！
都美館には、まだまだ見逃した「？？！」があるのでは？