東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

【あいうえの連携】SDGsをきっかけとした、美術館の建築を探検できるプログラム

2022.08.21

夏休みも終わりに近づく8月21日(日)に、2022年度2回目のファミリー&ティーンズ・プログラム「SDGsで探求!名建築をみる」を行いました。

プログラムは午前と午後に2回実施され、それぞれ小学1年生から中学3年生のこどもと保護者が参加しました。参加者は、東京都美術館に初めて来館する子や何度も足を運んでくれているご家族、過去にあいうえののプログラムに参加したことのある子などその経験はさまざまです。
美術館は来るたびに新しい発見と出会える魅力いっぱいの場所。SDGsをきっかけとした、美術館の建築を探検できるプログラムの様子をご紹介します。

 

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【あいうえの連携】とびラーと出会って、展覧会&美術館ランチ!

2022.08.04

あいうえのには、社会的支援の必要な子供たちのための団体との協働で実施しているダイバーシティ・プログラム「ミュージアム・トリップ」というプログラムがあります。

今回は、豊島区を拠点に子供達とその保護者を包括的に支援している団体「認定NPO法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」と連携し、プログラムを実施しました。

 

当日、参加のこどもたちは池袋駅に集合してから、上野にやって来ました。中学生から高校生まで年齢も様々だったため、早めに一人で到着してしまった子や、一人で来て、上野駅で出口を間違えて迷子になりかけてしまった子など、小さなハプニングはありましたが、プログラムは無事に始まりました。

プログラムの進行は、東京都美術館の学芸員、河野佑美が行いました。
最初に、プログラムの流れを伝えて、鑑賞する企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」のことを伝えました。展覧会にはおしゃれな家具や椅子、デザイン画などが展示されています。建築家という仕事、デザイナーという仕事、大工という仕事など、仕事について、に加え、人気の漫画の単行本の表紙に「デザイナーズ・チェア」が描かれていることにも触れながら、展覧会を楽しむコツを伝えます。

 

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【あいうえの連携】SDGsで探究!名建築をみる。

2022.07.29

夏休みが始まって間もないこの日、ファミリー&ティーンズ・プログラムの「SDGsで探究!名建築をみる」を実施しました。
小学1年生から中学3年生までの参加者と保護者が講堂に集合です。
受付では、活動グループのアルファベットが入った名札シールと、あいうえのの特製ツールである「ミュージアム・スタート・パック」、指令書カードが渡されます。
保護者には、「ミュージアム・スタート・パック 活用ガイドブック」が渡されます。

 

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【あいうえの連携】うえの!アートリサーチャーステップ2 ミュージアム探究編

2022.07.18

この日は、6月26日に実施した「ステップ1 オンライン編」の参加者と、これまでにあいうえののプログラムに参加したことのあるこどもたちが、東京都美術館の講堂に集合しました。

 

会場が密にならないように、午前のオリエンテーションは講堂で、午後のプログラムはアートスタディルームとスタジオを使用して行いました。

受付では、ミュージアムスタートパックを渡します。
すでに持っている子は、しっかり斜め掛けしてやって来てくれました。バッジがいくつかついている子、すでに集め終わって、各館のグッズのバッジを付けている子、バッグにカスタマイズが始まっている子、など、みんな活用してくれている様子が見えました。
「オンラインで会いましたねー。覚えてる?」
とか、
「お久しぶり!元気だった?バッジずいぶん集めたねー」
など、会話がはずみます。

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【開催報告】ベビーとゆったり美術館

2022.06.27

ベビーとゆったり美術館とは、「赤ちゃんを育てている保護者の方に、美術館でゆったりした時間を過ごしてほしい」「⾚ちゃんと保護者が、いつでも安⼼して美術館へお出かけできるように、最初の⼀歩をお⼿伝いしたい」という気持ちから生まれたとびラボです。

 

このブログでは、6月27日(月)に実施した「都美セレクショングループ展2022」でのプログラムの様子をお伝えします。

 

「ベビーとゆったり美術館」を企画するとびラーは、未就学児、小中高校生、社会人のお母さん、長年保育士として活躍していた方など、自然と子育て経験者が集まりました。自分たちが赤ちゃんを育てていた時に感じた、美術館から遠ざかってしまった寂しさや、大人と会話ができない日が続く辛さなどを、毎日赤ちゃんと向き合って奮闘している保護者の方も感じているのではないか…。それをこのプログラムで少しでも和らげられたらという思いがあったからです。そして何より、毎日大変な保護者の方に笑顔になってもらいたいという気持ちがありました。

 

記録的な暑さが続くなか、本番の日がやってきました。大人だけでも外出をためらうような暑さです。赤ちゃんとのお出かけは難しいかもしれないと考えていました。

 

しかし申し込みをしてくださった3組全ての皆さんが、美術館にご来館されたのです。熱中症に注意しながらのお出かけは、保冷剤に扇風機に水分補給に…と、とても大変だったことでしょう。そのような中でこのプログラムに足を運んでくださったことをとてもありがたく思いました。

 

今回は、参加された3組のファミリーそれぞれ1組につき、とびラー1名がご一緒することになりました。赤ちゃんと美術館に来た時に利用できる設備の説明を確認したり、作品についておしゃべりをしたりして、とびラーとゆったり美術館で過ごします。

 

とびラーは緑のバンダナを巻いて準備万端。

 

まずは参加者の皆さんとごあいさつ。一緒に楽しみましょう!

 

ギャラリーに行く前に、今回の展示の簡単な説明や、展示室でのお約束などを簡単にシェアします。

 

東京都美術館の自慢できる設備の一つ、授乳室。どこにあるのか、どうやったら使えるのかをお伝えしています。(小さなお子様連れの方へのバリアフリー情報はこちらからご覧ください)

 

授乳室やおむつ替えスペース、ベビーカーの借り方などをインターネットで一生懸命調べてから来ても、実際に使うとなると戸惑ってしまいますよね。このプログラムではそのような不安も解消したいと考え、場所や利用方法を直接お伝えしています。

 

いよいよ、今回の展示「都美セレクショングループ展2022」へ。
ここでは3つのアーティストグループが、それぞれのテーマで絵画、立体、映像、インスタレーションなど様々なジャンルの作品展示を繰り広げています。

 

気になるものがたくさん並ぶ展示に、赤ちゃんも興味津々。

 

展示についてお話ししていたら、もうすぐ赤ちゃんのお誕生日とのこと!

おめでとうございます。とても嬉しいことですね。

 

実際に手を触れながら鑑賞することができる人の形をした作品の前では、赤ちゃんの顔にそっくり!とお話ししながら作品を味わいました。

 

一緒にじっくり見て味わいます。

 

ある組では、参加されたご夫婦から「美術館やアートの楽しみ方が夫婦ともによくわからなくて・・そのあたりも教えてもらいたくて参加しました」というお話を伺いました。

 

とびラーからは、

「難しく考えず、自由に見ていただいて大丈夫ですよ!」

「家に飾るならどの作品?」みたいなテーマをもって鑑賞することで、またちょっと違う視点を持てたり、共有する楽しさも生まれますよ!」

とお伝えしました。

 

ご夫婦ともに驚かれて「そんな気軽な楽しみ方をしてもいいんですね〜!」と喜んでいただけました。ぜひ、いろんな楽しみ方を試して欲しいと思います。

 

昼下がりということもあり、赤ちゃんたちは割と落ち着いていて、抱っこされて安心して展示室をまわる子、ベビーカーでお昼寝をする子もいました。

 

鑑賞が終わったあとは、ちょうど赤ちゃんのお腹がすく時間ということで、授乳室を利用する参加者もいました。私たちとびラーが普段活動の拠点としている東京都美術館 交流棟内にあるアートスタディールームで、アンケートを記入をしたり、おしゃべりで一息つくファミリーも。

 

プログラムを終えた後には

「元々美術館が好きだったが、子供が生まれてからは来る機会がなかった。子連れでのハードルが下がり、また来たいと思えた。」

 

「(とびラーの)サポートがありがたく、安心して見ることができました。」

「美術館を家族と楽しめるイメージが持てた。」
などの感想もいただきました。

 

参加した皆さんと、美術館を楽しみながら、一緒にゆったりした時間を過ごすことができたのではないかと思います。

鑑賞を終えた後、「ここなら、午前中は動物園で遊んで、ベビーカーで昼寝をしてる間に美術館に来れるんじゃない!?」と、今後のイメージをお話しされている参加者のお声を耳にして、とても嬉しくなりました。

 

東京都美術館のある上野公園には、子どもと一緒に楽しめる施設がたくさんあります。お隣の上野動物園や、国立科学博物館、児童公園は、幼児から大人まで大人気です。東京都美術館をはじめ、上野公園でたくさんのホッとできる場所、楽しめる場所を見つけてみてください。

 

 

私は今、4歳の子供を育てています。自分の好きな時に、好きなように出かけていた生活が、子供が生まれてから一変しました。特に、あれほど好きだった美術館になかなか足が向きませんでした。泣いたらどうしよう…自分の都合で子供を連れ回していいのかな…。不安で一歩を踏み出せなかったのです。

 

 もし、その時の私と同じような気持ちの人がいたら、このプログラムで「大丈夫ですよ」と、背中を押せたらと思っています。自分の目で一度、赤ちゃんのための設備を確認しておけば安心だし、もし赤ちゃんがぐずったりひどく泣いてしまったら一度退出して、野外に展示している彫刻をみたり、上野公園の緑を眺めたりして、可能ならまた展示室へ戻ってもいい。

 

自分ひとりの時とはまた違った「赤ちゃんと一緒の楽しみ方」も、結構いいものです。

 

いつもの公園、児童館、お家から少し離れて、心がホッと落ち着く時間を、美術館で一緒に過ごせたら、とても嬉しく思います。

 

 


 

文:郷美潮

とびラー10期、2年目。工芸の仕事をしています。子育て・仕事・とびらプロジェクトを楽しんでいます。

 

【あいうえの連携】オンラインで作品鑑賞! うえの!アートリサーチャー ステップ1

2022.06.26

2022年6月26日、2022年度最初のあいうえののプログラム「うえの!アートリサーチャー ステップ1」が実施されました。
このプログラムはオンラインとリアルのセットのプログラム。1日目の「ステップ1」はZoomミーティング(オンライン会議システム )を利用して、オンラインで自宅と美術館をつなぎます。

 

6月としては観測史上最も高い36.2度を記録した猛暑日のこの日。画面の前にはたくさんの参加者が集まってくれました。午前中は小学1年生から3年生までの34名、午後は、小学4年生から中学1年生までの13名がそれぞれオンラインに集合しました。

受付前の時間の接続確認を経て、プログラムが始まります。
この日の進行は、東京都美術館の学芸員、河野が担当しました。
コロナ禍で学校などでもオンライン化が進んだこともあり、参加者は皆、オンラインの操作も、すでに慣れている様子。時々、リアクションマークで反応してくれながら、「アートリサーチャー」になるべく、「絵をじっくり見るためのコツ」をマスターします。

リサーチャーへの「コツ」は「じっくり観察すること」「しっかり伝えること」「相手の話をよく聞くこと」です。

 

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基礎講座①|とびラー全員集合!オリエンテーション

2022.04.09

日時 | 2022年4月9日(土)10:00~15:00

場所 | 東京都美術館 講堂

 

東京都美術館と東京藝術大学と市民が協働する「とびらプロジェクト」新年度が4月9日から始まりました。とびらプロジェクト マネジャーの東京藝術大学 特任助教 小牟田です。

 

今日から活動をスタートさせる11期とびラーは49名です。総勢139名のメンバーで2022年度のとびらプロジェクトがスタートしました。

全6回で構成されている基礎講座の第1回目は、オリエンテーションです。

午前中は11期とびラーへこれから必要な基本情報を共有する時間です。東京都美術館の講堂に集合しました。

  

まず、とびラーとして活動していくにあたって大切な「とびらプロジェクトの約束」をみなさんと確認しました。

その後、とびらプロジェクトマネジャーで、東京都美術館 学芸員の熊谷さんより東京都美術館の説明があり、その後、館内を知るためのツアーを行いました。

  

   

館内ツアーでは、9期、10期のとびラーが案内役を務めました。

これからの活動の舞台となる東京都美術館を知るところから活動はスタートします。

 

午後は、9期・10期・11期が勢ぞろいし、新たな顔ぶれとなったとびらプロジェクトを運営する東京藝術大学、東京都美術館のスタッフ紹介を行いました。

 

11期とびラーは、4月から6月にかけて基礎講座に参加します。基礎講座終了後は3つの実践講座から1つ以上を選択し、関心のある分野について学びを深めていきます。「学びの場」と並行して、障害のある方のための特別鑑賞会、「Museum Startあいうえの」のスペシャル・マンデー・コース、建築ツアーなどの「実践の場」が開かれており、とびラーは学びと実践を繰り返していきます。

昨年の様子をふりかえりつつ、今年の1年間の流れを共有しました。

その後、9期・10期・11期で「Museum Startあいうえの」のミュージアム・スタート・パックを使って上野公園を散策するワークを行いました。出かける前に、あいうえの担当チームの河野さん、石丸さんより「Museum Startあいうえの」のプロジェクトの説明があり、散策のテーマとミュージアム・スタート・パックを持って、快晴の上野公園へとグループで出かけました。

   

 

コロナ禍のこの2年間は、オンラインでのコミュニティの可能性が広がる一方で、対面で出会うコミュニケーションで得られる情報量の多さを改めて実感し、その機会があることの価値を感じた時間でもありました。美術館を舞台に文化資源を介したコミュニティを考える上で、改めて「リアルに出会う」ということをキーワードにこの一年を始めたいとおもっています。

とびらプロジェクト10周年、Museum Start あいうえの10年目を迎える2022年度。この一年を通して「これまでの10年があるからできること」と「これからできる新しいこと」をとびラーとプロジェクトスタッフで発信していけたらとおもっています!

 

(とびらプロジェクト マネジャー 東京藝術大学美術学部 特任助教 小牟田 悠介)

 

【あいうえの連携】ミュージアムへ何度でも出かけよう! ミッションWEEK

2022.03.27

「ミッションWEEK」とは、「うえの!アートリサーチャー」に参加したことがある参加者を対象に、上野公園のミュージアムを再び楽しむことができるプログラムです。

*2021年8月〜9月の時点では「特別WEEK」としていたのですが、10月以降に内容を改編し実施しました。

「ミッションWEEK」の期間に東京都美術館のアートスタディールームに来た参加者は、その時期ならではの「ミッション」を受け取り、上野公園のミュージアムへ出かけます。

最大の特徴は、自分で「ミッション」を選ぶことができること。
「あか」「みどり」「あお」を探せ!というのに加え、「きいろ」を探せ!という色のシリーズや、「うつくしいと思うものを見つけよう」「コレクションしたいと思うものを探せ」という少し抽象的な問いのものまで、期間ごとに新たなものを加え、豊富に揃えています。

 

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【開催報告】見えない人と見える人が一緒に楽しむアート鑑賞

2022.03.14

 

2022年3月14日(月)東京都美術館で開催された「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」(2022年2月10日〜4月3日)で視覚障害者と作品鑑賞を楽しむワークショップを実施しました。当日は「障害のある方のための特別鑑賞会」*の日でもあり、ゆったりとした環境でアート鑑賞を楽しみました。

 

私たちアート・コミュニケータ(通称:とびラー)がこれからゼミ*として立ち上げたグループ「gift×gift」(ギフトギフト)は、ダイアローグ・イン・ザ・ダーク「対話の森」*でアテンドをされている5名の方々をモニターに迎え、何度も意見交換をしながら、一緒に「アート鑑賞」プログラムを作りました。

 

「gift×gift」は視覚障害者と晴眼者がアート作品を通してそれぞれの経験や鑑賞体験などを語り合い、互いの考え方に触れる場を作ることを目指しています。

 


 

ここからは当日の様子をレポートします。

 

青空に満開の寒桜が映える上野駅。公募した視覚に障害のある参加者4名と、一緒に活動するアート・コミュニケータが公園口改札で待ち合わせ。360度目配りをしながら、参加者が来るのをドキドキしながら待っていました。ここから参加者1名(介助者の方もご一緒)、アート・コミュニケータ2名でのグループ活動が始まります。自己紹介やざっくばらんな会話で、徐々に距離を縮めながら東京都美術館に向かいます。

 

3人の人が駅の改札前に立っている写真。真ん中の方は白杖を持っている。

「はじめまして」の最初の出会いは、お互い少し緊張している様子がうかがえます。

 

4人の人が上野公園を歩いている写真。左から2番目の人が白杖を持っている。

当日は快晴。銀杏の緑が青空によく映えて、春の日差しが眩しいお天気でした。上野のこと、美術館のことなどたわいのない会話をしながら、会場に向かいます。

 

 

<プログラムメイキングのポイント>

これから一緒に活動するグループメンバーと気軽に話したり、聞いたりできる雰囲気作りに努めます。待ち合わせ場所から会場までの10分間で参加者の方が、肩や腕など、どこに手を置けば歩きやすいのかを確認します。歩幅や歩く速さを合わせたり、エレベーターやエスカレーターに乗るタイミングを計る、その後の展示室でのプログラムに繋がる大切な時間です。

 

 

さあ、鑑賞プログラムの始まりです!

 

広い部屋に十数名の人々が座っている。テーブルごとのグループになっている。床は鮮やかなオレンジ色の部屋。

東京都美術館に参加者が揃いました。プログラムはアートスタディルーム*で始まります。

 

プログラム内容を書いたホワイトボードの写真。

当日の進行スケジュール。作品解説、作品サイズの体感をした後、展示室での鑑賞、グループでの感想を持ち寄った対話の時間という流れです。

 

まずは作品解説!

展示室に行く前に、落ち着いた空間で参加者が、鑑賞する作品のイメージを描くための

ステップです。

 

3人の人がテーブルに向かって座っている写真。真ん中の人は目を閉じてテーブルの上の絵に触っている。

1作品3分ほどの解説を聞きながら、触図を使ってこれから鑑賞する作品のイメージを頭の中に描いていきます。

 

今回は3作品に焦点を当てて鑑賞します。ヨハネス・フェルメール作《窓辺で手紙を読む女》、フランス・ファン・ミーリス作《画家のアトリエ》、ヤーコプ・ファン・ライスダール《牡鹿狩り》です。

「触図」はA4サイズの厚紙に人物や風景などを、手触りの違う紙や布で表現しました。

1作品ごとに解説や触図の分かりにくい部分などを確認するための時間を設けました。

 

 

<プログラムメイキングのポイント>

今回のプログラムで鑑賞する作品は、「この作品なら見えない人と見える人が一緒に楽しめる」と選んだ3点です。

作品は、展覧会の主旨に沿ってオランダの風俗を描いたもの、オランダの風景や文化を描いたもの、そしてチラシに載っている目玉の1点。展示空間全体も体感できるよう考慮しながら選びました。

事前に作品研究をし、その魅力の中から、伝えたい要素を数点に絞り、解説と触図に反映させました。

工夫した点としては、例えばヨハネス・フェルメール作《窓辺で手紙を読む女》では、大まかに以下の4点を示しました。

・中央で手紙を読む女性

・修復後に現れたキューピッド

・大きな窓や緑のカーテン

・果物が置いてある布のかかった家具

 

1番のポイントはキューピッドだけをめくれるようにし、修復前と修復後の画面の変化をイメージできるよう工夫しました。

モニターの方々との意見交換から、触図は参加者の方が気兼ねなく触れるよう丈夫であること、描かれているものの位置関係が伝わること、作品解説との兼ね合いが大切であることが、わかってきました。

情報過多にならないよう、作品解説は触図の起点を決め、ポイントを迷わず辿れるよう最後まで修正を重ねました。

 

 

展示室に行く前の最終ステップ、作品サイズを手で触って感じます。

3人の人がホワイトボードに向かって立っている写真。ホワイトボードには赤いテープで四角い枠が貼られている。真ん中の人が赤い枠を触っている。

耳からの作品解説と、触図で作品のイメージを頭に描いたあと、3作品のサイズ感を体感します。こちらは、フランス・ファン・ミーリス作「画家のアトリエ」の大きさに触れているところ

 

 

<プログラムメイキングのポイント>

作品のサイズを身体的に体感することで、より作品に近づけるのでは、というアイディアがモニターの皆さんとのトライアルから生まれました。

 

 

いよいよ、展示室で本物の作品鑑賞。

トイレ休憩をはさみ、荷物を預けアートスタディルームから企画展示室に向かいます。

上野駅での対面から1時間弱が経ちグループメンバー同士、会話のテンポや歩くスピードも徐々に馴染んできました。

各グループは本物の作品を前にどんな鑑賞の時間を過ごすのでしょうか。

美術館の展示室の中で3人の人が作品を鑑賞している写真。展示室の壁は赤い。真ん中の人は白杖を持っている。

1グループ目の鑑賞の様子

 

Aさん「作品と私たちの距離は、どれくらい離れていますか?」

アート・コミュニケータ(以後AC)「1メートルぐらいです。足元に華奢な黒い柵があります」

Aさんが白杖で柵を触って、位置を確かめます。

 

AC「修復後の《窓辺で手紙を読む女》は周りの壁紙よりも一段階濃い色の、厚みのある特別な壁に掛けられています。足元には30㎝ぐらいの高さで奥行きのある台が張り出しています。手を伸ばしても届かないぐらいの距離に作品があり、丁重に扱われている感じがします。」

 

Aさん「修復前後で何が違いますか?」

AC「色のトーンも違います。」

Aさん「キューピッドが出てきただけではないのですね。まず、どこに目が向きますか?」

AC「やはり、女性です」

Aさん「キューピッドではないんですか?(驚く)」

ACはさらによく観ることに。

女性に光が当たっていたり、窓ガラスに姿が映っている感じを説明し、そこから作品全体の光の陰影や、その中のキューピッドの存在へと話が展開します。

 

 

 

 

展示室で3人の人が作品を鑑賞している写真。真ん中の人は白杖を持っている。

2グループ目の鑑賞の様子 「触図からイメージした印象が大きく変わりました!」

 

実際の作品の前では、細部に描かれている物、表情や筆のタッチ、展示室内の様子を説明。絵の雰囲気やアート・コミュニケータから見た作品の面白さを主観的に伝えていきます。またBさんからも、服装について質問を受けることで今まで気にしていなかった季節感に気づくなど、絵のイメージがだんだんと固まっていきます。そして、ある瞬間カチっとお互いの見え方が一致するような感覚を覚えました。

 

展示室で2人の人が作品を鑑賞している写真。

3グループ目の鑑賞の様子

 

AC「手前に川があって奥には森があります。」

Cさん「手前にある/奥にあるというのは、どこからわかるのですか?」

AC「…。」

 

普段当たり前に思っていることを言語化するのは難しいと痛感しました。

Cさん「目で見ている人たちって、こんな風に見ているのかな。目で見た世界を垣間見ることができ、興味深かったです。」作品の遠近感の表現について、私たちも改めて考える時間となりました。

 

4グループ目の鑑賞の様子

 

「美術館にはあまり来ない」というDさん。少し緊張されているようです。

「絵は図録でもいいかなぁと思って」とおっしゃっていましたが、絵の前でアート・コミュニケータと女子トークしながらの鑑賞で表情も柔らかに。一枚の絵の中にたくさんの「謎」を探していらっしゃいました。

「どうしてキューピッドを隠したのでしょうね?」「どうしてこんなに大きなキューピッドなんでしょう?」本物の作品を前にお話をすることで「謎の多い絵は面白いですね」と笑顔になっていました。

視覚障害の有無に関わらず、Dさんが時間をかけて絵画を観察し、味わって下さっていたのを感じました。

 

<プログラムメイキングのポイント>

ワークショップを作っていく中で、モニターの方々とのトライアルで見えた2つの課題がありました。

初めのトライアルでは、作品情報の共有をせずに、いきなり展示室で作品鑑賞をしました。そこでモニターの方から「キャプションを読んでほしい」「何が描かれているのかの情報は欲しい」「いきなりの対話は難しい」という意見が出ました。

また、混み合う展示室で他のお客様とも場を共有するため、工夫をする必要がありました。

これらのことを踏まえて、①ASRで事前に作品の客観的な情報を伝える②展示室での対話は主観を中心にする。というステップを設けました。また、鑑賞する作品は各階1作品とし、観る位置を適宜移動するなど、他のお客様の様子に気を配りながらの鑑賞を心掛けました。

 

展示室での鑑賞を持ち寄って語り合おう!

 

2グループ合同で鑑賞した感想や気づきを語り合う場です。

「自分では見る事のできないものを、他の人の視点を借りてみることが新鮮でした。」

「グループで話すことで6人の目を借りて見ることができました。」

「小さな丸が少しずつ大きくなっていくように広がり、一人のフェルメールからグループ皆のフェルメールのように感じています。」

進行のアート・コミュニケータが参加者を中心に感想を聞きました。

 

 

4グループを2グループに編成して、展示室での感想を持ち寄ります。ここで初めて他のグループメンバーとの交流の時間を持ちます。皆さん盛り上がり、時間が過ぎても語り合っています。

 

 

 

<プログラムメイキングのポイント>

作品解説から展示室の鑑賞までは3~4名のグループでの活動でしたが、ここで初めて他のグループの参加者や、アート・コミュニケータと接する機会を持ちます。このグループ対話の時間は、モニターの方々とのトライアルで「○○さんがどう思っていたのか、知りたい」というご意見から生まれました。

 

 

気持ちがホットなうちに、アンケートを取ります。

 

3人の人がテーブルに向かって座っている写真。テーブルの上には何枚かの紙が置かれている。右側の人はペンを手に持っている。

「今日はありがとうございました。一番印象に残ったのはどんなところですか?」

 

『触図で全体の構図が掴めたことです。これが自分にとって実際に観たことになりました。』

『感想を共有した対話の時間です。一人ひとりの感想を聞くことができたので、その人の絵を想像することができました。』

『晴眼者がどのように作品を見ているか知ることができました。特に遠近感の表現の時、皆さんの目で見た世界を垣間見ることができました。』

それぞれの興味により印象深かったポイントは異なった回答となりました。

また、改善点としては、さらに詳細な触図を希望する方が多く、その中でも光の表現や色のグラデーションが分かるものがあったらより良いというご意見がありました。

 

<プログラムメイキングのポイント>

今後の活動に繋げるため、ワークショップの中で一番印象に残ったところ、良かったところ、改善点を伺いました。参加者に了承を取りメモと録音で記録しました。

 

 

 

お見送りの時間。

 

アンケートが終わった後も、名残惜しくお話が尽きない様子。解散場所のJR上野駅公園口改札までお見送り隊がご一緒します。お帰りの際は、美術館のギフトショップに寄り道したりアート以外のお話もしたり、最初に比べると随分と打ち解けた様子が伺えます。

 

ワークショップを終えて。

 

私たちは今回のワークショップで見えない人と、見える人がアート作品を通してそれぞれの経験や鑑賞体験を語り合い、互いの考え方に触れる場づくりを目指しました。

その第一段階として、過去のとびらプロジェクトの取り組みを遡ったり、視覚障害の方との関わりをメンバー内で共有し合ったり、ソーシャル・アート・ビュー(アート・コミュミケータが地域で主催する団体)のプログラム体験などをしました。

 

そして、フェルメール展での実施に向け、鑑賞プログラム作りが始まりました。メンバーの知見を持ち寄っては見たものの、見えない人と見える人が作品の前で互いの気づきや思ったことを言い合える場を作るために、どのようなステップを踏めばよいのか。メンバーだけでは「想像の域を出ない」と先に進むことができませんでした。

そこで、メンバーと繋がりのある視覚障害の方々にお声がけをし、この取り組みに興味を持った方をモニターとしてお迎えしました。モニターの皆さんと美術館でのトライアルやオンラインでの意見交換を重ねていく中で、それまでの思い込みに気づいたり、新たな発見がありました。

 

例えば、メールで展覧会概要をお知らせする際に、はじめは音声で送ろうとしていましたが、読み上げ機能があるので文章の方が良いということ。

アテンドをされる際、人によって肩やひじなど触れる場所が違うので、初めに本人に尋ねてほしいこと。

触図に必要な情報量や解説とのつながりをもたせること。

対話を重ねることで、徐々に私たちの既成概念が解けてゆき、「視覚障害のあるモニター人たち」からお一人おひとりの人柄を知る機会にもなりました。

また、モニターの方々もプログラムに興味津々で参加し、美術館を楽しんでくれている様子で「互いに贈り合い、受け取り合う」ことを実感する時間となりました。

ご協力いただいたモニターの皆さまに、ここで改めて御礼申し上げます。

本当にありがとうございました。

 

今回の実施は、とても大きな一歩となりました。

プログラムに正解はなく、その場にいる一人ひとりとの豊かな場を作るために、展覧会の内容や、規模、その環境などに丁寧に応じながらこれからも「gift×gift」な場づくりの活動を続けていきたいと思います。

 

15人の人が写っている集合写真。

「gift×gift」を作ったアート・コミュニケータ。みんな、笑顔です!お疲れさまでした。

 

 


 

*障害のある方のための特別鑑賞会

普段は混雑している展覧会を、障害のある方が安心して鑑賞できるよう、休室日に特別に開館して鑑賞会を開催しています。事前申込制で年に4回開催されます。当館のアート・コミュニケータ(とびラー)が受付や移動のお手伝いをします。

障害のある方のための特別鑑賞会 | 東京都美術館 × 東京藝術大学「とびらプロジェクト」 (tobira-project.info)

 

*これからゼミ

活動任期3年の最後の年は仕上の年。「これからゼミ」は、とびらプロジェクトを離れた後、どのように活動をしていくかについて考え、実施します。例えば、ゲスト講師を招いた勉強会の開催や、ワークショップの実践など、各自が自分たちのスキルアップに必要な講座を自らデザインし、取り組むことができます。「アート・コミュニケータ」としての総仕上げの場です。

とびらプロジェクトってなに? | 東京都美術館 × 東京藝術大学「とびらプロジェクト」 (tobira-project.info)

 

*ダイアログ・イン・ザ・ダーク「対話の森」

真っ暗闇のエンターテイメントとして知られ、これまで約23万人が体験した「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。準備期間を経て、暗闇で心地の良い距離(ソーシャルディスタンス)をとりながらでも冒険できる、新たな体験型ソーシャルエンターテイメントとして生まれ変わりました。声や音、あらゆる感覚に着目しながら、人と人とのかかわり、つながりをどう育み、保っていくのかを体感していく。身体的距離が必要なwithコロナ時代だからこそのプログラムです。

対話の森とは? | ダイアログ・ミュージアム「対話の森®」 (dialogue.or.jp)

 

*アートスタディルーム

東京都美術館交流棟2階にあるアートスタディルームは私たちアートコミュニケータ(通称とびラー)が学び、集い、活動する場所です。

 


 

中嶋弘子(8期)

人と出会う、作品と出会う。アートの前での対話は、その人にも、作品にも、新しい自分にも出会えます。

そしてその気持ちは、他の誰かへと繋がってゆきます。アート・コミュニケータとして、このような「gift×gift」な場に立ち会っていきたいと思います。

 

【あいうえの連携】ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展 東京都立田園調布特別支援学校 高校2年生

2022.02.28

2月28日(月)、「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」で学校プログラム「スペシャル・マンデー」を行いました。
「スペシャル・マンデー」とは、展覧会がお休みの月曜日に、展示室を学校のために特別に開室し、作品鑑賞を行うプログラムです。お客さんのいない貸し切り状態の展示室で、生徒たちは本物の作品と出会い、アート・コミュニケータ(とびラー)とともに鑑賞します。

今回来館したのは都立田園調布特別支援学校に通う高校2年生のみなさん。都立田園調布特別支援学校は、知的障害のある生徒たちが通う学校です。コロナ禍で高校生となり、なかなか校外学習などが行えずに約2年間を過ごしてきた生徒たちにとっては、今回のスペシャル・マンデーが高校生になってはじめての校外学習になりました。
どんな風に美術館で過ごしたのか、当日の様子を紹介します。

 

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