2019.09.30
9月30日(月)、厳しい残暑の中、今年度2回目となる学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」が実施されました。
展覧会の休室日に、学校のために特別に開室して行われるこのプログラムは、貸し切り状態でじっくり本物の作品と出会える特別な機会です。この日の午後に参加してくれたのは、2校。そのうちの1校である、足立区立高野小学校の様子をご紹介します。
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2019.09.30
「こんにちは!」
「東京都美術館にようこそ!」
東京都美術館のアートスタディルーム(以下、ASR)に入ってきたこどもたちに、美術館の学芸員やスタッフ、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)たちが声をかけます。
やってきたのは、多摩市立教育センター ゆうかり教室の、小学生6名、中学生7名、保護者7名、引率7名の計27名。
そこに、プログラムの伴走役を担う9名のとびラーと、スタッフが加わります。
今日は、学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」の日。展覧会の休室日(月曜日)の東京都美術館を舞台に、特別な鑑賞授業が行われます。
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2019.09.30
ここは、上野恩賜公園の竹の台広場の前。
こどもたちの到着を待っている大人たちがいます。彼らは、東京都美術館を拠点に活動する、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)たち。
「もうすぐかな」
「あ、来た!」
この日行われるのは、学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」。
展覧会の休室日(月曜日)の東京都美術館を舞台に、特別な鑑賞授業が行われます。
バスに乗ってやってきたのは、町田市立鶴川第三小学校(以下、鶴川第三小学校)の、小学4年生76名、保護者7名、引率4名の計88名。そこに、プログラムの伴走役を担う22 名のとびラーと、スタッフが加わります。
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2019.09.29
アクセス実践講座・第3回
「認知症に対応した鑑賞プログラム」
日時|2019年9月29日(日)13:30~16:30
場所|東京藝術大学第3講義室
講師|林容子(一般社団法人アーツアライブ)
全8回で構成されるアクセス実践講座の第3回目を行いました。第3回目は、一般社団法人アーツアライブの林容子さんを迎え、認知症に対応した鑑賞プログラムに携わる経緯と、現在のご研究、また、超高齢化社会が抱える課題に対しアートができることについてお話を伺いました。
日本の現在の状況について林さんはこのように説明します。
「日本は世界一の超高齢化社会です。65歳以上の人口が今年度の6月で全体の28%、すなわち4人に1人以上が65歳以上。これが2060年までには33.9%、3人に1人が65歳以上という、超超高齢化社会を迎えるっていう現実があります。今のままでは立ち行かないということがよくわかると思います。
現在認知症を患う高齢者数が500万人。さらに大きい問題は、都心部においては特に独居高齢者が多い。独居高齢者が700万人います。財政負担も非常に大きい。GDPの30%が社会保障でそのうちのなんと78%が高齢者向けになっています」
このような社会的課題に対し、これまでの林さんの活動の経緯とこれからをお聞きしました。
アートマネジメントの道へ
大学で美術史を専攻していた林さん。卒業後は、美術の仕事に想いを残しながらも貿易を扱う仕事につかれたそうです。「ペッパーミル」や、ホテルのポーターが使う機能性が高くエレガントな「ワゴン」など、当時はまだ日本に存在しなかった海外の文化を輸入し一般に広めていく仕事に心血を注がれた時期がありました。ビジネスの現場で様々なご経験を積まれた林さんは、アメリカの大学院で「アートマネジメント」という分野に出会います。アートマネジメントについて学ぶため、ニューヨークに渡った林さん。講義は、林さんがどのように「アートと福祉」の出会いに立ち会ったかというお話に続いていきます。
アートと福祉との出会い
海外で様々なアートプロジェクトに立会い、特に欧米の企業や社会全体が「アート」に大きな価値を見出す文化に驚いた林さん。1999年にイギリスで行われた国際シンポジウムに出席し、病院や施設を視察したことが、アートと福祉に関わるきっかけだったそうです。
「入院している方、高齢の方、リハビリ中の方、外出することができない方々にとって、アートがものすごく必要なものなのだということに気づかされました」
当時の日本では病院や施設は、アートとまったく無関係な世界だったと、林さんは言います。そんな中、林さんはどのようにアートと福祉を繋げていったのでしょうか。
福祉の現場にアートを持ち込む
「一番大変なのは、活動の許可を取るということなんですね。アートが健康に寄与するという意識が浸透していないので、アーティストが来てとんでもないことをされては困るという不安が施設側にあるのです」と、林さんは回想します。
そこで、ある高齢者施設を訪れた際、林さんはまず「何か困っていることはないですか」と聞いてみたのだそう。
すると、
「利用者が部屋にこもったきり出てこない」
「同じような作りの部屋ばかりで、自分の部屋がわからなくなってしまう」
という“困りごと”が見えてきました。
そこで林さんは、教え子である武蔵野美術大学の学生とともに各部屋の障子に絵を描くプロジェクトを始めます。その部屋の利用者の楽しかった思い出を聞き、その様子を学生が絵にしていく中で、「着物はこんな柄だった」、「今の私もここに入れて」と様々なコミュニケーションの中で、利用者と学生が一緒に作品を制作していったのだそうです。
この活動を始め、認知症の方のための施設などでも活動の場を続けていた林さん。2009年には、一般社団法人アーツアライブを設立します。
アーツアライブでは「アートリップ」というプログラムを行なっています。アートリップは、認知症の方と美術作品を鑑賞するプログラムです。アーツアライブでは、アートコンダクターと呼ばれるファシリテータを育成し、プログラムを実施しています。
認知症の方との美術鑑賞について、林さんは次のように語ります。
「日本の高齢者のレジャー白書では、一番やりたいことは旅行なんですね。それから、ハイキング。その次にくるのがこの美術鑑賞なんです」
実際にプログラムを行うと、これまで笑わなかった方がニコニコとお話をしながら楽しそうに鑑賞する様子が見られることもよくあるそうです。
認知症で認知の機能が低下しても、「感情」が最後に残ることに着目し、「感情」の部分に直接作用するアートの効果をを認知症予防に取り入れることを提唱されています。
国際シンポジウムの成果
2018年10月、国立新美術館にて「アート・記憶・高齢化:アートを通した“認知症フレンドリー社会”の構築」というシンポジウムを開催されます。このシンポジウムでは、欧米で美術館や劇場といった芸術団体が認知症当事者と家族の為のプログラムを企画実施し、介護の現場でも芸術が認知症当事者の症状の緩和や、QOL(生活の質)を向上させることに注目し、米国、英国、オーストラリアという同分野の先進国より第一線の研究者、実践者を迎えて国内外の先端事例を紹介し、芸術、アートの力は“認知症フレンドリー社会”の構築にどう寄与することができるのか、その実現に向けての課題について考察が行われました。国内外から、医療関係者、美術館館関係者など約230名が参加したそうです。
認知症に処方されるアート
海外では、認知症に効果があるとして、美術鑑賞が処方されるというニュースが報道され記憶に新しいところです。人々のwell-being(心身ともに病気ではない、虚弱ではないというだけでなく、肉体的・精神的・社会的にすべてが快適で幸せな状態)にとって、アートに触れる機会を持つのは、ヒューマンライツ(人権)として尊重されるべきという考え方が広まりつつあります。
林さんは力強く語ります。
「私の夢としては、日本は今はアートがリハビリ療法の対象にしかなりませんが、将来は音楽やアートとか、そういった活動が介護保険や医療保険の一部でまかなわれていくべきだと思っています。ずっとアートリップのプログラムを始めた2012年の頃からそう思って活動しています。最終的にアートというものが医療に組み入れられていくということに繋がっていくために、もっともっと、説得力を持ってそれを証明していく必要があります」
アートを介して社会課題に立ち向かう1人のアクティビストとしての林さんの信念と力強さに胸を打たれた林容子さんの講義でした。
(東京藝術大学美術学部 特任助手 越川さくら)
2019.09.17
9月17日(火)、今年度最初の「スペシャル・マンデー・コース」が行われました。晴れ空のもと上野公園にやってきたのは、墨田区立第四吾嬬小学校に通う5年生・6年生・たんぽぽ学級のみなさんです。こども62名、9名の引率の先生、4名の保護者の方を迎えて行われたプログラムの様子をお伝えします。
スペシャル・マンデー・コースは、休室日の展示室を学校のために特別開室し、ゆったりとした空間の中で行われます。こどもたちが本物の作品と出会い、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)と共にじっくり鑑賞することができるとあって、毎年多くの学校から申し込みをいただいている好評のプログラムです。
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2019.09.17
9月17日(火)、秋のはじまりの晴れ間のもと「スペシャル・マンデー・コース(学校向けプログラム)」が行われました。
午後は、北区立田端小学校の6年生と足立区立足立入谷小学校の5年生が来館しました。
「スペシャル・マンデー・コース」は、お休みの美術館の展示室を学校のために特別に開室する日です。普段の展示室とは違い、ゆったりとした環境の中でこどもたちが本物の作品と出会い、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)と共に鑑賞できるプログラムです。
このブログでは、足立区立足立入谷小学校の様子を紹介していきます。
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2019.09.17
9月17日(火)、学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」が行われました。秋晴れのなか上野公園にやってきたのは、北区立田端小学校6年生の皆さんです。
「スペシャル・マンデー・コース」とは、休室日に学校のために特別に開室し、ゆったりとした環境の中でこどもたちが本物の作品と出会い、アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)と共に対話をしながら鑑賞する特別なプログラムです。
田端小の児童69名、引率の先生4名をお迎えしてスペシャルな午後が始まりました。
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2019.09.14
2019.09.09
4月から7月に開催された「クリムト展ウィーンと日本1900」に合わせ、表現をする事から遠ざかっているおとなの方に向けたワークショップを開催しました。
このプログラムでは、クリムトの作品に描かれている文様や装飾的な形に着目し、参加者が一緒に1枚の大きな布に描く事で、自分のかたちをつくり、みつけていきます。お互いに影響し認め合いながらひとりひとりがかたちをつくり、見つける喜び・達成感だけではなく、共に描いた参加者との新しい関わり合いが生まれる場でもあります。
ではまず、どんな背景でこのワークショップが生まれたのかお伝えします。
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このプログラムの前身に「つくるって?」と言う名前のとびラボがありました。
集まったとびラーで「つくる事のプロセス」に注目してみたい。
そんな想いから立ち上げたとびラボです。
このとびラボでは、特に○○をつくりましょう!と言った共通のゴールは決めません。材料・技法などを変えながら、ひとりひとりが自由に手を動かし、発見を繰り返していきます。
例えば・・
・布を様々な方法で裂いたり編んだりして「よい形」をみつける
・お菓子の箱を分解して再構築する
・クリムト展のチラシに印刷されたに作品を、要素別に切り出しコラージュする
この造形活動を通じてメンバーの関心の中に「分解」と言う1つのキーワードが生まれました。
分解する行為からは、更に「解放」「癒し」と言う言葉が浮かび上がり、造形活動を行うことで、様々な枠に囚われてしまった日常の感覚から離れることができるのではないか?と考えました。
社会環境や価値観の激変した時代、変革と共に生きたクリムトの表現からヒントを得ながら、参加者に楽しんでもらえるワークショップを計画してみることに。
正解がないと戸惑ってしまう
作品鑑賞はついついキャプションの情報に頼ってしまう
社会で広く認められている価値と比べる事で自分の持つ価値観に自信が持てない…
造形活動に限らず日常の中でも感じられる事ではないでしょうか?
そんな方々にお届けしたい造形ワークショップとして、試行錯誤のミーティングやトライアルを重ね、当日を迎えました。
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では、当日の様子を報告いたしましょう!
2019年6月16日(日)長梅雨の貴重な晴れ間となった休日。
案内看板を手に笑顔でお出迎え。
会場に着いた参加者から、2つのグループに分かれて座っていただきます。
グループ毎のテーブルには、クリムトの作品図版と展覧会カタログが置いてあります。開始時間まで手に取って観たり、とびラーとお話ししたり。まだまだ参加者の表情は少々固いでしょうか。
プログラム開始
この日の参加者は20代から60代と幅広い世代の方が11名。
「今日は、クリムトの描くかたち文様や装飾に着目して、『かたち』を見つけながら、みなさんと一緒に1つの大きな布に描きます。ここでしか味わえない体験を楽しみましょう」
ワークショップのながれの説明の後、つづいて各グループ毎に自己紹介が行われました。
クリムトの作品図版を使って自己紹介
自己紹介では、好きな・気になるクリムトの作品の作品図版を1人1枚選びます。
「この作品のここが好きです。」
どんな方と一緒に活動するのか、作品を通じてちょっぴり知り合う時間です。
自己紹介を終えると各グループ、二手に分かれ、クリムトの作品をみなさんで対話しながら鑑賞します。
クリムトの作品に描かれる細かいかたちも間近に見ながら、各々がどんな見方・考え方を持っているのか、そして自分はどう考えるのかを知ります。
このグループごとの鑑賞の時間は、後に続くグループで1つの作品をつくりかたちを見つけるワークの大切な道しるべにもなります。
ここでは「クリムトの“かたち”」を見つけます。
鑑賞ファシリテーターであるとびラー1名と、2~3名の参加者とのグループ構成です。
「かたち・色・気になる、好きなところはありますか」の問いかけから、
クリムトが描いたかたち(文様・装飾)に着目していきます。
「やはり金を使った装飾が素敵・・」
「よ~く見るとたくさんの文様が組み合わさっている」
「あら、そんな見方もあるのね」
自分1人では気づかなかった・気に留めなかったクリムトのかたち。
これからの造形ワークにどんな手掛かりを与えてくれるのでしょうか。
参加者のみなさんの表情が柔らかくなってきたところで、いよいよ「わたしのかたち」を見つけに行きます。
「クリムトの作品の中に気になったかたちはありましたか?これまではクリムトが描いた形を見つけてもらいましたが、これからは手を動かしながら、『わたしのかたち』を見つけていいきます。」
かたちを描いて型紙つくり
まずは一人一人に画用紙と木炭が用意されました。
木炭はデッサンの経験がない方には馴染みがない画材かもしれません。
さて、どんな書き心地でしょう・・
「紙の好きな場所に丸を描いてください。」
描きを終わると、
「次は線を描きます。ルールーがひとつあり、司会者が音を鳴らしている間は手を止めずに描き続けてください。」
初めての木炭、滑らかな書き心地を確かめながら描きます。
同じ形でも、ひとりひとり違う丸、自由な線・・ちょっと戸惑ってしまった時は、とびラーの声掛けで少しずつ手が進みます。
最後に描いた線をつなげて、ひとつのかたちをつくります。
これでひとり1枚の作業は終了です。
つづいて大きな紙が登場します!
「この1枚どう使うのかしら?」
B3サイズの画用紙から大きな紙へ・・参加者のみなさんはちょっとびっくり。
「大きな紙の好きな場所に自分に三角を描いてください。」
参加者は座っていた場所を離れ、好きな場所に移動しながら描きます。
B3サイズでは見られなかった大小様々な三角。ここで正解はありません。自分にとっての三角が様々な表現で描かれます。
「音を鳴らす間は描くのを止めず線をつなげて描いてみましょう」
カチカチカチカチ・・・・・・・
移動しながら、心のおもむくままに描いていきます。
大きな紙の上で、他の参加者と関わり合いながら描いていきます。
ぶつかったり重なったり交差したり・・互いの線が生き生きと交わり合います。
カチカチカチ。
音が鳴り終わり、ここからもうひとつわたしのかたちをつくります。
自分が描いた線と他のの参加者が描いた線がつながったり。
「この線いいね」
線と線が交わり偶然できた形の中から、気になった形を切り出します。
先に描いたB3の紙からも切り抜き、合計2枚。
切り抜いた『わたしのかたち』はこれから描く作品の型紙になります。
切り終わったらグループ毎に1枚の布の上に配置し、両面テープで固定します。
「ここがいいかな」「大きすぎるかな」「どちらを置いたらいいかな」
「こっちがいいね」「ここに置いてみたら」「これは動かさないで」
ひとりひとりの『わたしのかたち』。
どの様に置いたらいいか迷った時はグループの仲間やとびラーに相談します。
大胆なかたち、有機的なかたち、クリムトの作品にあった様なかたち?・・・
ひとつとして同じかたちはありません。
さて、これらはこれからどの様になるのでしょうか?次はいよいよアクリル絵の具を使って描きます。
アクリル絵の具でかたちを描く
作業台に並ぶ、不思議な道具とたっぷりの絵具。
この材料を使い、スタンピングの技法を中心に、かたちの型紙が置かれた大きな黒い布に描いていきます。
簡単な使い方のデモンストレーションが終わると、参加者は思い思いに紙パレットに絵具をたっぷり盛り付けます
「布の一番好きな場所から描き始めてみましょう」
参加者は手を動かすことにも慣れ、あっという間に布に描き始めました。
手元のパレットの絵具はいつの間にか混ざり合い、オリジナルの色で描かれて行きます。
「クリムトと言えば金色でしょ」
絵具係のとびラーにたっぷり盛り付けてもらった金色でかたちを描きます。
道具だけではなく手も使ってスタンピング。
思うかたちが描けるまで、絵具の感触を確かめながらまずは描いてみてみる。
参加者は手を休めず集中して描きます。
とびラーも一緒に描いて寄り添いながら夢中になっていきました。
「少しずつ型紙を剥がしてみましょうか」
参加者のみなさんの表情・手の動き、制作の進み具合のタイミングを見て、とびラーが声をかけます。
「おおおおお・・・」型紙を剥がし、最初につくった「わたしのかたち」が、黒く浮かび上がるたびに歓声が上がります
「イメージしていた通り」
「全く違うかたち」
「もう少し手を入れたいかな」
型紙を剥がしてみる事で、もっとこう描きたいという欲求が湧いてきました。
ちょっと離れて作品を見てみたり、また描いたり、制作に没頭する様子が伺えます。
さあ、完成です。
みんなで描いた大きな作品を展示している間に、お茶を飲みながら感想をシェアすると、率直な感想が笑みと一緒に溢れてきました。
「大きな絵を描くのは小学生以来」
「予想がつかないところが面白かった」
「他の人のスタンピングや色に影響された」
作品の展示が整い、全員での鑑賞会に移りました。
作品鑑賞
まずは、みんなで描いた大きな作品を眺めます。そして、大きな作品の中の特に好きな部分を選び、タイトルをつけてそれぞれの方が発表しました。
タイトル:生まれる
「ハートのかたちを中心に世界が出来ている様な気がするからです!」
タイトル:轍(わだち)
「わだちみたいだな・・と。沢山の人が通ったところの感じがしました」
タイトル:未来のニケ
「このかたちがニケに見えました。羽根のかたち・・色々なものがなくなって宇宙だけになってもここはあるみたいな感じがして・・・」
タイトル:ジュラ紀
「このかたちがジュラ紀からの生命の流れになって見えるからです」
自分で作った型紙や描いたかたち、グループの人と混ざり合ってできたかたち、いろいろな部分が選ばれました。
「ここ素敵じゃない」
「この作品とても好きです」
みなさん、お互いの「わたしのかたち」に興味津々です。
「ひとつの正解を探すのではなく、正解をつくる事ができる体験」
司会から伝えられたこの言葉を参加者のみなさんにも感じてもらえたのではないでしょうか。
最後に、開催中の「クリムト展ウィーンと日本1900」のご案内をして、ワークショップは解散となりました。終了後も会場では作品やメンバーと一緒の記念撮影で賑わっていました。
私たちとびラーが参加者に寄り添い、見守る中で感じた、描く集中力や初めて出会う方々との間で生まれる気づき・共につくる喜び。クリムトのかたちを互いに見つけ合う鑑賞や型紙づくり、手に取ってみたくなる画材・道具の選択、そして当日の場づくりが、今日のこの時間につながったのではないかという手応えを感じます。
創作することを通して美術館を体験する。言い変えればつくる事で生まれるコミュニケーション、美術館から生まれるコミュニケーションです。この造形プログラムを通じたコミュニケーションが、子供の頃に無心で何かをつくっていた時の気持ちに立ち返り、表現する事の魅力を見つけること、そして日常に戻ってからも様々なアートに親しむきっかけになって欲しいと願います。
さて、最後にこのワークショップに込めた「枠組みからの“解放”」について。参加者のみなさんがどのように解放を感じてくれたのか、アンケートの感想を見てみましょう。
◎人と一緒に描くとお互いのアイデアを「いいね」と認め合いながら、意図しなかった面白さと発見がたくさんあった。また参加したい。
◎自分のスキルなどを考えるとためらいましたが、思いのほか楽しくできたのが良かった。
◎初対面の人と1つの作品を創り上げる事が想像以上に楽しかった。
◎作品を通して感想や気づきを語り合えるのが良かった
◎家庭では出来ないダイナミックな創作ができた。
◎たくさんの絵具と思いもよらない描写道具が印象に残った
◎作業が楽しく人それぞれの印象など聞けて全てが正解
◎つくりながら人と関わるのって面白いな・・としみじみ思いました
◎色を自由に塗るたのしさ、思ってもみないかたちの面白さが印象的です
◎クリムトの絵について意見交換は他の参加者と意見が異なり発見があった
◎型紙がどの様に使われていくのか不安もあったが・・「なるほど・そういう事か」とわかったら驚きました。
ふるいから落とされる事、隙間に挟まれてる事につい目が行ってしまう毎日・・・
そこにある魅力を受け入れてくれる場がアートでそこにある魅力に気づかせてくれるアートとコミュニケーション。さて、これからどの辺りとつながってみようかな?