たとえ実施できなくても
プロセスは大事
池田 憲夫さん
たとえ実施できなくても
プロセスは大事
池田 憲夫さん
印象的なのは何と言っても 缶バッジプロジェクト
「放課後の美術館」で子供たちと手を動かす中で、自分も何かやってみたいと思い「イロイロとび缶バッジプロジェクト」に参加しました。活動してきたとびラボの中で一番印象が強かったです。「バルテュス」展では、消しゴムハンコ作りに参加しました。「大英博物館」展では進める中で迂用曲折し実施に至らなかったのですが、「モネ」展は無事実施する事ができました。たとえ実施できなくてもプロセスは大事で、貴重な例になるのではないのかなと思います。
ここでの出会いは財産
とびラーは色んな年代がいますよね。会社だけ、学校だけだと世界が狭くなってしまいます。職業やバックボーンがばらばらの人との出会いは財産になると思います。特に若い人は、先の事を考えると沢山のチャンネルを持つ事になるし、こういう場に関わるのは貴重だと思います。任期満了してもネットワークがあるのはいいなと思います。
そこにいるのは100人のとびラー
打てば誰かしらに響く
石井 寿和さん
そこにいるのは
100人のとびラー
打てば誰かしらに響く
石井 寿和さん
この人と一緒ならこんなことができる!
何かやるときに基本的には自分だけでやるというのを前提に生きてきました。でも、「とびらプロジェクト」では一人でやる、というのはなくて、どこかに参加したり自分が誘ったりして何人かでやる。これだけ人がいるので打つと誰かに響く。誰かと一緒になんかやろうって考えられるようになったのは大きな変化かな。
「とびらプロジェクト」は村
「とびらプロジェクトってなんですか?」と任期満了したとびラーに聞いて回ったら、「部活」という意見が多かった。自分は少し違って、ここは「村」だなぁと感じました。新しい村のかたち、仮想空間のような。実際に土地があって人が住んでいるわけじゃないけど、掲示板とかいろんな活動とか、確かにそこに人はいるみたいな。自分たちが去ってもそこに村は残るので、3年という期間を考えずにもっと長いスパンで活動を見ていくようなことがあってもいいのではないかなぁと思います。
対話が生まれる場を作って
人と人を繋げたい
植田 清一さん
対話が生まれる場を作って
人と人を繋げたい
植田 清一さん
下の世代と上の世代を繋げるコネクターに
最初の基礎講座に参加した時、1期から全然話しかけられなかったんです。「飲み会とかないのかな?」とか、「思ったよりつまらない場所かも?」と思っていました。その経験からもっと自由に話せる場所をつくろうと「ゆるカフェ」が誕生したり、意図的にバーベキューや飲み会などを企画したりしました。まずは場をつくると、そこから対話が生まれると思うんです。とびラーには色々な年代の方がいるので、30、40代は下の世代と上の世代を繋げるコネクターとしての役割を意識しています。
アートを通した場づくりを続けていきたい
今後はアートを活用して、世代を超えた交流や、様々な人が混ざり合う場を作るような活動をしていきたいと考えています。とびラーとして実践したことを活かして、アートを通した交流の場や学びの場、人が集まる場をつくって人と人を繋げていきたいです。好奇心で動いていますが、今ではアートがその好奇心の源になっています。
つまずきながらも
あきらめなければ
できる事があるのかもしれない
内野 聡子さん
つまずきながらも
あきらめなければ
できる事が
あるのかもしれない
内野 聡子さん
新しい活動の場を求めて
仕事もしていますが、子育ても一息ついたので、自分の新しい活動の場所が欲しいなと思いとびラーになりました。そして好きな場所に来ることが習慣になればいいなと思っていました。
少し前に出る気持ちに
自分は受け身な性格で、最初はサポート的なことができれば、という姿勢でしたが、インプットだけでなくアウトプットも必要だと気付きました。結果、鑑賞のファシリテーションを学び、鑑賞会を開くことも叶いました。いくつになっても新しいことが出来るってうれしいなと思います。
「建築ツアー」ガイドと「とびらアンバサダー」
鑑賞実践講座を3年間、2年目に「のびのびゆったりワークショップ」、3年目は建築実践講座に出てグループで「建築ツアー」を行いました。自分1人では成し得ないことでしたが、他の仲間と協力してガイドを務めることができました。「キュッパ」展ではアンバサダーをさせてもらって、美術館になかなか来られない身近な友人と双子の子供を誘い、喜んでもらえたのが心に残りました。これがアート・コミュニケータの基本だと実感しました。
とびらプロジェクトに
負けない場をつくりたい
太田 代輔さん
とびらプロジェクトに
負けない場をつくりたい
太田 代輔さん
とびラーの活動って、仕事にも通じるかも?
とびラーの活動って、仕事にも通じる部分があると思います。企画を立ち上げて、そのチームを率いたり、いろいろ試行錯誤したり。自分がやりたいと思うことを「とびらプロジェクト」でどんどんやっていけばいい。かなり個性的で年代も様々なメンバーがいる。ここで生まれるものに金銭的な「利益」は出ないけれど、自分が先頭に立ってやっていくと、これからの日々で必ずプラスになるものがあると思います。
新たな「拠点」をつくる
「アートを介したコミュニケーション」を、今後もやっていきたいですね。まずは「拠点づくり」から。都美をホームグラウンドにして3年間やってきました。これから、活動の場は広がっていくと思います。「とびらプロジェクト」に負けないような新しい場所をつくっていきたいですね。アート・コミュニケーションを世間に広げていきたいと思います。
うれしいプレゼント…
「居場所」をもらった!
荻野 祥子さん
うれしいプレゼント…
「居場所」をもらった!
荻野 祥子さん
世の中や人とのつながりが持てた
「3つ目の場所を作ろう」というキャッチコピーを見て「これが欲しかった!」ということに気づきました。学校にいっていなくて、就職していなくて、結婚もしていないので居場所がありませんでしたが、とびラーになって世の中や人とのつながりを持つことが出来ました。
ここに来ると楽しそうなことが起こりそうな気がする
年代やバックグラウンドが違う人といるのがちょっと疲れることもありました。でも、とびラーになったことで上野が自分になじみがある土地になりました。色んな思い出があるけど、とびらプロジェクトが好きで、ここに来ると楽しそうなことが起こりそうな気になる。
メッセージ
「この指とまれ」を自分から上げてこなかったのですが、言い出しっぺになってみたらまた違った経験になったのかもしれないですね。「とびらプロジェクト」に何かしら恩返ししてみたいです。藝大バトンのような…「武蔵美バトン」をやってみようかな。
とびラーになって
一番感じたのは、
「芸術の持つ癒しの力」だね。
尾崎 光一さん
とびラーになって
一番感じたのは、
「芸術の持つ癒しの力」
だね。
尾崎 光一さん
とびラーになったきっかけ
定年後、社会への恩返しをしたいと考え参加した横浜トリエンナーレで、東京のアートの現場の活動がしっかりされていると聞きました。また、「マウリッツハイス美術館」展を見に来て、激混みの会場で青いターバンを巻いて、楽器を楽しそうに演っている人たちを見かけたのが最初の出会いでした。
3年間を通して、印象に残っていることは?
「藝大生インタビュー」や、「スペシャルマンデー」等は毎年担当し、自分自身も大変に刺激を受けました。また、「障害のある方のための特別鑑賞会」で、障害のある方に自由に説明してもらっている場面に遭遇して、その盛り上がりに目から鱗が落ちる思いでした。「SAVORIYA」活動も思い出深いです。今は無きSAVOIAでのピザ&ビール。そこでの会話も、後々のとびラボに繋がったりしました。サラリーマン人生時代には知り合えなかった、違う生き方の人、違う世代の人と話せました。貴重な経験をさせてもらいました。
都美に行けば
新たな体験がある
小高 隼介さん
子供と接する中で見つけた「スイッチ」
様々な活動に参加しましたが、その中で印象的だったのは「海をめぐるものがたり」の鑑賞ワークショップです。小学生と一対一は初めてで、口数少ない低学年の男の子だったので不安でしたが、話しかけるうちに急にふっと話し始める瞬間があって。これがアートの楽しみを知った瞬間、都美で言う「スイッチ」が入ったときなんだなって。嬉しかったです。
迷っていたらとりあえず行ってみて
美術専門外の自分には、都美の活動は新鮮で楽しいし、新しく知ることが沢山あります。3年間はあっという間だろうなと最初から分かっていたので、仕事で疲れていた時でも頑張って来ていました。ちょうど変則勤務の今だけ無理できますしね。とびラボや講座は、参加を迷っていたらとりあえず行ってみてほしいです。来てみたら何かあるし、直接会って話して初めて気付くことは多いはず。期待してなかった時に限って、意外な体験があったりします。
とびらプロジェクトは
新しい発見の場でした
小沼 悟さん
とびらプロジェクトは
新しい発見の場でした
小沼 悟さん
「のびのびゆったりワークショップ」の活動
活動のメインが「のびのびゆったりワークショップ」だったのですが、そこで実際に接した子供たちは、言葉で意思疎通ができませんでした。これは予想外でかなり苦労しましたが、自分から相手のことを知る努力が必要だということを学びました。苦労の分、得られたものは大きく、1・2年目とも最終回では、担当の子供から大きな感動を得ることができました。さらにワークショップなどに参加すると立場に関係なく、学生の僕にも真剣に向き合ってもらえたことに驚き、嬉しかったことも印象に残っています。
指示されて動くではなく、積極的に参加する
大学入学時はアートには特に興味がなかったのですが、卒論を「イギリスの現代美術」で書くまでになりました(笑)。また、3年生のときに、ある会社の編集部でのインターンを体験したのですが、これはとびラーでの体験を通して「面白いものなら飛び込もう」と思えたからですね。
とびらプロジェクトが
地域の文化資源に?
亀山 麻里さん
とびらプロジェクトが
地域の文化資源に?
亀山 麻里さん
日常生活ととびラー活動が自然に混ざり合う感覚
とびラー活動を通じて日常的にも様々なコミュニティや社会的な意義がある活動に関われたことに感謝しています。日常生活にとびラー活動が自然に混ざり合う、このような仕組みや場があることがいいと思います。
自分のフィールドでもなにかを仕掛けていきたい
「とびらプロジェクト」は、東京都の中でも文化的に恵まれた環境で実践しているから、「東京(都美)だからできるのでは?」と言われると寂しい。地域に戻り、基盤がなくても、「人を結ぶ仕組みや場づくり」を「とびらプロジェクト」のような仕組みで出来ないか、たとえば子どもたちの居場所や医療・公共機関でそんな仕組みや場をつくっていけたらいいなと模索しています。ミュージアムはいろいろな可能性があると信じているので、今後、「とびらプロジェクト」のような活動がもっと広がれば、そこに暮らす人々の文化や生活の基盤になるコミュニティづくりが加速するんじゃないかな、と思います。
「説明」ではなく
「対話」を楽しむ
岸川 久美子さん
「説明」ではなく
「対話」を楽しむ
岸川 久美子さん
皆で膨らませる中で形にしていく
ミーティングでなかなか話が進まないと、最初は違和感もありましたが、だんだんそれもありかなと思うようになりました。さっさとやるのはここでは違うのかもしれない、話が横道にそれて、そこから生まれることもある。効率的ではないのですけど、そうじゃないところに価値を見つけた気がします。
説明ではなく対話を楽しむ
建築中心に活動した理由は、土曜日しか出られなかったからです(笑)。ツアー後の振り返りでは分け隔てなくアドバイスを言ってもらえるのが新鮮で、素直に受け止めて次に活かそうと思えました。「建築ツアー」では、説明だけではなく対話するよう意識しています。気持ちの余裕がないとなかなか難しいですけど…少人数で対話を楽しみながらまわるのが理想です。残りの時間では「建築ツアーガイドQ&A」を更新したいです。ガイドのハードルが低くなるようにと作成したものなので。
「来る人が楽しいと思える
場が作れればいいな」
という思いが全ての根底に
工藤 阿貴さん
「来る人が楽しいと思える場が作れればいいな」
という思いが全ての根底に
工藤 阿貴さん
私のポジションは子育て中のお母さん
とびラーが老若男女幅広いのは、社会の縮図的なミニ社会を作っているんじゃないのかなと思ったんです。色んな声があれば都美や社会に反映されるかもしれない。私は子育て中のお母さんであり専業主婦という立場でものを言っても良いのかなと…。子供を産んで美術館や社会が遠くなったと感じている人も来られる場所になるといいなと思いながら過ごしました。
ここに来る理由は人に会うため
ここに来ると居場所があるので、自分を客観視できるようになりました。1人でいるとどんどん自分も周囲も見えなくなるんですけど、ここで話をして聞いてもらえることが自信に繋がると気づきました。話しかけられたり名前を呼ばれたりすることは、その人の存在を認めることになって居心地がいいと実感して、他の場所でも進んで人に声をかけるようになりました。私は人が好きなので、「来る人に居心地がいいと思える場が作れればいいな」というのが全ての根底にある気がします。
3年の最後に、ああこれなんだ!
という実体験ができて幸せだったな
小林 雅人さん
3年の最後に、
ああこれなんだ!
という実体験ができて
幸せだったな
小林 雅人さん
活動を通して変化したこと
仕事ではゴールを定めてプロセスを決めるのに対し、ここはプロセスから決めていくことに最初は違和感を覚えましたが、それも面白いなと思うようになりました。また、活動の中でルーティンとしていた「建築ツアー」を通して、プライベートでも建物を見る目が変わってきたと思います。
「あいうえの冒険隊」
絵を描くことは得意でも歌や踊りは苦手だと思っていた子供たちが、最後には目を輝かせて上野公園をパレードしていました。子供たちが新たな発見をしたことは、右往左往したプロセスの中で我々も予想しなかった嬉しい驚きの結末となりました。「あ、この感覚を味わいたかったんだ。3年間の中でこの体験ができただけで満足」という気持ちです。ゴールを定めていないところでアプローチをしていると事件が起こるんです。最初の違和感もいいなと思うようになり、3年の最後に成果物として、ああこれなんだ!という実体験ができて幸せだったなと思います。
自分の目で作品を見て、
どう感じるかを
丁寧に扱うことが大事
近藤 乃梨子さん
自分の目で作品を見て、
どう感じるかを
丁寧に扱うことが大事
近藤 乃梨子さん
作品の前で考える時間を大事に
美術史や人の意見ではなく、自分自身の目で作品を見てどう感じるかをもっと丁寧に扱うことが大事だとずっと思ってきました。作品の前で足を止めて考える時間を、皆がもっと大事にしたら世の中が良くなるんじゃないかなと思います。職場で自分が接する人には考えるきっかけになる問いかけをしていますが、全体がそういうマインドではない中でやることは難しかったです。
広げずともある中で良いものを作る
自分自身の変化は、まさに「そこにいる人が全て式」の「やれない事はやらない、やれる事の中でベストを尽くす」で、自分ができないことは誰かにお願いするようになりました。人の事を本当に信頼できるようになったと思います。仕事では足りない所を埋めることを考えるのですが、ここでは足りない所は足りないままで、足りている所をしっかりやるようになりました。「とびラーだから大丈夫」という安心感の中で3年間過ごせたのは良かったです。
とびらプロジェクトは負荷の高い、
刺激のある暇つぶし!
篠原 久美子さん
とびらプロジェクトは
負荷の高い、
刺激のある暇つぶし!
篠原 久美子さん
誰かが穴を埋めていかないと
「缶バッジプロジェクト」では、たまたま役割があって結果的に私が引っ張っているように見えただけで、別にリーダーじゃないんですよ。アイデアを持っている人、絵が上手な人もいる。私はどちらもないけど、スケジュールを引いてまとめることができる。メンバーは面白い人が多い、でも突っ走る。じゃあ私がまとめないと、と。組織は生き物だから、誰かが穴を埋めていかないといけない。適材適所!
とびラボに最初から最後まで関わってみる
「とびらプロジェクト」は負荷の高い刺激のある暇つぶし、という考えもあっていいのかなぁ。でも、何でもいいからとびラボに最初から最後まで関わってみたほうがいい。中に入って活動すると、とびラー・スタッフをはじめたくさんの人と関われる。ちゃんと関わると自分にとっていいお土産が絶対もらえる。責任を持ってやると、反省点も見えてくる。企画からのプロセスを踏むことで体験できることも多いですよ。
とびらプロジェクトは
毎年変化し続けている
鈴木 穂波さん
とびらプロジェクトは
毎年変化し続けている
鈴木 穂波さん
子供たちと関われるプログラムを軸に
3年間の活動では「Museum Startあいうえの」の「放課後のミュージアム」や「スペシャルマンデー」など、小学校の鑑賞プログラムで関わった子供たちが印象に残っています。最初の年は様子がわからないので、できるだけいろいろな活動に参加しました。元気な男の子が暴れちゃった時に、伊藤さんが隅っこで叱っていたのが印象的でした(笑)。大勢でお花見をした事も楽しい思い出です。ここでじっくり人と向き合うという事を教えてもらった気がしています。
変化する「とびらプロジェクト」
2年目は仕事に就いたこともあり、あまり活動に参加できませんでした。最低限の活動しかしていない間に「とびらプロジェクト」は色々と変化し、あまりの変わりようにどうしようかと思う程でした。年度末のお花見では、久しぶりに顔をあわせた人たちが自然に暖かく受け入れてくれてほっとしました。3年目は最後の年なので、できるだけ参加していました。
3つめの場所に心惹かれて
髙尾 眞理子さん
リフレッシュする場所が必要!?
図書館を訪れた際に「とびらプロジェクト」のリーフレットを見つけ、3つめの場所という表現に心惹かれました。以前、仲の良い友人がとても疲れている姿を見て、リフレッシュを兼ねて美術館へ誘ったことがありました。そのとき友人がガラっと雰囲気が変わる瞬間を見て、「誰しもが、仕事と家以外にリフレッシュできる場を必要としているかもしれない」と思ったのです。
風通しの良さが心地よい
印象に残っている活動として、「のびのびゆったりワークショップ」では、1対1で寄り添うという関わりのなかで、子どもの表情が変わる様子や、障害の有無を越えた子ども同士の関係が深まっていくのを目の当たりにしました。また、ふりかえりの場やウェブ上の掲示板があるから、自分の担当以外のことも確認できる。そんな風通しの良さが心地よかったです。「缶バッジプロジェクト」では、当日のワークショップや事前のミーティングや準備も、毎回ユニークで楽しみでした。
ヒトは対話から生まれる
創造を求めている!?
高橋 聖子さん
ヒトは対話から生まれる
創造を求めている!?
高橋 聖子さん
美術館は絵を見に行くだけの場じゃない!
海外で生活していた時、近くの美術館に行くと、私には経験のない不思議な鑑賞会に遭遇しました。作品を囲んで、知らない人同士が絵を見て話をして、なんかまとまって、そしてさよならみたいな。私はその場で、その国の言語化力や発想力を感じつつ、一人ではなし得ない創造を楽しんでいました。帰国後、これを日本で実現したいと思いとびらプロジェクトに辿り着きました。大人向けのプログラムとして、作品を見て感じたことを共有する「ヨリミチビジュカン」をやってみると、連続で来てくれる方もいました。「これを誰かと見てみたい」という共通のテーマで美術館に人が集まって来る、徐々にこういった活動が広がると日本がもっと豊かな国になるのではないかと思います。
とびらプロジェクトでの出会いを大切に
今後、ここで出会ったメンバーたちと、対話を介した作品鑑賞の活動を広めるとともに、2020年のオリンピックに向け、海外からの来訪者も視野に入れたアートコミュニケーションの場に何らか関われたらと思っています。
同じものを見ていると感じた
多世代との出会い
高橋 和佳奈さん
同じものを
見ていると感じた
多世代との出会い
高橋 和佳奈さん
とびラボで成長した自分
とびラーは予想以上に年上の方ばかりで驚きました。今までは学生としか交流がなく、年上の人と物事を進めるのは初めてでした。最初はミーティングのまとめ方も、メールの出し方すらわからなかったけれど、とびラボに参加するうちに少しずつ慣れました。今では、大学のプロジェクトでもホワイトボードを使っています。私にとってはサードプレイスではなくセカンドに思えるくらい、ここでの活動が占める割合が大きかったです。
同じものを見ている
若い人たちを美術館に呼びたいと思って開いたとびラボが、「ミュージアム・クエスト」の「謎解き」という手法になりました。ミーティングは毎回順調に進んでいるつもりが、実現までにだいぶ時間がかかりました。過程が大切ということも身を以て経験しました。紆余曲折、泣いた日もありましたが結果オーライです!いろんな方と関わっていく中で、同じものを見ていると感じました。この感覚が味わえたことこそが収穫です。
自分がいる事で、場が温かくなる!
と実感し自信へ
竹之内 文樺さん
自分がいる事で、
場が温かくなる!
と実感し自信へ
竹之内 文樺さん
みんなで何かをつくる温かい場
印象に残っているのは1年目の「ヨリミチビジュツカン」。場をコーディネートするというより、それぞれがまず自分自身が楽しみたいという意識で場を創っているようで…とても温かい場だと感じました。将来、ここで体感したような場や波動を生み出し、人と寄り添い合う事が自分の使命かもと、ぼんやり感じ始めました。
今の自分を脱ぎ去って子供の感覚に共感
初めは「自分はとびラーだから、責任をもたなきゃいけない」という気持ちが強かった。子供たちの目線に立ち、一緒に楽しむという感覚がなかった。その後、子供たちとどう関わっていけばいいかを考え、自分は場を温める役割に徹しよう!その場を全力で楽しもう!という意識を持つようになりました。子供たちの眼の動きや、感情の動きなど、些細な変化を感じとり、寄り添う事が何よりも重要だと感じました。私がいる事で、場が温かくなっているかも!いい方向に動いているかも!と実感できて、自信に繋がりました。
ものづくりから人へ
玉置 真さん
意識が変わる瞬間
もともと木工の家具職人をしていたのですが、ものづくりから場づくりに興味が移ったのは、日比野さんのプロジェクトに参加していた影響が強いですね。以前、一般の方向けの鑑賞ガイドを企画した時に、企画を通して鑑賞者の意識が変化する瞬間に立ち会い、自分の意識も変わりましたね。
とびらプロジェクトって「仕事」くらい本気
最近働き方について考えていて、日本人はお金が発生するものだけを仕事というけれど、お金がなくても仕事といっていいのではないかと思っています。「とびらプロジェクト」って「仕事」くらい本気ですよね。知人のアーティストで、絵をかきながら「稼ぐため」の仕事をしている人がいるのですが、絵を描いている環境が大切であり、それは「稼ぐため」の手段ではない。とびラーってこの感覚に近い気がします。対価が発生しないものも仕事として見ていくこと。そうした考え方が最近の自分には合っています。
周りに美術に興味を持っている人が
いっぱいいた!
筒井 彩さん
周りに美術に
興味を持っている人が
いっぱいいた!
筒井 彩さん
アートプロジェクトの渦中へ
とびラーになったきっかけは、現代アートに関心があったので、何をしているのか知るためにアートプロジェクトの渦中に入ってみたかったんです。色んな流行がある中で体験型ってどういうことやるのかなぁと。
狭いフィールドの外からの意見を
とびラーになってみて、色んな人が美術史とか美術に興味を持っていることが分かりました。自分は芸術学科で学術的な立場なので、美術の世界はコアだったりアカデミックだったり、ちっちゃいフィールドで仕事するのが当たり前みたいに思っていたんですけど、意外ともっと興味を持っている人は周りにいるんだなぁということに気づかされました。2月に院試があるので、まずはそこなんですが、今学んでいるイタリア美術の研究は継続していきたいです。他には、なにかしら美術館をステージにして、狭いフィールドの外からの意見を発信していく場とか。今後も美術館を媒体にして何かしらやりたいと思っています。
目の前のドアを叩こう!
沼田 直由さん
尖っていたものが、丸くなった
「あなたはどこに対してもクレームつける。それは不幸な人がすること。」と言われたことがあります。最近はそんなことを言われることも無くなり、幸せになってきたのかなって感じます。とびラーの活動と、いろんな活動を両方やっていると、それぞれで「尖っていたものが」が丸くなった気がするんです。コミュニケーションや「きく力」を学べたのは新しかったです。自分が予想していることと違う展開が起きても、ああそうなんだと受け止めていました。そういうところで自分の変化を感じましたね。
とびラーへのメッセージ
ひとつは、とびラーのみなさんは仕事があったり家庭があったり、限られた時間の中だとは思いますが、もっと自分で何かをやろうとしてほしいです。人生はいろんな選択肢がありますが、目の前にドアがあった時、叩く勇気が必要ですよね。ドアの向こう側に行くのが怖いこともあるけれど、叩くか叩かないかでその先の人生が変わってくる!
美術館と人をつなげる、
美術館の敷居を下げる
活動をこれからも
櫟原 千寿帆さん
美術館と人をつなげる、
美術館の敷居を下げる
活動をこれからも
櫟原 千寿帆さん
自由度の高い能動的な環境
もともと学芸員のように人と作品をつなぐ仕事につきたくて、まずは美術館のボランティアから始めてみようかなと考えていた時に、大学でポスターを見つけました。美術館の組織内に入りこめるという打算的な考えもありました(笑)。いざ入ってみると自由度の高い、自分たちが能動的に活動できる環境が魅力的でした。
美術館愛好家を育てたい!
とびラボでは「ミュージアムクエスト」などに参加しましたが、子供のころから美術館が好きになるような愛好家を育てていきたいです。子供は反応がたくさん返ってきて楽しい(笑)。美術館の敷居を下げる活動を個人でもやっていきたい。アイデアはあたためています。思いついても実践するまで一歩踏み出すのが大変なんですけどね…。でも、子供との接し方を学べたので、うすうすつかめました。今まで学んだことを糧にして、アウトプットを行っていきたいです。
ここで知り得た全てが
アートを身近にしてくれました
古海 博久さん
ここで知り得た全てが
アートを身近に
してくれました
古海 博久さん
「放課後の美術館」―子供たちと一定の期間を共有できたのは新鮮
「放課後の美術館」で約半年間、毎週子供たちと過ごしていました。同じ顔ぶれのメンバーで何度も過ごすので、共有するものがお互いにある。そういう時間の過ごし方ができるのがとても新鮮でした。のこぎりを手伝ったりしているうちに、2年生の子と仲良くなって「ひろさん!ひろさん!」と呼んでくれるほどの距離感になれたのが嬉しくて。まるで自分の孫のようでした(笑)。
自分がアートに近い仕事をするなんて考えてもみなかった
生活そのものも変わりましたね。今、ある市民ギャラリーのアトリエで仕事をしていますが、2年目の時にここのつながりで紹介していただいたものです。逆に都美に来る時間が減ってしまいましたが、人の輪も広がったので、そのつながりで他の美術館に行くことも増えました。自分はずっとIT系だったので、アートに近い場所で仕事をするなんて考えていなかったです。開扉後の生活は、今の仕事が核になってきますね。
アートで世界と関わりたい
松崎 美紀子さん
聴覚障害の方と
印象に残った活動のひとつが、「トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー」で覚えたての手話を使って聴覚障害の方をサポートした経験です。沢山のとびラーが関わってくれて、自分からアクションを起こすことが大切だと実感しました。その後自分で企画した、耳の聞こえない方との香りを使ったプログラムも思い入れが深いです。他施設を見ても実は聴覚障害者向けのプログラムって意外と少ないんですよ。手話通訳付きのガイドツアーはあるけれど双方向にコミュニケーションできるものってなかなかない。通訳無しで、聞こえる人と聞こえない人とがダイレクトにコミュニケーション出来たら面白そう!と思ったんですね。
アートで世界と関わる
この3年で自分のやりたいことと社会の繋がりが明確になってきました。自分がアートとどう向き合うかがより鮮明になったんです。でもアートで世界と関わるのにはまだまだパンチが足りない。冷静な目を持ちつつ未知なる可能性を探っていきたいです。
参加できる日にだけでも来るべき!
目黒 苗さん
出会わなかったはずの人と出会った面接
印象に残った活動は一つに絞れないのですが、最初の面接がいい体験で楽しかったことを覚えています。面接に来た人たちの顔ぶれや動機・背景など、普通だったら一生交わらないであろう人と会うことが出来ました。合否よりも、すごくいい一日だった、来てよかったと思いました。
仕事とのメリハリがつく
休日でも仕事のことばかり考えていましたが、「とびらプロジェクト」を通じて仕事とのメリハリをつけられるようになりました。プロジェクトを進めるときに、ヒエラルキーがなくても成立するんだなぁと感じ、みんながフラットな関係で進めていくというのが、職場とは全然違いました。
ここは様々な参加の仕方ができるところ
とびラーを引っ張るくらい活動してきた人もいれば、そうでない人もいます。ここには色々な参加の仕方があると思うので、自分のやれることを見つけて、来られる日だけでも来てほしいです。これなら関わっていける、っていうものを見つけてほしい。
アートの敷居を下げて
広く浸透させる手助けをしたい
森 万由子さん
アートの敷居を下げて
広く浸透させる
手助けをしたい
森 万由子さん
学芸員を目指す気持ちが強くなった
「とびらプロジェクト」は人生にダイレクトに影響を与えました。学芸員の資格を取ろうかな~くらいの考えで美術館のインターン募集を探す中で見つけたとびラーの募集でしたが、この3年間で進路がぐっと美術に引き寄せられました。美術館の近くに身を置いたことで、学芸員を目指す気持ちが強くなったんです。元々アートが好きで、アートが一般に広く浸透していない現状を悔しいと思っていました。アートの敷居を低くして、日常生活に浸透するのを手助けしたいと思っています。大学院では、研究テーマを美術史から文化全体に繋げていきたいと思っています。ハイアートもサブカルも関係なく並べて展示したいんです。全てがアートで垣根や壁を取り払って繋げていきたいですね。
宝箱がたくさん集まった場所が上野
とびラーには、都美の外にもどんどん出て行ってほしいです。上野は宝箱がたくさん集まった場所だと思うんです。いろいろな構想を広げていって欲しいです。
とびらプロジェクトへの参加は
私の幹に枝葉を伸ばしてくれました
山﨑 奈々さん
とびらプロジェクト
への参加は
私の幹に枝葉を
伸ばしてくれました
山﨑 奈々さん
建物を通じてお客様と共感
3年間で印象的だったのは、やはり自分で「建築ツアー」のガイドをしたことですね。建築ツアーガイドは、ちょっとハードルが高いので緊張しましたが、「自分の話を一方的に、45分間聞かせる」って、滅多にない機会かと。前川國男の公共デザインへの意識と、とびラーはその公共の場をもう一度盛り上げようと活動していることを繋げてお話したら、お客さまに非常に共感していただけたのです。自分が大切にしていることを、建物を通じて共感し合えたことは、今までにない経験で、とても嬉しかったです。
任期満了後の予定
この3年の間で人に話しかけることが怖くなくなりました。人との関わりを待っていたのが、自分から扉を開くことが出来るように。相手を信じて飛び込んでいくことで様々な経験をし、知り合いを増やしていきたい。初めの一歩として、今住んでいる地域の方々と、積極的にお付き合いをしていきたいです。
皆が言いたい事を
言える場作りができた
山田 美佐緒さん
皆が言いたい事を
言える場作りができた
山田 美佐緒さん
お手伝いのつもりで入った「缶バッジプロジェクト」
「缶バッジプロジェクト」は、缶バッジマシンを使った事があったので、何かお手伝いできるかなとあまり考えずに関わり始めた感じです。こう見えて結構人見知りが激しいところがあるので(笑)、基礎講座の後は続けられるのかなと思っていましたが、本番をやってみたら楽しくて。缶バッジプロジェクトに関わりつづけたことで、3年間楽しく活動を継続できました。
一番楽しかったのは「大英博物館」展に向けての缶バッジミーティング
成功に至らなかった事で挫折を経験したけど、夜遅くまでものすごい議論を重ねたのも面白かったし、そんな時でもみんなで笑いながらやっちゃうのがすごく楽しかった。皆が言いたい事を言えて、誰一人として黙っている人がいなかったのは場作りとして良かったと思っています。こちらが言わなくてもどんどんアイデアが出て、各々自発的に動いていました。
「一番来にくい人が来やすいところには、みんな来やすい」
という言葉を胸に
山本 あつこさん
「一番来にくい人が
来やすいところには、
みんな来やすい」
という言葉を胸に
山本 あつこさん
3年間を通して、大事にしてきたこと
「障害のある方のための特別鑑賞会」には、スケジュールを調整し極力参加しました。ベビーカーでの来館をサポートする「ベビーといっしょにミュージアム」の活動にも参加しています。ただ、子供は成長してベビーカーは数年で卒業できますが、障害は卒業のないものです。障害のある方がどうしたら居心地よくすごせるか工夫すること、障害そのものへの専門的な知識を身につけて接することを大切にしています。
これから…&とびラーへのメッセージ
家業の絵画教室に来ている子供たちに対し、対話しながら鑑賞する愉しさを伝えていきたいです。自身の反省を踏まえてお伝えするなら、3年間はあっという間。とびラーの3年間は、自分への種蒔きの期間になるといいなと思います。面倒くさくても、来さえすれば来ただけのコト(価値)はきっとあるし、来続けることがまた次へ繋がっていきます。その結果、あのときあんなタネを蒔いていたんだなあと、あとから振り返れたらステキですね。
みんなで伴走しあっているから
一人ひとりが活かされている
吉田 弘子さん
みんなで
伴走しあっているから
一人ひとりが
活かされている
吉田 弘子さん
3年経った今でも、感心と感謝が絶えない
私は普段ピアノを教えているのですが、いろんな仕事があり、いろんなやり方があることを知り、自分の生活が多くの方々に支えられていると痛感し、すごく感謝するようになったんです。刺激という以上に大きな感心と感謝を1年目からずっと今も感じています。
「伴走」=「伴奏」何事も「きく」ことから「何か」が生まれる
伴奏の名手だった私のピアノの先生は、伴奏する上で大切なのは、人と合わせようとするのではなく、「その人から学ぼうという意識」、そして「きく」ことだと教えてくださいました。「とびらプロジェクト」の鑑賞での「伴走」も、音楽の伴奏と一緒なんですね。伴走者は寄り添うだけじゃなくて、「きく」ことによって何かが起こる。とびラー、スタッフのみなさん、学芸員さん、それぞれが伴走しあっているから、一人の人が活かされている。そうやって見守って、伴走してくれる人がいるから、ここにいていいんだと自然と思えるんです。
4年制でもいいのに!っていうくらい
あっという間でした
渡辺 ちひろさん
4年制でもいいのに!
っていうくらい
あっという間でした
渡辺 ちひろさん
とびラボ本来の願いを叶えることができた
特に印象に残ったのは、「モネ」展で「とびらボードでGO !」を開催した時のことです。塗り絵をする際、みんな画集を見たり、想像したりして好きな色を塗ったりするのですが、一組だけ本物の色を確認するために作品を見に戻った親子がいたんです。本物を何度も見てほしい、振り返ってほしいという、このプログラムの願いを叶えることができました。
藝大生のアート根性にたまげました!
今年度は卒業制作中の藝大生へのインタビューを行いました。個性豊かで、とにかく着眼点がすごい!1年目に日比野さんの色彩学の講義に参加したこともあって、その時はまるでハリー・ポッターの魔法学校に入ったような感じでした。一番びっくりしたのが、オリンピックにちなんで5色で何かを表す、という課題。黄色のグループは、自分自身が太陽になる!という表現で、一夜にして黒髪の子が金髪になってびっくり!この一瞬のための行動力、アート根性にたまげました(笑)。