ゆっくり進めば何とかなる
青木 裕子さん
この3年間は、年齢も違い価値観や考え方の違う人達との交流の中で、人との関わり方のもどかしさや、認め合うことの難しさを学びました。でも、とびラーは皆が優しい。いつも誰かが助けてくれました。
スペシャル・マンデー・コースなどの「Museum Startあいうえの」の活動では、子どもたちが初めて来た美術館でドキドキしながら自分の意見を言ったり、その場の雰囲気を楽しんでいる姿を見てとても嬉しく、私自身が子どもたちから元気をもらっていました。
とびラーでいた時は長期にわたる介護から身内を見送り、出産の手伝い、家族や親族の世話に明け暮れ、時間が過ぎていきました。私にとって子どもたちとアートを見て感じて対話をいっしょにできる時間はかけがえのない時間でした。それもとびラー皆に助けてもらって出来たことです。ゆっくり進めば何とかなるのですね。あっという間の3年間でした。
新しい場が開けた
東 悦子さん
偶然、都美でのプログラムに参加した娘が素敵なノートを手に戻ってきました。ビビハドトカダブックでした。ミュージアムへのハードルが高く、特に芸術に関する知識の無さにコンプレックスばかりだった私たち母娘にとって、新しい場が開けた日です。それがきっかけでとびラーとなり、たくさんの「コトバの宝物」を心に刻みました。なかでも子どもたちと関わるプログラムはいつも魅力的でした。様々な子どもたちが友人に言葉を伝え、分かち合うことで人の心を動かす場面に立ち会えるからです。その経験は、子ども自身が自らに自信を持ち、他者を大切にすることに繋がる一歩になったと思います。開扉後も子どもたちと出会い、言葉を交わしていくような場に参加できたらと考えています。私がこんな思いに至ったのも、たくさんのとびラーの皆さんとの出会いがあったからこそです。様々な考え方、真摯な姿勢、そして何より心の広さ、優しさを学んだ充実した3年間でした。
色んな選択肢があることを
知ることが出来た
阿部 忍さん
色んな選択肢があることを
知ることが出来た
阿部 忍さん
他の美術館のボランティア活動においては、企画した学芸員さんの指示に従って行うことが多かったのですが、とびラーの活動は、ある程度主体性を持って活動ができる点に興味を覚えたので応募しました。
みんなで考えたとびラボが中々進まない状況でも、あきらめずに、どの部分を改良したらラボを実現させることが出来るかを考え合ったりすること、そして念入りな準備を経てラボが実現できた時、チームワーク力の大きさを実感できたことはとても良い経験となりました。
また、実現できたラボに実際に参加していただいた方からの意見も直接聞くことができ、主催者よがりになっていないかどうか、参加者と主催者側の思いをどうつなげていくか、新たな課題もあります。
とびラボ以外でも、実際に現場に携わっている専門家や当事者の方の話を聞く機会もあり、今後、自分がこういった活動をしていく上で、色んな選択肢があることを知ることが出来たのは大いなる収穫となりました。
人ってすごいな、
いいなあと思える場
市川 典子さん
人ってすごいな、
いいなあと思える場
市川 典子さん
5期とびラーの最初の活動はあの「若冲展」でのプログラムでした。その後、スペシャル・マンデーや特別鑑賞会などの場で作品を鑑賞することを通して幅広い年代の方と対話し交流する機会がありました。美術館で本物の作品に出合うことで、感性を開放し、感動を他者と共有したいと思うのでしょう。思春期の中学生が思わぬ発言をしたり、年配の方の経験に裏付けられたお話があったり。人ってすごいな、いいなあと思える場を経験しました。作品をじっくり鑑賞すること、好きな作品に出合えることは一生の宝ものを持つことだと思います。とびラーとしてそれらのお手伝いができたらうれしいことですが、実は私自身が学ぶことのほうが多かった気がします。
「缶バッジ作り」や「藝大の卒展散歩」など様々なプロジェクトを通して、年代もバックボーンも違うとびラー達とフラットな関係で活動ができたことも得難い経験でした。これからは高齢者のカフェのお手伝いや発達障害の方の支援などにも取り組みたいと思っています。
企画して実行することの大変さ、
来館者と一緒に鑑賞を
楽しむことの喜びを経験
今村 昭浩さん
企画して実行することの
大変さ、来館者と一緒に
鑑賞を楽しむことの
喜びを経験
今村 昭浩さん
とびラーになったきっかけは、2015年のオープンレクチャー「人々を排除しない参加型デザインへ!」に参加したことでした。「福祉とアートのつながり」が自分のテーマとしてあったので、とびラーに即応募しました。
1、2年目は基礎講座と「障害のある方のための特別鑑賞会」に参加するだけでしたが、3年目に「特別鑑賞会を考えてみよう」とびラボを立ち上げました。
障害があってももっと普通に美術館で鑑賞することが楽しむことができたら、ととびラボメンバーと何度もミーティングを重ね、特別鑑賞会で定期的にiPadで作品を拡大して見られたり、作品を介した会話を楽しむ機会を作ったり。企画して、実行することの大変さ、そして来館者と一緒に鑑賞を楽しむことの喜びを経験させてもらえました。
とびらプロジェクトは様々な人の集まりですが、職場とは異なり基本的にフラットで話を否定しないで聞き、話す場でした。この環境での経験が、現在も自分の原動力になっています。
アートを介しての
コミュニケーションの場・
人々が笑顔で居られる場所を
作って行きたい
上田 紗智子さん
アートを介しての
コミュニケーションの場・
人々が笑顔で居られる場所を
作って行きたい
上田 紗智子さん
とびラーとして活動し始めて、出会う人々、物事や考え方に毎回驚きと感動を覚えていました。その中でも一番の感動は”VTS”との出会いで、スペシャル・マンデー・コースでの実践は至高の体験でした。このゆったりした空間での様々な子どもたちとのコミュニケーションは、今までに味わったことのない非日常の実に豊かな時間でした。また、子どもたちが真剣に取り組む姿に、美術館がパワースポットでもあるんだなあと感じる体験もしました。
東京藝術大学での藝祭や卒展などにも参加し、アーティストの様々な考えに触れられる機会は感動的でした。最終年に藝大生とコラボしてプログラムを開催できたのは思い出深いです。
その他にも素晴らしい体験や楽しい人々との出会いは、私の人生を変えたと行っても過言ではありません。今後、様々な人々とアートを介してのコミュニケーションの場・人々が笑顔で居られる場所を作って行きたいことに加え、若いアーティストの応援もして行けたらと思っています。
こんなに面白い人達と
出会えてよかった
大川 よしえさん
こんなに面白い人達と
出会えてよかった
大川 よしえさん
子育てから久しぶりに社会へ一歩踏み出すきっかけとしてスタートしたとびラー活動は、楽しいから奔走できた濃厚な3年間になりました。
未経験の世界に飛び込んだ新鮮さから始まり、知れば知るほど好奇心が広がっていき、様々な人との関わりをじっくり考える時間になりました。何しろ本気な大人たちの集団なので、面白くて仕方がないのです。中心にアートがあることの力強さを感じつつ、幾つもの心に残る場面にも遭遇しました。子どもたちの眼差しや言葉、時には全身での表現からジーンとくることや、年齢に関係なく非日常空間で気持ちが解き放たれて自由になる瞬間などに立ち会う度に、ますます魅力に取り憑かれて行きました。
またとびラボも活動の醍醐味の1つで、作り上げる大変さとその先に待つ愛おしい時間を経験させてもらいました(詳しくはブログをどうぞ)。とびラー・スタッフ、時には元とびラーの沢山の方々と共に作り上げていき、よき仲間を得た事は何よりのここでの収穫でした。
3年間で、私自身が深く癒された
小西 佐和さん
とくに関心をもって学んだのは対話型鑑賞です。作品を見て語ると、普段は言わないようなことも言える。知らず知らずのうちに自分の内面を探り、表現することができる面白さ。人と相対するのが苦手な私にとって、横に並んで同じ作品をまなざすというあり方は心地よく感じられます。
あるプログラムでは、一緒に鑑賞した女の子が別れ際にふと手を繋いできてくれました。許されてほっとするような、不意のギフトに戸惑うような不思議な気持ちでした。とくべつ何かしてあげられなくても、ただ「いる」だけで場に影響を与えるし、何か意味があるのかもしれない。こうした経験もあって、自分でも意外なことでしたが、ケアの仕事を始めました。
そして、この場に集まり共に過ごしたとびラー仲間の存在は大きいものでした。3年間で、私自身が深く癒されたと思っています。
違った視点で世の中を
見られるようになった
小田澤 清子さん
違った視点で世の中を
見られるようになった
小田澤 清子さん
とびラーの日々はたくさんの人・事・モノとの出会いがあり刺激にあふれていて、そしてとてもハード笑でした。とびラボの打ち合わせを何回も重ね、企画書を夜遅くまで書き、企画の練り直しを何度も行ったり…。本気で落ち込んだこと、もう辞めたいと思うこともたくさんありましたが、今思うと自分がそれだけとびらプロジェクトに本気で向き合っていたんだなと感じています。
とびラーとしての3年間は長いようで短く、でもやっぱり長く(笑)。あまり参加できなかった期間もありましたが、素敵なとびラーの仲間たちやスタッフの皆さんに支えられて何とか開扉した今は、達成感とともにとびラーになる前とは違った視点で世の中を見られるようになった自分を感じています。アートを通した体験をすることで、その人のモノの見方や感じ方が少しだけでも変化する、言語化することや可視化するのは難しいけど何かが確実に変わる、そんなきっかけづくりの仕掛け人として、これからも活動していきたいです。
今もワクワクは続いています
鈴木 優子さん
都美のアートスタディールームは、私にとって正に職場でも家庭でもない、第3の居場所でした。この場所だからこそ出会えた魅力ある人たち。その出会いにより、私はまた一つ新しい道を開くことができたように感じています。それまで何の関係性もなかった人たちと、こんなにも熱く語り合い、こんなにも深くつながり合える、きっとこれからも。それが驚きでもあり、とても新鮮でもあり。今もワクワクは続いています。
一人で作品を見ることが好きでしたが、人と一緒に見ることの楽しさを実感できたのもとびラーになったおかげです。多くの子どもたちと活動したスペシャル・マンデー・コースは思い出深いです。一緒に巡りながら、言葉に身振り手振りを加え、会話したあの至福の時間。またグループ鑑賞後、一人で作品に向かい黙々と鉛筆を走らせていた子どもたちの真剣な姿、今も目に焼きついています。作品と子どもたちを結ぶ「人」の大切さを学びました。
「楽しかった。また来たい。」
と言ってくれたことが、
スクールプログラムに
参加し続けた原点
関 恵子さん
「楽しかった。また来たい。」
と言ってくれたことが、
スクールプログラムに
参加し続けた原点
関 恵子さん
とびラボでは、年齢もバックグラウンドも異なるメンバーとミーティングを重ね、試行錯誤するプロセスが楽しかったです。得難い経験でした。プログラムが実施できた時は、参加者の方々の笑顔が何よりの喜びでした。
また、仲間と共に講座で学んだことが実践の場で生かせることも魅力でした。
初めてのスペシャル・マンデー・コースは、思春期真只中の中2生。「共有したくないです。」と何も話してくれなかった女の子が、作品に向き合うなかで少しずつ心を開いてくれて、帰りには「楽しかった。また来たい。」と言ってくれたことが、スクールプログラムに参加し続けた原点です。子どもたちが本物の作品と出会い、心が動かされる場に立ち会えたことは幸せでした。子どもたちと一緒に鑑賞した作品はどれも心に残っています。
これからも、この3年間で学んだことを大切に、子どもと美術館が出会う場に関わっていきたいと思います。
どんな環境で生活している人にも
アートを楽しんでもらえる
場づくりが今後の目標です
濱野 かほるさん
どんな環境で生活している人にもアートを楽しんでもらえる
場づくりが今後の目標です
濱野 かほるさん
多くの人と一緒にアートの楽しさを伝える活動をしたいと思っていたところ、とびラー募集のチラシに出会ったのが応募したきっかけです。初めはアートとコミュニケーションはとても良い気がする!と漠然とした印象のものだったのですが基礎講座や実践講座で学芸員さんや専門家の講座を受講することでぼんやりしていた輪郭がはっきり見えるものになった実感したことは大きな収穫でした。
特に対話型鑑賞で作品を見るってこんなに楽しいんだ!と感じそれを誰かに伝えることができるスペシャル・マンデー・コースや特別鑑賞会、多くのとびラボで鑑賞の楽しさや伝えることの難しさを実感しました。
また何らかの理由で美術館への来館にハードルを感じている人にも来館してもらうため、アクセスの観点から美術館を考えることは活動途中から自分の中でも大きな課題になっていました。どんな環境で生活している人にもアートを楽しんでもらえる場づくりが今後の目標です。
私にとって大きな一歩です
原口 聡子さん
子育ても一段落し、何かしら社会との接点を探している時に、とびらプロジェクトに出会いました。様々なキャリアをもった多才な人が集まるとびラーとの活動は、私にとって刺激的でしたが、これといって取り柄のない自分がどう行動すればいいのか、始めはよく分かりませんでした。しかしここではお互いを認め合う雰囲気があり、自分のできる範囲のことを背伸びせずやればいいのだという安心感がありました。
特別鑑賞会では、障害のある方々の鑑賞のサポートをすることで感謝の言葉をいただき、とても嬉しく思いました。また対話をしながらの鑑賞は、一人で鑑賞するときと違い、他の人の言葉による気付きや発見があり、楽しく貴重な時間を共有させていただきました。
とびラーになって、初対面の人に話しかけることがあまり苦にならなくなりました。困っている人にも自然に話かけられるようになったのは、私にとって大きな一歩です。
とびラーは人生の分岐点でした。
番場 あかりさん
今までは「アートが好き」ということを1人で抱え込むだけでしたが、どこかで物足りないな、もっと誰かと話したり伝えたりできたらいいのになという思いを感じていました。
だからこそ、とびラー募集のポスターを見た時は「私が探していたのはこれだ!」と衝撃が走りました。とびラーになる為に大学を変えて上京までしたのですが、実際とびラーになって視野がぐっと広がったし、この判断は決して間違ってなかったなと今でも思います。
ヨリミチビジュツカンの活動では、初めて会った方と展覧会を見るという経験も非常に楽しかったし、何よりやりがいがありました。とびラーの醍醐味はこうした小さい「場」を次々と生み出して大きくしていくことにあると思います。世代も背景も全く違う人達と1つのものを築き上げるというかげがえのない経験が、自分自身の大きな糧になりました。
彼らに、
寄り添っていられた事が、
とても楽しい思い出
増田 昌夫さん
彼らに、
寄り添っていられた事が、
とても楽しい思い出
増田 昌夫さん
私は、建築ツアーのプログラムに3年間関わってきました。
昼のツアーは、来客の参加意欲が旺盛で、私の持っている前川國男さんネタで充分に期待に応えられるか、少し心配しながら45分間のツアーを行いました。
トビカン・ヤカン・カイカン・ツアーは、昼間より空気もひんやりして、都美の明かりや内装がとても鮮やかに見えます。夏の浴衣ツアー、秋のハロウィンナイトなど、いろいろな企画をとびラー同志で、考えて、実行していくうちに、お互いの繋がりが気持ちよくなっていきました。
また、「Museum Startあいうえの」など子どもたちとのプログラムでは、子どもたちと触れ合うだけでなく、彼らの一心不乱に自分の感じた事を表現しようとする姿とその後の充実感に満ちた笑顔に、出会えたのは貴重な体験です。
彼らに、寄り添っていられた事が、とても楽しい思い出です。
一番はコミュニケーションの
あたたかさと多様さ!
松山 大美さん
一番は
コミュニケーションの
あたたかさと多様さ!
松山 大美さん
仕事以外の場で新しい人やものと出会ってみたい、日常で気軽にアートを楽しむことができたら…と感じていたことが、とびラーに応募したきっかけです。
とびらプロジェクトで学んだことは沢山ありますが、一番はコミュニケーションのあたたかさと多様さ!結果より過程を大切にすること。ベビーとおでかけミュージアム、キッズデーでの企画、建築ツアー… 活動を通じて、お会いした方々との一つ一つの対話のあたたかさ、丁寧さに感動しました。作品へのまなざしを共有することでこんなにも人をつなぐ場づくりができるんだなぁと思いました。バリアフリーの建築ツアーを目指して、ベビーカーや車椅子でいらっしゃった方々と一緒に都美の建築を楽しむことができたことも嬉しかったです。
とびラー1年目に出産が重なり、家族でミーティングやイベントにも参加させていただきました。これからも少しずつでもアートコミュニケーションに関わっていければと思います。
既成の枠を超える
得難い経験でした
美濃部 こころさん
既成の枠を超える
得難い経験でした
美濃部 こころさん
かつて、美術館では1人で鑑賞するものだと思っていたのですが、とびラーになって皆で鑑賞する楽しさ、1枚の絵にも様々な解釈がある面白さを知りました。また、外の箱である建築の魅力を学べたのも大きく、活動としてハロウィン版建築ツアー(「とびモン」が出すナゾにチャレンジしよう!)、浴衣で納涼ヤカンツアー、あいうえのの「うえの!ふしぎ発見 けんちく部」が強く印象に残っています。趣向を凝らした企画で、本来美術館にありがちな堅いイメージを変える効果があったのではと思います。「とびモン」のプログラムでは2、3年目とびラーの企画推進力が凄く、毎週末集まって準備に明け暮れ、またラスボスの女王役を演じたのは自身にとって大きなチャレンジでしたが(何かを演じたのは幼稚園以来)、既成の枠を超える得難い経験でした。温かく素晴らしい仲間に出会え、共に活動できたことに感謝です!
アートと人を繋ぐ活動は、今後もライフワークとして何か継続して関わっていきたいと考えています。
沢山の幸せに改めて気がつきました
谷下田 厚子さん
沢山の幸せに
改めて気がつきました
谷下田 厚子さん
とびラーになりたいと思ったのは、沢山の人たちに美術や博物の楽しさを知ってもらって大切にしてもらって、100年先の人たちにも親しんでもらえるきっかけが作れたらいいなと思って応募しました。とびラーになって、いろんな発見と学びがありました。何より嬉しかったのは、いろんな人たちと知り合えたことです。いろんな考え方や感じ方に触れて、自分の世界が広がっていき、ものごとを肯定的に考えることが出来るようになりました。そして考え過ぎることが少なくなりました。投げかけるときちんと応えてくれる仲間がいてくれて、もともとわたしの側にあった沢山の幸せに改めて気がつきました。
この3年間はわたしの宝物です!
心の大きな支えが増えました!
とびラーになってよかったです。
この経験を持って、いろんな人たちの思いの詰まった美術や博物を100年後の人たちにも伝わるように、まずは身近な人たちに伝えていけたらと思っています。
美術館は
人と共存するから価値がある場所
山田 久美子さん
美術館は人と共存するから
価値がある場所
山田 久美子さん
とびラーになってよかったのは、年代や経歴の違いを超えて、様々な視点、価値観をもつ多くの方と交流できたことです。新しい環境で人間関係を築くことは不得意でしたが、ここで過ごした時間はかけがえのないものです。興味のもったことは、すごく無理する必要はないけれど、少し勇気を出して挑戦すれば、必ず自分にとってプラスになり、人生を豊かにしてくれます。
美術館が展示の箱物ではなく、人と共存するから価値がある場所、いつも実感できた3年間でした。
とびラーたちが熱い想いを込めて知恵と感性をフル回転させた成果であるとびラボから生まれたプログラムへの参加は、一つひとつ思い出深いです、缶バッジのプログラムは毎回、大勢の方と作品を共有できる楽しい一日でした。
アートの情報や刺激が満載で、これまでの偏見やこだわりはなくなり、出掛ける展覧会が増え、四季折々通った上野の森もとても親しみある場所になりました。
これは現代の
バウハウスじゃないかな
山田 宗宏さん
これは現代の
バウハウスじゃないかな
山田 宗宏さん
とびらプロジェクトのことは体験した後でも実はよく分からないんです。時々思ったのは、これは現代のバウハウスじゃないかなということです。中身は全く違いますが教育理念が新しくて時代の先頭を行っているという点において。そのような精神の流れを受け継いだ長い歴史の1ページの中で様々な活動が行われている。わたしはいつもそんな気持ちで上野に向かっていました。とびらプロジェクトの特長を全体的に説明することもできません。しかしその精神が現れるいくつかの例をあげることはできます。それは、場の作り方において、思いの共有の仕方において、人や作品との関係において、さっき開催した催し物を手のひらの上に置いて眺めてみることにおいて、アートというものの不思議さを共に体験するということにおいて現れてきます。そしてその精神は配信されるメールのひとつひとつのマナーや、講義で話される吟味した言葉においても貫かれているんです。
感じたことをそのまま
大事にしていいという安心感
山中 惇さん
感じたことをそのまま
大事にしていいという
安心感
山中 惇さん
自宅と職場の往復路以外の寄り道をと思い大学在学中にとびラーに応募しました。美術館に頻繁に通うようなタイプでは無かったのですが、アートが生む不思議な空気にはぼんやりと惹かれていました。だからこそ当事者として関わり、そのぼんやりとしたものを見てみたいと思ったのかもしれません。ラッキーな選択をしたと今振り返ると思います。
とびらプロジェクトを通じて、美術館の可能性の広がりをみることができました。私にとっての広がりは、感じたことをそのまま大事にしていいという安心感です。安心感で満たされた空気が一緒に鑑賞する人たちの背中をそっと押してくれることを鑑賞プログラムを通じて実感しました。また、とびらプロジェクトから本当に面白い活動が次々と湧き出ているのも、とびラー自身がそういう空気の中で考え、動けるからだと思います。卒業後もアートを楽しみつつ、今度は表現する側にも立ってみたいと考えています。
ともに「学び」、
仲間と楽しみながら
「実践」に取組み、
手応えを感じた3年間
山本 俊一さん
ともに「学び」、
仲間と楽しみながら
「実践」に取組み、
手応えを感じた3年間
山本 俊一さん
美術館の存在が、くらしに根ざしたものと実感できたフランスでの駐在機会に比べ、美術、美術館の敷居が高く、教養としてのアート/美術館というイメージが強い日本の現実を残念に思い、「アートを通じた対話と交流を通じ美術館を社会や地域の市民に向けて開く」というとびらプロジェクトに期待しての参加でしたが、ともに「学び」、仲間と楽しみながら「実践」に取組み、手応えを感じた3年間でした。
「学び」では、基礎講座、建築/鑑賞/アクセス実践講座、DOORとの交流授業、更に、学びと実践が一体の「Museum Startあいうえの」での様々なプログラム、TURNとの連携、藝大の藝祭や卒展との連携、そして、「実践」としての自主的なとびラボ活動と、やる気と費やす時間に応じ、挑戦する機会が盛り沢山にあります。
そこには、ギブ&テイクではない、同じ人間としての「ギフト&ギフト」の共楽/共学/共生という、生を高め、深め合う「生(活)きた」時間があります。
人と人とが
育ち合うことへの関心
和島 千佳子さん
学校プログラムやミュージアムトリップにできるだけ参加しました。勤め人なので機会は限られましたが、参加するお子さんの姿を思い描きながら事前準備をし、当日を楽しんでもらえるようにと心を配りました。「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」で子どもたちと過ごした時間が掛け値なく楽しかった!今までの人生で初めて味わう類のじんわりとした感情で、まさに自分にとっての感動体験となりました。
誰かのために、と思い行動しながら、実は自分が豊かな時間を過ごし、得がたい体験をしているのだと深く感じました。ミュージアムのもつ「宝物を大切にし伝えていく」パワーが、それを支えてくれたのだと思います。
子ども、おとな、という立場を越えて、人と人とが育ち合うことへの関心をもち続け、これからも身近な場で実践していきたいです。
“新しい何か”を探す
勇気を貰えた
赤井 勤美さん
「Museum Startあいうえの」のプログラムでは、子どもたちに寄り添いながら、そのワクワクキラキラする様子に自分も元気を貰っていたと思います。これから先を生きる彼らにとって、ミュージアムがお気に入りの場所の一つになってくれたらいいなと思っています。
それから「とびラボ」。呼びかけにはじまり、ミーティング、実施に至るまで、どれだけ沢山の時間とエネルギー、アイデアの試行錯誤が繰り返され、深められていったことか…。苦労を分かち合い、励まし、達成の喜びを共にできる仲間が職場でも家庭でもない場所にいるというのは、得難い幸せなことだったと思います。
とびラーとして、人と出会い、作品と出会い、アートやミュージアムを取り巻く様々な学びを体験できた3年間は本当にかけがえのないものでした。この先もアートに向き合う楽しさや発見に立ち会うことができたら嬉しいですし、自分にもできそうな“新しい何か”を探す勇気をとびラーの経験から貰えた気がします。
最終章に励みたい
西澤 正彦さん
とびらプロジェクトのロゴマークは東京都美術館のロゴマークに “扉” を付けたデザインになっています。開扉が間近になると、この意味を深く考えるようになりました。「扉」は社会と繋がる接点で、人や事柄などを迎い入れる入り口であるとともに、中から外に出ていく出口でもあります。とびらプロジェクトでは任期満了を「卒業」や「定年」でもなく「開扉」と呼ぶのは、とびらプロジェクトで得たものを新天地で展開し発信していくことをプロジェクトの最終章として設定しているのだと思います。ここで多くを学ばせていただいたとびラーたちは、開扉とともにそれぞれの場所で活躍されていくことでしょう。私もとびラーとして学んだことを糧に最終章に励みたいと思います。それが私なりのとびらプロジェクトへの恩返しだし、感謝の証でもあると思っています。