開扉したとびラーの声

「VTSフォーラム・リターンズ☆」が印象に残っています。先輩から引き継ぎ、6期から9期まで4期にわたるとびラーが参加した大きなイベントになりました。コロナ禍で、ミーティングから開催まで全てをオンラインでやりました。当時の私はZoomの操作は全くわからなかったけれど、開き直って、できる人の力をお借りしました。自分一人では何もできないと認められたからこそ、その後もいろいろなことにチャレンジできたと思います。ひとつの転機となったラボでした。
とびラーになったばかりのころ、稲庭さんから「とびラーとしての3年間はあまりにも短いです」というメッセージをいただきました。確かにあっという間で、3年目に入ったときから「やりたいことを全部やって開扉しよう」と思って走ってきました。開扉したあとも、とびラー時代にできた人間関係を大切にしながら、アートを介したコミュニケーションの場を作っていけたらいいなと思っています。

図工の先生をしていました。美術館で鑑賞している子どもたちはとても良い表情をしていて、見終わった後の空気感もほんわかとしていたの。そういう場を自分でも作りたいと思ってとびラーに応募しました。
「発見をわかちあおう」〜イサム・ノグチの作品を巡る〜ラボが印象的です。外向きラボってこうやって作っていくんだな、と学んだこと。コアメンバーの人数が少なかったこと。でも「諦めずやりぬこう!」と最後は意地でみんなで頑張ったこと。全てが楽しかったし良い体験でした。開扉後は地元の府中市美術館で何かやりたいと考えていたので、これからゼミを始めました。学芸員さんと繋がったり、ボランティアをやったり。今まで積んできた経験が、ここにきてうまく噛み合ってきたなって感じです。やってて無駄なことって無いんだなって思えます。ここで学んだ3年間を途切らせたくないな。いつか孫と一緒に「あいうえの」に来たいな。

印象に残っているのは「静けさで遊ぶラボ」です。「ハマスホイとデンマーク絵画」展で、筆談で対話鑑賞をします。楽しかったです!本当は外向けでやる予定でしたが、コロナ禍でできなくなり、そのまま解散になってしまいました。残念です。またやりたいです。
手話も含めて会話・筆談・絵......コミュニケーションの楽しさ。1年目の「とびラー全員集合」の時は藝大の食堂で飲んだり食べたり歌ったり。思い出に残る楽しい時間でした。オンラインもいいのですがリアルとは比較にならないと思いました。1年目でリアルの経験をしているので、人と人との関り方が違う、と感じています。表情、しぐさ、雰囲気、周りの状況......その場に居てこそ、の感じでしょうか。
新しい「ミュージアムの在り方」を学びました。私の研究のテーマはインクルージョンなので、障害者も含めて多種多様な人々がアクセスし、コミュニケーションできるミュージアムを実現していきたいです。

あっという間の3年間でした。人生の後半で、新たな学びの機会と仲間と出会えたことは、とても大きかったです。これからやってみたいことの種が、とびラーの活動の中にはいくつもありました。開扉したら、その中のひとつでもゆっくりと育てていければと思っています。
特別鑑賞会で目が見えない方のアテンドをさせていただきました。その方とは2回ご一緒することができ、絵や彫刻をどう感じて、どう楽しんでいるのか、回を重ねるごとに自分でも感じることがあり、とても感動しました。
1年目は、秋からほぼ毎週、上野に通いました。2年目は、Zoomに明け暮れていましたね。家族に呆れられながらも、とびラー中心の毎日でした。3年目は、色々とタイミングが合わなくなってしまい、ラボでの活動がほとんどできなくなってしまいました。コロナ禍の影響は、やはりとても大きかったです。自分の関心事はDOORにも繋がっているので、落ち着いたら行こうと、今から楽しみにしています。

1年目は「あいうえの」など子どもと関わる活動を中心に、2年目はオンラインでとびラボ中心に、3年目はリアルで「あいうえの」「クリエイティブ・エイジング」などのプログラムやとびラボを中心に。いろんな人と関わったり、建築の楽しさに魅せられガイドにも挑戦。「インタビューラボ」「対話カフェラボ」が楽しかった。
もともと好奇心旺盛。誰かと知る喜びを共有できること、自分と誰かの成長が同時に起こる場が楽しい。子どもたちが目を輝かせて気づきを伝えてくれる時、柔軟な考え、豊かな発想に触れる瞬間が好き。違う価値観に出会うことは自分を変えられるチャンス。変わること、新しい自分に出会うことが楽しいです。これから私には帰るところ、たくさんの場がある。地域の活動を充実させたい。場づくりは継続しておこなっていきたい。趣味の和太鼓と弾き語り、美術館巡りや旅行など、開扉後もやりたいこと、てんこ盛りです(笑)。

中学の時先生に西洋美術館に連れて来られたとき本物を観て驚きました。それから何度も来ている上野。行く機会が減ってしまうのが寂しい。とびラーになった目的のひとつは、VTSを学ぶこと。子どもたちに「考える」体験をさせたい。自分で考えて「おかしいことはおかしい」と言える子になって欲しいんです。地域の歴史を子供たちにVTSを使って伝えたいです。
1年目、特別鑑賞会で、視覚障害の方と共に鑑賞することに。どうやってコミュニケーションとればいいのか戸惑いましたが、説明した後、その方が質問してくれて、私が答えて...結局ずーっと途絶えることなくコミュニケーションが続いたんです。楽しかった。これは本当にいちばん印象に残った体験でした。行動範囲が狭くなりがちなので、地域の中で楽しいコミュニティがあればいいかな、と思っています。とびラー活動をワインに例えると、スパークリングワイン。ひと粒ひと粒が輝いてはじけています。

VTS：Visual Thinking Strategies 鑑賞実践講座で学ぶ鑑賞の方法

とびラー同士で話ているとき、真面目な話をすると同じ温度感で来てくれるのがいいなと。「最近こんなことがあって」「私もそういうことあった!」と議論がスタートする。これはとびラーとの会話の特徴だと感じます。
聴覚障害を持つ方々のコミュニティに入り、ジャーナリストの斉藤道雄さんに「何があなたを、そういう分野にかき立てるんですか」と質問をしました。すると「マイノリティの方々の話を聴くの好きなんですよね」と答えてくれたことに感動して。当時の僕は「こんな風に好きだって思っていいのか!」と勇気付けられました。小学校の頃、理解できない行動をする友達がいて、「どうして彼と僕は考え方が違うんだろう?」と人の成り立ちに興味を持つようになりました。それからは、周りの人をある種の先生だと感じています。それぞれの人生から、僕に無い経験や新しい価値観を教えてくれて、気付けなかったことに、気付かさせてくれますね。

昨年やった浮世絵の中の人になりきるラボが楽しかったなぁ。イサム・ノグチ展の「とびラジオ」も、自分が思いつかないようなラボで面白い。音声作りをやってみると音声やドラマってこう考えるのか、自分もできることがある、という発見がすごく楽しかったです。「都美の野外彫刻を味わうラボ」も、彫刻でVTSするの?って疑問を持ちながら、やってみるといろんなことができるなって。私がVTSに最初に出会ったときは工芸のガイドで、次に絵でVTSをしてみると主題についての発言が多くて。そして彫刻の場合は、今いる空間にある何らかの引力を感じての発言が多い。作品を前にして、五感と記憶を総動員したかのように、対話の中で出会う言葉が身体感覚から出てくるようで面白いです。これは建築を見る時も同じです。
建築は難しくて自分に縁がないことと思う人が多いみたいですが、もっと自由に楽しめればと「建築ミニ勉強会」を始めたら、建築の人になっちゃいました。

VTS：Visual Thinking Strategies 鑑賞実践講座で学ぶ鑑賞の方法

オンラインでどうなるのかという時期に「イサム・ノグチ発見研究所」ラボに救われました。心地よく無理なくみんなが持ち寄り、積極的に参加していろんな見方を作る、集合知とでもいうのでしょうか。
「CozyCozyラボ」では、親御さんとの連絡窓口を担当。参加者からの「誘ってもらってよかった」「子どもの違う面を見ました」という感想をラボの皆さんに報告した時の、大変だったけれどやってよかった、というメンバーの顔を思い出して嬉しくなります。
私は、関わったことに手が抜けないタイプだったのですが、皆さんとの広い視点をアップデートしているうちに、小児科医として専門馬鹿にならず、オールラウンダーでいこうと再確認。病気を治す以上に、生活を一緒に豊かなものにしていこうというのが本当は大事で。だから人と繋がり広い意味でのアート、場作りが役に立ちます。未来の財産である子どもたちにいろんな可能性や生き方があるんだと見てもらいたいです。

とびラーになったきっかけは、アートに興味がある人と話してみたいと思ったから。でもとびラーになってからは、アートを介してのコミュニケーションの方が面白いなと思うようになりました。
とびラー活動でびっくりしたことは、そこに集う人の様々な心の機微を大切にしていること。とびラボは、“いまみんなはどう感じているの?”を大事にしながら、ラボや実践を通じて、みんなにどのような気持ちを持ち帰ってもらいたいかに時間をかけて思考を巡らせる。開扉後に新しい活動を実践する時は、とびラー活動で得た貴重な経験を活かしていきます!
藝大生インタビューは3年間参加していますが、1年目に参加した秋良さんのインタビューがすごく印象的で。インタビュー時点では作品は構想段階で、自分の作品が「どう感じられるか」について伺いました。出来上がった作品は、試行錯誤の先に、ひとつたどり着いたもの。そこに行くまでの無数の検討に心打たれました。

とびラボ「静けさであそぶ」で、聴こえる、聴こえないの溝を埋めるのではなく、遊び心をもってみんなで一緒に楽しむという視点が興味深かったです。とびラー同士の雑談系のラボで化学反応が起きたり、新たな活動のきっかけが見つかったり。いろんなとびラーとの出会いやその人の心意気に触れる瞬間がとても楽しかったです。思いついたこともすぐにやるようになりました。失敗もOK、まずはやってみよう!というとびらプロジェクトの軽やかさ、世の中で流行らせたいですね。
開扉は、生まれ育ったふるさとから違う土地へ旅立つような気分。とびらプロジェクトは高校3年間のような濃密な時間を過ごした場で、とびラーはみんな故郷の同級生のような存在。とびらプロジェクトの「指とま」などの仕組みや雰囲気は、お袋の味のように、何かの時にふっと思い出すような気がします。開扉しても、とびらプロジェクトは馴染みの街に帰ってくるような場所かもしれませんね。

ひと足早く違う扉を開いてポーラ美術館の広報になりました。この春からはラーニングの運営にも関われることになったので、腕が鳴っています。とびラーとしての3年間で、人生が変わりました。JAXAの広報を請け負う財団から、美術館に行ったのですから。とびラー経験があったからこその激変です。
「特別鑑賞会でiPad」は、車いすで作品に近づけない人に絵を観てもらい喜んでいただきました。フェルメール展でiPad鑑賞ができなかったのが心残り。「あいうえの」も好きです。子どもがほぐれていく様子、自分を開放する瞬間が本当に素晴らしい。他館に身を置くと、ラーニングを大胆にとびラーに任せている都美の懐の深さを感じます。学芸員の皆さんは企画展の実現に魂を削っているので、その魅力を伝える側として深い敬意を表しつつ、その内容を正確に理解して発信するため日々是勉強の毎日。ポーラ美術館も建築が素晴らしいので、鑑賞ツアーを実現させたいですね。

実はとびラーになってすぐ、長年勤めていた会社を辞めました。とびラーとの出会いが刺激的で「自分、狭い世界に生きてるな」って思うことが多くなって。とびラーになる前後で世界が180度変わった感じです。とびラーは、家庭が忙しい人、夜遅くまで仕事して、朝も昼もとびラーやって、いつ寝てるの?って人もいる(笑)。本当に多様な人たちが、ひとつの場所でとびラボに対して、毎日喧々囂々精力的に向き合っている。ここで得られたこと全てが、自分の血となり肉となっています。
そんなこんなで、今後はとびラーのようなアート・コミュニケータの存在価値をもっと高めていきたいと思っています。具体的には、全国のアート・コミュニケータ同士を繋げていく活動。繋げることが目的ではなく、繋がることで生まれる化学反応を楽しみながら。人と人、人と場所が作品を通じて広がっていく......そういう豊かなコミュニティづくりは、これからも続けていきます。

自分が楽しむより、終わった後に子どもたちや、誰かに楽しいと言ってもらえること、とびラーとして誰かのために何かやっているという価値を見つけられる瞬間が好き。このプロジェクトが自分の街、三鷹にもあったらいいなと、これからゼミを始めました。世代も背景も違う様々な人たちと一緒に過ごす時間は魅力的で、こういった活動が街にあれば街は今より豊かになる、そんな思いに至りました。声に出し、種をまきながら、市民や子どもたちのための活動を三鷹市につくれたらと思っています。開扉はスタートラインでしかないです。そしてマラソンと同じで一人では途中でやめたくなるのですが、みんなが走っていてくれているから続けられるんです。開扉後もそれぞれのフィールドで誰かが走っているから自分も走れるなと。常にプレイヤーでいる人が魅力的。大変なこともありますが、一緒に走ってくれる仲間がいて、走らなければたどり着けない景色があると思います。

複数人がアイマスクをした状態で言葉を頼りに作品に描かれているものを想像する、「目隠しdeトーク」のワークショップが印象に残っています。同じ言葉でも人によって想像することが全く違うんだと気付かされて、人それぞれ違うということをおもしろいと思えるようになる転機でした。絵の前ではみんながフラットな立場。お互いの視点や気づきを受け取り合えるのが良いなと。そこから目が見えない方との鑑賞に興味が湧いて、これからゼミの「gift×gift 〜視覚障害の方と鑑賞の場」の活動に繋がりました。
とびラーになって最初に参加したラボで、同期と新人ながら頑張って活動していたら、最後ラボ解散の時に先輩から「大変なラボだったけどあなたたちが頑張ってくれたからやり通せたのよ」と言われて嬉しかったです。3年間で考え方が大きく変わって、人生の中で新しいステージに行った気がします。いろいろな価値観に出会うことが自分を成長させてくれるという事が分かりました。

「アフターとびラー」というラボの後に飲みに行くのが好きでした。プロジェクトマネジャーの伊藤達矢さんを深掘りするラボ「秘密の伊藤園&夜の伊藤宴」で、とびらプロジェクトからプライベート（恋の話♡）までお酒の席で伊藤さんとお話できたのが嬉しかった。
スペシャルマンデーでは、参加者から手作りのプラ板を貰いました。子どもって偉大なアーティストだなって、再認識した瞬間でした。僕はデザイナーとして「何かを生み出すことは宝物だ」と思うんです。その宝物を僕にくれたからには、宝物で返したい。なので、その学校の先生であり、とびラーでもある三宅さんに特別にお願いして、僕からもプラ板を作って、メッセージと共にお返ししました。開扉後は、人が集まる場を作りたい。自分が携わっているギャラリーでも、人が集まるサロン的な役割を今後創出していきたいなと。子ども向けワークショップをやりたいと思ってとびラーに入ったので、これからもしていけたらいいな。

ASR：アートスタディルーム。とびラーの活動の拠点となる東京都美術館の一室

「展覧会ができるまで」というボードゲームをつくるラボが印象に残っています。ちょうどコロナが流行り始めていたときだったので、リアルで遊ぶのは難しそうで、その中でボードゲームを作るのって意味あるのかな?みたいな議論もちょっとあったりしたんですが、それならWebで遊べるものを作れないかなって。それから私もプロではないので勉強し始めて、やり始めたのが「絵本ラボ」にもつながったんです。
とびラーの活動では、年齢も世代も、性別も職業もみんな違う人たちが集まったときに絶対にひとりでは体験できないことが起こります。その瞬間っていうのはここでしか体験できないし、それはやっぱりいいなと思いました。
美術館にあまり行ったことがない人と、美術館の間にはお互いの言葉を翻訳してくれる通訳のような存在が必要と感じています。通訳の存在で、人生をよりよく生きることに役立つと思って。そのために、現在NPOを立ち上げる準備をしています。

親子、特に乳幼児家庭にわくわく生きてほしいという思いがあります。子ども達や親が「美術館って楽しい」とミュージアムに対しての学びを発見してくれる瞬間が、すごく好きです。
「ものまね都美術館」や、「あいうえの」のスペシャルマンデー、ダイバーシティプログラムも大好きなのですが、2019年のキッズデーが印象深いです。伊庭靖子展を観て、作品と言葉を選んで貼り、「これはこう思ったよ」と伝えるんです。親に連れてこられたような子も、考えていくうちに顔が変わっていって。親からは、「言葉で表現すると、見ておしまいじゃなくて、何を感じたのか、この言葉をどう理解しているのかがわかるんですね」と言われました。「子どもが親に教えてもらう」のではなく、お互いに発見しあう姿が印象的でしたね。親子の学びを考えるときに、なんと見ている世界が狭かったんだろうと気付かされました。今後は、多様な家族の支援をしていきたいです。

とびラー1年目の時、私の書いていた字を見て「あなたの字は生きているからもっと書いたほうがいい」と言ってくれた先輩がいました。当時は意味がわからなかったけれど、書くことで伝わりやすくなる関係性みたいなものがあって。自分では自覚していないことを、客観的にすっと言ってくれる人ってありがたい。「その視点だけじゃないよ」と、教えてくれたその先輩の言葉が心に残っています。
とびラーの活動の中で、意見を言ったらみんなが「ハッ」と気付く表情になる瞬間がすごく好きです。楽しいとかワクワクというよりは、「ふふっ」て感じかな。「今までの延長で行き着いた先がとびラーだった」というみたいに、階段を一段一段あがって、その一段がとびらプロジェクトで、またそれを土台に次に行く。ここで気付かせてもらったものを持って、一旦自分の場所に戻ってみようと思っています。自分の哲学にとびらプロジェクトのスパイスを加える、そんな感じです。

とびラーになる前に参加者として参加したラボ「ムンクの絵に耳をすます1週間」が印象に残っています。その時の経験のインパクトが強くて、とびラー応募の背中を押してくれました。もうひとつ思い出深いのは、とびラーになって2年目に初めて指とまをした「冊子ラボ」。歴代続けてきていたラボでしたが、特にマニュアルがあるわけでもないので、手探りで進めていく楽しさと大変さで息が切れてしまうことも。1年という長丁場のラボでもあったので試行錯誤の連続でした。『とびラボは楽しくなければならない』。せっかくの限られたとびラーという3年間を存分にいかすべき。3年目は、みんなが楽しく活動できるそういう場作りを意識してとびラボ活動に励みました。
とびラーの活動は通過点。自分のやってきたことにとびラーでの経験がチャージされたので、自分の生活の中でその体験をいかしていきたいと思っています。多分、私のDNAには、とびラーが組み込まれたと思うので。

私の活動の原点は、1年目の伊庭靖子展での外向けとびラボ。先輩の姿、ワークショップを作っていく過程、スタッフさんとのやりとりを見て、こういうことをやってみたいと思って一緒にいた（中嶋）弘子さんと「絵から紡ぐ物語（ストーリー）〜みる・かんがえる・つくるを楽しむ大人の鑑賞ワークショップ」を立ち上げたのが1年目の9月。でも関わったもの全てが印象深いです。
とびラーになってから、ありがとうを言う回数が増えました。誰に対しても笑顔で、話を聞くことが上手になった。開扉後は、対話型鑑賞を続けていこうと計画中です。とびラーになったきっかけも対話型鑑賞を学びたかったから。一緒に作品を見て対話するという時間が豊かだな、と感じるので、ずっと喋れる限りやれればいいなと思います。何でこんなに一所懸命なんだろう。でも続けているってことは楽しい。自分のスタンスで参加できるというのもとびらプロジェクトのよいところだと思います。

「あいうえの」では、ダイバーシティプログラム「美術館でポーズ」が印象的です。外国にルーツのある子ども達が最初は緊張していたけれども、最後はみんな楽しく自分の書いた絵や写真を共有しあう、ワークショップとしてのプロセスがとても勉強になりました。
心がけているのは、きく力。全然できていないけど(笑)。スピードや生産性が重視される企業での仕事と違い、とびラボは紆余曲折で回り道ばかり。でもそういうことから生まれてくるものも大切だと思えるようになったかな。役割が明確でないフラットな関係でのものごとの進め方にも慣れてきました。とびラーの活動でいろんな関係ができて、すごく財産だなと思います。これからゼミで「FLATART」という、社会から孤立しがちな若者向けの活動をサンカクシャさんというNPOと一緒にやっていて、藝大の卒展でのプログラムも企画しています。これからも、若者とアートを繋ぐ活動を続けていきたいです。

オープン・イノベーションのラボが印象に残っています。美術館の教育普及事業が気になっているときに出会って。アートに関連するコミュニティとしてこれから地方へ広がっていきそうで、開扉後も何らかの形で関わっていきたいです。もうひとつは、とびラーになる前の「BENTO おべんとう展ー食べる・集う・つながるデザイン」のワークショップ。参加者の姉妹と一緒に絵を描いて話したことが印象深い稀有な体験でした。
鑑賞実践講座での「VTSは安心、安全な場でおこなうのですよ」という稲庭さんの言葉が心に残っていて、ここは自分の意見を聞いてもらえる温かい場なのだと思いました。VTSでは会話の中で相手を否定するのではなく、相手を認めて健全な批判ができることが大切なのだと。私は、ここで小さな輪のなかの多様性に気付くことができました。
VTSをキャリアスクールの勉強仲間ともおこなっていて、女性の生き方を応援するキャリアスクールや、子ども向けの授業で対話型鑑賞をできればいいなと思っています。

VTS：Visual Thinking Strategies 鑑賞実践講座で学ぶ鑑賞の方法

美術館のアクセシビリティに興味があったので、「あいうえの」のプログラムによく参加しました。ある時「映画館もいいけど美術館もいいね」と言ってくれた子がいて、確かに映画館って子ども同士で行くことはあるかもしれないけど、美術館はないなって。「あいうえの」をきっかけに、子どもだけでも安心して来てもらえる場所と思ってくれたら素敵だな。
路上生活者とアートがテーマのラボで、難しくなった時に「考えていてもしょうがないよ、動かないと!」の言葉に、そうなんだよな、と。結局ラボは、みんな心の中にこの問題ってあるよね、と解散したんですけど、ずっと引っかかっていて。本の仕事をしているんですけど、会社でこの活動を話したら結構興味を持ってくれて。福祉や芸術の企画のときにいろいろ聞いてくれて、これならこういう人がいます、とか、こういう本があります、など、蜘蛛の巣が広がって(笑)引っかかるものが増えたから、仕事にも活かせています。

とびラー以前にオンライン化が進んだことがいちばんの生活の変化。昔はアイデアを出しながらお茶を飲んでASRの天井スピーカーでガンガン音楽かけて。いつか展示の方にも生のバンド入れて音楽を響かせながらVTSしたいっていう夢を放課後クラブみたいに語ってた。
対面でもZoomでも一緒なんですけれど、人とじっくりお話ができて、出会えたと思える瞬間がいちばん好き。1年目の時、自分はまだ入ったばかりで、初めて「指とま」してASRに行った時「ちょっとスピーカー触っていいですか」って楽しい音楽をかけてみたら、スタッフの人にも「あら音楽、新鮮!」みたいに言ってもらえて。河野さん（8期）が結構頻繁に話に付き合ってくれてて、お茶を飲んで何回かやってたときに、とてもいい感じの白いティーポットを持ってきてくれて「お茶会用にしましょう」って寄付してくださったんですよ。あの時にあったお茶会も今では幻のお茶会で、3年間の中で際立つ思い出ですね。

ASR：アートスタディルーム。とびラーの活動の拠点となる東京都美術館の一室
VTS：Visual Thinking Strategies 鑑賞実践講座で学ぶ鑑賞の方法

印象に残っているのは「クリムト造形ラボ」。私のようなアートビギナーでも楽しめるようなプログラムで、「安心して参加できる美術館もあるんだ」と初めて知ることができました。このラボのテーマは「解放」。「手を動かし造形活動をすることで、日常の固定概念から解放されて、新しい視点で何か見つめ直そう」という、まさしくに自分がやりたかったこと。このラボで先輩とびラーさんからいただいた「（このラボは）正解を探すのではなくて自分の正解を作ることができる体験だ」という言葉は、今でも心に響いています。
開扉後は、何かしらアートには携わりたいなと思っています。伊庭靖子展の時に、「ダンスウェル」というパーキンソン病の方とおこなうプログラムに参加しました。伊庭さんの作品をパーキンソン病の方と一緒に体感し合い、とても楽しかったので「ああいうことができたらいいな」と思います。細く長くゆるくアートと繋がっていたいです。

発達障害の子どもたちのための「CozyCozyラボ」は、ワークショップの実施までは大変だったけど、全員が自主的に関わろうとしていて出来上がっていく感じが楽しかった。「あいうえの」の「キュッパ・チャンネル」も楽しくて、親子それぞれで標本を作って互いの意外性に驚いたり、親御さんがお子さんの新しい面に気付いたり。標本のタイトルを考える時に、お子さんが自分の中で言葉を引き出したりする瞬間をそばで見られたことが嬉しかったです。
とびラーになったことで、自分の中に部屋が増えて大きくなった感じがします。仕事だけでなく、とびラー活動があったことで人生のバランスが取れているという感じ。考え方は柔軟になったと思います。例えば、VTSで相手をそのまま受けとめるという姿勢が、普段の仕事でも他の人のやり方をポジティブに受け入れられるようになった。とびらプロジェクトの居心地が良い場にいられたから、他の人にもそういう居場所を提供できる側になりたい。

VTS：Visual Thinking Strategies 鑑賞実践講座で学ぶ鑑賞の方法

開扉は自分の中で一つの区切り。いちばん印象に残っている活動は建築ツアーです。以前、博物館でボランティアガイドをやっていたので、それと似ていると思いガイドを始めました。でも、とびラーと参加者は「教える教えられる関係ではない」と言われてちょっと戸惑いました。私らしいガイドってなんだろう?と考えながら。最近やっと、自分らしさが出ているツアーができたかな?と感じられるようになりました。
「建築ツアーにUDトークを!合理的配慮の可能性研究会ラボ」に参加して、聴覚障害の方に配慮したツアーをすることは通常のツアーの質の向上にも通じることがわかり、障害のある方とも特別に構えることなく関わっていけばいいんだなと思うようになりました。とびラーの活動では、「受け入れられた」と感じる瞬間があって、繋がれる実感が嬉しかったです。3年間考え続けた「教える教えられるではない関係」の構築は、開扉してからも私の課題です。

参加した子ども達が楽しかったと笑顔で帰る時。ラボが行き詰まった時に何か素敵な案が出てきた時。上野駅をおりて都美にワクワクして向かう時。どの瞬間も好きでした。
「CozyCozyラボ」で、みんなで内容を削らなくてはならない時に一皮むけました。いいものを創ろうという一体感と先輩の苦悩や一生懸命さに共感し、その体験から今があります。「あいうえの」に参加した小学生が、その後、画家や絵を調べてみんなに紹介しにきたり、2日で冒険ノートを1冊描いてくれたりして、ちゃんと届いたという実感がありました。
準備の仕方が変わり、引き出しが増えて削る判断もできるようになりました。だめならまた考えようと、変にモジモジしなくなりました。開扉は、いろんな可能性が広がっているウユニ塩湖みたいに清々しい、なんでもできるような、チャンネルが広がっていく感じ。人との出会いが自分を変え、言いづらいことも言える仲間ができたのが一番の財産です。