とびラーが3年の任期を終えることを、「新しい扉を開く」意味を込めて、「開扉(カイピ)」と呼んでいます。
開扉したとびラーたちに、3年間のとびらプロジェクトでの活動によって得られた価値や本プロジェクトの魅力、今後の展望等を語ってもらいました。
居心地のいい場は
自分でつくる
安部田 そらのさん
「みる旅」 撮影:中島佑輔
居心地のいい場は
自分でつくる
安部田 そらのさん
「人間は社会的動物である」という言葉を初めて自分のこととして実感できたことがいちばん印象に残っています。美術科のある高校に行き、藝大に入り、美術を生業にして生きていこうと思ってきたけど、社会ってすごく遠い存在で。私にとってのしあわせは、おいしいものを食べてよく寝るとか、いい作品が作れるとか、ごく個人的なことだったんです。属性の全然違う他の人と言葉や活動を通して繋がる感覚が、こんなにもあたたかでしあわせなものだなんて、これまで知りませんでした。
衝撃的だったのは基礎講座の「きく力」。西村先生の講座をふりかえりながら、「きくはクリエイティブ」を実験したいと思い「そらのの話をきいて」ラボをゆびとましました。実際やってみると、輪郭というより自分の芯にあるものが見えてくることに気がつきました。そして、安心して自分を表現できる場が広がったように感じています。
この3年で人が好きになり、都美が居場所になっているなぁ~と感じる瞬間が何度もありました。
今思うこと。
荒井 茂洋さん
今思うこと。
荒井 茂洋さん
開扉が視野に入ってきたこの時期に思うこと。
「この3年間がいちばん幸せだったと思うような人生にはしない」と。3年間いろいろなことに向き合い、チャレンジできたおかげで、自分の可能性を見出すことができました。大木でいうところの、根っこの部分を培うことができたような気がします。
自分には、地元でやりたい夢があります。今は個人的事情もあり「ひ・み・つ」なのですが(ごめんなさい)、大きな夢です。夢を大きく持つことで、自分の行動の幅を狭めることなく大きくし、自分自身に秘められた可能性(本当か?思い込みかも?)を引き出し、人々の役に立ちたいと思っています。
10年後、20年後に、「あの3年間があったからこそ、今がいちばん幸せです」と。
つぎのとびらへ
石川 ひかりさん
つぎのとびらへ
石川 ひかりさん
11月の岡本太郎展で、最初で最後のスペシャルマンデーに参加しました。今まで子どもたちと図工の授業をしたことはありますが、絵を鑑賞するのは初めてで、小学6年生だと、知らない大人を目の前にして感じたことを話すのは、緊張しちゃうかなと思っていたんです。けれど、私たちが入る隙がないぐらいに「これこうだよね」「こんなふうに見えるよね」と自分たちで発想を広げて積み重ねていく姿に感動しました。その時、「決めつけてはいけないな」「目の前の子どもたちと、ちゃんと向き合わないと」って感じました。来年度から図工の教員になる予定なので、子どもたちと一緒に都美に行きたいですね。
オンラインでやった「おうちでものまね都美術館」というラボが楽しかったです。家にあるものだけを使って、絵画作品の登場人物になりきるんです。ものまねすると、絵をよく見ることにもつながるんですよね。このラボは、オンラインの壁をほぐすような、そんな場になっていたのかな、と今感じています。
たくさんの方と関わって、
自分が広がった
今井 亜美さん
たくさんの方と関わって、
自分が広がった
今井 亜美さん
とびラーになったのが大学3年生。社会人1年目までの3年間は自分の人生の転換期でもありました。いちばん自分が変わったのは、人とのコミュニケーション。みんなと一緒に物事を決めていくこと、きく力、話す力。皆さんとコミュニケーションする中で学ばせていただいたなって思います。
吉田博展のラボに参加しましたが、明確な目標が定まってラボが立ち上がるわけではないので、意外と「あれ、結局どこに向かうの?」みたいな感じになっちゃう。みんなで作ることを大事にするからこそ、みんなで方向性を定めていくのは結構大変。こういうふうにしてみんなで固めていくんだなっていうのを学ぶ機会でした。
集団の中で話すのは苦手だったんですけど、だんだん抵抗がなくなってきました。それはちゃんと聞いてくれて、優しく受け止めてくれるから。聞いてくれる相手にどれだけ丁寧に伝えるかみたいなところも、より成長できたかなって思います。
立ち止まって「在り方」に
向き合った時間
梅 浩歌さん
立ち止まって「在り方」に
向き合った時間
梅 浩歌さん
6年ほど住んでいたロンドンから戻って10年弱。ロンドンは様々な文化的背景を持つ人で構成されているので、コミュニケーションが取りやすかったのですが、帰国後、空気を読む雰囲気や同じ文化であるが故に自分の中に思い込みがあったりして、ずっとモヤモヤとしていました。そして子どもが苦手だったのですが、実際に自分の子どもが産まれて、この人とどうやってコミュニケーションを取っていけばいいのだろう?などと思っていたタイミングで、とびラーになりました。 とびらプロジェクトのコミュニティはロンドンで触れてきたコミュニティに近く、とてもフラット。広い意味で多様な価値観を受け入れる「在り方」に触れ、自分もそう「在れ」るようになってきた気がします。 あいうえのやアクセス実践講座、DOORの人間形成学の講座を通して、障害や人の人生について知ることで、今まで感じていた不安やモヤモヤが薄れて、自分の「在り方」にも変化が生まれました。
もっとこの温かい輪を
広げたい
大石 麗奈さん
もっとこの温かい輪を
広げたい
大石 麗奈さん
2年目の「みる旅」が転換点でした。複数日の実施で、毎回終了後にとびラーのみんながすごい勢いで議論している。「なぜ長時間のプログラムだったのか」「活動全体がわかりにくいのではないか」と。それをスタッフさんが「うんうん」と受け止める。次の日には改善されていることから、夜遅くまで話していたんだろうなと察しました。そこから「スタッフもとびラーも、みんながプレイヤーで平等なんだ!」とやる気が出ました。 「みる旅」には3年目も参加しました。高校生の参加者は作品の好きなところを丁寧に話し、シニアの方が「確かにね」と受け止める。お互いに「あなたのおかげで興味を持てた、ありがとう」という気持ちが生まれる。「gift×gift」の言葉がストンと落ちた瞬間でした。 とびラーって相手を見つめようとする人ばかり。「能力が高いですね」じゃなくて、「あなたのそういう佇まいが好き」みたいなことを言ってくれる。そんな繋がりを育むことができて、幸せだなぁと感じています。
この3年間を振り返って
考えたこと
大川 璃紗さん
この3年間を振り返って
考えたこと
大川 璃紗さん
年齢、とびラーの期をまたいで、色々な人との出会いがあり、関わり方ができたことが何よりも大きな財産だと思います。年上の方たちは私が何をやっていてこれから何をやりたいかという夢を、優しく聞いて、時にはアドバイスもしてくださいました。活動以外にも、年明け早々に美術館に遠出したり、学生とびラー2人で修学旅行へ連れて行ってもらったり、とびラーになったことで出会ったご縁で楽しいことがたくさんできました。
私は、大学2年生から3年間とびラー活動をしました。まだまだ将来のことをぼんやりと思っていた頃でした。色々な大人や輝いて見える同年代と関わりながら、私はちゃんと何かをもった人になれるだろうかとその度に立ち止まって焦ったことも多かったように思います。今は、私がちゃんと帆を上げて、人生の流れを大切にして舵を切っていけば、いつも楽しく生きていけると気づいて腹を括りました。人生はケモノ道のようで、至らないところが隠せないほどあります。でも、私のそばの人たち、出会う人たちには笑顔だけでいいので来る日も来る日も届けていけるように心得ていたいです。
とびラーでハマった
「建築の沼」
大澤 暁さん
とびラーでハマった
「建築の沼」
大澤 暁さん
1年目はコロナの流行と重なり、オンラインで繋がるのは苦手なので、活動は正直低調でした。それが、建築のミニ勉強会で世界遺産の話をしたことが縁で、建築を軸に皆とリアルで繋がり、一緒に活動することでどんどん建築の活動に関わるようになりました。
仕事で世界遺産の啓発活動に関わっており、建築の知識はありました。また、日本の街並や都市景観を良くしていくための活動を将来的に行いたいと考えていたので、それには建築ツアーのノウハウやコミュニケーションの力が大事であることから、とびラーに応募しました。でも、想像以上に「前川建築」にハマってしまい、前川國男の建築を調べるラボを立ち上げ、さらには前川が設計した東京海上日動火災ビルの保存活動にも関わるまでになってしまいました。そこから活動範囲がとびラーを越えて広がり、「近代建築と市民の会」の立ち上げに関わることになりました。当分「建築の沼」にハマり続けそうです(笑)。
自分は何者か。
輪郭が見えてきた。
岡田 則子さん
自分は何者か。
輪郭が見えてきた。
岡田 則子さん
1年目のはじめの頃はとびラーとしてちゃんとできているのかなって、周りと比べて落ち込んで辛かったですね。ふっ切れたのは1年目の終わりくらい。モーニングツアーとかに参加し始めて、一般の来館者さんと触れ合う時間ができて喜んでもらえてすごく励まされた。そういう時間を重ねていくことで少しずつ自信がついて、ここにいていいんだなっていう気持ちにはなってきた。
自分が何者か。とびラーになって少しはわかってきたかもしれない。もの作りがすごく好きなことが前よりも自覚的にわかったし、建築ガイドで自分なりのやり方が見えてきたかなと最近やっと思えたので、自分の輪郭が少し見えてきたのかな。もちろんコロナがなかったらもっと違う思いができたんだろうなって思うけど、オンライン経験が悪かったとは思わない。Zoomができるってコロナが終わっても武器にもなるし、そういう中でとびラーをやることができたというのが武器になるなって。
とびラーは日常のスパイス
小川 恵奈さん
とびラーは日常のスパイス
小川 恵奈さん
9期はコロナ真っ只中で始まりました。「全力でとびラー活動やりました!」とは言い切れません。仕事もあり、とびラーと両立するのが難しかったですが、とびらプロジェクトでは日常の会社生活では味わえない参加者の多様性を感じ、その出会いが新鮮でした。目に見えるアクションだけではなく、目に見えないマインドチェンジがありました。それがきっかけで、自分の残りのライフワークについても考えて転職しました(笑)。
良かった活動は、最初に体験したオンラインの「あいうえの」。とびラー同士はコミュニケーションが成立するけど、子どもとではうまくいかないこともありました。VTS中の絵に落書きしていたり(笑) 。つまらないのかと思いきや、アンケートに「すごく面白かった!」とありました。子どもって面白い!
とびラーとはスパイス。なかったらなかったで自分として成立するけど、とびラーがいると味変というか、より良い方向に変化させる存在だと思います。
人と作品が出会う瞬間を
見続けたい
尾駒 京子さん
「ずっとび鑑賞会」 撮影:中島佑輔
人と作品が出会う瞬間を
見続けたい
尾駒 京子さん
2年目のスペシャルマンデーで、初めての「リアル」ファシリテータ経験。長い間コロナ禍でオンラインでの活動が主だったので、貸し切りの美術館で本物の絵を見て思う存分に人と話をする、なんて幸せなことなんだろうという気持ちになったのをよく覚えています。
子どもたちのうれしい反応の一方で、難しさと後悔もたくさんありました。これで良かったのだろうか?というモヤモヤとした気持ちを一人で抱えきれずに、とびラーに一緒に振り返る機会をつくってもらい、良かったこともそうでないこともシェアできたことは、次へ進むパワーになりました。それから、「イサム・ノグチ展」の一般来館者向け対話型鑑賞プログラムを企画するラボでは、初めて会った人同士なのに一つの作品を通じて多くの話ができ、一人で鑑賞するよりたくさんの気づきがあり、深く味わえたことに驚きと面白さを感じました。作品を一緒に見て、人と言葉を交わすこと、こういうのが私はいちばんやりたかったんだと改めて気がついたんです。
今の自分を信じて
やってみる
門田 温子さん
「ずっとび鑑賞会」 撮影:中島佑輔
今の自分を信じて
やってみる
門田 温子さん
3年間の活動の中で、自分がオープンになることを意識してきました。講座やとびラボという共通体験をもつことで、オープンになっても大丈夫と思える仲間ができました。参加したいと思ったものに参加すること、アイデアを「この指とまれ」すること、ファシリテーターをつとめること、ミーティングの内容をグラレコ風に可視化したメモを共有することが自分にとって「オープンになること」でした。ダメもとで、自分を飾らずに、過度な期待を抱かずに、今の自分を信じてやってみる。やってみると場を共有した人たちがコメントをくれたことがうれしかったし、お互いに関心を持った人と話すことはウェルビーイングな時間でした。そこから何かが始まる感じも体得しました。3年間、出会う人と信頼し合える特別な環境だったと感じています。開扉してからも、身につけたことをさらっと出せるといいな。
迷い、やり切り、
最後は笑顔でパフェ!
鹿子木 孝子さん
迷い、やり切り、
最後は笑顔でパフェ!
鹿子木 孝子さん
思い出に残る一瞬というと、笑顔でパフェです。学生時代に彫刻を学んだイサム・ノグチ愛から「発見を分かち合おう〜イサム・ノグチの作品を辿る〜」ラボを無謀にも2年目に、一般来館者向けプログラムを企画するラボとして立ち上げました。ところが嵐の難破船のごとく、Zoomでのラボだけで150時間を超え、8月にやっと開催!その甲斐あってリアルにモノに触れ、鑑賞の体験を分かち合える、印象深いプログラムとなりました。打ち上げでメンバー全員、超笑顔でパーラーのフルーツパフェを食べた瞬間は忘れられません。暑い熱い夏でした。半年の長旅で一人一人が経験と知恵と度胸を身につけ、やり切った感は「120%」。この経験が各自の「これからゼミ」にも繋がりました。
新しいとびラーさん、今の自分を肯定して逆風や傷つくのを恐れずに。開拓者の一歩を踏み出せば、泣いたり悩む日もあるかもしれません。自分の気持ちに素直にいきましょう。やり切った後にはきっと笑顔のパフェあり!
これからも旅を
続けていきたい
栗山 昌幸さん
これからも旅を
続けていきたい
栗山 昌幸さん
いちばん印象に残っているのは開扉編集部です。それは特別な時間でした。普段は自分から声を上げることはしないんだけど、その時は開扉するとびラーのために思いきってゆびとましました。本作りの未経験者もたくさんいたけど、一緒につくれるようにワークショップをやったり工夫しました。「つながり」がテーマだったので、次の世代にも作り方を残そうという試みもしました。それぞれ得意分野をやったり、時には役割を変えたり、助け合いながら全員で一緒に作ることができました。それが今回にも繋がってると思うとやって良かったです。そのおかげでとても大切な仲間に出会えたし、今はありがとうって気持ちです。
とびラーの時間を旅というふうに捉えれば、とても楽しい旅でした。いろんな人に出会えて話が聞けて、はじめての体験をして知らないこともたくさん知れた。ここでいろんな影響をうけたので、ほかの場所に行っても、こんな旅を続けたいと思います。未来はどうなるかわからないけれど、楽しみです。
アートで繋がった
人と人の関係
黒岩 由華さん
「ずっとび鑑賞会」 撮影:中島佑輔
アートで繋がった
人と人の関係
黒岩 由華さん
いちばん印象に残ったことはステキな人にたくさん会えたことです。自分にはない経験を積んだ人、自分の芯を持っている人が多く、そうした人たちといろいろなラボで出会い、話をする、そんなやり取りがとても楽しかったです。例えば3回とも関われた「おいでよ・ぷらっと・びじゅつかん」も印象深いラボ。1年目から始まり、ゼロから皆で作り上げるのはとても学びが多かったし、仕事とは違って、単に生産性や効率性などを忖度しない意見交換は、とても新鮮な体験でした。
今後もアートや音楽に関わっていきたいです。
また、先に開扉したとびラーさんたちとのつながりで始めた、子どもたちや若者とアートを介してつながる活動も継続していきたいなと思っています。アートで人と繋がることで、いろいろな体験をすることができました。とびラーになって、人によって物の見方が違うことを当たり前と思うようになったこと、こうした「出会い」や「経験値」、これが今後の活動でも大きな財産になると思っています。
「人っていいなぁ」
人が苦手な私が思った
纐纈 浩美さん
「人っていいなぁ」
人が苦手な私が思った
纐纈 浩美さん
私はアート教室の先生をしています。人に合わせることが苦手で、人間関係においても私が一方的に悪く受け止めてしまったりするので、一人の仕事を選びました。日常的には誰にも相談することなく決めて、自分のペースで仕事を進めて、代わりに責任も自分で取ります。それが、2年がかりで関わっていた「えほんラボ」のようにとびラーとして絵本を共同制作するとなると、人とどう分業して、どう依頼するのか、習慣がないために戸惑いました。相手の都合にも合わせなければいけません。ところが実際にやっていると、逆に私に合わせてくれることもあって、絵本というひとつのものを介して、気持ちがひとつになっていくのを感じました。
いま、仕事のスタッフがほしいと思うようになりました。自分以外の意見や感性が新鮮だったのです。「どうしようか」と尋ねると答えが返ってくる。相談相手がいるって、良いことだなと気付きました。
中国でも
このすばらしい物語を
共有したい
黄 星さん
中国でも
このすばらしい物語を
共有したい
黄 星さん
とびらプロジェクトに興味を持ち、2回応募して、やっと採用されました。2020年の春、面接の場面を今も鮮明に覚えています。3年間を経て、とびらプロジェクトで行った自主的な活動は、「社会の処方箋」だと思います。そして2023年から北京でアートに関する活動を始めたいと思いました。最初は友達のアートアトリエで対話型鑑賞を試してみたいです。目標はアート・コミュニケータとして、美術館で対話型鑑賞を実現することです。
私は革細工をしたり、お皿に絵を描いたりしていて、今年、北京でアートに関する体験工房を開く予定です。
アートに興味があって、しかし家計的に困難な方や田舎の子どものために、アート活動を体験するチャンスを作ります。アートを介して、体験者はコミュニケーションをしたり作品で思ったことを表現することで、より幸せな生活を過ごすことができると良いです。
とびラーを世界中に広げたい!INTERNATIONAL!!
対話型鑑賞の考え方を
活かしていきたい
小屋迫 もえさん
対話型鑑賞の考え方を
活かしていきたい
小屋迫 もえさん
以前は、自由に意見を出す場面でファシリをしていても、意見を聞いてもそこで止まっていました。今は相手がどうしてそう思ったのかや、何に興味を持っているかを掘り下げて考えるようになりました。
一歩踏み込んで聞けるようになったことによって、相手自身も気づいていなかったことが引き出せるようになり、とても嬉しいです。
あと、世の中のいろんなことへの興味が深くなったと思います。以前は日々のニュースや作品の感想に触れた時、自分の考えと少し異なっていても、「人それぞれ感じることは違うから」と思うことで、受け止めているつもりになっていました。否定はしていないけど、わかろうともしていなかったなと。
あいうえのでは、子どもたちから予想外の意見がたくさん出てきて、どうしてそう思ったかを聞かずにいられないし、すべてちゃんと理由がありました。
アートに限らず、これから出会う人たちに興味を持ち続け、理解することを諦めない努力をしたいと思います。
これからも、
たてにもよこにも
広がる世界
佐々木 杏奈さん
これからも、
たてにもよこにも
広がる世界
佐々木 杏奈さん
どれを考えても、とびらプロジェクトというコミュニティにたどり着く。普段の生活の中で関わることが少なかった人との交流や、子どもと接する機会がないから子どもと話してみたいなって。「あいうえの」はどれも思い出深いです。一生懸命になってしまったら、子どもたちにプレッシャーを感じさせるのかな…場づくりって難しい。力を抜いて楽しければいいかなって臨むと、子どももリラックスして喋る感じでそれが楽しかったです。そのエネルギーをもらい仕事に戻ると、ポジティブになっているように感じます。
とびラーがきっかけで、社会人大学(ワークショップ・デザイナー育成)に通ってみたり、活動の幅が広がったな、と思います。会社でもVTSを。「思ったこと、感じたことを言ってもいい、どんなことを考えた?」と言うと、最初はぽかんとしていた皆さんが「あっ、そっか!」と変わっていく。
全然違うバックグラウンドの人からの学びが、今すごく共感しながら迷子になるくらい広がっています。
「若者」から「フラット」を
問いなおす
下山 雄大さん
「若者」から「フラット」を
問いなおす
下山 雄大さん
とびラーはどのように関わり合っている/いけるのだろう?
私が「このゆびとまれ」を呼びかけた複数のラボは、そのような問いを考え、これからの対話の知恵を共に作っていく場になりました。とびらプロジェクトの対話や協働を「フラット」の一語で片付けるのではなく、「フラット」という言葉の裏で不可視化されるような経験の差異を語り合うことを大切にしました。これまでの対話の実践の在り様を見つめ直し、一緒に悩み考えることで、他者との新たな向き合い方が現れてきます。
開扉後のどのコミュニティでも、誰かの声や自分自身のなかで眠っている声に丁寧に応答していくことを大切にしたいです。自らが社会にどのように働きかけたいのか、どのような連帯を結びうるのかを考えていきたい。「このゆびとまれ」を合言葉に、いまここで誰かと何かを考え始めることができる——その楽しさと可能性を知ったのが、とびらのコミュニティでの財産です。
「どこからそう思うの?」の大切さ
新谷 慶子さん
「どこからそう思うの?」の大切さ
新谷 慶子さん
私は静寂が求められる美術館は居心地が悪くて苦手でした。絵画も有名作家の歴史や背景を知らないと楽しんではいけないものだと思っていましたし……でも、さいたま国際芸術祭に参加したことがきっかけで、とびラーになり、VTSの手法を学びました。どんな考えでもいいんだという自由な発想に影響を受け、美術館を楽しめるようになりました。
対話ってお互いが尊重し合って認め合った状態で成り立つものかなと思います。
対話型鑑賞でよく使う「どこからそう思うの?」そのフレーズは、他人にも自分にもすごく役立つ言葉で、相手から何か言われてイラッとした時は「どこからそう思ったの?」と返すようにしている。そうすると、自然とぶつからなくなってきます。今、ICT(情報通信技術)を活用した子どもたちの学びのお手伝いをしているのですが、先生にアドバイスする側としてこの言葉は子どもたちや先生にも気づきとなりました。手探りだった対話の重みや深みをきちっと学べたこと、実践する場をいただけたことが本当にありがたかったですね。
とびらプロジェクトに
感謝しています
杉山 岳大さん
とびらプロジェクトに
感謝しています
杉山 岳大さん
自分は一人っ子なので下の年代と関わりを持てたことがすごく新鮮で貴重な経験でした。「スペシャルマンデー」では、小学生たちと話す取り組みに参加でき、「みる旅」では高校生とか自分よりも大先輩の方々と一緒に鑑賞してみて、自分は本当に視野が狭かったんだなと思いました。大学では美術史を勉強していて学術的な目線で見ることが多かったのですが、子どもたちのすごく新鮮な感想や生きていくことに対して純粋な目で見ているんだなと感じて、そうしたことの大切さを気づかせてもらったと思います。
僕は大学3年生のはじめにとびらプロジェクトに飛び込んだのですが、ふら~と来てもそこで迎えてくれて話してくれて、コミュニティの強さとか、その懐の深さとかを強く感じました。作品のモノの見方もですが、人の見方も変わったと思います。美術と関わるためにどういう立場でいなければいけないかとか広い視野を持つことも、とびらプロジェクトで得たのかなと思うし、初めて社会に飛び込んだという感覚を強く感じますね。
とびラー活動は
心の繋がりを
育める場所
高橋 千那美さん
とびラー活動は
心の繋がりを
育める場所
高橋 千那美さん
3年目の夏に「昔ばなしがきこえるよ」というワークショップが印象に残っています。そこには日本が受け入れたウクライナ難民の子も来てくれることになっていました。
ニュースで見る悲惨な現実を生きてきた子、と少し身構えてしまっていたのですが、ワークショップで出会った子たちは心を閉ざすどころか、日本は食べ物が美味しくて楽しい!って笑顔で話してくれたり、言葉が通じない場面があっても他の子と一緒に笑い合っていたり、とても無邪気な普通の子どもで。勝手に心配していたけど、彼らは彼らの今を前向きに生きているんだ、って思いましたね。日本が「てぶくろ」のように私たちをあたたかく受け入れてくれたことに感謝したい、といって「てぶくろ」というウクライナ民話を紹介してくれたことは一生忘れられないと思います(笑)!子どもたちが自由な発想で美術館で見つけたものを伝えてくれる、その自由を私がとびラーとして少し後押しできる。国籍とかそういうの全部置いておいて、この活動が心の繋がりを育めるすごく良い場所なんだなっていうのを改めて感じて、 なんか良いなと。
一人ではできないことが
できる、優しい場所
滝沢 智恵子さん
一人ではできないことが
できる、優しい場所
滝沢 智恵子さん
いちばん印象に残ったのは、7期の安藤さんが立ち上げた「とびらくご」です。お手伝いのつもりが「入りなよ」と言われて、最終的には高座に上がることに。落語をあまり聞いたこともないのに、作って、覚えて、しかも人前に出る。とびラーでなければ、安藤さんに出会わなければ、一生できなかった体験でした。
同じ気持ちを持った人たちと出会えて、ひとつのものを作ったのはすごく楽しかったです。本当に良い方ばかりで、助けてくれたり、足りない部分を教えてくれたり、とびラー活動の勉強になりました。それとともに、やっていただいたことを私もやらなくちゃ、という気持ちになりました。「トビカン・モーニング・ツアー」「消しゴムはんこラボ」は、以前からあったアイデアの種を引き継いだラボです。自分が発案したわけではないけど、これからもずっと続いてほしいなと思っています。
自分一人ではできなかったことが、とびラー3年間でたくさんできたのは、やはり色々なラボに参加したから。とびラーになったら、是非、色々なことに参加してほしいな、と思います。
周囲の助けを
得ながらの挑戦
千葉 裕輔さん
「スペシャルマンデー」 撮影:中島佑輔
周囲の助けを
得ながらの挑戦
千葉 裕輔さん
かけがえのない時間を過ごせました。世代を超えた多様な価値観や背景をもった仲間と出会い活動できた経験は一生の宝物です。そして、その真ん中には常にアートがありました。アートがあるから、語り合えました。アートがあるから、笑い合えました。アートがあるから、多くの方々と出会うことができました。
とびらプロジェクトは、美術館で何かをしたい、やりたいと思った時に、素直に気持ちを打ち明けられる陽だまりのような場所でした。先輩とびラーたちの遺した軌跡が鍵となることもありました。しかし、いつもすんなりと進むことばかりではありません。疑問に真っ直ぐに向き合い対話を諦めずに共に悩み考え、何でも相談できるスタッフの存在はありがたかったです。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
とびらプロジェクトの魅力は、そこで活動する人たちです。今後もアートを通し、人を中心としたアート・コミュニケーション活動をやっていきたいです。
この3年間は、
私にとっての
「青春」です
登坂 京子さん
この3年間は、
私にとっての
「青春」です
登坂 京子さん
私の好きな本に「青春とは若いある時期のことではなく、心持ちの問題だ。感動する心とワクワクする好奇心と、そして夢をもっていれば、それはいつでも青春である」と書かれています。楽しいだけではなくいろんなことがあって…。でも、それが学びになった。この3年間は、青春時代そのものでした。
特に青春を感じたのは、一般来館者向けプログラムを企画するラボですね。スムーズに進んだものなんて、ひとつもなくて…。車いすラボは、足掛け3年かかりました。最初は1人でやらなきゃと気負っていたんですが、空回りしてうまくいかなくなってしまった。そこで「助けてください」と言ってみたら、10期の方々が「私たちが何とかします!」と、どんどん動いてくれました。びっくりしましたね。「私のラボ」ではなく、「私たちのラボ」だと感じました。
それからは私自身も、他の方のゆびとまに参加して、一緒に連帯感を味わうことがすごく楽しくなりました。
みんなの笑顔が
あふれる場所を作りたい
長尾 純子さん
みんなの笑顔が
あふれる場所を作りたい
長尾 純子さん
あいうえのでは毎回どんな子たちとどんな言葉に出会い、どんな発見の旅になるのか楽しみでした。最後のスペシャルマンデーで年長さんグループを担当しました。ちびっ子たちの先入観のない純真無垢な言葉は面白く、上手く言葉にならないところは身体全体でグニョグニョした感じを表現してくれたりと、今まで体験したことない5歳児ならではの飾らない反応に、私の顔はほころびっぱなしでした。「僕が好きなヒーローに似ているのがあったから、もう一度連れて行って」と小さな声で言う彼の上着の下にはスパイダーマンのTシャツ。一緒に探した彼のお気に入りは、岡本太郎の真っ赤な椅子。背もたれのくり抜いた形がスパイダーマンの目にそっくり。初めての美術館でそんな楽しみ方をしてくれた瞬間に立ち会えたことは、私の宝物です。
私がアートと出会うきっかけになった地元の美術館の活動を大事にしたいという思いがあります。私の好きな小さな街の、私の好きな小さな美術館に、いろんな人々が笑顔で集う様子を想像すると、とてもワクワクします。
建物の沼へ人を誘う伝道師!
中西 崇さん
建物の沼へ人を誘う伝道師!
中西 崇さん
とびラーになってやりたかったことは建物の「民主化」です。建築の仕事をしていると、一般の人は建物を「難しい」と思い、無意識のうちに壁を作っているように感じます。誰もが気軽に建物を楽しめる「きっかけ」を作りたいと思い、とびラーになりました。とびラーの活動では敢えて自分では「ゆびとま」をせず、いろいろなラボに建築分野のサポートとして参加しました。建物に少しでも興味を持ってラボに集まった人が、「はじめの一歩」を不安なく踏み出せるよう、専門家として一緒に伴走したかったのです。
「SDGsで探究!名建築をみる」にファシリテータとして参加したとき、建物を見る子どもたちの視線は直観的で面白かったです。あと、子どもたちは反応も素直なので伝わっているかすぐにわかります。そういった面では、伝え方もすごく勉強になりました。また、活動をしていく中で建物の面白さに気が付くとびラーも増え、皆で前川國男の聖地である弘前に行ったことも楽しい思い出です。
いち参加者として
梨本 麻由美さん
いち参加者として
梨本 麻由美さん
最初は「おべんとう展」に参加した経験から、とびラーになってワークショップをやりたいと思っていましたが、コロナもあり、一般来館者向けワークショップはハードルが高く断念しました。ですがポンポンラボなど、とびラー仲間と色々作り、楽しい時間を共有できました。また、とびラーになる前に参加した建築ツアーが楽しかったので、建築ツアーや建築関係のラボに色々参加できてとても楽しかったです。建築は詳しくなく、3年経っても全く知識はインプットされていませんが、常にいち参加者の気持ちで純粋に楽しんでいます。みんな優しいので、知らないことを色々聞けちゃうのも楽しかったです。自分ができないことをそこに参加することで疑似体験できるのも良かったです。1年目に参加した絵本ラボの解散会で、次のラボの指を誰もあげなかったので、私がゆびとましてみました。結果とびラー2年目、3年目と続く「えほんラボ」が誕生しました。とびラーになって、色々な人と知り合うことができて、自分の知らなかった世界を知ることができました。
大切な「人と人」
そして「人とアート」の
対話とつながり
林 賢さん
大切な「人と人」
そして「人とアート」の
対話とつながり
林 賢さん
私は以前から「目の不自由な方と共にこころの目で見る対話型絵画鑑賞」を行っていて、活動をより充実させたくて「とびラー」になりました。
1年目はコロナ禍で郷里からテレワークとオンライン「とびラー」。独居の母と共に暮らしました。2年目は孫が生まれ、母も東京にきて生活は著しく変化。対象を拡げ、活動の価値を上げるため、多くのラボや小学生を対象とする「あいうえの」に参加し、愛称も試行錯誤し「まっちゃん」に変えました。子どもたちとの対話による絵画鑑賞ではたくさんの刺激とヒントがありました。3年目は「とびラー」と(再開を熱望された)地域活動を並行しておこないました。ラボ体験なども応用し有意義なワークショップになってきました。アクティブシニアであるためにも、開扉後も「とびラー」と共に在ることは大切なこと。一つのテーマや問いをもって対話することは本当に楽しく意義のあることを確信できた3年間(皆様に感謝)でした。
みんなが楽しい感じ、
その空気が大好き
平本 正史さん
みんなが楽しい感じ、
その空気が大好き
平本 正史さん
仕事とプライベート以外の、いわゆるサードプレイスが欲しいと思ってとびらプロジェクトを見つけました。本当に刺激をもらえる、最高の3年間だったと思います。
みんな仕事や家庭と違う場から来ているから、とても楽しかったですし、その空気が大好き。自分自身も家と職場の行き来だけじゃなくて、生活の色が鮮やかになり、自分を保てる場所ができましたね。
とびラーの人は多彩で、素敵な人ばかり。飽きない。例えば、1ヶ月に1回新しいことを始めるっていう人がいたり。趣味の話をしても僕以上に知ってる人がいたり。吉田博展のTシャツラボも印象的でしたね。シルクスクリーンを持ってる人までいるんだ!と驚きました。着物もとびラー経由で知った世界で、今自分でも作っているところです。
「一緒にいる人に何を用意したら、一緒に楽しめるかな」と考えると、人のことがさらに好きになっちゃいます。とびラーの仲間、人との繋がりは大切にしたいです。開扉した後も、皆さんと繋がり続けたいなと思います。
一緒にいて一緒に楽しむ
フラットな関係
堀内 裕子さん
「スペシャルマンデー」 撮影:中島佑輔
一緒にいて一緒に楽しむ
フラットな関係
堀内 裕子さん
いちばん印象に残ったラボは、とびラジオ。聞く人は絵を見ていないので、声だけで伝えるということが大変でした。イサム・ノグチ展で第2弾がスタートした時も、抽象的な作品の魅力を言語化し、聞く方に共感してもらえるよう伝えるのは苦労しました。ただ、逆に私はラジオのおかげで、抽象彫刻の楽しみ方がわかったんです。これがなかったら、イサム・ノグチ展は私にとってはつまらない展示だったかも。このラボのおかげで面白がることができた、という意味でも非常に印象的なラボでした。それと1年目の特別鑑賞会の時に伊藤さんが、「障害者の不自由に対してとびラーが『助けてあげなきゃ』とか『してあげなきゃ』とかそういう気持ちでは臨まないで欲しい」とおっしゃっていた。「お互いに学び合い、フラットな関係性でそこにいてください」と言われてはっとしたんですよね。それが3年間ずっと心に。「一緒にいて一緒に楽しむ」ということを学びました。とびラーは皆の背景を知らないからこそフラットな関係が作りやすく、出会いが得られたことは本当に良かったと思っています。
アートへの関わりがより深く、
より幅広く
松本 知珠さん
アートへの関わりがより深く、
より幅広く
松本 知珠さん
いちばん印象に残っているのはアクセス実践講座です。講座を聴いたことでいろいろな学びがあり、そのアウトプットが自分の変化にも繋がっています。アートにより深く関わるようになりました。
どんどん外に出て行かなきゃという気持ちも起こるようになりました。外に出ると、いろんなところにとびラーの経験者がいます。それで話が弾んで、繋がりが生まれて、お手伝いをしたり。「流され上手だから流されるといいよ」と言われたりもします。とびラーには自分と同じように仕事としてアートに関わっている人もいれば、プライベートや趣味でアートに関わっている人もいる。他の業界にいる人の知識がとびラーに還元されたりすると、すごく面白いなと思います。迷ったときには他のとびラーに相談して、アドバイスをもらったり。アートとの関わり方の幅をとびラーから教わった気がします。
就職する時、自分はもっと社会と関わりたいと思っていました。「文化と社会を繋ぐ」とその時に考えたことが、巡り巡って今に繋がっているんだなと思います。
「鑑賞」は教科をこえた
素晴らしい学習活動
三宅 典子さん
「鑑賞」は教科をこえた
素晴らしい学習活動
三宅 典子さん
とびラー2年目のスペシャルマンデーがいちばん印象に残っています。図工の教員をやっているのですが2年目に「子どもたちを連れて行くなら今だ」という気持ちで応募しました。抽選だったのですが見事当たりまして、当時の小学4年生を連れていくことができました。
事前学習で、最初はポストカードの中からお気に入りを選ばせていたんですが、それだと興味が持てない子もいて、絵をプラ板に写して自分なりの色をつけて当日持っていくことで、作品への興味・関心が広がりました。展示室にいる時間だけではなく、事前・事後の授業をどうするかによって学びの深さが変わってくるんだなって思いましたね。
授業の中では、お互いに作った作品を見合うということをよく取り入れてるんですが、やっぱりそれだけではもの足りなくて…美術作品を見て、お互いに意見を交流させていくっていうところが教科をこえて素晴らしい学習活動になると思うようになりました。とびラーの3年間で、自分は美術を通して何がしたいのか、改めて考えることができました。
知り合えた人や事と、
これからも繋がっていく
宮下 美保子さん
知り合えた人や事と、
これからも繋がっていく
宮下 美保子さん
とびラーになった時は、すごく緊張していました。そんな中「大人ムービー部」に参加してみたら、立ち上げた7期の方がとびラー活動に慣れてない人にも、とても細やかに気を配ってくれて。見捨てずに受け入れてくれる感じが嬉しかったです。いろんな人と話をして、いろんな人の作品を楽しんで、その中に居られた安心感がありました。その後参加した「とびらくご」でも、お話できる人がいないみたいな感覚はなくなり、とにかくASRに行くのが楽しみでしょうがない。私はもう、とびラーとして大丈夫だと思いました。
知り合えた人からも、事からも、いっぱい吸収することができました。それがその時で終わりではなく、自分の中で繋がっていくのが嬉しいところ。最近も開扉したとびラーの方が企画されたイベントに参加したりして、開扉しても皆さんと繋がっていけるんだと実感できました。どんどん繋がり広がっていく自分や、自分をとりまく世界を感じるこの頃です。
引き継いで、
楽しんで、
また引き継いで
向井 由紀さん
引き継いで、
楽しんで、
また引き継いで
向井 由紀さん
とびラーになったきっかけは、トビカン・ヤカン・カイカン・ツアーへの参加でした。クリスマス前で、サンタ帽をかぶって子どものようにはしゃぐ大人を見て、「私はこの仲間に入りたい」と。
とびラー1年目はコロナの影響でツアーが開催されませんでしたが、その後の建築系ツアーは、どれもすごく大事なものです。アイデアを引き継いで、また別の人に渡す。そのリレーの間が得意なのかな。
ツアーは長い歴史の中でどんどんブラッシュアップされ続けています。私は他のとびラー達のしていることが全て楽しくて、その中でアイデアを出していました。
引き継ぎでは「自分のやりたいようにやっていいよ」と伝えています。参加者に楽しんでもらうには、とびラーの私達が思いっきり楽しくないと。
とびラーになるとき、3年だけ?と思ったけど、限られた力を3年にガッと集中して使って、実りが多かった気がします。全部を楽しんでしまったら次の楽しみがないけど、ちょっと心残りがあると、他のところでまた何かやりたい、楽しみたいと思うのかもしれません。
まなび×とびラー活動の3年間
薮本 沙織さん
まなび×とびラー活動の3年間
薮本 沙織さん
とびラーには、知人の勧めで応募しました。30代は勧められたことはなんでもやってみようと思っていたし、美術館も大好きだったから。結果的にこのタイミングで参加したからこそ、伊藤さん、稲庭さんというとびらプロジェクトを最初から創ってこられた方から、次の世代のスタッフの皆さんへのバトンタッチのときに立ち会うことができたと思っていて、とっても貴重でした。
とびラー活動の中で特にうれしかったのは、アクセス実践講座や東京藝術大学のDOOR講義に参加させてもらえたこと。もともと現代アートを観るのが好きだったのは、アーティストが社会課題と格闘している様子から刺激を受けることができるから。でも、美術館の外に出るとそういうことを語りあえる場所が少ないなと思って、さみしい思いをしていました。でも、アクセス実践講座やDOOR講義では、素晴らしい講師陣によってアート×社会課題の取組が紹介されていて。それ以外にも、鑑賞実践講座、建築実践講座もとっても刺激的だった!毎回わくわくしていました。
建築と仲間との出会いで
世界が広がった
山中 みどりさん
建築と仲間との出会いで
世界が広がった
山中 みどりさん
心に残るラボは、最初の年のCozy Cozyラボ、2・3年目のイサム・ノグチの作品を辿る、Fun! Fan!とび巡り建築ツアー、暮らしの彩りおとな美術館などの、一般来館者向けラボです。何度も対話を重ねたり、細かい準備など苦労はあるけれど、じっくり取り組むからこそ終わると感動や喜びが大きいのかな。参加者の方が楽しんでくださったり、みんなでやり遂げて、「あぁ成功した!やって良かった!」みたいな終わった時の達成感がいちばんうれしいです。
私が住んでいる地域は、ローカルなところで高齢化が進んでいます。近くにできた集会所は高齢者が集まる場としても利用されているので、もしかしたらここでシニアのみなさんと何かできることがあるかもしれないと思っています。
振り返ると3年間はあっという間で、開扉することは寂しいけれど、みなさんと活動したり、知り合えたことが私の宝物です。これからもずっとつながって、そこからまた何かが生まれたら良いな。
仲間がいるから
モヤモヤも楽しめる
遊佐 操さん
仲間がいるから
モヤモヤも楽しめる
遊佐 操さん
一般来館者を対象に『聴く/視る/話す鑑賞を深く味わおう』という鑑賞ラボを立ち上げました。実施後は、改めて本物の作品のチカラ・美術館で行うことの意味を実感できました。またプログラムにはVTSを取り入れていました。私はVTSには大きな可能性があると思っているんです。そこを探りたかったのも、ラボを立ち上げた大きな理由です。もっとVTSのことを知りたい、という想いは開扉後も続くと思います。
以前は常に「正解」を追い求めていました。悩んでいるのが耐えられなかった。3年間を通してモヤモヤを楽しめるようになってきたかな。時間をかけて作品を味わう、というところから「モヤモヤとも長い時間をかけて向き合ってみよう!」と思えてきたんです。とびラーという、仲間がいるのも大きいかな。一緒にモヤるのも楽しい(笑)。
私たちは「できること」ではなくて、「やりたいこと」を問われていると思います。やりたいことを自分に問い続けることが大切だと思います。
みんなでやり遂げた
ミチクサビジュツカン
吉水 由美子さん
みんなでやり遂げた
ミチクサビジュツカン
吉水 由美子さん
いちばん印象に残ったことは「大人のミチクサビジュツカン」です。いつもと違う美術館の楽しみ方や過ごし方への提案、感じ方などの伝えたかったことをお客様と共有できて、全ての疲れが吹き飛びました。参加者の反応を得られることが、とびラーの喜び、醍醐味ですね。このラボのアイデアが引き継がれて、定番ラボになることが夢です。
水平的な共創の世界を体験したくてとびラーになりましたが、ヒエラルキー社会、競争社会で仕事をしてきた思考パターンが、ここではそぐわないなと思う場面もありました。会社は指示系統がはっきりしているから、これやってと言えば、さくさく進むラクさも、これでいいのかといつも孤独に自問自答している厳しさもあります。
とびラーは逆で、みんなでやるから孤独感はないけど、とても時間がかかることに、ある種の忍耐力が要ります。でもこれが水平的に社会を考え直す、今的な世界だと思います。これから自分が生きていくうえで、過ごしたい場所はこういうところなんだろうなと感じています。
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