2014.12.20
「ウフィツィ美術館展」開催中の東京都美術館にて、恒例となった子供向けプログラム「とびらボードでGO!」が、11月22日と29日の2日間にわたり実施されました。普段から東京都美術館では、中学生以下の子供たちに磁気ボード(とびらボード)を貸し出して、展覧会場内で絵を描いてもらうということを行っています。そしてこの「とびらボードでGO!」がある日には、子供たちの描いた力作がオリジナルのポストカードに仕立てられ、プレゼントされるのです!
そんな参加して楽しい、もらって嬉しいプログラムですが、実施するとびラーも来館者の笑顔が間近で見られるとあって、ワクワクしながら準備をしてきました。今回のウフィツィ美術館展はイタリアの宗教絵画が中心。はたして子供たちはどんな風に、何に興味をもって観るのかな?とびラーみんなで興味しんしんです。
さて、実施日の朝、展示会場の入り口ではさっそくとびラーが子供たちを待っています。「本物の絵画を見ながらお絵かきしませんか?」「自分で描いた絵をカードにして持って帰りませんか?」と声をかけます。
すると「やってみる~!」という子供たちが続々。とびらボードの使い方や、ポストカードの印刷所について、保護者の方と説明を受けたら、ボードをしっかり首から下げて、さぁ出発です!
ボードを手にしてウキウキ顏の子供たちは、展示会場内で自分の気になる作品の前で、ゆっくりじっくり本物の絵画を観察。会場内のスタッフさんも、子供たちを暖かく見守ってくれます。本物の絵を見ながら自分で描いてみるって、ちょっと特別な体験かもしれません。お母さんやお父さんが「この子がこんなに集中して絵を見れるなんて」とびっくりされることも多いのです。
そうしてできた自分だけの名作を、展示会場を出たらいよいよポストカードに印刷です。印刷所ではとびラーが子供たちを「お帰りなさい!」と待っています。大事な作品を受け取ったらその場で、パソコンを使いオリジナルのポストカードに印刷。
印刷されたカードを子供たちにプレゼントした後、となりの塗り絵ブースで自分で色を塗って仕上げます。ここはどんな色だったかな?まだホクホクの記憶をたよりに、自分なりの色を真剣に塗ります…。
「できた!」と、カラフルになった自慢の作品を手に、笑顔の子供たち。そんな子供たちの姿に、保護者の方々もにっこり。みなさん良い顔してますね!
今回の2日間の開催の中で、93枚もの小さな名作が生まれました。どれもよく観察して描かれた力作ぞろいです。絵画の中の人物を表情までよく見て描いた作品、背景の建物を細かく描いた作品、人物が手に持った道具に注目して描いた作品などなど…。みんな自分の目で観察して描いてくれたんだなぁと、感動するとびラー一同なのでした。
参加してくださったみなさま、どうもありがとうございました!ぜひまたご家族やお友達と美術館にお越しくださいね。そして、また新しい笑顔に出会えることをたのしみに、次回も「とびらボードでGO!」を開催しますので、どうぞよろしくお願いします。
筆者|佐藤菜々子(アートコミュニケーター「とびラー」)
いつもはフリーのグラフィックデザイナー、そして時々とびラーに変身する。
とびラーになってから、あらためて美術館と仲良くなれたと感じている。
実はとびらボードを使える子供たちをうらやましく思っている。
2014.09.13
『メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神』開催期間中の9月13日に、とびラボから生まれた恒例企画、「とびらボードでGO!」が開催されました。
特別展覧会の会場内で小中学生を対象に貸し出されている磁気ボード(愛称は「とびらボード」)。東京都美術館ではこの磁気ボードを使って展示作品のスケッチができます。いつもは描いた絵を家まで持ち帰ることができませんが、「とびらボードでGO!」の開催日は違います。描いた絵をポストカードサイズに印刷して、塗り絵にして持って帰れるのです!参加は当日来館した小中学生なら誰でもOKです。
入り口でとびラーから企画の説明を受け、ボードを手にした子供たちの目はすでにキラキラです。美術館でお絵かきができるなんて、初めての体験だというお子さんも多かったのではないでしょうか?
こちらが展覧会入口に設置された「とびらボード」の貸し出し場所。「ボードに傷はないかな?」「しっかり紐はついているかな?」と、とびラーはボードのチェックに余念がありません。
展覧会を満喫した後は、完成したとびらボードを2階の特設印刷所に持って行きます。するとスタンバイしているとびラーが描いた絵をパソコンで加工し、塗り絵にします。塗り絵は展覧会をイメージした枠の中に印刷されるので、特別感もアップしますね。実は裏面にはメッセージを描けるようになっていて、本当にポストカードとして使えるのですよ。
印刷場所のすぐ横には色鉛筆で塗り絵ができるスペースも完備。印刷したての塗り絵に、展覧会の記憶が鮮やかなうちに色を塗ることができます。
色鉛筆片手に、子どもたちの表情は真剣そのものです。図録を開いたり、本物をもう一度見に展示室に戻ったり…。本物を何度も見ながら絵が描ける、そんな贅沢な体験ができるのが、「とびらボードでGO!」の大きな魅力です。「うちの子がこんなに真剣に絵を描くなんて!」「この子がこんなに美術品が好きなんて、知らなかった」と、保護者の方々にとって新たな発見があるのも、この企画ではよく見る光景。今回も新たな発見があったでしょうか?
「ここはどんな色だったかな?」
親子で、兄弟姉妹で、友達同士で、こんな話し合いをしながらの色塗りも、楽しいものです。
完成した自信作と一緒に。参加者数は71名、たくさんの傑作が生まれました。彫刻など立体作品が多くみられる展覧会でしたので、絵にするのは難しいかな?と思いきや、小さな芸術家たちにそんな心配は無用です。大人でもはっとさせられてしまうユニークな目の付け所や細部まで行き届いた観察に、今回も感嘆の声がいくつも聞こえました。
作品をよーく見ながらとびらボードにスケッチする内に、子どもたちの心の中で「自分なりの美術品の見方、美術館の楽しみ方」がきっと見つかるはず。そんなことを考えながら、今後も「とびらボードでGO!」を続けていきます。次回の開催をお楽しみに!
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筆者:アート・コミュニケータ(とびラー)鈴木直歩
普段は大学生。裏の顔(?)はアート・コミュニケータ―!「とびらボードでGO!」企画の立ち上げメンバーの一人でもある。
「美術館にやってきた子どもたち!大人の背中にくっついていないで、とびらボード、つかってみませんか?」
2014.09.12
ワークショップ「楽園」への手紙は、全日程を終了いたしました。
沢山のご来場まことにありがとうございました。
上野はここのところめっきり涼しくなってきました。
夏の強い陽射しが和らぎ、秋めいた空気の中でゆっくりアートを楽しみたい気分です。
美術館に足を運ぶと、自分自身と向き合うような独特の内的な雰囲気に包まれます。
一つ一つの作品が放つ色々なものを受け止めながらぐっと別世界に引き込まれる鑑賞のひととき。
時には作品の力で心を動かされることもあります。
心に渦巻く想いを作り手の方へ伝えてみませんか。
「楽園としての芸術」展では、ワークショップ 「楽園」への手紙を開催中です。
作品鑑賞の後、作り手の方たちへ向けて手紙を書くことができます。
今日は、これまで開催されたワークショップの模様をお伝えします。
ワークショップの開催場所は、展覧会会場内の奥にあります。
下の写真に写っている白いポストが目印です。
付近にいる アート・コミュニケータ(※)がご案内しますので、どうぞお気軽に声をかけてください。
机の上には色紙と色鉛筆がセットしてあります。
手紙のサンプルや図録の用意もあります。
図録をゆっくり眺めながら、何を書こうかな・・・、思案中です。
すぐに書き始める人も筆を取るまで時間がかかる人も、一旦書き始めると、みんな没頭!
文章を書く人、絵を描く人、大きな文字でシンプルに書く人、裏表びっしり書く人、思い思いに、しばし書面に集中する時間が流れていきます。
書き終わったら、切手シールを貼って消印を模したスタンプを押します。
消印スタンプは、実は手紙の行先を示しています。
しょうぶ学園行きの手紙には菖蒲の花のスタンプを、アトリエ・エレマン・プレザン行きの手紙にはお家のスタンプを押します。
このスタンプ、アート・コミュニケータの手作りで絵柄がとっても可愛いんです。
好きなところに好きなだけ、押したり貼ったり。
中には一面スタンプでいっぱいにする人も。
完成した手紙は「楽園」への手紙 専用ポストに投函して終了です。
投函された手紙はアート・コミュニケータがお預かりし、 作り手の方々のアトリエへお届けします。
老若何女、津々浦々から、さまざまな方々が立ち寄って手紙を書いていかれました。
夏休みに親子でいらした方、旅行で上野の美術館巡りの最中という方、アトリエをもって絵の先生をされているという方、海外からお越しの方。
手紙を書きながら展覧会や作品への想いについて語ってくださる方もいらっしゃいました。
お話を伺いながら、作り手側だけでなく作品を観に来てくださる方にも、観に来るまでの物語があることに気づかされました。
皆さんのお手紙を作り手の方々のアトリエへお届けできることに、わくわくしています。
ワークショップ「楽園」への手紙は、全日程を終了いたしました。
沢山のご来場まことにありがとうございました。
(※) アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)は 東京都美術館を拠点に、人と作品、人と人、人と場所との つながりを育み支えるための様々な活動をしています。
アート・コミュニケータは美術館の学芸員や職員ではありません。
会社員や学生や主婦をしながら、ボランタリーに美術館と関わっています。
筆者:とびラー 中野未知子(なかのみちこ)
フリーランスとして企業で研修やワークショップの企画、運営を行う。
アートを介したまちばのコミュニケーション・デザインを研究すべく
アート・コミュニケータを志す。
多摩大学 経営情報学部 非常勤講師/立教大学大学院 比較組織ネットワーク学修士
2013.03.30
「エル・グレコ」展でも、子どもたちが名画を描く「スケッチボードでGO!!」が実施されました。磁気ボードを使って子どもたちが展示室の中でお絵かきをします。出口ではとびラーが子どもたちの絵をポストカードにしてプレゼントしてくれます。
3月29日・30日の2日間行なわれた「スケッチボードでGO!!」(磁気ボードの貸し出しは会期中常時行なわれました)には1日平均60人もの子どもたちが参加してくれました。
展示室の中では真剣に絵を描く子どもたちの姿に遭遇します。こうした光景は展示室の中の雰囲気さえも変えてしまいます。
今回の「スケッチボードでGO!!」では、これまでにはなかった新たな試みも行なわれました。いつもは子どもたちが描いた絵をポストカード状の塗り絵に仕立ててプレゼントするところまででしたが、今回は展示室から出たところに「塗り絵コーナー」を設けました。今描いた絵に、今色を着ける。今みたあの絵のことを思いだす。色を塗っている間に「もう一度作品をみてきたい!」と展示室に戻る子どもの姿もありました。
作業は真剣そのもの。ただ作品を鑑賞するだけでなく、子どもたち自身、自分が感じた名画の印象をじっくりと味わい、カードに残します。そしてそのカード家に持ち帰ることで、今日の体験を家族や他の誰かと共有することができます。
最後は「とびらプロジェクト」のロゴマークの前で記念撮影。上手に描けています。きっとエル・グレコの自画像かな?
2012.12.16
12月15日・16日「マウリッツハイス美術館展」で好評だった「おえかきボードでGO」が「メトロポリタン美術館展」でも開催されました。今回は「どうぶつボードでGO」と名前を改めての実施です。
上野恩賜動物園と連携したジュニアガイドをもとに「どうぶつボード」(磁気式描画ボード)を使って、展示室内にある動物をモチーフにした作品の絵を描くプロジェクトです。普段は込み合う展示室の中では、全ての作品をお絵描きの対象とすることが出来ません。そこで、動物をモチーフにした作品の中から6種類を指定し、ジュニアガイドで推奨させて頂きました。しかし今日は「親子ふれあいデー」、推奨した作品以外の展示作品でも、「どうぶつボード」を使いながら親子で楽しく描いて頂きました。「どうぶつボード」と「メトロポリタン美術館展・ジュニアガイド」は展覧会場入り口で常時貸出し・配布が行なわれております。
まずは、入り口でジュニアガイドをもらって中に入ると、とびコーさんから「どうぶつボード」を借りることができます。使い方はとびコーさんが説明してくれます。みなさんおなじみの磁気ボードですからとても簡単です。
展示室の中では、子どもたちが作品を鑑賞しながら早速絵を描いていました。
こちらは、お父さんとお子さんが一緒に彫刻を鑑賞しながら、じっくりと描画中。
ふたり並んで、写真の作品をみながら鳥の絵を描いていました。よくみると、1枚の「どうぶつボード」の中に、幾つもの動物の絵や、他の展示物の絵が描かれています。はじめに描いた作品から、次にその絵のとなりに描く作品を選ぶ、そんな風にしてこどもたちは展示室の中を歩いている様子でした。つまり、1枚の絵を深く鑑賞する体験が、次にじっくりと鑑賞したい作品を選ぶことに繋がってゆく、そうしたプロセスが生まれてことが分かります。何をみたらいいかわからない、そんな戸惑を上手く解決してくれる思わぬ効果がある様でした。
「どうぶつボード」をもって展覧会の出口にむかうと、そこにはとびコーさんたちが待機しています。凡そ5分程度で子どもたちの描いた作品がポストカードになります。今回は12月ということもあり「クリスマス」「お正月」「ノーマル」の3種類のフレームをご用意させて頂きました。どれも、とびコーさんたちのオリジナルデザインです。
クリスマスのフレームに羊の群れ。きっとミレーの絵からヒントを得たのかな。
お正月のフレームに、お魚。きっとウィリアム・ド・モーガンの大皿かな。
これはライオンの兜ですね。上手です。
2012.08.31
マウリッツハイス美術館展では、小学生以下の子供を対象に、夏休み期間にお絵かきボードを貸し出していました。この磁気ボードに描いた絵をデジカメ写真に撮り、ハガキサイズのカードに印刷してプレゼントする企画「お絵かきボードでGO!」をとびラー候補生(以下、とびコー)が企画しました。開催は、8 月29 日から31 日までの3日間。新学期へのカウントダウンが始まるこの時期、美術館に来る余裕のある子はどれ位いるのでしょうか?はるか昔の自分を振り返れば、見て見ぬふりをしていた宿題に追い詰められ、過ぎ行く夏を惜しむ余裕なんてなかったけれど…。
入場待ちの長い列の中に…いるいる!日に焼けた子供たち! 入口の手前で、とびコーがフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」と同じ、青いターバンをかぶって子供たちに声をかけます。パパとママについてきただけ、という子も、青いターバン姿と「お絵かき」という言葉に「なんだかおもしろそう」と思ってくれたようです。展示会場前で磁気ボードを手に立っていると、子供達の方から近づいてきてくれました。手を動かしながらボードの使い方を覚えて、さあ出発。今日の混み具合だと、大人の背中の間から作品を覗くことになるかも…。
会場が混んでいて描きづらいのではないか、という心配は杞憂に過ぎませんでした。子供たちは絵画にじっくりと向き合い、真剣に、つぶさに、絵をみていました。
磁気ボードに描いたとは思えない繊細な筆致、迷いのないまっすぐな輪郭、彼らは実にのびのびと、自分の目で見たものをストレートに表現しています。背景を黒くするなど、磁気ボード独特の表現技法を見つけた子もいました。
では、さっそく印刷してみましょう。額縁が更に絵を引き立てます。そのまま自宅で飾るのもよし、白黒で印刷することで「ぬり絵」になるので、展示作品を思い出しながら色鉛筆などで色を塗る楽しみもあります。
「子供が夢中になって、描き終わるまで親が待つはめになりました」、「小さい子供を連れてくるのが不安だったのですが、この企画のおかげで助かりました」お父さんやお母さんにとっても、子供たちの反応は想像以上だったようです。何よりも嬉しかったのは、カードに印刷された自分の絵を見た時の、子供たちの照れたような、でも嬉しそうな笑顔でした。もっとやりたい、と会場に戻って別の作品を描いて持ってきた女の子、お絵かきボードとカードに印刷された絵を何度も何度も見比べていた男の子。彼らにとって、美術館は「混んでいて退屈な場所」にはならないことでしょう。また、絵の正面のスペースを子供たちに空けてくださったり、ボードに描かれた子供たちの絵を観ながら、改めて作品の感想を語り合う大人のお客様の姿も印象的でした。
ずっと観てみたかった名画に美術館で会えるだけで確かに満足できます。でも、その名画の前で絵を描く子供がいたり、その子の絵をみて話しかける大人、カタログを手に1 枚の絵をじっと見つめる人など、美術館で思い思いに作品を楽しむ人々の姿があったら、そこで過ごす時間はさらに豊かに、心に残るものになるのではないでしょうか。この3 日間で「お絵かきボードでGO!」を体験した子供たちはおよそ440 名。この子たちは次に東京都美術館に来た時も、きっとお絵かきボードを探すことでしょう。「大人はお絵かきが出来ないのですか?」という声も沢山いただきました。この企画を終わらせることなく、さらに工夫を重ねて、またいつかみなさんをお迎えしたいです。
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2012.05.20