9月2日から4日までの3日間、東京藝術大学の学園祭「藝祭2016」が
上野キャンパスにて行われました。
神輿パレードや、サンバ、個性的な模擬店に、歌や楽器の生演奏。
にぎわっているそんな藝祭の中、とびらプロジェクトでは昨年に引き続き、
「藝祭さんぽ」プログラムを実施しました。
我々アート・コミュニケータ「とびラー」が来場者の方々と一緒に
キャンパスを歩いて美術学部の学生たちの作品を見て周り、
参加者同士で感想を共有したり、作者とお話をして色々聞いてみたり。
この「藝祭さんぽ」は、参加者と作品・作者をつなげたいという
とびラーの気持ちから生まれた企画です。
9月3日の土曜日、一回きりの開催となりましたが、
21名もの方にさんぽ企画にご参加いただきました。
さんぽ企画は通常、作品を巡りながらそこにいる藝大生の話を聞く、という流れなのですが、今回は初めての試みとして「現役藝大生と巡る藝祭さんぽ」と題し、学生と一緒にキャンパスを巡るコースも用意してみました。
今回はこちらの藝大生と一緒に巡るコースの様子を中心にお届けします。
ファシリテーターは今回初めてのガイドを努める、とびラーの上田紗智子さん。
そして、さんぽをナビゲートしてくれる藝大生は国際芸術創造研究科修士1年の峰岸 優香さんです。
せっかくなのでナビゲートのコース作成からお願いしちゃいました。
大学で「キュレーション」の勉強をしている峰岸さん。
今回は「来た人に合わせたツアーを作る」というテーマでキャンパスを巡るとのこと。
つまりその場でどこに行くか決めていくスタイル、まさにさんぽですね。
藝祭期間中のキャンパスでは、あちこちで学生たちの作品が展示されています。
その作品たちを巡りながら、作品の解説をする、のではなく、
作品を見てみんなで「これはなんだろう」と考えたり、「どうしてそんなふうに感じたのだろう」という点を掘り下げたりしながら、感想を共有しあいます。
また、実際に手に取ることができる作品も展示されていました。
木の枠の中にはボールや石のようなものがたくさんあります。なんと実はこれ泥団子。
参加者も回りで見ていた方も一緒になって一番お気に入りの泥団子を探しました。
道中での出会いもさんぽの醍醐味です。
作品を展示している学生にその場でアーティストトークをしてもらったり、
文化財保存学専攻のコーナーでは、仏像のパーツのひとつである「光背」を修復している学生の作業を見学したり
学生たちの製作や研究の成果を、本人たちの話を交えなえながら聞くことで、
とても興味深く感じることができました。
また、藝祭の目玉の一つである「神輿」もキャンパス内に展示されています。
こちらにも皆さん興味津々。
とびラーでは7月終わりからこの神輿の制作過程を追い作者たちからいろんな話を聞いていました、
実はこの神輿、藝大に今年入学したばかりの1年生がひと夏かけて作り上げたものなのです。
山積みにされた発泡スチロールの塊から1か月余りで生まれた力作たち。
それぞれの神輿に込められた思いや苦労話などのエピソードを参加者へ伝えると
皆さん驚きや感嘆の表情を浮かべていました。
藝祭でしか見ることのできないもの、藝大生にしか聞くことができないこと。
今日だからこそ見ることができる風景や出会いを楽しみ、
おしゃべりしながらキャンパスをめぐっていきます。
美術学部棟から音楽学部棟へ。
藝大全体をぐるっとまわり、1時間のさんぽもあっという間におしまいとなりました。
参加者の方からは
・見ごたえのある作品が多く、とても関心を持った
・初めて藝大に来たので、どこから見ていいかわからなったので助かった
・普段の藝大生の活動を見ることができ楽しかった
といった感想をいただきました。
また、今回ナビゲートを務めた峰岸さんからは以下のようなコメントが。
「自分にとっては日常的な視点でも、他の人にはそうじゃないんだなぁ、というのがとてもよくわかりました。当たり前のことなんですけど(笑)。でも、やってみてすごく参加者の方の反応が面白かったので、
ぜひ他の学生にもトライしてほしいです。きっと学生本人の為にもなると思う。」
他の学生の作品をナビゲートできるのは、キュレーションを勉強している峰岸さんならではのコース。
制作サイドの学生がコースを考えたらまた全然違った藝大の風景を案内してくれると思います。
また来年も藝大生とめぐるコースを企画してみたいですね。
ここで他のチームの様子もご紹介。
こちらのチームはとびラーが藝祭を案内し、藝大生の作品を巡り作者の話を聞いて回るコースです。
今回のさんぽでは3名の学生の方に協力していただきました。
油画科3年の小久江 峻さん。当日は生ライブをした直後だったので浴衣姿で登場です。
「また来てうらめしや」というユニークなタイトルの展示、なんと音楽学部邦楽科の山口晃太郎さんとコラボした紙芝居、映像作品なのです。「音楽と美術のコラボレーション」ですね。
オリジナルなおばけが登場するこの紙芝居、ストーリーは小久江さんが考えたのだとか。
新しい表現にチャレンジしたい小久江さんならではの展示でした。
続いて、日本画科3年の大山 菜々子さん。
少年展II、というグループ展での展示です。
銀河鉄道をモチーフにした作品で二人の少年が描かれた作品で、
背景にはたくさんの星がちりばめられていました。繊細なタッチで描かれ幻想的な雰囲気です。
「少年」というテーマは最近人気なのだとかで、ファンも多いとのこと。
大山さんはこの展示のために藝祭前日までキャンパスに向かって作品を仕上げていたのだとか。
お疲れの中でしたが笑顔で対応いただきました。
「少年にあいたいか」という展示のポスターも印象的ですね。
最後にデザイン科修士1年の佐藤 絵里子さん。私たちと一緒にとびラーでも活動しています。
自分が学部1年生の時の藝祭で作った法被をまとって臨んでくれました。
(藝祭で学生たちが来ている法被も1年生が自分たちで作っているのです!)
今回の展示のタイトルは「モチーフ」。
道で拾った小石や植物を持ち帰り、何日も同じ部屋で観察しすることで特別な存在になっていくとのこと。そんな宝ものたちを観察して感じたこと、発見したことをメモして見たりスケッチして見たりするそうです。何気ないものが宝ものにかわっていく様子が印象的な作品でした。
佐藤さんは藝祭期間中に行われるアートマーケットでもご自身がデザインしたトートバックやTシャツを販売していらっしゃいました。Tシャツのデザインはなんと「蛾の触覚」!
「やっぱりこういうのが好きなんですよね~」とおっしゃってまいた。
個性的なこれらの作品を同じく個性的なとびラーのファシリテーターたちが順々めぐります。
参加者の方もノリの良い方が多く、藝大生のご協力のおかげで、
とても楽しく作品を一緒に見ることができました。
見に来てくれた参加者がいて、作品があって、作者の方がいて、とびラーがつないで…
いろいろな出会いが深まった時間になりました。
藝祭のさなか、さんぽプログラムに参加いただいた学生の皆さん、本当にありがとうございました!
とびらプロジェクトではこれからも
卒業制作中の学生をレポートする「藝大生インタビュー」、1月末の卒展でのツアー・鑑賞企画など、
藝大生と連携したプログラムを行ってまいります。
どうぞご期待ください!
【とびラー(アート・コミュニケータ) 小田澤直人】
2016.09.03