2024.03.27
日時|2023年7月31日(月)
・・・午前の部 ①10:30 ②10:50 ③11:10
・・・午後の部 ④13:00 ⑤13:20 ⑥13:40 ⑦15:00 ⑧15:20
場所|東京都美術館 アートスタディルーム
対象|18歳以下の方とその保護者
7月22日(土)から始まった『うえののそこから「はじまり、はじまり!」荒木珠奈 展』(以下、「はじまり展」)内で開催された「キッズ+U18デー」に合わせて、凹版ワークショップを開催しました。
「はじまり展」には「ケエジン※」という、不思議なキャラクターが潜んでいます。
このワークショップは、厚紙やプラスチックの板にニードルなどでケエジンを描き(製版)、描いた溝にインクを詰めて表面の余分なインクを拭き取り、プレス機で刷る、という凹版(おうはん)の手法を体験してもらうものです。
※荒木珠奈さんが同展覧会のために作られた《記憶のそこ》から生まれた精霊(キャラクター)。展覧会を案内する精霊として、展覧会場でのサインやポスターにちりばめられていました。
「はじまり展」には荒木さんの銅版画も多く展示されていました。銅版画というのは凹版の一種ですが、まずその仕組みを口で説明するのがなかなか難しく、一般の方が体験する機会もそれほど多くはありません。
理解してもらうには体験してもらうのが一番。とにかく体験してもらいたい! その体験を通して、キャラクターや展覧会に親しみを感じてもらえたり、作品への見方が深まったりするかもしれない、というのが企画をはじめた頃に考えていたことのひとつでした。
凹版についてのお話からスタート
ニードルを使って描きます
ゴムベラでインクをのせて、寒冷紗で拭き取ります
プレス機を回して…刷れた!
版と刷り上がった作品を台紙に貼って、完成!
「描く」「インクを詰めて拭き取る」「プレス機で刷る」という3つの工程を順に進み、最後はラッピングをして完成です。
参加された方の多くが、最初は緊張していた表情も、出来上がる頃にはすっかり笑顔になって「たのしかった!」と会場を後にしていく姿に、こちらがギフトをいただいたようなうれしい気持ちになりました。
海外から旅行中の方も参加されて、英語と中国語の翻訳にUDトーク(音声認識/自動翻訳アプリ)を活用する場面もありました。
終了後のアンケートコーナーでは、付箋に感想を書いてホワイトボードに貼ってもらうことにしました。たのしんで体験してもらえたことや、ケエジンを好きになってくれたことなどが伺えました。
当日は開始直前まで、お客さん来るかな? たのしんでもらえるかな? とドキドキしていた私たちとびラーでしたが、全8回、全ての回がほぼ満席となり、総勢64名以上の方が参加してくださいました。
LB階のエントランスで参加券を配布しました
今回使用した銅版用プレス機は、かつて荒木さんがワークショップで使っていたものです。十数年前に私が荒木さんから譲り受けたプレス機を持っていたことをきっかけに、15名のとびラーが集まってこの企画がスタートしました。前例のないワークショップでしたが、ひとりひとりが力を合わせ、手探りで試行錯誤を重ねて実現することができました。
同時期に開催していた「アート・コミュニケーション事業を体験する 2023展」 (7月29日(土)〜8月11日(金))の会場にも、このプレス機は展示されていました。
最後に
私がとびラーになった2021年は、コロナの真っ最中でした。出かけたり、人に会ったりすることにまだ制限がかかる日々でした。とびラー最後の3年目、ようやくたくさんの人に向けたプログラムが躊躇なくできるようになり、今回のワークショップを開催できたことは、とても幸運な巡り合わせだったなあ、とふりかえって感じました。
今回参加されたお子さんやご家族にとって、このワークショップが美術館でのたのしい思い出になっていたら、とてもうれしいです。
そしてまたいつか、どこかで版画に出会った時に、そういえば美術館であんな体験したなあ、と思い出してもらえる日が来ることを願っています。
執筆:
野口真弓(10期とびラー)
版画家。作品をつくりながら、「こどもとアート」をテーマに活動しています。自分一人でできることは限られているけれど、仲間と一緒だとこんなこともできちゃう。というのを体感したとびラー3年間でした。
2024.03.27
【ラボ実施の経緯】
とびラー11期の菊地と、とびラー10期の金城。
11期と10期で期が異なる私たち。
複数のとびラボで一緒に取り組む過程を経て、個性が違う私たちで一緒にラボを行ってみようという話になりました。
ラボを行うなら自分達も楽しく取り組みたいという想いから、「アートと自分達が好きなもの・得意なことを掛け合わせてラボを行ってみよう」と2人で話し合いました。
金城は化粧が好き。
菊地は歴史が好き。
化粧の歴史から見るアートの世界は、今までの自分達の見方とは異なる視点から、アート鑑賞に膨らみと広がりを与えるきっかけになるかもしれない。
そんな想いから、「化粧史×化粧師」ラボを企画・実施しました。
化粧史×化粧師ラボは、2部構成で進めました。
①化粧史:化粧とアートの歴史を参加者が調べてきて発表する時間。
②化粧師:化粧品業界でお勤めの方がおり、眉毛カットを体験する時間。
💄化粧史:アートと化粧の歴史を学ぶ💄
2回にわけて開催しました。
1回目は、菊地が、化粧とアートの歴史について参加者への講義を行いました。
1回目の集合写真
1回目はZOOMを併用し、遠隔でもラボに参加できる設計にしました。
2回目は、参加メンバーが各々「化粧とアートの歴史」について資料を作成。作成した資料を元に発表し合いました。
自分が興味を持った「化粧が印象に残るアート作品」について、参加者には歴史を背景として資料を作成してもらいました。
発表は1人あたりの持ち時間を決め、順番に行いました。
参加メンバーで2回目実施の際に作成した資料の一部を紹介します。
日本の化粧とアートの歴史から、世界の化粧とアートの歴史まで、幅広く見ていきました。
「化粧の歴史」に触れた後、歌川国貞の《今風化粧鏡》と、ロバート・フレデリック・ブルームの《化粧する芸者》の2作品を見てみました。
江戸時代は、首筋をたしなむという表現があったほど、うなじの色気に重きを置いていた印象。
絵師は斜め後ろから描き、鏡を通じて対象者を描く構図が多い。
歴史を知りアートを見ることで、その時代に定義された美しさに着目して鑑賞する新たな視点を得られました。
💄化粧師:性別を問わず、化粧に触れてみよう体験💄
化粧関係の仕事に携わっているアート・コミュニケータがいたので、性別問わず化粧に触れられる眉毛カットと眉毛プロポーションのレクチャーを行っていただきました。
男性も女性も、眉が整うと印象が変わりますね。
眉毛を整えてもらった後の方が、表情が明るくなった印象です。
化粧史×化粧師ラボを実施し、アートと別ジャンルの掛け合わせの可能性を感じました。
男性の参加者も数名おり、このラボ実施まで化粧の観点からアートを見たことがなかったとのこと。
性別によらないアートの見方を1つ体得したという感想もありました。
眉毛カットでは、第三者を通して装うことを楽しみました。
装うことは人の視線を意識する行為の意味合いもあり、眉毛カットの様子を見守られることは、まるで自分が作品となり鑑賞者から見られているようだ、との声もありました。
アートと自分が興味・関心のあることを掛け合わせると、新しいアートの見方と出会える。
日常で接するものとアートを掛け合わせると、新しい世界が芽吹くかもしれません。
このラボを実施し、化粧の歴史は深く、西洋と東洋で化粧への異なるアプローチの仕方が絵画に反映されていることに気づきました。
古代エジプトでは、瞼に塗る顔料は日差しから目を守る効果もあったとのこと。
「綺麗に装う」だけではなく、「その時代の実用性も兼ねる」という観点から化粧を見ると、歴史を知る、アートを見る楽しさが広がりました。
発表の場を設け、共有したからこそ発見できた楽しさでした。
自分が楽しいと思ったことを、発信していく。
やりたいと思ったことに対し、誰かが興味関心をよせてくれる場がとびらプロジェクトであると感じたラボでした。
2回目の集合写真
眉毛を整える企画があったため、全員活動場所に集合しました。
執筆:
とびらプロジェクトに参加して、美術館は作品を見るだけではなく、アートを通してつながるコミュニティスペースであることを知りました。より多くの方に、アートとつながりを楽しんでもらいたいです。
個人的に美術を楽しんできましたが、とびラーになり、皆で作品を見る楽しさに目覚めました。その楽しさを十分堪能するには、人の話を「じっくり聞く」ということが大切だということも教えてもらいました。(会社の会議に参加するたびに、全員、鑑賞実践講座で鍛える必要があるな、強く感じる日々です。)
2024.03.22
消しゴムはんこラボ。
消しゴムを彫ってはんこを作るラボ、と思われるかもしれませんがそれは活動の一部です。
作品を鑑賞してそれをモチーフにはんこを彫り、「障害のある方のための特別鑑賞会」の参加証送付用封筒に押し、参加証を封入し、特別鑑賞会でその封筒を展示して、来館者の方々に見て頂き、感想を聞くラボです。長いですね。
「障害のある方のための特別鑑賞会」とは障害のある方がより安心して鑑賞できるように、東京都美術館の特別展の休室日に開催する鑑賞会です。申込んだ人には参加証をお送りしていますが、よりウェルカムの気持ちをお伝えしたいと思い、特別展に関連するはんこを作成し、送付用の封筒に押して送付しています。
今年度は「マティス展」、「永遠の都ローマ展」、「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」で実施しました。
「マティス展」の特別鑑賞会の様子はコチラ
「永遠の都ローマ展」の特別鑑賞会の様子はコチラ
まずははんこのモチーフとなる作品を選びます。
展覧会で作品を鑑賞しながら、またはチラシや公式ホームページから彫りやすそうな、いえ、彫りたいと心が動く作品を選びます。
作品を選んだらどの部分を彫るのかデザインを決めます。
封筒に押すサイズは9×7cmです。これに収まるように縮小したり、一部分を切り取ったりします。
同じ作品でも切り取り箇所や表現に個性が現れます。
例えばチラシにも使われたこちらの作品。
同じ作品を元にしたのに、彫ったモチーフはこんなに違います。
このようにバリエーション豊かなはんこが出来ました。
そしてメインの彫り押し作業です。
初めて消しゴムはんこを彫る人も多かったですが、道具は100均でも揃えられ、
中学時代の彫刻刀を数十年ぶりに取り出す人もいました。
また道具を一度に揃えられない場合は、ラボのメンバーに借りて仕上げたりもしました。
線を彫るのか残すのか、どの線を生かすのか、おのおの作品と対話をしながら、黙々と彫り進めます。カニでも食べているのかと思うほどの無言の時間が流れます。彫っているところの写真はいつも頭頂部しか映りません。
彫り方はとびラー同士で教え合います。何期も前のとびラーから受け継がれている技もあります。事前にYouTubeの動画を観て勉強してくる人もいました。
彫れたらいよいよ封筒に押します。
図案を反転して彫っているので、押して初めてどんな作品かわかります。
また、インクの色や押し方でもイメージが変わります。
こうしてはんこの押された参加証送付用の封筒が完成しました。
様々なはんこができました。
並べると壮観です。
線そのものを彫る、線の周りを彫る、の違いや、一色で表したり、浮世絵のように色を重ねたり、同じモチーフでもこんなに違ったはんこになります。
違いを楽しむのも、消しゴムはんこの面白さです。
完成した封筒に参加証を入れる封入作業もスタッフと一緒に行っています。どんな方のお手元に届くのか、喜んでもらえるのか、どきどきしながら作業をします。
また、今年度から特別鑑賞会当日に消しゴムはんこを押した封筒の展示を行いました。
今まで参加証の封筒を受け取られた方から、押されたはんこについて「これは誰が彫っているの?」「みんな同じ絵柄なの?」「他にどんな絵柄があるの?」というお声を頂いたので、来館者の方々に消しゴムはんこを紹介しようとなったのです。
先ずは机上で展示のレイアウトを考えます。
その後、車椅子の方にも見やすいよう、目線を考慮して位置を調整していきます。
そして特別鑑賞会当日。
全ての封筒を展示したボードをアンケートコーナーに設置して、来館者を迎えました。
特別鑑賞会の申し込み方法は、Webフォームと、メール、はがきの3種類です。
メールとはがきで申し込んだ方には、参加証を封筒でお送りしますが、Webフォームで申し込んだ方は、参加証がメールで届くので、はんこが押された封筒の存在を知りません。8割以上の方がWebフォームからの申し込みなので、はんこが押された封筒をここで初めて見る方が大多数です。
また、封筒をお持ちの方も、他にどんな絵柄があるのか興味深げに見てくださいました。
封筒の絵柄や、モデルの実物の作品の感想を語ってくださったり、同じ作品でも彫る人によって表現の違いがあることに気付いてくださったり、多くの方が足を止めてくださいました。
今まで届いた封筒を全部取っておいている方、届いた封筒のはんこをイラストに描いてくれた方もいらっしゃって嬉しい驚きでした。
中には封筒が欲しいから次回はWebフォームではなく、はがきで申し込むと言う方もいらっしゃいました。嬉しい反面、時代に逆行して頂くのも気が引けるので、Webフォームで申し込んだ方には、封筒の代わりにはがきサイズの紙に押したはんこをランダムで1枚お土産として持って帰って頂きました。
裏返しにした紙を1枚引きます。どんな絵柄かは引いた後に表を見てからのお楽しみです。絵柄を見た方からは楽しげな歓声があがっていました。
消しゴムはんこラボは長く続いているラボですが、その時々で形を変えながら活動をしています。封筒の展示はコロナが明けた今年度から始めたことでしたが、今まで聞けなかった来館者の方たちの感想やお話を伺える貴重な機会となりました。
消しゴムなんて初めて彫るというとびラーも大勢参加してくれました。また、彫らなくてもボードの作成や封入作業に参加してくれたり、鑑賞会で来館者にボードの案内をしてくれるメンバーもいて、展示を盛り上げてくれました。
印刷かと見紛うほどの繊細なはんこを彫る人も、味がある太い線のはんこを彫る人も、彫らない人も、はんこを通じて作品と鑑賞者に向き合う。それが消しゴムはんこラボです。
美術館で作品を観た感動を何かに残したいと思ったそこのあなた、文章、模写の他に消しゴムはんこも一つの選択肢にぜひ加えてみてください。
執筆: 篠田綾子(10期とびラー)
超絶技を繰り出す人もいる消しゴムはんこラボで、初めての人も気後れせずに参加できるような大雑把なはんこを彫っています。上手くなくても楽しければいいんです。
2024.03.19
・「美術館でおしゃべりしましょう」「作品を誰かといっしょにみるって楽しい」そんな体験をお届けするプログラムを考えました。カジュアルで遊び心があって、自由で楽しい、素敵なひとときになるといいな。そうやって、はじめましての誰かと3人組になっての「おしゃべり鑑賞」という、新しい鑑賞のかたちが生まれました。
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【目的としたこと】
・その日に偶然出会った人とおしゃべりしながら鑑賞する出会いの体験や、一人で鑑賞するときとは違った他者の視点も味わって楽しんでもらうこと。さらに参加した方は、今度は誰かを誘って対話しながらの鑑賞を楽しむようになることを目的にしました。
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【プログラムの内容】
・その日出会った人(参加者)2名+とびラー1名が、3人1組になり、おしゃべりを楽しみながら作品を鑑賞します。参加者はプログラム前にくじにより分かれます。プログラムの時間は35分間です。
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・鑑賞する展覧会は、「上野アーティストプロジェクト2023 いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」展(会期:2023年11月16日(木)~2024年1月8日(月・祝) 会場:ギャラリーA・C)。
・実施日は、11月24日(金)18時半~、12月15日(金)・20日(水)14時~、計3回を設定しました。
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【とびラーのファシリテーション】
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・初対面の方とおしゃべりしながら作品を楽しく鑑賞するにあたって、次のような工夫をしました。
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・・ファシリテータとなるとびラーは、参加者同士が安心して話せる場と対話できるようにきっかけを提供します。
・・作品選びは、とびラー自身がビビッときた作品、話のきっかけがたくさんある作品を、何回か展示室に足を運んで数点を選びます。
・・当日の出会いは、なごやかなおしゃべりから始めて、感じたこと、気がついたことを安心して話せるような雰囲気を心掛けます。一人一人の話をじっくり聞き、参加者同士がコミュニケーションを楽しめるような場を作るのがとびラーの役目です。
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・例えば、「今回参加したきっかけ」や「普段のアートとの関わり」など、参加者同士の身近な話題からおしゃべりをしました。場の雰囲気が和むことによって互いにコミュニケーションを取りやすくなり、作品鑑賞での会話もスムーズにできるようになります。
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・作品を見ることから出発して、おしゃべりの広がりを楽しみながらも、参加者のみんながそのポイントの鑑賞体験を共有できるように、いつも作品を見ることに戻る、そんな工夫も心がけました。
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・その一例として、作品を見た感想の言葉から「どこからそう思いました?」と問いかけて、作品の中のそのポイントをみんなで確認することで他の人にもその気づきを伝えます。そして「ここから何を感じますか?」と問いかけることで、同じところを見ても違う感じ方があることを発見します。
・また、「他にはいかがですか?」と他の発言を促したり、話題を変えたりすることで、参加者がより作品に近づき会話がはずむように工夫しました。
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【初日:11月24日(金)18時半~、参加者12名】
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・9月のキックオフから、メンバーのアイデアを結集しながらミーティング&トライアルを経てようやく形になったプログラム。待望の第1回を6チームで実施しました。参加者は最初にくじを引きます。偶然の出会いの演出にドキドキワクワクのひと時も、次第に打ち解けます。
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・展示室のあちこちで、さまざまな楽しいおしゃべりが生まれました。
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・作家・内山春雄氏のバードカービング(野鳥彫刻)の作品をよく見て、羽毛のやわらかな質感をイメージしたあと、同氏のタッチカービング(触れる野鳥彫刻)に触ってみると、想像と違って「固い!」ということに驚いて「彫刻だから当然ですよね」と3人で大笑い。そのことがきっかけで作品にグッと近づくことができたチーム。
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・馬を被写体とした写真を撮影する今井壽恵氏のコーナーでは、人気の競走馬の《オグリキャップ黄色い光の中で》などの写真に足が止まる方が多く、予定していなかった作品の前でもおしゃべりが弾みました。
・参加者が作品の背景の描き方に興味を持っていることがわかると、作家・阿部知暁氏のゴリラが描かれた絵画のコーナーに移動して、特徴的な背景の話題に花を咲かせるチームもありました。
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・みなさん、とてもリラックスして鑑賞しました。
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【中日:12月15日(金)14時~、参加者10名】
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・12月15日(金)第2回を5チームで実施しました。
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・この日はキャンセルの方がいたため、当日参加の呼び込みをしました。チームが決まるまでの間にもとびラーからの展示についての問いかけから、参加者同士ので話が盛り上がり終始なごやな会話か進みました。
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・作家・富田美穂氏のコーナーでは、実物大の牛の細密な絵に、「ゴツゴツしている」「生を感じる」と近寄ってみての驚きで盛り上がるチーム。
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・バードカービングを鑑賞して、「ヤイロチョウの巣はどこにあるの?」「どうして巣をつくるの?」と巣の話題で盛り上がるチーム。
・「ヤンバルクイナって鳥なのに飛べないの?」「淡い首筋の色が不思議」と食い入るように作品に迫るチームなど、それぞれのチームで話に花が咲き、プログラム終了後に参加者同士でさらに鑑賞を続ける様子が見受けられました。
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【千秋楽:12月20日(水)14時~、参加12名】
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・ついに千秋楽、最終回の第3回を5チームで実施しました。
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・この日は、東京都美術館年内最後の開館日であったので、公募棟の展示は全て14時で終了。館内も展示室内も静かでゆったりとした空間で、参加者の皆さんと作品を囲んで楽しくお話しできました。
・今回もいろんなエピソードが生まれました。
・最初は緊張していた参加者も鑑賞前の会話に時間をかけると、作品を前にしたときにワクワク感が発露して、参加者同士での会話がとても深まりました。
・会話が弾むのは、生き物の多彩なリアルな表現に触れたときです。写真にはありませんが、作家・辻永氏の花の写生のコーナーや作家・小林路子氏によるきのこを描いた作品のコーナーも、おしゃべりが弾みました。
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・3歳のお孫さんを連れて来られた参加者は、お孫さんを中心におしゃべり鑑賞をしたところ、大人では気づかないような様々な視点から意見を教えてくれました。また内山春雄氏のタッチカービング(触れる野鳥彫刻)のコーナーでは鳥の鳴き声を全部聞いて回りました。高周波の鳥の鳴き声は、お孫さんだけが聞き取れて、みんなでびっくりしました。
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【参加した方々の感想など】
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〜参加者アンケート(11月24日・12月15日・12月20日実施、回答数33名)の結果から〜
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・自由記述欄に参加された方の全員が感想を書いてくださり、たくさんの前向きな感想がありました。それらの一部を紹介します。
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・そして、アンケートの結果では、「プログラムの満足度」、「初対面の方とのおしゃべり鑑賞」、「プログラムで鑑賞した作品」の項目で「とても良かった」「良かった」の回答が9割を越えて、総じて好評価を得られました。
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・上野アーティストプロジェクト2023「いのちをうつすー菌類、植物、動物、人間ー」展は、身近な題材で老若男女誰でも親しむことができ、多様な表現が鑑賞できる展覧会であり、このプログラムとの相性がとても良いと企画段階から想定していました。
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・ファシリテータは、プログラム前に何回も会場に足を運んで鑑賞する作品を選びました。また、選んだ作品を徹底的にして観察して、鑑賞の話題づくりなどの準備を行いました。
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・プログラムの設計としては、特に「初対面の人」とおしゃべりしながら鑑賞する、というコンセプトも功を奏したと言えるでしょう。知らない人同士だからこそ率直に言葉にすることができるのかもしれません。
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・作品の前で語り合っていると、そこにあたたかい空間が生まれ、作品も生き生きとして見えてきます。人も作品も美術館も「いきている」「いのち」を感じる、そんなプログラムだったのではないでしょうか。
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【実施までをふりかえって】
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・コロナ禍が一定程度収束して、複数でおしゃべりしながら鑑賞することができるようになりました。とびらプロジェクトでも、鑑賞実践講座の「鑑賞ピクニック」という複数人で美術館をたずねる課題や、夏には「ダイアローグ・ナイト with とびラー」という複数人で対話しながら鑑賞するプログラムが実施されました。こうした楽しさをぜひ多くの方に味わっていただきたいし自分たちも楽しみたい、との思いで2023年8月29日(火)に「このゆびとまれ」と呼びかけました。呼びかけに23人が集まってスタートしました。
・秋は、とびラボが目白押しで、複数のとびラボにそれぞれ関わっているとびラーの予定を調整し、ミーティングやリハーサル、さらには本番の日程を決めるのに一苦労でした。企画内容もオンラインのミーティングツールを使うなど集まれる人で検討を進めました。その甲斐もあって、いたってシンプルでわかりやすい企画になったと思います。ミーティングは6回、リハーサルは2回、そして本番へ。ふりかえりの会は、12月20日(金)プログラム最終回の後に行いました。
・
・このラボは、良い意味での「いいかげん」さがあって、メンバー各自の裁量に委ねる部分が多く、自由でおおらかに進みました。その分、当日の急なキャンセルにも呼び込みをしたり、コースを柔軟に変更したりなど臨機応変に動くことができました。ラボメンバーの皆さんからはやって良かった、とても楽しかったとの声が寄せられました。
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・プログラムにご参加いただいた方々、いっしょに駆け抜けてくださったスタッフの皆さま、そしてラボメンバーみんなに感謝します。
・
・解散! また、お会いできる日を!
執筆:
藤牧功太郎(とびラー10期)
新しいこと、楽しいことが大好き。ARTの自由さを愛しています。「つながり」を「つなげる」ことに興味あり。社会教育の仕事にも活かしたいです。
2023.12.16
「みえない人」も「みえる人」も、お互いがいるから、みえること、気づけることがあります。「みえない人」と「みえる人」そして「とびラー」が、作品鑑賞を通じて障害の有無に関わらずフラットに対話することで、新たな発見や気づきを分かち合いたい。この企画は、そんな思いからスタートしました。
半年近くにわたる活動では、とびラーは実際に「みえない・みえにくい」状況とはどういうことなのかを考えることから始め、みえる・みえないの垣根を越えてフラットに対話し鑑賞するにはどうすればよいか、議論を重ねていきました。
プログラムの骨格が決まると、当事者(視覚障害者)の方と一緒にトライアルを行い、そこで出た意見も反映しながら、安心・安全かつ、みんなで楽しめるプログラムへとブラッシュアップしていきました。
そして、いよいよ本番当日! 一般応募いただいた「みえない人・みえにくい人」と「みえる人」をお迎えしてプログラムを開催し、たくさんの気づきと発見に満ちあふれた時間となりました。
■開催日時: 2023年12月16日(土)
■参加人数: みえない人・みえにくい人(視覚に障害のある方):6名
介助者:4名
みえる人(晴眼者):5名
とびラー:17名
■会場:上野アーティストプロジェクト2023『いのちをうつすー菌類、植物、動物、人間ー』展、アートスタディルーム
■プログラム概要:「みえない人・みえにくい人(+介助者)」と「みえる人」、とびラーによる4〜6名のグループに分かれ、アイスブレイクを経て『いのちをうつすー菌類、植物、動物、人間ー』展の3作品をそれぞれ鑑賞。その後、一緒に鑑賞したことでの発見や気づきをシェアする。
<開催に至るまでのプロセス>
「みえない」「みえにくい」って、実際はどういうことなのでしょう?鑑賞会を企画するにあたり、まずは「みえない」「みえにくい」方がどのように作品を楽しんでいるのか、また、みえる人とどのように共有できるのかを考えました。そこでの気づきから「めざすゴール」や「実現のためのアイデア」を検討していきました。そこで「一緒に作品を味わい、お互いの違いを意識することなくフラットに対話することで、みえない人もみえる人も楽しめる場をつくる」ことを目指そうと決めました。
そうして作ったプログラムを、実際に視覚障害者の方を招いた2度のトライアルを行い、実践するうえでの意見や、アドバイスをもとにブラッシュアップしていきました。
本番の1か月前に展覧会が開幕してからは、実際に展示フロアでの作品鑑賞や移動の動線を何度もシミュレーションし、メンバー全員が各々の役割と持ち場で準備を進めていきました。
開催直前には、目指している対話の場づくりをもう一度思い起こして、「安心・安全な場」そして「楽しむこと」を大切にしようと確認し、開催当日を迎えました。
<開催当日の様子>
1.開会~アイスブレイク
冒頭でとびらプロジェクトとプログラムの概要を説明し、「言葉が大切なコミュニケーション手段なので、今日は感じたこと気づいたことをたくさんお話してください」と大切な思いをお伝えして、プログラムがスタートしました。
先ずはお互いのことを知り、発言しやすい場をつくるために自己紹介。話す人と聞く人を明確にして、触覚という共通の体験を入れて話すとよいのでは、というアイデアから、今回の展覧会のモチーフにもなっている鳥のぬいぐるみを持って話すようにしました。自然と和やかな雰囲気になり、鑑賞への期待感も高まりました。さあ、展示室へGO!
2.作品鑑賞
展覧会場は2つのフロアに分かれ、ゴリラ、鳥、牛、馬、キノコ、草花といった様々な動植物をモチーフにした絵画、彫刻、写真などの作品が展示されていて、各グループ毎に3つの作品を順番に鑑賞していきます。作品と作品の間の移動時間には、展示室全体の空間について、言葉で説明しながら、楽しくおしゃべりします。鑑賞作品が会場全体の中でどのように展示されているのかを伝えることで、みえない人の理解につながっていきました。
また、みえない方それぞれのみえ方に応じて、鑑賞時の立ち位置なども工夫するように配慮しました。参加者の状況を見ながら、適宜休憩も入れて鑑賞していきました。
ご主人や娘さんと一緒に参加された80代のみえない女性。介助者のご主人はアイスブレイクではおとなしい感じでしたが、アホウドリをみて「抱きしめたい」と思いがけない胸キュンの一言!グループ全体が打ち解けて、一気に対話が弾んでいきました。
また、あるグループのみえにくい人は、何とか作品をみてみよう、感じてみようと、作品に近づけるギリギリまで近づいて食い入るように鑑賞されていました。そのあまりの熱心さに、みえる方も感動されて、言葉でその場を補うように発話が増えていき、徐々に対話の場ができていきました。
最初は緊張していた参加者も、作品鑑賞が進むにつれて、みえる人がどのように伝えればみえない人にわかりやすいかを考えて一つ一つ丁寧に話しかけたり、みえない人も説明や問いかけに対して積極的に気づきや質問をするようになっていきました。2作品目、3作品目と鑑賞を重ねていく中で自然に発言が出るようになり鑑賞が深まっていく様子がはっきりとわかりました。そのような姿を見ると、「フラットに対話をし、みんなでみる」という鑑賞は実現できたと思われます。
それは何度も現場で確認した事前の準備と、みえる・みえないに関わらず相手に寄り添う気持ちを持って接したことにより達成できたのだと思います。
1時間の鑑賞タイムを終えて、参加者の皆さんも充実した笑顔でアートスタディルームに戻ります!
3.シェアリング~閉会
アイスブレイクと同じテーブルでのシェアタイムでは、参加者の皆さんの表情もイキイキとしていて、感想話に花が咲きました。例えば、ゴリラの作品では、「一つ一つの表情に喜怒哀楽があるように繊細で豊かに感じられるようになった」というグループもあれば、「みえにくい人にはゴリラの顔は黒い毛玉にしかみえなかった」という感想が出たグループもありました。
みえない人・みえにくい人がどのように対象を見ているのか、対話により得られる共通の体験を分かち合う喜びと難しさなど、他のグループの話を聞くことで、さらなる発見や気づきにもつながり、ふだんみえているようでみえていなかったものに気づいたり、みえていないものをありありと感じられた時間になったようです。
<参加者の感想>
終了後に記入いただいた参加者のアンケートから一部をご紹介します!
・「みんなの見る目が人によってちがう。自分1人だと絵を見ることが難しいけど、みんなと一緒なら見ることができる」(みえない人)
・「見える人から説明してもらうことで鑑賞のきっかけをもらえる。見える人→見えない人への一方向ではなく、会話の中から作品鑑賞が生まれてくる感じがした」(みえない人)
・「アートはみえる、みえないということは関係なく、一緒に鑑賞することで自分自身で発見があった。今までなかなかいけなかった美術館に行こうと思うきっかけになった」(みえにくい人)
・「見えていると思っていたら、実は大して見ていなかったことに気づいて驚きました」(みえる人)
・「見えない人に対して絵を伝えるために、分かりやすい言葉を選ばなければならないことに気づくことができた。見える・見えないの0か100ではなく、見えないのはグラデーションだと気づいた」(みえる人)
・「自分の見方の高さを少し変えるだけで、ものの見方、伝え方はこんなにも深くなるのだと実感しました。ちょっとした変化でコミュニケーションはもっと深まるのですね」(介助者(みえる人))
・「みなさんの感想をお聞きしていると、作家さんの「ここを見てほしい」という意向がちゃんと伝わっているんだと思いました。それをみなさんがきちんと受けとめていることに感動します。生命は美しいとあらためて感じます」(介助者(みえる人))
また、ファシリテーターを務めたとびラーからはこんな声がありました。
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「最初は見える人が見えない人に説明をしていましたが、鑑賞が進むにつれ、見えない人の質問によって鑑賞がさらに深まっていくことに皆が気づいて、見える人も見えない人もお互いの立場を平等に感じているように思いました」
「見える人の素直な感想が、見えない人の質問を生み出しだんだんと垣根のない空間なっていきました。和やかで温かい時間を一緒に過ごすことができました」
「描かれているゴリラのイメージについて話した時に「会社のボス的な存在なのでは?」となりました。
Aさん:「俺についてこい」 みたいな感じかな。
Bさん:う~ん…きっと部下には何も言わないと思う。
Cさん:背中で語るタイプですね。
皆さんの想像していたのは昭和タイプのボスだったのかもしれません」
「馬の作品の印象をみんなで話す中で、みえない人の「何となく不穏な感じを受ける」というひと言から競走馬の悲しいエピソードが引き出され、より鑑賞が深まる体験ができました」
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たくさんの感想をいただき、もう少しシェアタイムの時間があればとの声も多くいただきました。「みえる人」の中には、今回の体験をきっかけにアート・コミュニケータに関心を持っていただいたり、「みえない人」で、美術館でまた鑑賞してみたい、新しいことにチャレンジしてみたい、と前向きな発言をされている方がいたのが印象的でした。参加者それぞれが何かを感じて、新しい視点が生まれていたようです。
みんなでみて フラットに対話をして 鑑賞を楽しむ。
みえない人とみえる人の対話を通じて、お互いの視点によってよりよく作品を味わうことを目指した「みんなでみる美術館」。
みえる・みえないをハードルと考えるのではなく、その人の特性の一つとしてとらえ、お互いの違いを楽しむ、そんな場になる一歩を踏み出すことができました。
今回の実践を次のインクルーシブな場へとつなげていき、またみんなで一緒に分かち合えますように。
東京都美術館では、たくさんの参加体験型のプログラムや、障害のある方のための特別鑑賞会なども開催されています。また皆さんとご一緒できることを楽しみにしています!
10期とびラー 安東豊
アートを介して対話することで、人と人との多様な価値観や想いがつながり、新しい世界がみえてくる。そんな出会いや化学反応の場に立ち会い、寄り添える喜びを感じています。
10期とびラー 飯田倫子
「遠くに行くならみんなで行け」そんな言葉の意味を強く感じたラボでした。みんなで取り組んだからこそ、「みんなでみる」ことが実現できたと思っています。
2023.12.16
東京都美術館には「エスプラナード」と呼ばれる空間があります。上野公園から正門を通ってすぐ、レンガ色の建物に囲まれた広くて開放的なスペースのことです。館内の建物に入るまでの散歩道となっているその空間は、この美術館の建築的な特徴にもなっています。
とびラーにとっては、来るたびに通るなじみ深いエスプラナード で、来館者に楽しんでもらえるような何かをしたい!と思い立ってとびラボを始めたのが8月のことでした。
具体的に何をするかやその目的については、とびラボに集まったとびラーみんなで考えることにしました。
まずはエスプラナードについて各々が思うことや期待することを話し合ってみました。「せっかくの素敵な空間なのに来館者にあまり意識されずに素通りされているのでは?」「野外彫刻がたくさん展示してあるのにあまり見てもらえていない」「美術館に来た人に展示を観るだけでなくプラスアルファの楽しみをここで提供したい」などの意見が出ました。
そして今度はエスプラナードでやってみたいことのアイデアを自由に出し合いました。
「パラソルや椅子を置いてのんびり過ごしてもらいたい」「レッドカーペットを引いてゴージャスな気分で歩いてもらう」「広い空間を生かしてファッションショーをおこなう」「建物の壁でナイトシアターをやる」「コーヒーを無料でふるまう」などたくさんの案が出てきました。エスプラナードという空間を舞台に、みんなで妄想を広げる時間がとても楽しくどんどんアイデアが広がりました。
次のミーティングでは、たくさんの案の中から本当に自分たちがやりたいこと、ここでやるべきことはなんだろう、と考えてみました。
そこでみんなの意見が一致したことは「エスプラナードを通るどなたでも気軽に参加できる」、そして「アートや美術館をより親しみやすく感じて欲しい」というものでした。
エスプラナードはこの美術館の入り口だからこそ、すべての市民にとってアートへの入り口になるような体験を提供したいと考えました。
その目的をはたすためにできることはなんだろう?と、今度はみんなで実際にエスプラナードに出て来館者の様子を観察することにしました。
美術館に来る多くの人は自分が観たい展示や用事を済ませるために、建物の中にまっすぐ入っていきます。帰りもあまり寄り道をせずに上野公園へと出かけていき、エスプラナードはその通り道となっています。
けれど時折、美術館の正門の前で記念写真を撮る人や、エスプラナードで一番目立つ大きな球形の彫刻《my sky hole 85-2 光と影》に興味を示して鏡のような表面に映り込む自分の姿を覗き込む人たちがいました。
その様子を見てみんなで考えたことは、わたしたちとびラーが来館者に声がけして少しの間立ち止まって話をしたり、エスプラナードを一緒に散歩してみてはどうか?ということでした。
会話を生むきっかけとして、記念写真を撮ってあげたり道に迷っている方の案内をしてみる。そこからコミュニケーションをとれたら、来館者に楽しい思い出を提供できて、美術館に親しみをもってくれるかもしれない。それいいね!とエスプラナードで自分たちがおこなうことを現場で決めました。
また、来館者に声をかける際に、他の来館者とは違うここで何かをする人だと分かる格好をした方が声をかけやすいのでは?と考えました。広いエスプラナードで少し目立つように背の高い帽子をかぶるのと、写真を撮る役割を示すカメラのマークを入れた腕章をつけてはどうか。
するとその場で持っていた紙を折って小さな帽子を作ったとびラーがいました。それをみんなでかぶってみることで、エスプラナードで自分たちがやりたいことのイメージが一気に固まりました。
そうと決まったら手先が器用なとびラーたちがあっという間に帽子や腕章を手作り。自分たちが衣装をまとうことで気分も大きく盛り上がり、これで来館者に喜んでもらいたい!と意欲満々で実施の日を迎えました。
その日は12月とは思えないぐらいの暖かい晴天で朝から美術館に来る人もちらほら。午前10時から声がけを始めました。
しかし最初は緊張し、まっすぐ建物に向かう人に足を止めてもらうことへ少し躊躇しました。けれどこれまでみんなで話し合ってきたことを実践する大きなチャンス、と勇気を振り絞ってエスプラナードを通る人にどんどん声かけをしていきました。そうすると意外と足を止めて話を聞いてくれる人がいました。
この日は特別展が開催されていない時期でしたが、市民が応募して作品を出品する公募展を観に来た家族連れや友人グループが多くいました。「記念に写真を撮りましょうか?」と彫刻や門の前で話しかけると「じゃあせっかくだから」とスマホやカメラを手渡してくれました。中には手作りの衣装をまとったとびラーと一緒に撮りたいと言ってくれるグループもいてうれしくなりました。
「はい、チーズ!」と撮影した後、「今日はなにを観に来られたんですか?」とうかがうと「孫の書作品が入選したので家族で観に来たの」「友達が撮った写真作品が飾られてる」などと話す方が多く、「入選おめでとうございます!」と伝えると照れくさそうにしつつ「ありがとう!」と喜ばれました。そこからアートにまつわる家族の素敵な話や作品への熱い思いを聞いたりして来館者と一緒に会話を楽しみました。
また、置いてある野外彫刻の説明をすると他の作品も観たいと言ってくださる方もいて、ぐるりとエスプラナードを案内しました。
声がけや会話の内容もとびラーそれぞれ得意な話し方があり、エスプラナードのあちこちで笑顔の輪が同時にいくつも出来ていました。中には一人の方とじっくり話し込むとびラーもいて、美術館に来たそれぞれの人のストーリーを聞けるとても良い機会になりました。
行きがけにお話しして展示を観た帰りにまた寄って話かけてくれる方や、「今日ここに来て良かった」と言ってくださる家族もいました。
二時間半の間に合計110組以上のグループとお話ししました。時間が来ても止めるのが惜しい気持ちになりましたがこの日は一旦終了。またやりたいね、とみんなで話しながらエスプラナードを後にしました。
今回の活動を通して、ミュージアムにある「場」から発想して、場と人、人と人を結ぶアートコミュニケーションについてとびラー同士で考えることができました。
また、実際に来館者に声がけして会話をすることで、いろんな方がアートや美術館を身近に楽しまれている様子を知ることができました。
美術館に来る方に楽しんでほしいと始めたことですが、私たちが来館者から美術館の魅力を教えてもらうという、とても良い経験になりました。
今回のとびラボでは最初に目的ややることを決めずにスタートしましたが、いろんなとびラーが自分で企画を提案したり衣装を持ち込んだりみんなで自主的に動いて一つのプログラムを形作ることができました。
例え少しのスペースでもアイデアしだいでコミュニケーションの「場」をつくる活動は、他の美術館や文化施設でもできるかもしれません。またどこかでいろんな人との出会いを楽しみたい、そう思えるとびラボでした。
10期とびラー 池田智雄
美術館・博物館・郷土資料館や音楽ホールなど、人が文化の楽しさを求めて集まる場所が好き。そこがもっと楽しくて親しみやすい場所になるようなことを自分たちでできたらうれしいです。
2023.12.10
・東京都美術館の正門を入ると一際目を引く大きな銀色の球体。
・これは東京都美術館の収蔵品の一つ《my sky hole 85-2 光と影》。彫刻家・井上武吉の作品です。この大きな球体に映り込む風景や自身の姿を楽しんだり、大きく開いた穴から差し込む光に魅了される多くの来館者にいつも囲まれています。
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・東京都美術館で活動するとびラー(アート・コミュニケータ)も例外ではなく、これまでもこの彫刻を題材としたとびラボ活動が多く企画されました。とびラーは愛を込めて、「マイスカイホール」略して「マイスカ」と呼んでいます。マイスカ愛溢れるとびラーが集まったこの活動は、マイスカを通して野外彫刻作品の新たな鑑賞方法や魅力を発見するとともにとびラーどうしの親睦を深めるため、井上武吉の誕生日(12月8日)を祝う意味もこめて以下のような内容で実施しました。
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・とびラーどうしの親睦を図る場づくりをみんなで考えて楽しむ。
・マイスカの魅力を語り合う。
・美術館の楽しみ方を考え体感する。
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・では、早速どんな活動だったのか、見てみましょう。
実施日 2023年12月10日(日)11:30~14:00
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🔶流れの確認
・マイスカには自然環境に影響される興味深い仕掛けがあります。その一つがマイスカに貫かれた穴から溢れる太陽の光が作る像(日射像)。作者の井上武吉さんの誕生日に太陽光がマイスカの穴を貫くように設計されています。
・太陽の動きにつれて差し込んだ光が作る像はどんどん変化していきます。活動の最初はこの太陽光の観測、光の像の観測です。観測に先立って注目ポイントや観測の流れなどを全員で確認しました。
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🔶観測
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・いよいよ実際にマイスカへ移動して観測です。少しずつ日射像が現れ、半月の状態に。刻々と変わる像に目が離せません。
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・1分ずつ写真を撮って光の円の「成長」を確認。半月から満月状態に、そしてまた形が変わっていく・・やっぱり地球は動いている。観測しつつマイスカトリビアを披露したり、マイスカから感じたことをおしゃべりしたり。
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🔶誕生日会〜球体の食べ物を持って集まろう
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・観測の後はみんなでランチタイム。井上武吉さんの誕生日を祝う意味でマイスカのような球体の食べ物を持って集まりました。銀紙で包んだまんまるのおむすび、プチトマト、チョコレートや飴玉など思い思いの球体の食べ物が集まりました! マイスカを模して台座まで再現したチョコやマイスカの穴の部分を具で表現したおむすびなど楽しい工夫がいっぱいのまるい食べ物の数々についつい撮影会に。
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🔶観測日記
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・ランチをしながらちょっと真面目に、マイスカを観測・鑑賞しての気づきをシェアしました。
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・刻々と変わっていく日射像。穴を通ってくる光がとても明るくなる瞬間があった。
・日射像の周辺の渦が美しかった。
・マイスカの上に輝く太陽がちょうどマイスカに掛かって、ダイヤモンドリングのようだった。
・マイスカはその球体の上に周囲の風景や空が映り込む。そこまで含めての作品であり、時間や季節、見る角度によって常に新しい作品となっている。
・逆光になるマイスカはどこかから飛来している感じ!
・美術館に来た多くの人がマイスカで一旦立ち止まり写真を撮ったり写り込みを楽しんだりしている。こんなに愛される作品はないかも。
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🔶もう一つの仕掛けのこと
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・マイスカには台座があります。ですが台座が作品の一部だと気づいている人は案外少なそう。
・1年に2度、この台座とマイスカの影とが一致する現象を見ることができます。地球の自転と公転の関係で重なる日は毎年変わるようです。そして今回の活動でも体感したように刻々と変わる太陽の位置から、影と台座がピッタリと重なるのは一瞬。天候にも左右されるので、見られたらとても幸運です!
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・展示を見る他にも、東京都美術館でこんな楽しみ方もしてみてはいかがでしょうか。
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🔶マイスカのミュージアムもあります
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マイスカをモチーフに作品を創ることもあります。そんな作品を所蔵するため、「マイスカイホール・バーチャル・ミュージアム」をとびらプロジェクトの共有ドライブ内に設けて、随時とびラーが作品を収納しています。2022年2月22日22時22分に創設しました。下の画像のような作品が展示されています。
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🔶マイスカからの贈り物
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・この活動を通じて、わかったことは、みんながマイスカのことが大好きで、そしてマイスカからさまざまなインスピレーションを得ていることです。
・この作品の製作の歴史・作者についてなどの作品研究をしてみて、井上武吉さんによるマイスカ彫刻が全国のあちらこちらにあること、そして太陽の動きを計算に入れて立地していることなどもわかりました。仲間のことを思いながらマイスカから連想される球体の食べ物を考えたり、作品から受けたインスピレーションをもとに新たな作品を作ってみたりもしました。
・たった一つの野外彫刻作品を観察する、鑑賞する、それだけのことからこんなにも豊かな広がりがあります。
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・野外彫刻作品の特徴でもある時間や空間の移り変わりで刻々と変化する美しさをじっくりと時間を追って見つめることで、その作品の奥にある独特の味わいにも気づくことができました。
・一つの作品を囲んで、様々な角度から作品にアプローチすることで作品についてより深く知り、親しくなることができます。みんなで作品を見ることの楽しさも感じることができます。
・他者の発見を知ることで、新たな視点が自身の中に生まれ、そこでの共感は人と人との繋がりも深くし、鑑賞の幅が広がります。これらはマイスカからの贈り物です。私たちのマイスカさん!ありがとう!
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執筆:
矢野聡子(とびラー10期)
以前は美術館は1人で行って、
藤牧功太郎(とびラー10期)
とびラーになって作品の見方は多様であること、
2023.12.08
◆はじめに
夜間開館日にライトアップされた東京都美術館の美しさ・建築の魅力をともに味わいたい、そんな思いでツアーを開催してきました。12年目を迎えるこのラボ、今までの良さを受け継ぎつつも、刷新してきたこの1年の様子をお届けします。
◆実施概要
・開催年月:2023年6月・9月・12月(計7回)
・参加人数(延べ人数):参加者124名 とびラー59名
・開催時間:19:15-19:45(6月)19:05-19:45(9月~)
・テーマ及びコース:ガイドを担当するとびラーがおススメをご案内
◆ツアーの様子
ツアーでは、夜ならではの建築や空間の見どころを30~40分で紹介しました。ここでは、2023年12月に2回開催した「トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー@ローマ展」の様子をお届けします。
夜の空気感や光はもちろん、発見やまなざしをともにしているシーンなど、参加者の皆さんととびラー20名の一期一会のステキなひとときをご覧ください。
<開始前>
<ツアー>
ツアーのテーマ・コースはガイドによってまちまち。ちなみに、ローマ展2回目で各ガイドが用意したテーマは
「夜のおしゃべり都美散歩/光に照らし出された都美空間を楽しむ/夜ならではのトビカンの陰影を楽しむ/100年保つ建物とその夜景/夜の都美をみんなでみてみよう!/色と光の調和」と多彩です。
◆過去から受け継いできたこと
11年続いているラボの良さを継承する、特に①シンプルな運営②ツアーの知見を貯めていくことを改めて大事にしようと話し合い、スタートしました。
①シンプルな運営
とびラーも家庭に仕事に忙しい人が多いので「金曜夜に2時間だけぱっと集まって集中して準備→ツアー→振り返り→解散」という流れができていました。この流れをよりブラッシュUPして、短い時間で楽しめるようにしました。
②ツアーの知見を貯めていく
ツアー実施には、ガイドやサポートはもちろん、受付や撮影など各役割の連携が欠かせません。過去の実施例を集めて知見集をつくりました。自分たちの知見も加えつつ、秘伝のタレ化を目指して更新中です。
◆今年のメンバーで変えてみたこと
よりツアーを手軽に楽しんでいただくために、①アンケート廃止②ツアー時間延長③当日呼び込み、この3点を刷新。アフターコロナも追い風になりました。
①アンケート廃止+②ツアー時間延長
ツアー時間を10分延長。参加者から「もう少し長いと嬉しい」とお声をいただくことが多く、我々ももう少しご案内したいという想いがありました。そこで、準備時間を短縮し、アンケートもツアー後に感想をいただくことで代用。ゆったりと夜の散策を楽しむことに繋がりました。
③当日呼び込み
アフターコロナでツアー人数などの安全対策が緩和され、キャンセルされた枠を当日呼び込むことにしました。たまたま通りかかって、たまたま一緒になった人と楽しむ、そんな偶然のめぐり合いもデザインできました。
◆予行演習
今年は新たに8人のガイドがデビュー。本番により良い状態でお客様を迎えられるように、とびラーが参加者役となり模擬ツアーを実施しました。
◆終わりに
毎回終了後に、良い点・改善点を皆で共有し、次にきちんと活かす。よりよいチーム・ツアーにするために、密度濃い振り返りを繰り返しました。その積み重ね、のべ59名のとびラーで作ってきた2023年のヤカンツアーでした。
次年度以降も、メンバーや環境の変化に合わせて進化し続けるラボになりそうです。今後もこのヤカンツアーは続いていくことと思います。ぜひ、ご参加をお待ちしています。
◆おまけ
一緒に建築を見ることが楽しすぎて、今年からラボメンバー限定「オマケツアー」を打ち上げとセットで開催。マティス展では神田駅~東京駅、荒木展では東京駅~有楽町駅の近代建築を巡りました。発見して、伝え合って。建築って楽しい。
10期とびラー 橋本啓子
2023.12.03
◆はじめに
家庭や職場で忙しい大人を対象に、日常から少し離れ、美術館で心が豊かになる時間「大人のOFF」を一緒に楽しんでほしい。1回限りではなく2回会うことで、より繋がりを深めてほしい。この企画は、そんな願いを込めてスタートしました。
同じく家庭や職場で忙しいとびラーも、緩急つけて楽しみながら準備を進め、開催当日は参加者の皆さんと一緒に、美術館での「大人のOFF」を存分に味わい、繋がりを深めることもできました。準備~本番までの3か月の道のりをお届けします。
◆開催概要
◎日程・内容
STEP1:2023年11月26日(日)「とびラーお薦めのアート鑑賞」
STEP2:2023年12月3日(日)「前川國男設計のモダニズム建築ツアー」
◎参加人数
STEP1:参加者13人 とびラー19人
STEP2:参加者14人 とびラー17人
◆準備~本番までの3か月
1.どんな人に、どんなふうになって欲しいのか?
9月中旬、22名のとびラーが集い、方向性をすり合わせることからスタート。密度濃い話し合いを経て、目指すゴールは「忙しい大人に、美術館での楽しみ方を広げ心地よさや解放感を味わい、新しい発見や出会いを持ち帰ってほしい。そうすることで元気になって、また東京都美術館に来たいと思ってほしい。」となりました。
2.どんな内容にするか?
「忙しい大人」が参加したくなる内容とは?目指すゴールに到達するために、どんな経験をしていただくと良いのか?またもや、考えることが山積み。笑いながら考え、走りながら形を整えていきました。最終的には、「アート・建築を介して、いつもと違う体験や交流を」をテーマに、その機会を2日間で提供することにしました。
3.トライアルで内容を最終確認
用意した内容で、本当に参加者に楽しんで頂けるのか、不安と期待を抱えつつ、11月19日(日)にとびラー向けのトライアルを実施。参加者役のとびラーのおかげで、たくさんの改善点が見つかりました。
4.そして、本番
<STEP1>
①アイスブレイク(アートカードで関係探しゲーム)
オープニングで我々が「大人のOFF」を企画した想いを伝え、いよいよスタート。ゲームが始まるとあちらこちらから笑い声が。あっという間に皆さん打ち解けられ、また、作品をよく観るウォーミングアップにもなりました。
②「上野アーティストプロジェクト2023 いのちをうつす ─菌類、植物、動物、人間」展を鑑賞
いよいよ鑑賞へ。まずはグループで鑑賞、その後、個人で鑑賞しました。グループ鑑賞では、作品を介して感じたことや考えたことを伝え合い、作品をより深く味わう様子が見られました。
③感想共有
鑑賞から戻ってきて、心に残った作品の共有をしました。「ひとりで見るより、みんなで見る方が何倍もよく見られた」「とにかく感動!」「細かい描写がすごい」「今年見た展覧会で一番良かった」「もう一度行きたい」など、熱量高く語られていました。
終了後、ご希望の方と一緒にランチをしました。お弁当組5名はアートスタディールームで、レストラン組5名はMUSEへ。とびラーも一緒に、和気あいあいと色々な話に花が咲き、楽しいひとときでした。
<STEP2>
紅葉が美しく快晴の翌日曜日。リラックスしながらのお迎え準備。参加者の皆さんも前回と同じグループなので「久しぶり~」「あの後、展覧会行ってきましたよ」など、開始前から盛り上がっていました。そして、全員が揃ったことを拍手で喜びつつスタートしました。
①建築系カードで都美ツアーの準備
「都美カード」(各チームで用意した東京都美術館のイチ押し写真)で気になるカードを1枚選び、その理由を伝えあいました。また、「どこだろうカード」(建築部材等の写真、大吉くじ入り)もくじ引き形式で用意。ツアー前の準備も整いました。
②都美ツアー
選んだ「都美カード」と引いた「どこだろうカード」を手に、いざ70分の都美ツアーへ。上野公園にとけこむ前川建築で、まなざしを共有し、発見しあい、大人のOFFを満喫しました。
③感想共有&ティータイム→2日間を振り返る
ティータイムでほっと一息。ツアーの余韻を残しつつ感想を共有。「何度も来ていたが建物の良さを始めて知った」「前川建築の奥深さにハマった」「カードを持って美術館を歩き回り写真を撮るのが楽しかった」など、楽しそうにお話されていました。
エンディングは、この2日間の様子をムービーにして全員で鑑賞。皆さんとてもいい表情でご覧になり、誰からともなく大きな拍手で終了しました。終了後もしばらく歓談タイムが続き、集合写真を撮ることになりました。それが、冒頭の1枚です。
◆終わりに
参加者の皆さんがとびラーと一緒に良い場を作ってくださり、目指したゴールに到達できたように思います。アンケートも全員から「とても満足」を頂きました。2日間実施したことで、人と人、人と東京都美術館の繋がりがより深くなったとのお声も多く挙がりました。
最後に、少しだけ手前味噌ですが、我々22名はみんながフラットに持てる力を発揮するとても良いチームでした。
参加者の皆さんもとびラーも、家庭や仕事から少し離れて、東京都美術館で「大人のOFF」を一緒に楽しめたことを感謝いたします。また来てくださいね!
10期とびラー 橋本啓子
2023.09.15
東京都美術館にある野外彫刻をご覧になったことがありますか。
美術館の庭を探検し、見つけた彫刻たちについて感じたこと、気づいたことをみんなで自由に話しながら、彫刻の魅力を味わう、楽しいひとときを過ごしましょう。
美術の知識や、彫刻の見かたは知らなくても大丈夫。彫刻ってこんなにおもしろいの?きっと発見がありますよ。
2時間のワークショップの中で、とびラー(アート・コミュニケータ)と一緒に作品を見ていきます。お気軽にご参加ください。
日時|
①2023年9月30日(土)14:00〜16:00 (13:45受付開始)
②2023年10月7日(土)14:00〜16:00 (13:45受付開始)
※①と②は同じ内容です。重複してのお申し込みはできません。
場所|東京都美術館
集合場所|東京都美術館交流棟2階アートスタディルーム
対象|16歳以上の方
定員|15名(先着順・定員に達し次第受付終了)
参加費|無料
参加方法|事前申込制。以下の専用フォームよりお申し込みください。
※特別に配慮が必要な方はお知らせください。
※小雨決行
①2023年9月30日(土)14:00〜16:00 (13:45受付開始)
②2023年10月7日(土)14:00〜16:00 (13:45受付開始)
※本フォームでのお申し込みが完了すると、「返信先Eメールアドレス」宛にメールが届きます。必ずご確認ください。
※お申込み前に「迷惑メール」などの設定を確認し、「@tobikan.jp」からの申込受付メールを受信できるようにしてください。申込完了の自動返信メールが届かない場合は、お申込みされたお名前と電話番号を明記のうえ、p-tobira@tobira-project.info(とびらプロジェクト)宛にメールをお送りください。
※広報や記録用に撮影・録音を行います。ご了承ください。
※定員に達し次第、申し込み受付を終了します。