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今年の実践講座は、建築からスタート!

第1回目の建築実践講座は、アイスブレイクの『けんちく体操』からはじまりました。

『けんちく体操』とは、建築物を身体で表現するというもの。
身体を動かしながら建築を学べるワークショップとして、「チームけんちく体操」によって、国内だけでなく海外のさまざまな場所でも開催されています。

最初のお題は、「スカイツリー」。

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両手を上に挙げてぴんと尖らせている人が多いようですが、よく見るとそれぞれに個性が見えます。足を少し拡げて裾が広がっている様子を表現した人、片腕だけ上げて細さを強調した人もいました。

次のお題は、「東京都庁」。

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今度は2人組になって、それぞれ思い思いのポーズをとります。
先端を少し曲げて、てっぺんが平らになっていることを表している、というグループも。

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身体を向き合って、対になっていることを強調するグループもありました。

そして次は、「雷門」。今度は3人組で挑戦します。

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門の表現は、グループによってさまざま。身体を張って雷門の大提灯を表現するところもありました。

最後は、9人組で「東京都美術館」に挑戦!

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全体的に体勢を低くするところが多いなか、立ったまま両手を伸ばしているグループも。
4つの公募棟が並んだ様子や、中央棟、交流棟、企画棟の繋がりが見えるように表現しているところが多く見られました。
中央に見えるのは、もちろん都美のシンボル『my sky hole 85-2 光と影』です。

 

後半は、学芸員の河野さんによる東京都美術館の建築についてのレクチャー。

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東京都美術館は、1926年に東京府美術館として開館しました。
しかし、当時の金額で予算が20万円ほどしかなかったため、100万円(今の金額で32〜3億円)を寄付したというのが、実業家の佐藤慶太郎です。今でも、東京都美術館1階の佐藤慶太郎記念アートラウンジには、彼の胸像が設置され、その功績が讃えられています。

このとき最初に建てられたのは、建築家・岡田信一郎による旧館。
彼は、黒田記念館や現在の東京藝術大学陳列館など、上野公園内にある他の建築の設計も手がけています。旧館のときに使用されていた木製の陳列ケースは今も残されていて、2015年7月18日(土)からはじまる『キュッパのびじゅつかん』展でも使用されています。

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そして、1975年に建築家・前川國男の設計によって新館の建物が竣工、2010年から2012年にかけて行われた大規模な改修工事を経て、今の東京都美術館の姿に至っています。
前川國男は、あくまで主体は公園であり、その中に美術館が入っていくのだという考えから、外部環境の疎外をできる限り避けることを意識していたといいます。実際に、現在の東京都美術館はそのほとんどが地下空間にあるにも関わらず、建物の中からも周辺の上野公園の緑をたくさん目にすることができます。

東京都美術館に残された当時の資料や図面などもスライドで見ながら、4期とびラーも少しずつ慣れてきた東京都美術館の建物を見つめる機会として、じっくりお話を聞いていました。

 

そして最後に、今年の建築実践講座で初めて導入された「わかちあう 伝える」ワークについて、特任助手の大谷さんから説明がありました。

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前期は5人組のリサーチグループをつくり、他館の見学や建築ツアーのプランつくりなど、1年目の人と2年目・3年目の人が一緒になって、学び合いの場を深めていきます。そして、10月10日の実践講座で各グループの成果を発表してもらうことになりました。

また、後期は3人組でプランニンググループをつくり、建築ツアーの計画・実践を行っていきます。この講座を通して学ぶことを、どうアウトプットしていけるのか、グループごとに話し合いながら、より多くのアイディアを実践していく機会になりそうです。

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グループ編成ができると、早速話し合いがスタート。
今日のレクチャーで聞いた話なども交えながら、コミュニケーションが盛んに行われていました。

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今年はこうしたグループを中心にして、建築実践講座も複数人で協力して活動を進めていきます。
「そこにいる人が全て式」で、偶然できたこのグループのコミュニケーションがどのように広がっていくのか、これからの活動が楽しみです。

基礎講座を終え、いよいよ実践的な場への入口が開いてきました。
4期生のとびラーにも積極的なとびラボへの参加が見られるなか、ここでのワークがその後の活動にも繋がっていくかもしれません。
何気ない日常生活の中でも、具体的に何ができるかを考えたり、それを話したりするような場のデザイン、アートコミュニケータとしての活動がより深まることを期待しています。

(とびらプロジェクトアシスタント ニカモトハンナ)

今年度の第4回基礎講座のテーマは、<上野公園とミュージアム&大学>。
「とびらプロジェクト」と連動する「Museum Start あいうえの」の基礎的な知識を学びながら、上野公園という自分たちの活動の場に改めて目を向け、考える時間でした。

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最初は、稲庭さんによる『キュッパのびじゅつかん』展のお話から始まります。
『キュッパのびじゅつかん』展は、「Museum Start あいうえの」の活動から発展して生まれ、東京都美術館で2015/7/18(土) – 10/4(日)に開催される企画展です。

ノルウェーの新進作家オーシル・カンスタ・ヨンセンの絵本『キュッパのはくぶつかん』を出発点にした展示で、
物集めが大好きな丸太の男の子・主人公キュッパのように、「物を見つめ、集め、並べてみることから始まる、私たちの住む世界とのコミュニケーション」がテーマになった、体験・参加型の作品の多い展覧会になっています。

※ 展覧会の詳細はこちら
ノルウェーから東京・上野へ!
キュッパのびじゅつかん―みつめて、あつめて、しらべて、ならべて

“公園での石の観察”と”美術館での絵画の鑑賞”というと、その2つは隔たりのあるまったく別の物だと感じてしまいがちですが、その間をもっと行き来できるような視点をもってみようといったお話もありました。
そして、今回の基礎講座は、実際に”物を見つめ、集め、並べてみる”ワークショップを中心に進んでいきます。

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日比野克彦さんによる、今回のワークのレクチャー。
『キュッパのびじゅつかん』展は、多世代間のコミュニケーション、持続可能な社会の人々のつながりを支える、新たなミュージアム像を想像する場として、「とびらプロジェクト」のコンセプトとも通じる、といったお話がありました。
今年度からとびラーになった4期生も、キュッパが森に出たように、実際に上野公園に出かけてモノを探しにいくところからはじまります。

まず午前中は、「上野公園に落ちているものを1つ拾ってくる」というお題です。

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一斉に上野公園に散らばっていくとびラーたち。

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落ち葉をかきわけたり、砂をはらいながら、目をこらして探していきます。

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きれいな実を拾った人も。

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鳥の巣の欠片も見つけました。

 

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東京都美術館のアートスタディルームに戻ったら、白い紙の上に自分の拾ったものを置いて、キャプションを書いてみます。

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テーブルごとに自分が拾ったものを紹介しながら、色、形、性質など、さまざまな視点からの分類わけを考えます。

一見、どんな分類になっているのか分からないような新しい分類を探ります。

 

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似たような2つの木の枝でも、自分で拾った枝と公園にいた親子からもらった枝では、それぞれの枝をここまで持ってきたストーリーが違うという話をしているグループもありました。

 

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そのあとは他のグループの並べた分類を見て、どんな視点で分類されたものなのか、予想をしていきます。

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じっくり観察して見比べてみます。なかなか他のグループの分類を当てるのは難しかったようです。

 

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全てのグループをまわり終えると、グループごとに、それぞれの分類の予想と種明かしをしていきました。

表と裏で素材感が違うものと、同じのもの

熱加工してつくられたものと、そうでないもの

落としたときにひらひら落ちるものと、ストンと落ちるもの

グループによってさまざまな分類方法を見つけていました。

 

そして午後は、1人で複数のアイテムを拾います。

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午前中にやった分類の視点を思い出しながら、お弁当の箱のような薄い木箱に、拾ったものを並べていきます。

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午前中はひとつに絞る難しさがありましたが、

午後は、箱の中でバランスを見たり、どのような分類を作れるか、並べ方も考えながら拾います。

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集め終わったら、上野公園の噴水前に集合。

自分のつくった箱にキャプションをつけて、蚤の市のように並べていきました。

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すぐそこに落ちていてさっきまで気づかれていなかったものが、こうして分類してフレームに入れることで、”見せる”ものへと変化します。

普段何気なく通り過ぎてしまう上野公園でも、よく観察しながら歩いてみると、思いがけないモノたちと出会うことができました。

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とびラーが地面に並べていると、通りすがりの方も足をとめて、興味をもって見てくださっていました。

中には、しゃがんでじっくり中を観察する人も。

どのコレクションが気になるかで、その人の視点が垣間見えます。

 

上野公園には9つのミュージアムが集まり、さまざまな人がそれぞれの場所の展示やイベントを見ようと目的をもって来られます。

今回とびラーたちがモノを集め、蚤の市を開催した上野公園の開けたスペースは、そうした本来の目的からは少し外れた、思いがけない出来事に出会うおもしろさが潜んでいる場所でもありました。

場所とモノの魅力を再発見して、この日の蚤の市は終了しました。

とびラーたちは、他の人が作ったコレクションの中からお気に入りを1つ選び、東京都美術館へと戻ります。

 

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アートスタディールームに戻ると、ハガキサイズの紙に、自分が選んで持ってきたコレクションの絵とメッセージを書きました。

そのコレクションを作った人への絵はがき作り。みなさん、集中して書いていました。

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これまでは部屋の中での座学やワークショップが多かった基礎講座ですが、この日は日差しの眩しいなか、外で実際に行動してつくっていくワークショップを軸に、体を動かし頭を動かす充実した1日でした。

普段は見逃しがちな場所に目を向けてみたり、自分がなかなか想像していなかった視点をもってみる、そうやってさまざまな価値観がある場所を実際に行き来してみることで初めて気づくことも多いように感じられます。

今回体験したことが、これからの実践講座やとびラーの活動で生かされていくといいですね。7月からのキュッパ展も楽しみです!

(とびらプロジェクトアシスタント ニカモトハンナ)

5月16日、今年度最初の建築ツアーが開催されました。
今年度から入ったとびラー4期生も参加し、みんなで正面エントランスで呼び込みを行います。
この日は、上限いっぱいの30名の参加で、大盛況の建築ツアーでした!

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建築ツアーは3つのコースに分かれていて、ガイド役のとびラーによって、その視点も少しずつ異なります。
過去にツアーに参加したことがある方も、違うコースだとまた新たな発見をすることができるかもしれません。

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岸川さんの「建築のひみつ、彫刻のなぞ」コースでは、屋外の彫刻作品から、建築との関係性・おもしろさを見つけていきます。
都美の門を入ってすぐ、大きな銀の玉の作品『my sky hole 85-2 光と影』。資料を片手にお話しています。

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窓ガラス越しに見つけたのは、傘をモチーフにした彫刻作品。
普段は何気なく通りすぎてしまうような彫刻作品に意識を向けてみると、そこから意外な建物のつくりに出会うこともあります。

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山﨑さんの「たてもののリズムを感じてみよう」コースは、建築のデザインや構造の中に隠れたリズムを発見していく、
というもの。屋外で、身体を使って建物のしくみについてお話しています。

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みんなで見上げているこの階段。一体何が隠れているのでしょうか…?

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この日、ガイドデビューの大山さんは、「都美のこだわり発見ツアー」コース。
初めてのガイドとは思えない丁寧な説明で、お客さんにクイズを出しながら建物をめぐっていきます。

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たくさんの方に参加していただき、充実した建築ツアーでした。

次回の建築ツアーは、少し間があいて、9月19日(土)の開催です!
夜間開館日に開催する、トビカン・ヤカン・カイカン・ツアーも不定期で開催しています。
詳細はHPでのお知らせをご確認ください!

・建築ツアー
・トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー
コチラから⇒

 

 

 

 

 

 

 

4月26日。この日、東京都美術館では12人の大人たちが楽しそうに美術館内を歩き回り、
時には真剣なまなざしで屋外彫刻を見つめる、そんな光景が見られました。この方たちは「Museum Quest〜ある建築家が遺したもう一つの扉を探せ〜」の参加者のみなさんです。

このプログラムは、美術館に興味はあるけれど、ハードルの高さを感じてなかなか一歩踏み出せない人たちに向けて、私たち、とびラーが企画したものです。
鑑賞以外の目的でも美術館に足を運んでほしい、そしてもっと美術館を身近に感じてもらえたら。そういう思いから生まれた企画です。
プログラムの内容は、この日初めて会った人同士3人1組のチームに分かれて、東京都美術館の屋外彫刻や建築に関する謎を解くものです。
謎解きを通じて、チーム内のメンバー同士やとびラーとのコミュニケーションを楽しんで頂くことも、この企画の目指すところです。
さぁ、謎を解くための調査員として集められた参加者のみなさんは、新しい出会いを見つけ、そして美術館に遺されたもう一つの扉を見つけることはできたのでしょうか。

◇アイスブレイク◇

謎解きの前にアイスブレイク。見知らぬ人同士のチームなので、まずは自己紹介から始めます。今回は謎解き好きの方が多く集まったので、謎解きの話題ですぐに打ち解けていたようでした。
新たな出会いの始まりです。

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◇謎解きスタート◇

アイスブレイクで少し打ち解けたところで、謎解きの開始です。東京都美術館の敷地内を舞台に、屋外彫刻や建築に関する謎を解いていきます。1つの都市をイメージして設計されたというこの美術館は、構造が少し複雑で、場所によって様々な表情を見せてくれます。美術館全体に散りばめられた謎を探して、調査員のみなさんは歩き回ります。

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◇ラストミッション◇

みなさん無事に謎を解き終えて、制限時間内に元の部屋に戻ってくることができました。部屋に戻るとラストミッションが待っています。
ここでも、みなさん協力して、すぐに謎を解いてしまいました。写真はとびラー側のミスで、答えが先に出てしまったときの様子。少しくらいのハプニングは、楽しみの一つと思って頂けたようです(笑)。

◇カフェタイム◇

謎解きが全て終了したら、カフェタイムでより一層コミュニケーションを深めます。お茶を飲んだり、お菓子を食べたりしながら、参加者同士や参加者ととびラーとのコミュニケーションをゆったりと楽しんでいただきました。参加者のみなさんは、普段から謎解きのイベントに参加しているとのことで、今回の謎は少し簡単だったようです。でも、美術館という非日常的な空間での謎解きがとても楽しかったと語ってくれました。

また、謎解きが好きな人同士だったことで、コミュニケーションの輪が謎解きを通じて広がっていくのがわかりました。
今回はその要素として美術館や彫刻があったので、謎解きの思考だけでなく、あの彫刻はおもしろいよねとか、美術館ってどんな時にくるかなとか、いつもの謎解きとは少し違う会話が生まれていたようでした。

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ある参加者の方のお話では、謎を解くという行為は、何か分からないことを、主体的に解明して答えを見つけることだとおっしゃっていました。
作品の鑑賞という行為は、自身の内省を促したり、他者との対話を誘発したりすることに加え、作者はどんな人か、どんな思いでつくったのかということに思いを巡らせたり、調べたりして解釈していくこともあると思います。謎解きの思考と鑑賞の思考を行き来する様子から、参加者のみなさんがこれまで経験したことのない体験をしていることが伺えました。

今回Museum Questへ参加して頂いたことで、これまで美術館に足を運ぶことが少なかった方々に、作品を通じた謎解きという擬似的な鑑賞体験を感じてもらえたのではないでしょうか。
参加者のみなさんが、今回の体験をきっかけにアートの世界にも興味を持って頂けたらうれしいです。

いかがでしたでしょうか?あなたも東京都美術館を舞台とした謎解きで、新しいミュージアム体験をしてみませんか?次はどんな出会いが待っているか、私たちも楽しみです!

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【筆者】アート・コミュニケータ 上神田健太(カミカンダケンタ)

★ベストセレクション2015改2
全国の美術公募団体から選定された27団体、151名の作家の作品の展覧会、「ベストセレクシション美術2015」展にて、
今年度初めての対話による作品鑑賞会「見楽会」が行われました。

5月17日(日)13時と15時の2回。日本画、洋画、彫刻、工芸等多様な作品が一堂に会する本展の中、とびラーが選んだ絵画作品6点を参加者とともに鑑賞しました。
参加者は、大英博物館展の帰りに寄ってくださった方が大半でしたが、中には、友人が出品しているのでと、この展覧会を目的として来られていた方もいました。この鑑賞会のことを、知人から勧められたり、ツイッターで知ったという方もいました。参加者の年齢層は20代~70代、男女比はほぼ同数、参加人数はのべ
22名でした。

30分前からのとびラーの声掛けと、看板を目印に徐々に集合場所に集まって来られ、
いよいよ始まります。 IMG_0493

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは、玄関ロビーに集合後2チームに分かれて、展覧会のことや「見楽会」は作品の解説をするのではなく、みなさんで1つの作品をよく見てお話をしながら鑑賞をする会であることを説明し、それぞれ出発しました。

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1. 「通り過ぎる記憶」吉岡正人DSCN4203

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作品を囲んで、1作品目の鑑賞が始まります。
最初に、1人でしばらく、よく絵を見る時間があります。
その後、ファシリテーター(とびラー)が、「この絵の中に何が描いてあるのでしょう?
気がついたことを何でも自由に話してください。」と、対話による鑑賞を進めて行きます。
他の参加者と一緒に見ながらお話をしていくことで、1人では気がつかなかった発見に出会えるかもしれません。初めは緊張していた方も、次第に作品を指して、見つけたことを話してくださるようになります。

 

2.「欠伸している神様の圓」田浦哲也DSCN4221

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2作品目になると、だんだん見ることに慣れてくるのでしょうか、意見もたくさん出てくるようになってきます。ファシリテーターが、「少し前に近づいてみましょう」と促してみることもあります。離れて見ていると気がつかなかったことが、近くに寄ってよく見たら、見つかるかも?逆に、近くで見てもわからなかったことに、又離れて見てみたら気がつくこともあるかもしれません。

DSCN4236ファシリテーターは、1人1人の発言に耳を傾け、その場にいるみなさんが理解できるように、整理していきます。(時には身振りを交えて)

 

 

 

 

 

3.「こわれたがんぐ」大石洋次郎150517_4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう1つのグループは、こじんまり少人数でスタート。
1つの作品について「不思議」、「あったかい」、「懐かしいような気がする」、「現実にはあり得ない感じ」、「なんか気持ち悪いような、でも面白い」、同じ絵を見ているのに感想はじつに千差万別です。どんな意見も自由に話していいのです。人の意見を聞いて、賛成もよし、反対もよし。正解はひとつではありません。絵の中のポーズを真似しながら見ている方もいます。まさに絵の中に入って見ています。

 

4. 「鉛の海の底で」森慎司IMG_5343

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この作品では、「いったいここはどこなのか?」「どこまでが現実でどこまでが想像なの?」
などと、話が進んでいました。ファシリテーターが「どうしてそう思うのですか?」と聞くと、
さらにみなさんの思考が深まっていきます。時には腕組みして「うーん」と考えてしまうことも
あります。だれかの意見がきっかけで、「自分も、そんな気がしてきた。」などと、初めと見方が変わる方もいます。これぞ対話による鑑賞の面白さです。

 

5.「再生・Sea breeze」中土井正記IMG_5371のコピー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
「作品のモチーフが何を表しているのだろう?」とか、「絵を見てこういう気持ちになった」とか、そんなことも話してくださる参加者がいます。そっと題名を見てフンフンとうなずいていたり、反対に余計に不思議になっていたりする方も? だまってみなさんの話を聴いている、ただそれだけでも充分楽しい、そんな楽しみ方もありです。

 

6.「蜘蛛の巣」三浦愛子
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15時からの回は、2作品終了後、希望者だけで3作品目を鑑賞することになりました。途中から
参加したい方もウェルカムです。なんと、13時からと15時からの2回とも参加し、お一人で合計5作品も鑑賞してくださった「見楽会」の大ファンがいらっしゃいました!うれしいことです。

 

(番外編)

見楽会終了後は、プログラムに参加したとびラー全員で振り返りのミーティング。
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これからも、東京都美術館の中でたくさん充実した鑑賞会の機会を作り、一人でも多くの方と色々な作品を一緒に楽しんでゆきたいです。鑑賞会をより理解してもらうための宣伝方法、よい場づくり諸々、今後も進化し続けます。

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IMG_2329 (3)アート・コミュニケータ(とびラー) 内野聡子
今いちばん忙しくも充実した毎日なのかも?いくつになってもたくさんの人と出会い、知らないことを学びたい、そんなご縁、姿勢を大切にしたいです。

5月9日、第3回目の基礎講座が行なわれました。とびらプロジェクトでは「鑑賞実践講座」「アクセス実践講座」「建築実践講座」の3つのコースが設けられており、6回の基礎講座が終了するといずれか1つ以上を選択し、年間を通して受講します。今回の講座では「アクセス」と「建築」について、プロジェクトとしてこのテーマに向き合うこと、とびラーが活動していく意義やポイントを確認しました。
まず午前中は「アクセス」について学んでいきます。

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最初に稲庭さんから、国内外の美術館のアクセシビリティに関する取り組みについて紹介がありました。
紹介の前にまず、とびらプロジェクトの推薦図書としている「わかり方の探求 思索と行動の原点」(佐伯胖 著)から、冒頭の文章を取り上げます。
「わかる」とはどういうことか。
冒頭では、人が生涯を通して絶えず続けているこの「わかる」ということの本質について触れており、認知心理学をはじめ、多角的に分析されて書かれている本です。稲庭さんのお話では、この本に書かれているように、「わかる」ことは文化に参加することであり、自分の生活の質を高めていくときにとても重要な指標になるということでした。では美術館では具体的にどんなアプローチがあり得るのでしょうか。

アクセシビリティが美術館でどのように語られているか事例を通して見ていきます。
昨今の社会では、ひとりひとりが孤独になってしまったり、社会的参加が出来ない状況が生まれやすくなっていると言えます。またそれが原因となり、更なる社会不安が起こることもあります。インターネットの普及により、人々の繋がり方が変化し多様化しているなかで、新たな関わり合い方を考えなくてはいけない現代。人々の「わかりあう」ことが、社会の安定につながるのではないかという視点から、「わかりあう場」として美術館を活用することについてのお話でした。

美術館は全ての人に開かれている場ですが、美術館を活用する状況にいない人々(アクセスしにくい人々)に対して、いかに「わかりあう場」を提供していけるかが美術館の大きな課題のひとつとなっているということでした。
様々な問題を解決する時に一番重要なのは、人々の意識をつくっていくこと。高齢の方、子供たち、障害のある方など、こういった方々がより社会参加できるような意識を人々が持つ事が大切になってきます。

まずは海外の事例が3つ紹介されました。
一つめは、ニューヨーク「メトロポリタン美術館」の分館で行なわれている、認知症の方とその家族のための”MET Escapes”というプログラムです。
家族に加え、日頃のケアを担当している介護士の方も一緒に来館します。普段認知症の方を支え、1番近くにいる人も一緒に活動することが、このプログラムの大きなポイントです。
“MET Escapes”の名前には、日常から少し離れて非日常の空間に来てみませんか、という意味が込められています。

同じくニューヨークの近代美術館(MOMA)で行われているプログラム、”meet me”。作品を通して私に出会うことがテーマです。
作品を通して、家族、そして認知症の方とが対話を行い、家ではできなかった会話がここでは生まれていっているそうです。
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「作品を介することで、個々の物語が共有され、そこに共感が生まれ、患者自身、また介護者の生きる意義の探求に繋がっていきます。わかりあえる瞬間があるかどうかは、認知症の方を支える家族にとってはとても大事な経験になるのです。」

また、イギリスからは”House of memories”というプログラム。
地域の美術館・博物館を活用し、回想法という手法を使い、認知症に新たなケアの方法を確立していくものです。これまでに沢山の介護士の方がこのプログラムを受講しているそうですが、認知症の介護をしていく中で、どのようにケアをしていくか、また自分自身がどうしていけばいいかをこの場を通して考えていきます。
このプログラムでは地域ならではのコンテンツを活用し、自分が育ったまちの郷土・歴史を紹介している博物館のコレクションを持って、ケアホームなどの認知症の方々がいる場へ出かけていきます。そして、そのコレクション(モノ)を通して、患者本人と介護士が対話をします。具体的なモノが目の前にあることによってより会話が促進されるのと同時に、モノがもつ多くの情報が、記憶が引き出される、また「わかりあえる」きっかけを引き出すことができるのです。

「ミュージアムは、まず自分との関わり合いを作れる場所で、また他の人の世界とも関わることの出来る場所。その両方があることでわかりあうことが出来、その可能性を他の場よりも多くもっていると思います。もちろん、高齢者の方や障害のある方、何か身体的な理由がある方のみではなく、様々な理由からミュージアムにアクセスする環境にいない方も沢山います。自分以外の方々がどう生活をしているか、難しいことかもしれませんが、常にそのことを想像しながら社会的な課題をとらえていくこと、何より対話を諦めないことですが大切だと思います。」

国内の事例についても紹介がありました。
神奈川県立近代美術館で開催された特別支援学級の生徒たちに向けたプログラム、「音でつながる、私とアフリカ」。アフリカの現代作家の展示を舞台としたワークショップで、音楽を通して作品を鑑賞、表現していきます。
3回通した内容のこのプログラムは、まずは美術館に来館し、作品に出会い、音に触れ、2日目に学校で自分の楽器を製作。最終日には展示室の作品のある空間で一般の方に発表するという流れです。最後にはお客さんの前で発表するというとても大変なものですが、初日に展示室に入ってから、自分が奏者としてお客さんの前に立つまで、ひとつひとつのことが丁寧に組み上げられていることで実現できるものなのでしょう。

一度ここで3人組をつくり、これまでの内容をそれぞれが言葉にして共有します。

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では、とびらプロジェクトやMuseum Start あいうえのではどんなことができるのでしょうか。
次は奥村さん(東京藝術大学 特任研究員)より、過去のとびラーによる活動の紹介です。

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プロジェクトが始動してから3年間で、とびラーのアイディアから様々なプログラムが生まれました。
例えば、視覚障害の方と一緒に作品をみる鑑賞会や、都美のたてものをめぐる建築ツアー、また特別養護施設の子供たちを都美に招き、一緒に作品を鑑賞したりするものなど、中には3年の任期を満了した後でも続けられているものもあります。
東京都美術館でリニューアル前から行ってきた、特別展ごとに年4回開催される「障害のある方のための特別鑑賞会」でのサポートも大切な場のひとつです。普段はとても混み合う展示室ですが、月曜日の休室日を利用してゆっくりと展示を楽しんでいただけるように、各所様々な場面で来館者の方に寄り添います。
また、「Museum Start あいうえの」では、障害のある子とない子も一緒に活動する「のびのびゆったりワークショップ」を行ってきました。
(それぞれの詳細はブログにアップされています。)

最後に、7月より始まるアクセス実践講座についての説明がありました。
「誰もがアートや文化資源に出会える環境がどのようにつくられるかについて考え、自分の周りにいる様々な状況の人を想定しながら、実践を通して自身の働きかけ方から理解を深めていきます。」

アクセス実践講座では、いろいろな分野で活動されている方をお招きしお話を聞いたり、特別鑑賞会への参加、他施設での取り組みも吸収しながら、自身でどんなことができるのかを1年通して考えていきます。

午後は「建築」。
都美学芸員の河野さんによる、「都美の歴史について」のレクチャーから始まりました。実は都美は一番古い公立の美術館で、設立時は東京「府」美術館でした。初期の建物から2年前のリニューアルを経て今の姿になるまでのながれ、建築にまつわる様々なエピソードをお話いただきました。

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現在も二ヶ月に1度ほど開催されているとびラーによる「建築ツアー」ですが、実はこのきっかけはリニューアルに伴う2年間の休館に入る直前に行なわれた「おやすみ都美館建築講座」というイベントでした。都美を設計した建築家、前川國男の事務所の方をはじめ、建築の専門家によるレクチャーや、職員の方々総出の館内ツアーが行われたそうです。600名以上の方が参加したこのイベントが大変好評だったこともあり、リニューアル後はとびらプロジェクトの「とびラーによる建築ツアー」という新たな形で、引き継がれていくことになったそうです。
プロジェクト2年目には、お昼だけでなく夜のライトアップされた姿もぜひご案内したいという声から、夜間開館日を利用した夜の建築ツアー(トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー)もスタートしました。
ツアーの資料やアイテム、ルートなどは全てとびラーオリジナルです。3年間で様々に工夫が凝らされ、現在も続けられています。

美術館に来て、まっすぐ展示室に向かうだけでなく、その空間や道すがらに少し目を向けてみるのも美術館を楽しむ一つの醍醐味。鑑賞する空間や気持ちを作るのが、建築というハードの役割でもあります。
美術館や博物館に行くとき、建物もよく見てみるとそこに新たな発見があるかもしれません。日常の中でのちょっとした発見。建築ツアーはそのきっかけづくりの一つなのでしょう。

後半は、実際に館内を見てまわります。

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まずは公募展示室のバックヤードから。作品を運ぶための大きなエレベータに乗って移動します。50人全員が入る大きさです。
都美は建物の6割が地下に埋まっているそうで、今回見たバックヤードの大きな空間から建物全体の規模を窺い知ることができます。
ほとんど週代わりという早さで展示が入れ替わる公募棟の展示ですが、沢山の作品が出入りするこの空間は真っ白。ここで荷解きして作品を並べて審査して、そんな作業が日々行なわれているそうです。
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バックヤードを見た後は、通用口(裏口)を経由して正門へ。4棟の箱が少しずつずれて並んでいる公募棟の特徴を外から確認しながら歩きます。

正門からは、「ミニ建築ツアー」のスタートです。
赤・青・黄・緑の4つのチームに分かれます。先導するのは、2・3年目のとびラーたち。新とびラー向けに館内のみどころを紹介してもらいました。DSCN4135 2

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公募棟など、いつものツアーでも紹介しているポイントをまわっていきます。何度も足を運んでいる場所でも、教えてもらって初めて気づくことが沢山あります。

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アートスタディルームに戻り、3人組で体験してきたことを話し合います。
「まわってみて沢山の発見があったけど、今度は自分が人にどう伝えられるか、考えてみたい。」
「他のチームの方と、自分が体験してきたツアーが内容がかなり違っていた。自分の視点なども織り交ぜながら案内していたことに気づいた。」

建築実践講座は6月末にスタートします。
講座の目標は、「建築空間を通して生まれるコミュニケーションの場づくりについて考え、プランを実践する。」

そのプランのひとつがツアーであり、これまでも「館内みどころマップ」づくりなど、この講座から様々に派生した活動が生まれました。
建築を活かしながら、どういうコミュニケーションをつくっていけるか、新たに迎えた4期のとびラーとともに考えていきます。

いよいよ6月末から、鑑賞、アクセス、建築の3つの実践講座がスタートします。他にも「Museum Start あいうえの」のプログラムやとびラボなど、春から夏にかけてどんどん活動が広がっていきます。講座での学び合い、そして自分たちでつくっていく実践の場が更なる活動と学びの深まりになればと思います。

(東京藝術大学美術学部特任助手:大谷郁)

今年度の第2回基礎講座では、「美術館での体験とは?」についてみんなで考え、実際に体験しました。

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午前中は稲庭さんより映像を3本紹介してもらい、見終わったら感想を全体で共有する時間。

1本目はアメリカのニューヨーク市にあるメトロポリタン美術館館長トーマス・キャンベル氏によるTEDでのプレゼンテーションの映像です。
この映像では、展覧会においての具体的な例を挙げながら、美術館でしか得られない体験について語られています。とびラーは映像を見ながら、大事だと思われるキーワードをそれぞれ書き留めていきます。その時に出て来た主なキーワードはこちら。

「歴史や専門知識の目だけで見るのではなく、自分の目を使って発見の瞬間を得ること。」
「本物を目の前にすることで、時空を超えて過去の人たちに出会う体験ができる。それにより自分をより深く知り、未来に向ける。」
とびラーのみなさんも大事なメッセージを受け止めた様子で、1本目からとても活発な意見が出ていました。

「作品をみること」「作品から感じる体験とはなんだろう?」ということを考えはじめたところで、次の映像です。2本目はアメリカのボストン市にあるイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館で行われている教育プログラムをまとめたドキュメンタリー映像「Thinking Through Arts」です。ここで紹介されているのは、VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ)という手法を使った主に小学生を対象とした対話型鑑賞のプログラム。

この映像をみた後に、近くの3人で一組になり感じたことを話し合いました。
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全体で共有したときに出て来たキーワードと、稲庭さんがそれに呼応して話したことをいくつか紹介します。
「映像に出てくるファシリテータは、こどもたちを褒めていない。前回の講座の“きく力”を思い出し、とても良い聞き役だと感じた。」
「ファシリテータの技術によって単なる“会話”ではなく、 積み重なる“対話”になる。」
「 “何が見える?”ではなく、“何が起こっている?”という質問では大きな違いを感じた。」
「より絵の中に入って散歩していくようにみるきっかけになるため、こどもたちから出てくる発言の質が変わってくる。」
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さらに別のアプローチをしている事例の紹介です。3本目は神奈川県立近代美術館の「鎌倉の立てる像たち」という映像作品です。ここでは、中学生たちがワークショップを通して、自分自身を作品や作家に投影しながら、鑑賞を深めている様子を見ることができました。

印象的だったのは、誰しもが感じる疑問に対して稲庭さんが答えてくれた言葉でした。
「“実はこの作品は・・・”という種明かしはしないのか?」
「種明かしは特にない。みんなが“答え”が欲しいと思う理由は、実は思考を止めたいから。」

「正解」という情報を知った時に理解した気になり、ほっとひと安心するような感覚を味わったことはありませんか。そうすることで知識は積み重なるかもしれないけど、それは考えることから解放された安心感からくる「ほっ」なのだと稲庭さんは言います。その安心感に満足してしまうと、もはやその作品をについて考えなくなってしまうこと思考を止めることにつながるのです。
ここで紹介したVTSによる鑑賞体験では、作品を知ることが目的ではなく、鑑賞者が「これは何だろう?」「なんでだろう?」と考え続けることを目指しています。とびらプロジェクトにおける「鑑賞」の活動は、この考え方をベースにしています。
最後に稲庭さんから、「美術館での鑑賞体験を深められるにはどうしたらいいか、実践するときに一人一人が考えていってほしい」というメッセージが伝えられました。

午後はアクティビティです!
まずはウォーミングアップとして「Museum Box 宝箱」のアートカードを使います。
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キーワードを聞いて、イメージするアートカードを指差す「指さしゲーム」や・・・

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ランダムなアートカード3枚をつなげて物語をつくる「ものがたりゲーム」で盛り上がりました!

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ゲームを通して「言葉」と「イメージ」の結びつき、イメージの受け取り方には多様な感じ方があることを体感してもらいながら、自然にと作品の”中”に入る準備体操ができたはず。

この後、いよいよ展示室における鑑賞を体験してもらうべく、開催中の「大英博物館展」を見に行ってもらいました。その時のルールは以下の3つです。
①まず、空間を把握すること。②選んだ作品を1点鑑賞してくること。③場をデザインすることにも気を配ること。
この1〜3の活動は、単に「展示室に行って好きに作品を見て来てね」というものではありません。とびラーのみなさんが実践の場としてもらうスクールプログラムの時に直面する問題を想定しています。鑑賞している人たちがそれぞれ気持ちよく過ごしてもらうために、自分がどのように振る舞えばいいのか、まずは体で体験してきて下さい、と呼びかけました。

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それぞれ無事にミッションを終えて、気になる作品同士で集まって見つけてきたことや考えを共有します。
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それぞれの作品について各グループより紹介してもらいました。
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最後に、<鑑賞実践講座>についての紹介です。
来館した人々にとって、より豊かな美術館体験をしてもらうために「対話による鑑賞」と「パーソナルな体験」を行き来させつつ、彼らの言葉を引き出す力を身につける講座です。それは第1回基礎講座でいっしょに考えた、「きく力」と共通するものになります。ただ単に「VTS」を身につけることではなく、あくまでこどもたちや来館者と寄り添って、まなざしを共有できることを目的としています。
ここから、とびラー一人一人が「美術館で起こる体験」について実践的に考え、デザインしていく3年間がはじまります!

(東京藝術大学美術学部特任助手 鈴木智香子)

3月29日(日)、第1期とびラーの任期満了式が行なわれました。
プロジェクト3年間の節目であり、そして初めてとびラーが巣立っていく特別な日です。
その名も「開扉会(カイピカイ)」。それぞれが開く「とびら」を想い名付けられました。

 

会は2・3年目とびラーによる企画から始まりました。

テーマは「5年後の未来をデザインしよう。—あなたと、アート&コミュニケーションとの関わり方を考える—」。

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アート・コミュニケータとして活動する自分自身のこと、自分の周りのことについて、少し先の未来を想像しながら考えてみます。

まずはテーブルごとに、出されたお題について話し合います。
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みなさんが言葉にしたことはメモ。

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グループごとに話した後はどんな意見が出たのか、全員で共有します。

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とびラー全期が揃う機会は実はとても貴重。とびラーとしての時間が個人の中で完結してしまうのではなくて、時々互いに交換する時間を積極的に持つ事を大切にしています。

自分の未来の姿、社会の姿、小さなアイディアや悩み、大きな夢まで。
短い時間ながらも、相手が考えていることに少しだけ想いを馳せてみるひとときです。

後半は、場所を移して活動のフィールド、上野公園へ。
雨が心配されていたこの日ですが、この時ばかりは天気も見方してくれました。

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はじめに東京藝術大学と東京都美術館を代表して、プロジェクトの代表教員でもある日比野克彦教授、そして林久美子副館長のお二人から、メッセージをいただきました。

「前例のないことにチャレンジしてきた3年間。この経験は受け継がれていくけれど、1期生みなさんの経験は二度と誰も出来ないものです。この貴重な体験を明日から、それぞれの日常に活かして、生活、まちづくり、コミュニティづくり、自分の価値観を鍛えていってください。」「とびラー任期満了、おめでとうございます!」

3年間の感謝、今後への期待が伝えられました。

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次はいよいよ任期満了証の授与です。
3年前、とびらプロジェクトが始動した当初の顔ぶれが前に並び、一人一人の名前がプロジェクトマネージャの伊藤さんにより読み上げられました。

証書を手渡すのは、林副館長と、日比野さんです。
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証書の名称は「開扉の印」(カイピノシルシ)。
2つ折りのカードの中には、東京都美術館・真室佳武館長、東京藝術大学・日比野克彦教授のお二人からのメッセージが書かれています。そして、上野を飛び出したみなさんが開く新たなとびらを願い、上野駅からの「切符」が一緒に綴じられています。行き先はその人次第。

授与の後は、3年目を迎えたとびラーとスタッフからのことばが伝えられました。
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3年目のとびラーを代表して小野寺伸二さん。そして同じくとびらプロジェクトを巣立つスタッフの近藤美智子さん。

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授与が終わると、2・3期のとびラーから1期生にインタビュー冊子の授与です。
この冊子は、2・3期のとびラーが任期を満了するみなさんの送り方について考えたところに始まり、小さなプロジェクトを立ち上げて形になったもの。とびらプロジェクトが始動した当時を知る人であり、とびラーとして最初に走り出した人たちの言葉や思いを、インタビューを行い1つの冊子にまとめました。

そして会を締めくくるのは、東京藝術大学の伊藤さん、そして東京都美術館の稲庭さんによるおわりのことばです。

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「道なき道をみなさんと歩めたこと、本当に嬉しく思います。」
「みなさんのこれからの活動、そして新たに入る4期生との出会い、新たなフェーズが始まる予感がしています。これからもよろしくお願いします。」

「3年間、本当にお疲れ様です。ありがとうございました!」

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開扉会の最後はみんなで記念撮影。これだけ沢山の方がとびラーとして活動してきました。
本年度、任期を満了したとびラーは55名。
55人のアート・コミュニケータが上野から、それぞれの場に出発します。

新たに活動を始める方、元いた場に戻りここで培ったものを活かしていく方、みなさんの今後は様々だと思います。
アート・コミュニケータのマインドを持った人たちのパワーを、それぞれが大切にしている場で発揮していくことを願っています。

(東京藝術大学美術学部特任助手:大谷郁)

2月13日と27日に「ヨリミチビジュツカン 新印象派—光と色のドラマ展編」を開催しました。

ヨリミチビジュツカンは、作品を通して人と出会い、人を通して作品と出会うことを大切にした、鑑賞とコミュニケーションをテーマにしたとびラボです。
一人で美術館に行った時に、作品を見て感じたことを誰かに伝えたいな…と思ったり、SNSに書き込む感想を直接誰かと話し合ったりしたいな…と思うことってありませんか?このプログラムはそんな思いを叶えます。
金曜日は夜8時まで開館している東京都美術館。仕事帰りや学校帰りに、気軽にふらっと寄り道してほしいな、という思いから、ヨリミチビジュツカンは夜間開館の時間に開催しています。

毎回試行錯誤を重ねて実施していますが、今回は1年前の初回と同様に事前申し込み制とし、ドレスコードの「ヨリミチアイテム」も復活!これは参加申し込みからプログラム当日までを、楽しみにワクワク過ごしてもらうための工夫です。
新印象派展のヨリミチアイテムは「好きな色」。展示室に並ぶ作品はどれも色とりどりですが、参加いただいた皆さんがチョイスしてきた色も様々でした。私の担当したグループは偶然にも5人中4人が「青」でしたが、同じ青でも色のニュアンスの違い、色々な青がありました。

さて、夕方を過ぎ、展示室の混雑も落ち着いてきた頃、参加者の方々が集まり始めます。
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受付を済ませると、パレット型のヨリミチカードが手渡されます(このカードもとびラーが作っています!)。まずはひとりで展覧会を見に行き、「入ってみたい絵」を1点選んできてもらいました。選んだ作品はこのカードにメモしておきます。
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30分ほどひとりで見てきた後に、グループ鑑賞が始まります。
描かれている人と哲学の話をしてみたい、あたたかな夜の光が気になった、家の周りを散歩してみたい、色の移り変わりが綺麗だった…作品の前で選んだ理由を聞きながら、みんなで絵の中に入っていきます。入ってみたい理由をきっかけに、作品から受ける印象や感じたことを共有します。
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同じ作品を見ていても、感じることや注目する箇所は人それぞれです。自分とは違う視点を聞き合い、ひとりではさっと通り過ぎてしまう作品もじっくりと見ることができるのがヨリミチビジュツカンの良いところです。「他の人の見方や感じ方を知ることができて面白かった」との感想をよくいただきますが、自分ではない誰か(しかも大抵それは初めて会う人!)を通して作品をみる体験から、その人自身の視点が広がると良いなと思います。
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小学生に人気の作品を紹介すると、立ったりしゃがんだり身体を使った視点探しが始まりました。背の高い人は空に視線が向きがちですが、子供の背の高さになってみると視線の先には人々や町並みがありました。
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近距離、中距離、長距離と作品との距離を変えると見え方が変化し、まるで違う絵のように見える発見は、点描技法を用いた新印象派の展覧会ならではかもしれません。
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展示室には静かに沈黙の中で作品と対峙したいという気持ちで来館している方もいらっしゃいます。いかに同じ展示室内で共存するのか、このとびラボでいつも考えていることですが、本物の作品からのインスピレーションを受けながら、他者と一緒に過ごす時間の価値も大切にしていきたいなと思っています。これからもより良い方法を探っていきたいと思います。
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鑑賞の後は、カフェタイムです。私たちとびラーが普段活動拠点としているアートスタディルームでお茶をしながら、皆で一緒にプログラムを振り返ります。お菓子も展覧会に合わせてとびラーが用意しています。今回の持ち寄りは、カラフルがテーマ。いかがでしたでしょうか?
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ここでは、形式的になりがちなアンケートを取ることをやめ、参加の皆さんに今日の感想や心に残ったキーワードを、話をしながら付箋に書き出してもらいます。
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作品について話すときは図録を使うこともありますが、図録を開くとがっかりするほど、本物の作品が持つ色彩の鮮やかさや輝きを再認識する時間になりました。やっぱり本物がいいね〜と展示室で感じたことを思い出しました。

このカフェタイムでは、初対面同士でもこんなに話って盛り上がるのものなんだな〜と毎回思います。作品のこと、普段行く美術館のこと、私たちとびラーやとびらプロジェクトのこと、閉館時間ギリギリまで、話題は尽きません。まだ話足りない!という気持ちを残しながら、夜間のライトアップで参加者の皆さんをお見送りして終了です。
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最後に、今回のプログラムの中で聞こえてきた皆さんの言葉をいくつか紹介します。
「(モヤがかかっているように見えるのは)そこにいる人々の息遣いで空気があたたかくなっているからかもしれない」
「(夕暮れの色合いが綺麗なので)夜になってしまうのがもったいない」
「朝の光、昼の光、夜の光、いろんな光がある」
「本当に水面が揺れているようにみえる」
「好きなものを好きと言えた」
「自分の直感で良いと思うものを選べるようになった」
まだまだ沢山ありますが、作品に関すること、このプログラムに関すること、参加者の皆さんと交わす会話は、私たちとびラーにとっても新しい気付きになっています。

そして、「ヨリミチビジュツカンに参加したことで、美術館に行くスイッチが入った!」とのとても嬉しい言葉をいただきました。これからもいろんな人の美術館スイッチを押していきたいと思います!
実は1年前に参加者として来ていたメンバーも、一緒にヨリミチビジュツカンで活動しています。他の美術館で参加者の方に偶然お会いしたこともありました。今回ご一緒できた皆さんとも、また都美や他の美術館で再会できることを楽しみにしています!

ご参加いただいたみなさま、素敵な時間をありがとうございました!

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近藤乃梨子(アート・コミュニケータ)
3度の飯よりアートが好き♡とびらプロジェクトへの参加をきっかけにアートに携わる人生が本格的に始まりました。様々なご縁に感謝して日々を過ごしています。

1月26日編                         とびラー 山木薫

白梅の香りが漂う1月末、今年も東京藝術大学 卒業・修了作品展が東京都美術館で開催されました。藝大生の集大成である作品が公募棟のここそこと展示され、制服姿の高校生から外国人など色々な世代、地域から人が集うワクワク感のあるアート空間です。
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そこで今年もとびラー「見楽会」です。1月26日、卒展初日、展示されたばかり真新しい力作品群の前での画材の匂いを感じながら、午後のひととき来館者の方々とご一緒にとびラーの小野寺と羽片がファシテータ役を務め、吉田俊介作「21世紀日本昔話 1.0」、高橋愛作「そっち こっち」2作品をとりあげて、対話による鑑賞会をおこないました。
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作品の解説を聞くのではなく、鑑賞者ひとりひとりが作品をみて感じたこと、思ったことを発言し、その言葉をファシリテータが指揮者のように整理し共有し繋いでいきます。鑑賞者は色々な見方を知ることで、それぞれの見方が広がったり、深まったり、新たな気づきが生れたり・・。15分間のジャズの生セッションのような鑑賞ライブです。
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会場内にファシリテータと鑑賞者の静かな声が反響し鑑賞の輪が波紋のように広がっていきました。鑑賞者から微笑みがこぼれたり、首をかしげて食い入るように絵をみたり頷いて黙って聞き入ったり、自然と隣の人と言葉を交わすコミュニケーションの場となりました。鑑賞の余韻のなか、飛び入りで作家の方が登場、作品への気持ちや質疑応答など作家の方との対話が加わり卒展「見楽会」ならではの光景が展開しました。
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さて正解がないこの対話による鑑賞、あなたの心のとびらは開かれたでしょうか?
「見楽会」は試行錯誤しながら場作り中、2回目に続きます。

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1月29日編                        とびラー 森万由子

さて、藝大卒展にて今年2度目の「見楽会」、今日はどんな対話が生まれるでしょう。とびラーも皆さんと一緒に鑑賞できるこの日を楽しみに準備してきました。正面入口を入ってすぐ、ミュージアムショップ横で今回参加していただく皆さんとご対面。緊張と期待に胸が高鳴ります。
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二つのグループに分かれての鑑賞、この日はそれぞれとびラーの近藤と藤田がファシリテータ役を務め、近藤グループは水谷栄希作「食事の支度」と高橋佑基作「Uncomfortablendomfortable」、藤田グループは高橋愛作「そっち こっち」と市橋泉作「漕いだり、休んだり」、それぞれ2作品を鑑賞しました。
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熱気あふれる会場内を歩き、作品の前にたどり着けばいよいよ鑑賞スタート。「この作品の中で一体何が起こっているのだろう」、「どうしてそのように見えるのだろう」、皆で感じたことや気づいたことを共有し、作品の魅力に迫ります。そこに正解はありません。どのように見るかは、鑑賞者に委ねられています。
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一見「?」が浮かぶ不思議な作品でも、対話を通して見ていくうちに様々な気づきが生まれます。皆でじっくりと向き合ったあとは、初めて見た瞬間よりもその作品を身近に感じられるかもしれません。
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自分の感じたことを自由に発言し、ほかの人の発言に耳を傾ける。その過程で作品の印象がどんどん変化していくこともあれば、最初の印象がより深まっていくこともあるでしょう。

2日間行われた今年の藝大卒展「見楽会」。藝大生たちの熱い思いがこもった作品は、どれも溢れんばかりのパワーと瑞々しい魅力に満ちていました。そんなエネルギーの塊を囲みおこなった対話による鑑賞は、皆さんにとって、そしてとびラーにとって新鮮で思い出深い体験になったのではないでしょうか。

 


著者:アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)山木薫

プロジェクトで言葉や文字で発信するアート活動に胸ときめく日々、これからの発信の起点を思考中・・。

 

 


FullSizeRender (2)筆者:アート・コミュニケータ(愛称:とびラー)森万由子

美術史を中心に、いろいろつまみ食いしながら学ぶ大学生。人々の心の糧となるものを残し、伝え、社会をじわじわ良くするのが夢。日々人生の勉強中。