東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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【実施報告】「TURNさんぽ」 日常非常日の世界を体験

2018.09.20

TURNフェス4の「TURNさんぽ」を終えて、会場を離れようとすると、「TURNさんぽ」に参加された3人の方が会場の隅に集まり、「TURNって最初は良くわからなかったけれど、さまざまな人が出会う場なのかもしれない・・・」と話をされていました。それは、今年も「TURNさんぽ」を行って良かったと思った瞬間でした。参加者の方には、TURNフェス4のテーマである「日常非常日(ピッジョッピジョッピ)」日常と非日常が出会うというコンセプトを、「TURNさんぽ」を通して体験していただけたのではないでしょうか。

 

異なる背景を持った人々が関わり合い、様々な「個」の出会いと表現を生み出すアートプロジェクト、TURN。そのTURNの様々な活動が会するフェスティバルも、今年4回目を迎え、東京都、アーツカウンシル東京・東京都美術館、Art’s Embrace、東京藝術大学が主催するTURNフェス4として8月17日(金)から19日(日)までの3日間、東京都美術館(公益財団法人東京都美術館)で開催されました。日頃、東京都美術館を活動の拠点としアート・コミュニケータとして活動を行っている「とびラー」も、この興味深いイベントにぜひ関わりたいと考え、「TURNさんぽ」を企画しました。「TURNさんぽ」は、とびラーと参加者が一緒になって、TURNフェス4の展示やワークショップを見て回り、福祉施設の運営に関わっている方やアーティストの方と会話をし、その場を体験し、感じて、考えてみる、会場内ツアーです。

 

ツアーはTURNフェス4の会期2日目と3日目に開催。18日(土)午後の回は、4つのグループで、19日(日)午前の回は、3グループで実施しました。それぞれのグループに2,3人のとびラーが付き、参加者は2人から5人という編成です。それぞれのグループは、45分で廻るコースを設定し、展示をみたり、アーティストと会話しながら、さんぽを楽しみます。どのグループも少人数で密度の高いコミュニケーションがとれたのではないでしょうか。

 

ここからは、「TURNさんぽ」が立ち寄った展示や、参加者と施設の方、アーティストの方との会話を紹介します。

みずのきの展示

 

会場入口を入ってすぐにある展示は、障害者支援施設「みずのき」とそこから生まれた「みずのき美術館」の展示です。そこでは「みずのき」の職員の方から、「みずのき」の歴史のお話を伺いました。画家を講師に招いた絵画活動を行い、一般の展覧会でも評価をうける作家が出現してきた経緯、そこに日比野克彦さんがショートステイしてTURNの発想が芽生えたことなど、TURN前史が語られました。アール・ブリュットとしての活動とTURNの活動には差がありますかという質問に、職員の方からは「作品を作っている方は変わっていないのではないか、むしろ周りの関わり方が多様に変化して来たと感じます」と答えをいただきました。さらに参加者からは障害を持った方がアートに出会うとはどんなことなのかなどの質問がされ、このような機会でないとなかなか聞くことができないお話を伺うことができました。

 

今回のTURNフェス4では、TURNの海外交流に関わる展示やワークショップが重要な位置を占めていましたので、「TURNさんぽ」もそんな場所に立ち寄りました。

 

昨年アルゼンチンで開催された第1回国際現代美術ビエンナーレBIENALSURでのTURN in BIENALSURプロジェクトに参加された、ペルーのアーティスト、ヘンリー・オルティス・タピアさん、アルゼンチンのアーティスト、アレハンドラ・ミスライさん、日本のアーティスト岩田とも子さんが、今回のTURNフェス4でも参加されています。

ヘンリー・オルティス・タピアさん

アレハンドラ・ミスライさん

 

ヘンリーさんは、ペルーでのTURNで、「シクラ」というイグサ編みを用いて交流しましたが、日本では国内産の藁とイグサを用いた「はぁとぴあ原宿」での交流プログラムでの経験をもとに、展示とワークショップを行っています。TURNさんぽの参加者との会話では、草を撚り合わせるという行為や、時計回りに撚るか反時計回りに撚るかということにも、文化により異なる意味づけがされているという興味深い話をしていただきました。だれにでも参加できるワークショップからも、そこに伝統とのつながりや、深い意味が感じ取れます。

 

アルゼンチンのアーティスト、アレハンドラ・ミスライさんは、日本の福祉施設「台東つばさ福祉会」で、そこの利用者と半分ほど編みあげた編み物をTURNの会場に持ち込み、続きを編むというワークショプを行なっていました。どこの場所を編み進めても良い、どんな編み方をしても良いというものです。アレハンドラさんは「施設でワークショップを行うために、できることを探ることで、作品世界が広がり、多様な人々と関わることができました」と話されていました。

岩田とも子さんのワークショップ

 

岩田とも子さんのコーナーでは、岩田さんがブエノスアイレスで行った「折形、(おりかた)」のワークショップが、日本に里帰りするかたちで行われていました。床には鏡が置かれていて、会場から地球を貫いてアルゼンチンにつながる縦穴のイメージが作られています。その開口部にはたくさんの石が置かれています。ワークショップ参加者は、最初にそのアルゼンチンにつながる石の中から好みのものを一つ取り上げます、次に和紙を日本古来の折形に従って折ります、最後に折られた和紙の上に選んだ石を置きます。こうしてアルゼンチンと日本が繋がります。簡単な手作業で改まった気分になれることに、さんぽ参加者も興味深そうです。

小野龍一さんのインスタレーション

 

エクアドル中央大学とのプロジェクトTURN – LA TOLAにも参加された、大西健太郎さんと、小野龍一さん。大西健太郎さんはエクアドルでも行なった、新潟県十日町市莇平集落で伝承されてきたシッチョイサという踊り・パフォーマンスを会場内で披露されていました。大西さんは、さんぽの参加者に、「見るー見られる」という関係性を、拡大する社会の中でどう表現するかが問題だと、話していただきました。

 

小野龍一さんは、ピアノの弦に天井からつるした弦を結びつけ、弦の振動と音の振動を楽しむインスタレーションをされていました。参加者は弦に直接ふれて、音の振動を感じる不思議な体験に気持ち良さを感じていたようです。

袋田病院の上原耕生さん

利用者の作品の前で

 

今回のTURNフェス4では精神科病院に関わる展示が2つあります。一つは茨城県の袋田病院です。ここでは、治療や教育だけではない「自己表現の場」としてのアート活動がされています。袋田病院で今年10月に開催されるアートフェスタに向けた、大きな恐竜を作るワークショップ作品や、利用者が作成した壁いっぱいの版画作品が並ぶ中で、袋田病院で利用者とともに活動をされている上原耕生さんに話を伺いました。

「上原さんが袋田病院に行かれたきっかけは?」

「袋田病院で作業療法士として働かれているスタッフから声をかけていただいたのが始まりでした」

「最初の活動は?」

「絵の具を垂らすドリッピングのワークショップで遊ぶところからです」

「精神病と言われている方と、健康だと言われている人の違いを感じましたか?」

「特には感じませんでした」

そんな会話の脇で、さんぽ参加者の小学生の男の子が、「あれスキ、すごいなー」と母親に語りかけていました。まさに、障害とか、年齢とかがない世界がここにはあるようでした。

 

となりの一角はフランスの精神科病院、ラ・ボルドに滞在し、交流を重ねて写真作品を作られた田村尚子さんの展示です。患者さんの自転車での散歩風景を、光をたくさん取り入れて撮った作品などが展示され、自然に溢れる気持ち良さそうな場所が広がっています。田村さんからは、そこにいる患者さんと同じ時間を過ごした経験を話していただきました。かならずしもいつも穏やかに受け入れられたわけではなく、最初は写真に撮られることに怒った患者さんが田村さんに迫って来たこともあるそうです。それでも、その人は、後になって、自らが読んでいた本を田村さんにプレゼントしてくれたそうです。そんな田村さんの話を聞いて、あるさんぽ参加者の方は、「すでに一周して田村さんの展示のキャプションも読んでいたけれど、アーティスト本人に話を聞いて、ラ・ボルドでの過ごし方、そこであった人々のことがやっとわかった」と感想をもらされていました。

『共生するアトリエ』で岡本智美さんの作品を前に

伊勢克也女子美短大教授の『共生するアトリエ』は、障害がある人のところへアーティストが行き活動するのではなく、障害がある人もそうでない人もいっしょに制作することが可能なのではないかと問う空間です。ここでは伊勢さんのかつての教え子で自閉症をもつの岡本さんとアーティストたちが、伊勢さんと共にモデルさんを前にして制作しています。

 

参加者は、岡本さんが木の葉状の粘土をはりつけ彫像を作成しているのを間近で見て、またその側で元芸大生の彫刻家たちが本気で制作しているのを見て、共生のありかたを間近でみることができます。伊勢さんは、参加者の質問に、人によってみんな違うし、できることも違う、でもそうだからといって、同じ空間で制作することができないわけではないと話されました。

 

今井さつきさんは、人間ノリ巻きを実演されています。希望者は、まぐろや、きゅうりといっしょに、ノリ巻きの具になり、今井さんに巻いてもらえます。だれでもが、同じように巻いてもらえるわけです。子供の参加者は、さんぽプログラムの中では巻いてもらう時間がとれず残念そうでしたが、さんぽが終わった後で、ここに戻って巻いてもらったようです。希望が実現できて良かったです。

佐藤さんの部屋で

 

この奇妙な部屋は佐藤悠さんの展示。何が奇妙かというと、部屋に入っても、あるのは電話だけ。受話器を手に取ると仕切りの向こう側にいる佐藤さんが電話に出るという仕掛けです。相手の姿が見えない形で会話をすると、不思議と本音をいうことができたりします。「TURNフェスは、多様性といっても明るい多様性になってしまわないだろうか、一人になりたい人や、引きこもりたい人を含めた多様性を守るために、この部屋を作ったんです」と語ってくれた佐藤さん。相手が見えないことで、自問自答も同時に生まれる空間。参加者からは、こども電話相談室みたいという感想もでてきました。

 

いくつか「TURNさんぽ」でまわったところを紹介しましたが、各グループはこのうちの2、3箇所だけを45分かけてまわりました。それでも、参加者のみなさんには、会場全体を一周していただき、とびラーやアーティストと会話していただけたので、TURNフェス4の一端は味わっていただけたのではないかと思います。

会場をまわった後の会話

 

さんぽ終了後のクロージングの場では参加者のいくつもの感想をいただきました。

「TURNってわからなかったけれど、色々な人が何かできるということ」

中学生の参加者は「大人と子供、障害の有無、国籍が違っても、一緒にそこにいることに意味がある」

「さんぽに参加しなかったら、ここに来ても、大縄跳びになかなか入れないような気分を味わったかもしれない」

「さんぽをしながら、会場から何が聴こえてくるのか、ラジオのチューニングをしているようだった」「一人で見るとよくわからなかったけれど、見方がわかって良かった」

「気後れしてしまいそうな会場の中で、安心して見られた」

「さんぽでアーティストの話を聞いてからまた見ると、違って見えてくる」

 

 

「TURNさんぽ」に参加された方が展示やアーティストとの会話を通して、TURNに少しでも関心を持っていただけたなら、このプログラムの意味があったと感じながら、今年の「TURNさんぽ」は終了しました。

 

 

 

最後に、「TURNさんぽ」を実施したある「とびラー」のコメントを紹介したいと思います。

 

「会場の雰囲気はまるで生き物のよう、フェスなだけにあちこちでさまざまなことが起こっていました。いろいろなバックグラウンドをもった人たちがこの場に集まり、もともとある思いや考え、その場で感じる気持ちや思い、出会った人との関わりや出来事から、思いがけない自分に出合う、そんなところが、私がTURNに惹かれるところ。」


執筆:鈴木重保(アート・コミュニケータ「とびラー」)

東京都美術館で開催される展覧会の中でも特別な熱気を持った展覧会「TURNフェス」。「TURNさんぽ」では参加者と共に会場に突入し、この熱気の発生源を探りました。そんな様子を少しでも伝えられたら嬉しいと思います。

【実施報告】2018藝祭散歩ー今だけのこの時間を分かち合うー

2018.09.20

毎年行われる東京藝術大学の学生の祭典「藝祭(http://geisai.geidai.ac.jp/2018/)」が、2018年は「ほてり」をテーマに9月7日から9日に開催されました。アートを介したコミュニケーションを目指す私たちとびラーは、藝祭に来たお客さまと、作品展示を見て回る散歩ツアーを企画しました。今年は、昨年までの「藝祭さんぽ」から、ちょっと気分を変えて「藝祭散歩」というタイトルに。とびラー10名での実施となりました。

初日7日は、まずはとびラーの私たちが展示作品を味わい、理解するために使うことにし、「藝祭散歩」本番は9月8日にしました。スタート時間は、午後1時、散歩時間は50分の設定です。
とびラーが下見をして設定した「藝祭散歩コース」は、それぞれ特徴のある4コースになりました。

 

Aチームは、総合工房棟のデザインと染織の作品を、アーティストと交流しつつじっくり廻る「ゆったりコース」。
Bチームは、中央棟のパフォーマンスと、彫刻棟の彫刻、大学会館のメディ ア映像を見て廻る「ひらめきコース」。
Cチームは、学内のわかりにくい所にあるけれど光っている展示を廻る「いろいろはじっこコース」。
Dチームは、「御輿レポート(http://tobira-project.info/category/藝祭神輿レポート/)」を作成したとびラーと4基の御輿を見に行く「御輿コース」。

当日は、美術学部校舎正門付近で、12時40分から「藝祭散歩」のビラを配り、参加者を募りました。参加希望者には、「展示散歩」か「御輿散歩」か、のご希望を伺い、各チームに割り振り、参加証がわりのとびラー特製手作り「藝祭散歩うちわ」を持っていただきました。
今回「散歩」に参加していただいたお客さまは22人。午後1時に予定通り散歩開始です。

参加者の中には、とびラー企画の、昨年の「藝祭さんぽ」や今年1月の「卒展さんぽ」(卒業・修了作品展散歩)のリピーターの方が複数名いらっしゃいました。
「昨年参加してみて、藝大生の話が聴けたことがとても嬉しかったし、たくさんある作品の中からとびラーのみなさんが選んでくれたものを見て、とても面白かったから、また参加しました。」とのお言葉をいただき、ご案内するとびラーたちも出発前からテンションが上がります。

素晴らしい作品、その作品を創ったアーティスト、アートを愛する鑑賞者、それを繋ぐ私たちとびラー。
「藝祭」という限られた期間に現れる空間で、1時間弱の限られた時間に、どんな出会いの場を作れるか。
アート・コミュニケータである私たちとびラーも、実はワクワクと同時にドキドキしています。今回の参加者のみなさまにも「参加して良かったな」と思っていただけるような「散歩」にしたいと願いつつ、出発しました。

各チームの散歩の様子を各チームのファシリテーターよりご報告いたします。


<チームA「アーティストに会おう・ゆったりコース」>
(とびラー:原田・鈴木(優)・西原)

チームAはとびラー3名、参加者6名でした。そのうちの1名は、なんと昨年の「藝祭さんぽ」で、チームAのファシリテーシーターのとびラーとご一緒にコースを廻られたリピーター。また、昨年の藝祭だけでなく、2月の「卒展(修了展)さんぽ」のリピーターの方もいらっしゃいました。ご縁を感じます。
チームAは、総合工房棟の展示を3箇所廻ります。

最初に向かったのは、デザイン科修士課程の梶谷文雄さんの作品です。
タイトルは「プルースト」。

5センチ四方の小さな箱が十数個並んでいて、その前に文を書くための細長い冊子とボールペンが置かれています。小箱の上蓋の四隅には丸い穴が空いています。それを見た来場者は、「えっ?この作品はどういうものですか?」と少し戸惑っていました。
作品「プルースト」は、香りを嗅いで、その香りにまつわる記憶を自分の言葉にして書き残していくという、参加型の展示でした。
フランスの文豪、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の中で、主人公がある香りを嗅いだことでそれにまつわる記憶が呼び覚まされるという体験をすることから、こうした心理現象を「プルースト効果」と呼ぶようになったそうです。
香りと無意識的記憶、つまり、嗅覚と脳の関係を体験する作品であることを知った参加者のみなさんは、それぞれが小箱を手に取り、蘇った記憶を書き始めます。


「祖父の家の畳の匂いだ。」「昔のお祖父さんのお家の記憶が蘇ったのですね。その時のお祖父さんの笑顔まで思い出されたりしますか。」「そうですね。」参加者ととびラーのやりとりです。「同じ香りでも蘇る記憶はそれぞれ違いますね。」「他の人が書き留めたことも自由に読めるようになっているので読んで見てください。」梶谷さんが勧めます。
下見の時に、梶谷さんは、「同じ香りを嗅いでもそれぞれの受け止め方や記憶があることを知り、それぞれの大切にしているものが異なっていることが分かったり、その異なっていることがまたいいのだと気づけたりしたらいいと思う。」とおっしゃっていました。

香りを嗅ぐという体験が作品世界に入り込みやすかったのか、みなさんの心が柔らかくなっていく感じでした。参加者の方から質問が投げかけられるようになります。
「小箱には、番号とかABCとか記されていませんが、なぜですか。」  「最初、それも考えましたが、やはりそういう番号などをつけない、ただの同じ形の箱のほうがいいと考えました。」
何のラベリングもされてない箱の方が、香り自体の存在感を際立たせるのかもしれません。同じ箱が違う何かを生み出します。

梶谷さんの大切にされていることを下見の時に伺いました。
「作ったり考えたりして、それが形になっていく(この展示では言葉になっていく)ことが、自己肯定につながる。そういう行為を通して自分自身の存在について知っていくことができるのではないか。」
1月に開催された卒展では、「愛のかたち」というタイトルで、いろいろな色や形のピースを鑑賞者が組み合わせて「自分の愛の形」を表現するという参加型の作品を展示された梶谷さん。
「心の中にあるものを、遊ぶという行為を通して形にしていく」というコンセプトが、今回は、香りという、目に見えないモチーフで記憶を呼び覚ますという作品になっていました。こうした1人のアーティストの活動を継続して見ていけるのも、とびラーの楽しみです。この先はどんな展開になるのでしょう。
美大受験を目指すお子さんのいらっしゃる参加者の方から、「どうして藝大を目指そうとしたのですか。」という問いも出て、高校時代からのご自身の思いや経験を率直にお話しいただけて、みなさん感動されていました。藝大生のアーティストという存在と参加者との距離がグッと近くなったように感じた瞬間でした。

 

次に向かったのは、デザイン科4年の岡田夏輝さんの作品。
岡田さんは、サンバ部の元部長で、今年もパレードなどで太鼓を叩いて大活躍されている方です。
作品は「machinery」と「Moto Dress」
バイクのエンジン部分のデザインと女性用の革のライダースジャケットの作品です。

技術がどんどん進み、バイクも性能重視で機械部分がスマートになる中で、岡田さんにはバイクのデザインへのこだわりがあるそうです。
「速さや機能を重視して流線型の滑らかなものが増えてきているけれど、やはりバイクの持つ、メカのゴッツイ感じを表現したいのです。逞しくて強そうなイメージのエンジン部分のデザインを今制作していますが、最終的には卒業制作としてバイク全体を作って行きたいです。」来年の卒展では、岡田さんがそのバイクに乗って走る姿を映像に撮り、バイクの展示と合わせてその映像が見られる予定だそうです。
厳ついバイクとは対照的な優しい笑顔と温かい口調に、みなさんも和やかな雰囲気になっていました。

ライダースジャケットは、バイクに乗る女性が着る美しいジャケットがあまりないので制作したそうです。女性らしさを出すために、柔らかい革を帯状に切ったものを鎧のように幾重にも繋ぎ、バイクに乗った時に風に吹かれてたなびく姿を考えたデザインになっています。後でわかったのですが、参加者の中には、かつてライダーだった女性もいらして、「昔バイクに乗っていたのでとても興味深かったです。昔にあんなジャケットがあったら着てみたかったです。バイクの完成も楽しみですね。」という感想をいただきました。

 

最後には、美術研究科博士課程工芸研究領域(染織)の大小田万侑子さんを訪ねました。
作品は、藍型染「やまとのはじまりのうた」です。

『古事記』がテーマで、神様の始まりから神武天皇までのお話から12話を選んで、鳥の羽根の中に散りばめた大作です。
作品の前に立った瞬間に「わぁ〜」というため息が漏れ、言葉も発しないまましばらく作品に見入っている参加者のみなさんでした。
「どのように染めているのですか」という問いが出たので、大小田さんから、藍であらかじめ染めておいた布に、彫り上げた型紙を載せ、脱色効果のある糊を置いて色を抜いていく「抜染」という手法について説明いただきました。

「孔雀のような鳥の中にお話を描きたいと思ったのはなぜですか。」
「鳥の羽根の模様を見ていて、植物の成長と似ているなあと感じたからです。」
孔雀の羽根がどんどん上に重なって伸びやかに描かれていく作品は、確かに成長していく植物のようにも見えます。一つ一つの羽根の中には、細密で繊細な美しい線で彫られた神様たち、シダや薔薇などの植物、魚や貝殻などたくさんの生命が宿っています。

「見ているだけで幸せな気持ちになりますね。」
そのような感想を抱くのは、描かれている生命のそれぞれが、明るく生き生きとしていて、エネルギーに満ちているからでしょう。鑑賞している参加者のみなさんの表情もキラキラ輝いています。
「この神様はどんな神様ですか」雨の岩戸、猿田彦、やまたのオロチ、海幸山幸、キクリ姫、コノハナサクヤ姫…。参加者の皆さんは興味深そうに説明を聴きながら頷き『古事記』の世界に想いを馳せているようでした。
幼い頃からお母様に絵本の読み聞かせをしてもらっていたという大小田さんは、『古事記』のお話を言葉の響きから自由な発想で作品に表現していくのだそうです。お話そのものの忠実さを追求するのではなく、モチーフとして自分の作品世界に登場させたいものを選び、想像を膨らませつつ美しい姿を生み出して描いているようです。

 

大小田さんとは、とびラーが昨年秋に藝大生インタビュー(http://tobira-project.info/blog/2017_okoda.html)で取材させていただいて以来の繋がりです。「細かい下書きをほとんどしないで、デザインカッター1本で、このように繊細な表現を彫っていくのですよね。」ととびラーが話すと、参加者のみなさんは驚嘆されていました。
「いろいろなお話や生き物が描かれていて本当に面白いですね!」「見ているといろいろな発見がありますね!」と参加者からの言葉が次々と発せられます。

 

デザインカッターを握る指先に、まるでアートの神様が宿ったかのように、美しく生き生きと彫られた線。線だけの表現で、生きとし生けるものの生命の輝きを描くことを追求しているとのことでした。
参加者の感想には、こんなものがありました。「私も染めが大好きで、作家になりたいと思っていました。あの作品を1ヶ月で彫り上げるとは…すごいです。是非とも大作家になってください!」

最後にサプライズとして、ファシリテーターのとびラーが「実は、私たちとびラー3人が、今、スカーフのように身につけているこの藍染の手ぬぐいは、大小田さんの作品ですよ!」と上野公園のアート・マーケットで手に入れた藍染の手ぬぐいを紹介しました。

参加者のみなさんには、出会った作品や作者への感想をカードに記していただきます。このチームは、「リブ居間(Living roomまたは居間)」という藝大生作曲のBGMが流れ、建築科が設計した椅子のある、アートな空間(休憩室)で書いていただきました。その中に「まあ、なんと素敵な作品!ではとどまらず、見惚れながら奥の深さに感動しました。」という感想もありました。
とびラーに対しても、嬉しいお言葉を頂戴しました。「3つの作品がそれぞれ全く違った趣で面白かったです。セレクトが良かったですね!」「また卒展修了展でもこのような散歩は企画されるのでしょうか。1人で見て廻るよりも面白いので、また参加したいです。」
とびラーとしても素敵な出会いに感謝しています!

 

<チームB「ひらめきコース」>

(とびラー:東濃・市川・府川)

チームBに参加いただいたのは、ご近所に住んでいるけど初めて藝大の構内に入られたご夫婦、美術館めぐりが好きなご夫婦、藝大と仕事のつながりがある男性の5名です。

 

最初に、中央棟2階の人気パフォーマンス「おく」にご案内しました。人だかりの中、プレイヤー2人の緊張感溢れるバトルを見学。参加者の方から早速「人間関係を感じた。」という言葉が発せられます。
その後、裏口を抜けて、出展数、作品の質がともに充実している彫刻棟へ。まず、皆さんにお気に入りの作品を見つけていただき、その作品の前で感想を述べていただきました。

 

白い大理石で等身大の少年(少女?)の胸像を制作する作家、堀内万希子さんに出会いました。頭の上にハムスターを載せています。堀内さんにお聞きすると「小さな動物と友達になれる優しさ、純粋さを表現したかった」と説明してくださいました。「大理石の彫刻、とてもあたたかく感じました。」そんなお話をしながらの鑑賞となりました。
超迫力満点!の御輿を見ながら美術学部の正門を出て、音楽学部のキャンパスに移動しました。こちらにも烏天狗と白龍が向き合う御輿があります。移動中にも大作をみることができ、参加者はちょっと得した気持ちになったようです。
最後は、大学会館2階にある映像の展示です。ご年配のご夫婦が「散歩が終わったら音楽学部に行きたい。」と言われていたこと、だれかに教えてもらわなければ行かない「穴場」で涼しいこと、などが最終目的地にした理由です。
みなさんに感想のカードを書いていただいて一旦解散。

 

そして「もっと見たい」という参加者の方のために用意した、中央棟1階「終わるべき芸術のための一音展」へ向かいました。
人のあらゆる表現、音までも、強力なラップで包み込む作品。作家の陣川樹さんから強い衝動が伝わってきます。陣川さんがつくった表現を包むための機能と展示するための機能が一体化した装置は、両手を広げていて、そこから大量のラップが発射、噴出され、ドラム一式が天井近くまで絡め取られたように伸びていっています。このドラム一式は、ライブのたびに包を解いて会場に行き、またここに戻ってきて陣川さんに巻かれます。表現を束の間だけ閉じ込め、そして開放が繰り返されることで、躍動しているように思えました。

 

最後に「どんな表現でも包めますか?」の質問に「もちろん」。「では、この団扇は?」「では、手から団扇まで包みましょう」と言って包んでもらったのがこの写真です。

参加者の男性からは「とびラーっていいですね。私もなれますか?」などのお話があり、楽しく会話して、今度こそ本当に解散しました。

 

 

<チームC「いろいろはじっこコース」>

(とびラー:鈴木(重)・鈴木(康))

チームCは、とびラー2名、参加者6名です。参加者は、「藝祭」の経験がある方、初めての方、藝大生の親御さんなど、「藝祭」との距離は様々ですが、みなさん学生が制作した作品に興味があるご様子。

最初に、絵画棟の奥まった階段を登った2階の廊下に展示されている「はんが・がろう・ろうか」の版画作品に向かいます。そこには作家の田沼可奈子さんと、宮下咲さんがいらして、それぞれ作品についてお話をしてくださいました。田沼さんの作品は、2人のキャラクターが恋に落ち、向かい合って見つめ合う立体作品です。

田沼さんのアイデアとして、現代の版画は、版で紙に擦るだけでなく、写すことに意味を見出すというお話を聞きました。参加者のみなさんは、瞳にお互いが映し出される姿がすばらしいと、話し合っています。宮下さんの作品は、エッチングで擦られたルーズリーフに、さまざまなノートへの、落書きのようなものをモノタイプした作品。「私は直接描く作品は作らないんです」と宮下さん。「ここにあるのは何?」と参加者間でも話が弾みます。みなさんの雰囲気もだいぶ打ち解けてきました。

 

次に行ったのは、同じ絵画棟の8階の端の部屋「アルコル」の展示。
ここでは小山昌訓さんに作品についてお話していただきました。そこには、科学の研究者のメモのような紙が何枚も無造作に貼ってあります。よく見ると文字が読めない、「何語?」なんと小山さんが作った文字。何やら強い生物を作りたいという架空の研究のようです。小山さんの危ない世界に、参加者は、「これは何?」と興味津々。後で参加者からいただいたコメントには、「小山さんの世界をゆっくり味わいたい。」とありました。

 

時間が押してきたので、ちょっと急いで、こちらも大学会館2階の「Film and New Media」の展示室へ。

ここでは、遠藤紘也さんと、金井啓太さんにお話を伺いました。遠藤さんは、音と映像の時間をずらしディスプレイに映し出す映像作品。金井さんは、自らの身体をつかって蚊を採集する様子を、ビデオ、写真、標本状のパネルで示す作品。参加者のみなさんは、発想のおもしろさに感心し、作家さんへの質問も続きました。
ここで散歩は解散となりましたが、参加者と作家、参加者同士、そして参加者ととびラーの会話が盛り上がり、参加者のみなさんは満足そうなご様子でした。

 

 

<チームD「御輿コース」>

(とびラー:藤田・木村)

昨年の「藝祭さんぽ」御輿コースに参加してくださった方が、今年も来てくださいました。各御輿の前にいる学生にストーリーや作り方について聞きながら、御輿を隅々まで味わうコースです。

見事に仕上がっている4基の御輿を順にめぐります。
・デザイン・芸術学・作曲・弦楽器チーム

・工芸・日本画・楽理・邦楽チーム

・建築・油画・声楽・指揮・打楽器・オルガン・古楽チーム

・彫刻・先端芸術表現・管楽器・ピアノ・音楽環境創造チーム

藝祭御輿を見るのは今回が初めて、という方も数名いたのですが、発泡スチロールで作られていることや、制作期間は1ヶ月あるかないかだということを、学生から聞き、とても驚いていました。

最初は、とびラーが学生に話しかけて御輿について聞き、参加者はそれを聞くというスタイルでした。しかし、2基目の途中からは「聞きたい!」という気持ちが強くなったのか、自分から話をしにいく方があらわれるように。それ以降は各々好きなタイミングで話をしに行っては、また御輿を見に行き…といつのまにか自由なペースで鑑賞やコミュニケーションを楽しめるようになっていました。おそらく、御輿に対する驚きや学生に対する緊張などがなくなっていったからかと思いますが、自分流の楽しみ方を見つけていただけているのなら嬉しいなと思い、見守っていました。

パフォーマンス(御輿パレードや開口一番)が前日にあったことを知り、観なかったことを悔しがる方もいて、「来年は初日午前から来ます!」とおっしゃっていて、御輿ファンが増えたことが嬉しかったです。
散歩終了後、「やっぱり御輿は学生達の話を聞かなくちゃね!」と笑顔で帰っていかれました。

 

参加者のみなさんからの感想カードを渡しに行ったら、どのチームの学生も驚き喜んでくれました。まさかメッセージまでもらえるとは思っていなかったようです。LINEグループで共有させてもらいます!というチームが多く、すぐにチームに共有してもらえたようで、嬉しく思いました。
「藝祭散歩」は、学生、参加者、とびラーに何かしらの出会いや発見があり、お互いにとっての刺激にもなって、意義深い企画だなぁ…と改めてその良さを感じました。

 


以上、各コースの様子でした。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ、「藝祭散歩」も終了、解散となりました。
「また次も、散歩に参加します。」とおっしゃってくださった方も多かったようです。参加者のみなさまの笑顔が印象に残っています。
アーティストと話をすることによって、その作品が近いものに感じられたり、感動が深くなっていったりする、そんな参加者の心の動きも肌で感じました。

 

散歩の終了時に書いていただいた感想カードをアーティストの方々にお届けしたところ、「みなさんに見ていただいて作品についてお話しできて本当に嬉しかったです。」「これから卒業制作(修了制作)に取りかかるので、それも是非見にきてください。」というお言葉をいただきました。
私たちとびラーが心を込めてアーティストとその作品の魅力をお伝えしようとすることを、このように楽しみにしてくださる参加者のみなさまとアーティストの方々がいらっしゃることが分かり、改めて「藝祭散歩」実施をして良かったなあと感じています。
「散歩」活動を通して、アーティストとの繋がりが出来て、その活躍を応援し続けていくのは、とても楽しいことです。アーティストと参加者ととびラーとが、アートを前にして何かを発見し、アートの魅力やお互いの感じ方に素晴らしい刺激を受け合うのが、「散歩」の醍醐味ではないでしょうか。

「アートを通して今だけのこの時間を分かち合う」、そんな出会いの場をこれからも大切にしていきたいです。
素敵な時間を共に過ごしてくださったみなさまに心より感謝いたします。
ありがとうございました。

 


執筆 原田清美<チームA報告&まとめ>・東濃誠<チームB報告>
鈴木重保<チームC報告>・藤田まり<チームD報告>
写真 峰岸優香(とびらプロジェクト アシスタント)
鈴木優子・西原香・原田清美
編集 峰岸優香(とびらプロジェクト アシスタント)、

原田清美(アート・コミュニケータ「とびラー」)
とびラー2年目です。とびラーの一員として活動し、アートを通していろいろな人々と繋がり、いろいろな感じ方や考え方を知ったり、ワクワクする発見をしたり、感動を共有したりして、世界が広がっていくのをとても嬉しく思っています。

【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑬」いよいよ明日は…本番!編

2018.09.06

みなさんこんにちは!いつも私たちとびラーによる、「御輿制作インタビュー」をお読みいただきありがとうございます!

東京藝術大学の「藝祭(http://geisai.geidai.ac.jp/2018/index.html)」は、いよいよ明日から幕開けです。

八月の初めから制作が始まり、藝大生たちが作り上げた一夏の結晶が、いよいよ上野公園でお披露目となります!

今回は藝祭直前スペシャルということで、各チームに「ここぞ!」という見所や、印象的なエピソードをお聞きしてきました。

ぜひ明日からの藝祭では、本物を目に焼き付けてくださいね!


★『日本画・工芸・邦楽・楽理』チーム★

1.完成間近の御輿を前にして今の感想は?

まずは間に合ってよかった!と安心しています。

工芸の細部への質感のこだわりと、日本画の色や模様へのこだわりで、予想以上に迫力のある仕上がりになっています。

烏天狗と龍が対峙するリアルな様子は見ものです。

 

2.御輿作りに取り組んで来たチームメンバーの様子はどうでしたか?

この一週間、時間が無くなっていく中で、みんなが担当する部分を自発的に決めて進めてくれました。

みんなが自発的に進めてくれることを頼もしく思う一方で、隊長としてまとめきれているのだろうか・・・という悩みもあったのですが、みんなが優しくてここまでくることができました。

 

3.当日のパフォーマンスの見所は?

楽理・邦楽の人たちが作曲した、テンポが異なる3曲を是非お聴きください。

御輿の仕掛けや、踊りもお楽しみに。

山本隊長(日本画)が肩に、中川隊長(工芸)が背中に乗りますよ!


 

★『油画・建築・声楽・指揮・打楽器・オルガン・チェンバロ・リコーダー』チーム★

1.完成間近の御輿を前にして今の感想は?

作ってみるとすごく圧を感じます。色も、元気な色彩になりました。

足の裏にも注目です。法被と同じレタリングで、左足は建築、右足は油画となっています。

  1. 御輿作りに取り組んで来たチームメンバーの様子はどうでしたか?

上野で御輿を作る意味にこだわり、コンセプト、形づくりを、最初のマケット制作の段階からとことん話し合いました。それが今回の御輿のキーになりました。

・上野にやってきた最初の3頭の象が再生する物語。

・象は神様の使い。

・御輿作りに参加した8科にちなんで、象の背中には八角形の社を乗せました。

 

3.当日のパフォーマンスの見所は?

御輿を中心に、360度から楽しめます。

平和な今を未来に伝えていく、というメッセージを伝えるパフォーマンスになっています。流す曲は、神聖な曲にはじまり、ポップな曲に変わっていき、踊り手もたくさん参加します。声楽の歌も聴きどころです。お楽しみに!


 

★『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チーム★

Q1.発砲スチロールのかたまりだったところから現在の状態の御輿を見た今、どんな気持ちですか?

できた『それ』を見て衝撃を受けました。

ただ、色の具合がイメージしていたものと違うので、残りの時間でもう少し修正していきたいです。

 

Q2.御輿づくりに取り組んできた中で、心に残ったエピソードを教えてください。あと、チームメンバーに対して一言どうぞ。

『それ』の周囲に、ホルマリン漬けの怪しい物体が浮かぶ容器を配置するのですが、その容器が完成した時が一番心に残っています。

怪しげな物体が浮かぶ様子をどう表現するか等悩みつつの作業だったのですが、出来上がった容器の中に仕込んだLEDライトをつけた瞬間、イメージしていた雰囲気が見事に表現できていて感動しました。

積極的に動いてくれるメンバーは限られていたように思うけど、いつもみんな何かしら関わってくれてありがたいなと思っています。

最後までついてきてくれてありがとう。

御輿づくりを担当するメンバーそれぞれにつくりこみたい部位があり、そのこだわりが最終的には全て反映される形となりました。

言い換えると、それぞれのパーツがメンバー一人一人のこだわりでできています。御輿を見ていただく時は、そういう視点でも見てもらえたら嬉しいです。

 

Q3.当日のパフォーマンスではここを見てほしい!というポイントを一言。

博士の助手たち、そしてモンスターたちのダンスを見てほしいです。

また、博士が『それ』にチューブを差し込む場面がハイライトなので、そこも見逃さないようにしてください。

パフォーマンスとは違いますが、この御輿は暗くなってくるとライトアップもする予定です。

歴代の御輿でライトアップというものはないと思うので、夕方までいらっしゃるようでしたら、ぜひ『デザイン・芸学・作曲・弦楽』チームの御輿にもお立ち寄りください。

 

 


★『彫刻・先端・管楽器・音環・ピアノ』チーム★

Q1.発砲スチロールのかたまりだったところから現在の状態の御輿を見た今、御輿についてどういう感想を持っていますか?

制作中は『間に合わないのでは・・・』という不安が常につきまとっていましたが、今こうして御輿を見ていると、本当にちゃんとできあがるんだということを実感しています。

造形がすばらしいと改めて思いました。彫刻が頑張ってくれたおかげです。

先端が担当した色塗りも納得のいくものになったと思っています。

ちなみに、前日の台風は御輿づくりが始まって一番の強さだったので、作業中は身の危険を感じるほどのものでした。

けど、御輿とメンバーどちらにも被害がなかったことを今朝確認し、安堵しました。

 

Q2.御輿づくりに取り組んできた中で、心に残ったエピソードを教えてください。あと、チームメンバーに対して一言どうぞ。

 

みんな、お疲れ様です。

夏休み前くらいまでは御輿やマケットづくりに積極的な人が少なく心配していましたが、夏休み以降はみんな活発に意見を言いはじめ、まとまらない時もあるくらいでした。それを乗り越え、今があります。

彫刻と先端、それから音楽学部のみんなと組めてよかったです。

 

Q3.当日のパフォーマンスではここを見てほしい!というポイントを一言。

御輿の造形と色彩表現、そしてパフォーマンスでの魅せ方に流れる音楽・・・9月7日のパフォーマンスには藝大に関する全てがつまっています。これが藝大!ぜひ見てくださいね。

それから、私たちの御輿については、台座にも注目してほしいです。

風化した、砂漠を感じさせる質感を表現したくてジオラマ専用の砂を使おうと思っていたのですが、高かったので断念したんです。

代替案を考えている時に、冗談で砂浜から調達しようという話があがったのですが、彫刻のメンバーの一人が湘南に住んでいるということでその話が現実のものになりました。

そのメンバーとお父さんに砂浜で砂を集めてもらい、他のメンバー1人と共に現場まで運んできてくれました。

進め方については、木工用ボンドを塗った台座に砂をそこにまぶし、その上から茶系の色を数種類、スポンジで叩きつけるように重ねていきました。

発泡スチロールとは思えない、石のような質感、見た目になり満足しています。

 

あとは、ハピコレ(法被コレクション)5連覇を目指し、そちらの練習も頑張ってきました。なので9月9日のハピコレもぜひ見てください!

 

***

【おまけエピソード】

御輿隊長の二人と話していたら、何やら見知らぬ男性がこちらに近づいてきました・・・・!

あれ?この人は。

なんと!伊藤隊長のバイト先の店長とのことでした。

それまでのクールな印象から一変、「来ないで!って言ってたのに親が来たみたいな感じで恥ずかしい!」とうろたえる伊藤隊長を尻目に、店長にもインタビュー決行です。

右に写っているのが店長さん。「藝大生っぽく見えるよう首にタオルを巻いてきました!(笑)」とのこと。

「メンバーもお店によく来てくれます。御輿づくりについて、弱音も含め話をいろいろと聞いていましたが、制作現場に来るのも、御輿を見るのも今日が始めて。こんなすごいものをつくっているのかと驚きました。

伊藤さんには、一生に一度しかないことだからバイトを休んででも御輿づくりに専念しろと言っています。」

 

・・・が、隊長曰く、「『バイトを休んででも御輿づくりに専念しろ』なんて言われてませんよ!」とのこと。

先日も、シフトに入っていないけれど人手不足だったから応援に駆け付けたそう。伊藤さんの責任感の強さ、優しさを感じることができました。

アルバイトも制作も、悔いのないようにがんばってくださいね!

 


一夏かけてお届けしてきた記事はいかがでしたか?

これを読んでくださった皆様が、藝大生の夏に親しみを持ってくださったら嬉しい限りです!

それぞれの御輿の完成形が楽しみですね。

それでは、明日からの藝祭でお会いしましょう!

(今日の取材とびラーメンバーで一枚!この夏取材に参加したとびラーのみなさんも、暑いなかお疲れ様でした。)


取材・執筆:とびラボ「御輿インタビュー」のメンバー

撮影・編集:峰岸優香(とびらプロジェクト アシスタント)


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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑦」カミーデ博士の助手編

2018.09.06

みなさまこんにちは。とびラーの上田です。

 

大きい台風がいくつも日本を訪れておりますが、みなさまご無事でお過ごしでしょうか。

激しい天候に攻撃され続ける夏は、もうこりごり。穏やかな日々を過ごしたいなぁと思うのですが、本音を言うと夏は大好き。そんなとびラー上田が、『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームの御輿レポートをお届けします。

 

取材当日は前日通り過ぎた台風の影響がまだ残っており、ものすごい強風が吹き荒れていました。特に、この『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームのテントのある場所は一番風当たりが強く、取材中もテントの幕がバタバタとものすごい音をたてていました。この風で制作は大丈夫かしら?とちょっと心配に。

 

テントのそばへ行くと、「あれ?」テント前に白い服を着た銅像が・・・。

「なんだろう?」と、疑問に思ったところにガスマスク?をつけた神出隊長が登場。インパクト大!

 

 

そして次に気がついたのは・・・・!!

「天井がない!」「はい、天井落ちました。笑」

昨晩の台風の強風で、天井が落ちてしまったそうです。

 

青空が見えてますね。笑。

 

そんな現場でも、全然めげていない神出隊長(デザイン科)にお話を伺いました。「研究室は壊れましたが、実験は順調です。」とおっしゃる隊長。形が少し狂っているのを発見したので、そこを調整し直し顔を作り出したところだそうです。見るとだいぶ形ができています。発泡スチロールに青や緑の線が引いてあるので、「この線はなんですか?」と訊くと、彫っていくときの凹凸の目安だと教えてくれました。青い部分を凹ませ、緑の部分が出っ張る部分になるそうです。ほおお、なるほど。

 

「制作過程では何が1番大事ですか?」との問いには、「体調管理です!」

なるほど、この連日の暑さですものね。誰か1人欠けても制作は大変になりますから、体調管理は大切ですね。さすが隊長です。隊長だけに体調管理??あれ?ホントは管理隊長だったの???

 

 

それはさておき、今制作中の『それ』になった経緯などを聞いてみました。

教授からは「風神雷神や動物など今までに何度も御輿のモチーフになったものはやめたら?」というアドバイスを受けて、今までにないめちゃくちゃな案をいくつか出したそうです。『それ』に決まるまでは『サーカス』や『自撮りするJK(女子高生)』『アステカの遺跡』等の案が出ましたが、1番『エモい』モチーフで、かつ光るものをつくりたいという希望があったので、『それ』に決まったそうです。そして『それ』の名前はまだ内緒だそうです。マケットも進んでいました。わー、怖い感じ!でも惹かれる。

 

 

『それ』の正体が何なのか、なぜ生まれたのかはTwitterで追ってくださいね、とのこと。

Twitterの画像がとても凝っていて、ドラマ仕立てで『それ』が出来上がっていく様はとても興味深くて面白いです。

Twitterも要フォロー!

  • マッドサイエンティストの日常(@MS_Ken_e_k)
  • 『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームの御輿情報アカウント(@omikoshi2018)

 

 

さて、ここで先ほど、あれ?と思った白い服を着た銅像について聞いてみました。

「なぜ、銅像が白い服を着てるのですか?」

「ああ、あれは、助手です。安井先生を助手にスカウトしました!」

さすが、神出隊長です。目の前の安井曽太郎先生の銅像さえも助手にしてしまう!!マッドな研究に参加させてもらって安井先生もさぞかし楽しい思いをしてらっしゃると思います。

 

ここで、神出隊長・山口副隊長と安井助手の記念撮影、パチリ。

チームワークばっちりですね!

 

「何か心温まるエピソードなんてありますか?」の問いには

「う〜〜〜ん。」とちょっと悩んでから、「スイカの差し入れがありました。先輩が持ってきてくれたんですが、スイカを手渡された後ポケットから塩を出して『ハイッ』って。」

先輩がおもむろに塩を「ハイッ」って出してきたことに感激したようです。そしてそのスイカを食べた後、種を蒔いたそうです。そして来年そのスイカを収穫して後輩に差し入れするという計画だそうで・・・(笑)。大きなスイカがなるといいですね〜。

 

今後の御輿制作の予定は、この2、3日で荒削りを終え細かいところの制作へ移ります。9月に入ったら着色に入りたいということでした。神出隊長は自分にかなりのプレッシャーをかけて制作に臨んでいるそうですので、このまま順調にいくといいですね。応援しています。

最後に、取材中に悲惨な屋根の近くで『それ』の上に乗っていた今村さんをパチリ。

屋根がなくても頑張ってくださいねー!

 

 

そして帰り際に発見!これは、もしや・・・・!!

 

To be continued…

 


執筆:上田さち子(アート・コミュニケータ「とびラー」)

藝祭の御輿インタビューも3年目になりました。来年はもうインタビューに来られないと思うとちょっと寂しい。でも御輿は追い続けようと心に誓うのであーる。『世界に笑いと幸せを』をモットーにアートとコミュニケーションの場をいつまでも追求します。

 

 


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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑥」鳥天狗が羽ばたく日は…編

2018.09.03

こんにちは。とびラーの鈴木康裕です。お盆休みも明け、8月20日から再開した御輿づくり。『日本画・工芸・邦楽・楽理』チームの「烏天狗」御輿の第2回取材を8月24日に行いました。緩んだと思っていた暑さがぶり返し、折しも19・20号のダブル台風の影響でときおり強風に見舞われながらのインタビューでした。

蝉時雨が響く音校(※音楽校地)敷地内を進み、記憶に新しい巨大テントの前に立つと、風を避けるように出入口が閉ざされていました。声をかけると、テントの中からおなじみの仲良し二人組が出てきてくれました。人よんで「隊長シスターズ」といったところでしょうか?

 

山本さん(日本画)と中川さん(工芸)です。ねじり鉢巻きを解き、発泡スチロールの細片を払ってインタビューに応じてくれましたが、手には大根おろし器を曲げて作った「ヤスリ」が・・まさに作業も佳境に入っているようです。

 

(ヤスリは包丁などとともに先輩から受け継がれている由緒正しき(?)アイテムです。)

 

前日の大雨でテント上部に大量に水がたまり、雨漏りもあったとか。発泡スチロールは濡れると水を吸って重くなって乾きにくく、電熱線を使って切断したり削ったりすることが難しいため、なかなか思うように進まないそうです。進捗状況を聞くと「だいぶ遅れています。今は本体部分の大きなカタチを出しているところで、来週からディテールに入りたいです!」とのことでしたが、天幕をあげ中の様子を見せていただきました。以前よりもカラスの嘴や全体の造形がハッキリしてきています。天狗と絡む「龍」の頭部のつくり込みも進み、お盆休みに入る前の取材からの進捗ぶりがわかります。

(「龍」が上を向いている様子。どんな表情になるのでしょう。)

 

10人でシフトを組んで作業しているとのことですが、テント内を見上げると天狗サマの右肩あたり・・・なんと、さりげなくスマホが刺してあって、そこから音楽が響いています。「テンションアップしています!」一昨日は筝曲を流したとか。40度を超えることもある暑いテントの中での作業。ついついだらけたり、イライラしてぶつかり合ってしまったりすることもあるそうです。そんな過酷な条件下の雰囲気づくりや、日本の伝統的なモチーフのイメージづくりにむけた隊長の心配りが感じられました。この御輿は今年制作される4基の中で、唯一和風のものになるそうです。

 

(何でも発泡スチロールに刺しちゃいます。スマホが音源です。)

 

テントの外に目を向けると、6本の幟の上部に載せる「目」の造形を絶賛制作中。その近くにいたのは楽理科の2人。制作現場で片づけや掃除などでサポートするほか、パレードでは「天狗の手下」として踊るので、別の場所でその稽古もしているそうです。10人の手下が舞い踊るなか、烏天狗が白煙を上げて羽ばたく姿が見られそうです。その時に流れる音楽はもちろん邦楽がベース。邦楽・楽理が連携して新曲を作曲し、既にスタジオ録音が完了しているとか。「御輿づくりまでは全く知らなかった美校の友人がたくさんできました!」と、とてもうれしそうに語ってくれました。

(楽理のお二人。「サンバパレードも是非見てください!」)

 

藝祭まであと2週間をきりました。遅れていると危機感を募らせつつも、ディテールの造形に入ってゆくこれからが工芸・日本画の腕の見せどころ。「細かいところは任せて!」という頼もしい言葉も聞けました。総力を結集した高い完成度が期待できそうです。御輿ばかりでなく、幟や法被、音源やパレードの練習など、いろいろな準備が同時進行しています。これからの二週間でどんな盛り上がりがみられるでしょうか。ワクワクしますね!


執筆:鈴木康裕(アート・コミュニケータ「とびラー」)

アートの真髄は作品を介した作家と鑑賞者とのコミュニケーションだと思います。自分が楽しみながら、少しでもそのお手伝いをしたくてとびラーになりました。藝祭はまさにそんな双方向のコミュニケーションが生まれる場です。ぜひ足を運んでみてください!


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【あいうえの連携】あいうえの日和(2018.7.24,25)

2018.07.26

夏休みの上野公園、今年度最初のプログラム「あいうえの日和」が開催されました。
「あいうえの日和」は、45分間でミュージアム冒険のコツをマスターする、ファミリー向けプログラム。7月24日・25日の2日間で125組250名のこどもと保護者が参加しました。

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

 

基礎講座⑥|「会議が変われば社会が変わる」

2018.06.27

とびラーの自主的な活動には、とびラー同士が直接コミュニケーションをとるミーティングの場のあり方がとても重要です。ひとりひとりが主体的に関わるミーティングの場をつくるために、具体的な手法を学ぶのが今回の講座のねらいです。レクチャーとワークショップを通して、「ミーティング」の理想的なスタイルを学びます。


講師は「ミーティング・ファシリテーター」の青木将幸さん。青木さんが進行を手がける会議は、家族会議から国際会議まで、多岐にわたるのだそう。

 

日常や社会生活のなかでたびたび起こる「話し合い」。とびラーの活動のなかでは、「とびラボ」の企画をかたちづくるプロセスや、様々なプログラムのふりかえりなど、多様な場面でFace to Faceの議論が活動の核となっています。

今回の講座会場は、なんと藝大の体育館!?机や椅子がないため、自然と人との距離が近くなり、意見を出し合ううえでの対等さ=「フラット」な関係を感じられる効果があったようです。思い思いの姿勢をとって、のびのびと話し合いにのぞむなかで、自然と身体の向きが相手に変わったり、前のめりになったりする様子がみられました。

講座の最初は青木さんの自己紹介からはじまり、まずは「歩き回ってとにかくいろんな人に挨拶をする!」というアクティブな場ほぐしからはじまりました。「目があった人にはとにかく声をかけてみて!」と青木さん。朝一番のかたかった雰囲気から一変、徐々に賑やかな声が場にあふれていきます。

次に、3人組をつくって「良い会議」と「悪い会議」のイメージについて意見を出し合います。

まずは個人でノートに書き出す時間があり、次に3人の意見を交換。そして、3人全員が合意できる意見をいくつかピックアップしてみます。

 

ここで青木さんが強調していたのは「『同意』と『合意』は違います!」ということ。一つの意見に対して「それいいね!」「賛成!」と相手が受け入れるのが「同意」それぞれ意見を出し合ったあとでお互いに納得する状態にたどりつくことが「合意」です。

会議をすすめていくうえで、この「合意」がひとつのキーになります。発言したことのうち、何に合意したのか?話し合いを進める軸として、参加している人たちの意思を明確にすることは非常に重要です。

ここで、各グループから出てきた「良い会議」のイメージを青木さんが模造紙に書き出しました。

ポイントは多々ありますが、大切なのは、その場に集まったメンバーで合意された要素に従ってすすめること。会議を始める前にこれらの点を読み上げることも、参加の意識付けとして有効な手段なのだそうです。

様々な観点が出てきたところで、個人的に気に入ったアイデアを4つ選んで、シール投票。一度投票のかたちをとると、ここにいる人たちの価値観が総計としてみえてきます。

 

ここまでのワークをふりかえりつつ、青木さんから良い会議をするためのポイントのまとめがありました。

1. 個人で書いてから集団で話す

=発言の準備ができた状態をつくる。全員の発言の準備を促す。

2. 3人組で話し合う

=社会の「最小単位」からはじめる

3. 何に合意したのか?を明らかにする

=花丸をつける、赤の二重線をひくなどしてポイントを明確にする

4. 発言を板書する

=内容を可視化する

5. みなさんの傾向を掴む工夫を取り入れる

=シール投票やグラデーション挙手などで傾向を見る

 

また、質疑応答の場面では、実際に仕事やプロジェクトをすすめることを想定した問答がありました。

・議論をすすめていくうちに、「おかしいな」と思ったら・・・?
=「違和感を表明できる」ことが議論の磨き石になりうる・上下関係がはっきりしている会議だと、発言しにくいことも・・・
=上層部にこそ、「どんなミーティングが理想ですか?」と聞いてみる

・メールや掲示板など、オンラインでのやりとりなど「顔を合わせない」やりとりもふえているが・・・
=重要なことほど顔を合わせた場所で決める


ここでお昼休みを挟んで、午後はワークショップ形式でいくつかのパターンの「会議実習」を行います。

まずは4人1組をつくるところからスタート。このグループで、3つのワークを行いました。

(1)いいねぇ会議
・誰かが何かひとつアイデアを話す。(例:「海にいってみませんか?」)
・それに対して、まず「いいねぇ」と言う。
・話したことに対して、次の提案をする。思いつきや、突拍子のないものもOK。(例:「じゃあ、洞窟探検にいくのはどう?」)
【ルール】でもね、うーん、など、アイデアを否定することはしない。
(2)交代で昔話づくり
・始めの人が「むかしむかしあるところに・・・」につづく一文を考えて話す。
(例:むかしむかしあるところに、おじいさんと〇〇がいました)
・次の人は、それに続く形で次の一文を話す。
(例:おじいさんは海にワカメをとりに、〇〇は〜にいきました。)
・この一文リレーを繰り返す。(例:すると〜◉×△!)
(3)解決社長
・4人のうち1人が「社長役」、のこり3人は「部下役」。
部下「社長、大変です!(〜トラブルや困ったことの報告をする〜)」
社長「それはちょうどいい!じゃあ、こうしよう
(〜トラブルを活かした提案をする〜)」
部下「さすが社長!」
・〜部下役、社長役を交代する。〜
・社長は「校長」や「大臣」などに変わっていってもOK。

これら3つのワークに共通しているのは、「相手の意見がどんなものであっても否定せず、アイデアを活かして話をすすめていく」こと。「イエス・アンド〜」の姿勢をもって話をきくことが、アイデアの芽を育てていく環境をつくります。日常生活のなかでトラブルや予想外のことは、そもそも「起きる」もの。起きたときにどう考え行動するか、どうポジティブに織り込んで考えていくか、を楽しんで追体験するワークです。

実際にやってみたとびラーからは「クリエイティブな気持ちになれる」「周りに影響されるおもしろさ」「突拍子もないアイデアを楽しめる」「ダメ出し会ではたどりつけないアイデア」といった声があがりました。

さて、講座の最後のワークは「MM法=みんなで持ち寄るミーティング法」。
「Q 今日、ここにいる皆さんに聞いてみたいこと、話し合ってみたいことは?」を1人1テーマ考え、紙に書き出します。
内容は日常生活のこと、価値観のこと、社会のこと、それぞれの話したいテーマはさまざま。
お互いのテーマを書いた紙が見えるように歩き回りながら、関心事が近かったり、気になる内容をもつ人同士で5人1組をつくります。

できた5人組で座組をつくり、それぞれのテーマを10分ずつ話しあいました。
自分の議題のファシリテーターになるのは自分。
今日の講座で学んだ方法を取り入れながら、小さい単位での話し合いに挑戦してみます。
「たった10分だけど、思っていたよりも深い話し合いになった!」「やっぱりまだ話し足りない」「もっと人の意見をとりいれてみたい」など、それぞれの実感を抱えて本日の講座は終了。

「良い会議」のイメージを持ち続け、一緒に進める人と明確に共有していくこと。
他人の意見を否定せず、アイデアを活かした話し合いをふくらませていくこと。
大切な点は単純明快ですが、健全に組織を運営することや、順調に企画をすすめることの難しさは、誰もが何らかのかたちで感じたことがあるでしょう。

 

「会議が変われば社会は変わる」ならば、どんな社会に変えていく?

全6回にわたる基礎講座はこれにて最終回となりますが、とびらプロジェクトとしては、いよいよここからが活動本番のスタートラインです。今年度も人と人、人と作品を通してどんなクリエイティブなつながりが育めるのか、さまざまなトライ&エラーの場を「話し合い」からはじめていければと思います。

 

(とびらプロジェクト アシスタント 峰岸優香)

【開催報告】「マインドマップで味わうアート」をプーシキン美術館展で開催しました!

2018.06.17

2018年6月17日 日曜日の午後、事前に申し込みいただいた参加者の方々をお迎えして「マインドマップで味わうアート」を開催しました。

 

ビジネスや教育の現場で定着しつつある、マインドマップの手法を活用しながら作品の鑑賞を楽しみ、発見して、誰かと語り合おうという、「対話を通した作品鑑賞xビジネスツール」の新しい体験の試みです。

 

作品と向き合う中で生まれた自分の考えや気づきを、マインドマップを使って整理してみることで、鑑賞で感じたことを少し時間が経っても思い出すことができます。それをさらに言語化して家族や友達に伝えることができれば、鑑賞の体験がより深まるのでは?という期待感をもって準備を重ねていきました。

プログラムは、参加者の皆さんに、都美のアートスタディルームに集まっていただき、マインドマップを描いて自己紹介をすることからスタート!
進行役のとびラーが、自分の自己紹介をしつつ、マインドマップの描き方の基本をお伝えします。

マインドマップを描くのは初めて!という方もいらっしゃいましたが、思い思いのマップには、その方をあらわすキーワードが散りばめられていて、既に、コミュニケーションを後押しているように感じました。

マインドマップが初めての方にも参考になるよう事前に用意した、とびラーの自己紹介マップ

▲マインドマップが初めての方にも参考になるよう事前に用意した、とびラーの自己紹介マップ

 

次に「プーシキン美術館展」を鑑賞するための基本情報を、マインドマップを描きながらキーワードやイラストを交えて説明しました。

プーシキン美術館とは?フランス風景画とは?

そして皆さんそれぞれが展覧会で発見したり、感じてみたいこと(マイテーマ)は?

その後、展覧会の各章のテーマとキーワードに紐づけて、15枚の作品がどの章に属するのかを推理して選んでいただくというゲームをしました。

ここでも、作品のどこからそう判断されたのかや、自分はどの作品が気になる、など、自然に参加者の皆さんの間で会話が始まっています。

 

ゲームの後は、今日じっくりと鑑賞したい1作品を選びます。

次に、今回の参加者の皆さんも楽しみにされていた対話を通した鑑賞を体験していただきます。

今日取り上げた作品は、プーシキン美術館展に出品されているクロード・モネの《草上の昼食》(1866年)です。

「仲がよさそうなグループだけど、右端に一人、輪に入れない男の人がいる。」

「飲み物はワインだけだろうか?」

 

少人数のグループだったので、皆さん、自由に発言をされていました。

今回の参加者の皆さんは対話を通した鑑賞への関心が高い方も多く、

その説明にも興味をもっていただいたようです。

 

その後、いよいよ、展示室へと移動します。

 

まずは2つのグループに分かれて、案内役のとびラーと3フロアから成る展示室を一巡。その間にも、先ほどゲームをした作品を見つけると、参加者の皆さんの足が止まり、大変熱心な様子が伝わります。とびラーが見つけた各章の面白い見所などについても会話が弾みます。

 

それぞれのグループごとに、時間をとって1作品を鑑賞します。

1グループはルイジ・ロワール《パリ環状鉄道の煙(パリ郊外)》(1885年)、もう片方のグループはピエール・ボナール《夏、ダンス》(1912年)。どちらも見ごたえのある大作です。

その後は、マインドマップを作成するための個人での鑑賞の時間です。

それぞれがもっと見たいと思った作品のもとに向かい、発見や気づきをメモしてきます。

 

その後、アートスタディルームに戻り、本日の鑑賞をもとにマインドマップを作成します。

約30分、カラーペンを使って思い思いにまとめていきます。

最後に、描き上げたマインドマップを見せながら、今日の鑑賞体験を一人ずつ発表していただきました。

「絵の緑が非常に美しくて印象深かった。」

「私は、展覧会を見て“道“をいう言葉が浮かびました。」

「展覧会を通していろんな“旅”があることが分かった。」

その他にも、キュレーションに関心があるというご意見や、とびラーがこの企画実施にたどり着くまでの過程の“旅”に参加できてよかった、という励ましのメッセージまでいただき、大変感動しました。

 

プログラムはこれで終了。

 

実施後のとびラーのふりかえりでは、今回の参加者のみなさんの様子を思い返しながら、時間配分や、描いたマインドマップの共有方法についてを話し合い、マインドマップというツールと対話を通した鑑賞の融合について考える時間を持ちました。

参加者の皆さんが回答してくださったアンケートでは、

「マイテーマを持つことは面白い」

「想像を超えて楽しかったです!マインドマップが思考の整理、記憶の定着、意識の向け方に役立ちそう。」

「会場で少し説明が欲しかった。」

「対話型鑑賞を会場でもう1点できるとよかった。」など、

具体的によかったところや改善の余地がある点があきらかになりました。

今後のプログラムづくりにぜひ活かしていきたいと思います!


執筆:中元千亜樹(アート・コミュニケータ「とびラー」)
大人も子供も作品について語り始める時のキラキラした表情をみるのが、とても好きです。
お気に入りの美術館はTate Modern(英国)Kiasma(フィンランド)。

基礎講座④|「作品を鑑賞するとは」

2018.06.02

アートの作品はたくさんありますが、はたして「作品を鑑賞する」とは、どのような活動なのでしょうか?

ただ何かを「見る」だけではなく、自分の目と頭を使って、そこにある表現に迫ること。

美術館での体験や学びとはどのようなものか、今回の講座では「鑑賞」について、理論と実践の両面からそのあり方を考えていきます。


今回の講師を務めるのは東京都美術館学芸員 アート・コミュニケーション係長の稲庭彩和子さん。

講座の前半は3つの映像を見て、気づいたことをひもときながら話し合います。

 

(1)「美術館の展示室で物語をつむぐ」

(2)「Thinking Through Arts」

(3)「Museum Start あいうえの スペシャル・マンデー・コース」

この3つの映像を順番に視聴しながら、それぞれ気づいたことや疑問に感じたことをシェアしあい、稲庭さんがコメントバックする形で午前の講座はすすんでいきました。ここではそれぞれの動画のポイントを簡単に紹介します。

 

(1)「美術館の展示室で物語をつむぐ」

メトロポリタン美術館の館長である、トーマス・キャンベル氏のプレゼンテーション。作品を知識によって見ていくのではなく、個人の発見や気づきから、共感をもって見ていく、鑑賞者が中心となる美術館での体験について語られています。

映像のスクリプトも読みつつ、気になった部分についてグループで話し合い、いくつかの論点を全体でも共有しました。

たとえば「どの作品も当時は現代美術だった」、「リアリティをもって作品に出会う」、「美術館での体験とはどうあるか」・・・など。

アートや作品が好きで美術館を訪れる人も、普段はなかなか美術館に来る機会がない人もいるなかで、「作品を見て考える体験」について俯瞰した視点から考えていきます。

 

(2)「Thinking Through Arts」

次に視聴したのは、イザベラ・ガードナー・スチュアート美術館で行なわれている対話による鑑賞を使った手法(Visual Thinking Strategies)の取り組み。こどもたちが作品について、素直な視点で発言していく様子が紹介されています。

人間には、言葉を使って思考を構築していく習慣があります。視覚情報が豊かであればあるほど、言葉で伝えるのが難しかったりするもの。だからこそ豊かな解釈が生まれ、言語表現はより発達したものへと変容していきます。

また、多様な考え方や価値観を保持しながら「対話」をすすめていくうえで重要なのが「ファシリテーター」という役割。中立的に場を進行する人がいる状態が、異なる考えを持つ人たちが共存することを可能にしていることに注目しました。

 

(3)「Museum Start あいうえの スペシャル・マンデー・コース」

実際にとびらプロジェクトで取り組んでいる、スクールプログラムの様子です。

展示室のなかで、アート・コミュニケータがこどもたちに伴走する事例が紹介されており、展示室での活動が子どもと大人の「学び合い」の場であることについて見ていきました。

現代のアクティヴ・ラーニングに必要なのは、こどもに教え諭すだけではなく、ともに議論しながら考えていく姿勢。個人の年齢や背景が異なるからこそ、違う意見や価値観があり、多様な解釈が生まれるもの。ミュージアムにあるたくさんの「もの」や「作品」を、それぞれの視点から考え、共有していく取り組みが、いま世界の各地で起こっています。

様々な人のまなざしを知ることは、互いの背景を重んじあい、共存を認めあう、文化的な理解を深めるプラクティスでもあるのです。

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午後は実際に自分の目と頭をつかって作品を見るワークから、「対話による作品鑑賞」を体験していきます。ここから進行は、各グループの進行役「ファシリテータ」が担います。

まずは作品を使ったアートカードで「なっとく!ゲーム」を行いました。

たくさんの作品を見比べながら並べ、絵の中の共通点を探し、伝え合うコミュニケーション・ツールです。

ここからは実際に、展示室にある作品を見に行きます。

訪れたのは公募展示室で開催中の「第84回 旺玄展」。会場には見応えのある作品が所狭しと並びますが、今日は各グループにつき2作品ずつを、集中して鑑賞します。

1作品あたりの鑑賞時間は約20分。

「1枚の絵の前でそんなに立ち止まるの!?」と始めは驚かれる方もいらっしゃいましたが、絵をよく見て、話し始めてみたら「あっという間だった!」「もっと見て話してみたい」との声も。

講座の終盤では展示室から戻り、今日の体験を振り返ってみます。

「自分では気づかなかったことに気づいた」

「作品について話したり、聞いたりするうちに、絵がどんどん変わって見えた」

「話している人の人柄も見えてくるようだった」

一つの作品を見て、それぞれの気づきを共有していくことで、「誰かの気づきを自分がどう思うか?」という相対的な視点をいつのまにか獲得していることに気がつきます。

講座の最後には、参加したとびラーからこんな発言が。

 

「たいていの場合において、議論とは意見がぶつかりあって、闘争になるもの。
でも、作品をみていると、意見がぶつかるのではなく『どんどん重なっていく』という発見があった。
意見の交換や、積層によって、どんどん発見が増え、深まっていくという実感に驚いた。」

 

そう、これこそが「複数人で話しながら作品を見る」醍醐味であり、ポイントなのです!(・・・と、進行していた学芸員の河野さん。)

どんなに解釈が違っても、同じ作品をみて、同じことを捉えた延長にそれぞれの思考があります。意見の正誤を問うのではなく、「異なる視点を共有する」体験が、対話による鑑賞で得られるもの。全く同じ観点ではなくても、自然とまなざしが重なり、自分とは違う他者の在り方を確認することができるのです。

見ること、考えること、言葉にすること、他の人とやりとりすること。

作品や人と対話し、交流を深めていくと、新しい視野が開けるような体験に出会うことがあります。そんな機会にふれ、また次の誰かに届けていくためのきっかけに、今日の講座がなっていたらいいなと思います。

 

(とびらプロジェクト・アシスタント 峰岸優香)

【開催報告】iPad@プーシキン美術館展“障害のある方のための特別鑑賞会” 開催しました。

2018.05.28

2018年5月28日、「プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画」障害のある方のための特別鑑賞会で、「iPad@プーシキン美術館展」を開催しました。

iPadを使ったプログラムはこれまでの「障害のある方のための特別鑑賞会」でも、「視覚に障害のある方も車椅子の方も、作品を見ることを楽しんでもらいたい」という思いで、とびラボとして企画、実施されてきました。

作品の画像データを取り込んだ東京都美術館のiPadを持ったアート・コミュニケーター(以下とびラー)がそれぞれの階の展示室内に2名程度滞在し、iPadの画面上で画像を拡大したり、手元で見せることで、より鑑賞を楽しんでいただけるようにする鑑賞サポートプログラムです。

「この絵のこの色が良く見たかったの」と具体的に見たいものをとびラーにお伝えしてくださる方や、「杖をついていると絵の近くまで寄りづらいから、こうして見せてもらえるのはありがたい」との言葉や、「これは何が描かれてるの?」とiPadで拡大した画像と本物の絵を見比べながら、それぞれ思っていたものとの違いを楽しんだり、絵について話しているうちに、美術館へ来ることへの思いを話してくださったり。さまざまなコミュニケーションがうまれる場となりました。

今回、このプログラムに参加したとびラーは25名。「喜んでもらえたのが嬉しかった」「お話し出来たのが楽しかった」と、とびラー自身も楽しんでいました。

絵画を鑑賞することは個人的な経験になりがちですが、iPadという道具を介して、作品×人のコミュニケーションがたくさん生まれる機会となったことは、とびラーにとっても発見でした。

障害がある、ないに関わらず、「心のゆたかさの拠り所」を目指す東京都美術館で、このような場があることが改めて素敵に感じました。

次回の障害のある方のための特別鑑賞会では、どんな出会いがあり、どんなコミュニケーションが生まれるのか、ワクワクしています。 


執筆:今村 昭浩(アート・コミュニケータ「とびラー」)

アート×福祉×地域を探求すべく、とびラーとなって、早3年目。アートを通じて、人がつながる機会があちこちで生まれることを目指して、奮闘中です!

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