2018.04.28
4月28日(土)、第2回目の基礎講座『「きく力」を身につける』を行いました。
講師は、とびらプロジェクトアドバイザーの西村佳哲さんです。
とびらプロジェクトの始まった2012年から、その礎となる考え方として大切にされている「きく力」。今年度の新しいとびラー・7期のみなさんも、アート・コミュニケータとしてのチューンアップをここから始めていきます。講座を通して「きく」という行為の「力」を実感していく、7期とびラーの様子をリポートします。
「きく力」の講座は、「きき手」と「話し手」の役割を入れ替えつつ、午前午後を通したワーク形式で行われます。この中で、会場の空気がワークごとに大きく変化していくのが特徴的です。
午前の「きかない」ワークでは、普段何気なくしてしまっているかもしれない「きけていない」状態(無視・横取り・否定・介入)を意図的に作り出し、話し手がどのような変化を起こすかを実験します。この時、会場の空気は時間が経つごとに冷えていき、とびラーの声が途絶えがちになっていきます。
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では、どのようにきけばいいのか。
西村さんのヒントを元に、午後の「きく」ワークに入ると、会場の様子は再び熱を帯びていきます。ワーク終了を報せる鐘の音が鳴っても、対話が終わらないほどです。「話をしている時、人が本当にきいてくれていれば、その考えは成長を始める。周囲からあるエネルギーを受け取りながら。それはまるで植物のようです」と西村さんは言います。
話の「内容」を知的に理解するきき方と、
その人の「気持ち」を感じてそこについて行くきき方の違い。
どちらもきけているようですが、内容を頭で理解しようとする時点で、すでに話す人の側ではなく、自分の世界に入ってしまっているのではないか。話す人の気持ちに寄り添い、その思考の少しあとからついて行くことで、その人の思考が育って行くようなきき方とは?
気持ちにフォーカスした「きかれ方」で話した時の思考の進み方、開き方を身をもって体験すると、「発信する側に力があるのではなく、本当は「きく」側が力を持っているんですよ」という西村さんの言葉が腑に落ちます。
聴覚障害のあるとびラーも加わった今年度のとびらプロジェクト。基礎講座では、手話通訳も交えて講座を進行をします。手話通訳者が通訳をする際に心がけていることを教えてくれました。「表情も使って、なんとか伝えようとします。伝わりきらないと思ったら、お話にはなかった単語を加えることもします。常に勉強です」
単語のつながりだけでは表せない「気持ち」を伝えるために、間に「人」が介在する可能性の一端にも触れることができました。
これから始まるとびラーとしての活動で、互いに想いを受け取り合い、育て合って活動が広がっていくような関係が、たくさん生まれてくると素敵ですね。
(東京藝術大学美術学部特任助手 越川さくら)