東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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Archive for 12月 1st, 2018

2018.12.01

12月某日、東京藝術大学絵画科の日本画専攻のアトリエを訪問しました。

卒業制作の作品は、藝大在学中に学んできたことの集大成。制作が行われている部屋に入ると、5〜6人の学生がフロアに置いた作品への描画に没頭していました。天井が高く開放的な空間ですが、部屋のそこここから一人ひとりの集中オーラを感じます。

 

そんな中、和やかにとびラーの取材を応じてくれたのは4年生の大嶋直哉さん。丁寧で落ち着いた話し方、知的なまなざしと優しい笑顔が印象的です。

 

 

ー大嶋さん、こんにちは!今制作されている作品について教えてください。

 

「水辺の風景を描いています。8月頃から下図等の準備をして、10月から描きはじめました。現在の完成度は70%ぐらいでしょうか」

 

 

―制作の期限はいつ頃までですか?

 

「科によっても違いますが、うちはあと2週間ほどです・・」

 

制作も大詰めを迎えている時期なんですね。作品のタイトルを決定する期限は3日後に迫っているのだとか。

 

ーいつも床に作品を置いて描いているのですか?

 

「今回は大きな作品なので、床に置いています。真ん中のほうに描き込むときは、木製の台や畳を置いて、その上に座って描きます。畳だと体重が分散されるし、踏み抜くこともないので使いやすいんです」

 

 

―今回の作品にはどんな技法を用いていますか?

 

「150 号のパネルに貼った和紙の上に銀箔を貼って、上から絵の具を重ねています」

 

―150号いっぱいの銀箔!でも銀色にキラキラしている部分は見当たらないですね。

 

「銀箔を貼るのは銀色に見せるためでなく、箔特有の凹凸や皺といった質感を出すためなんです。こことか」

 

―確かに、この黒いところよく見ると格子状の枠が浮き出て見えるような気がします。

 

「そうなんです。四角い箔を貼っているのがわかると思います。その上に、様々な大きさの粉状の岩絵の具をニカワで溶いて描画しています」

 

 

―日本画の魅力は何だと思いますか?

 

「石を砕いたものを絵の具にしたり、自然にあるものを使って描くので、派手さはないけれど深みのある表現ができることだと思います。昔からあるジャンルですが、構図や画材の使い方によってはまだまだ新しい表現の可能性もある。日本に生まれたので、この国の芸術である日本画を学んで世界の人たちにも見てもらいたいと思いました」

 

―最近のインスタ映えブームの真逆を行くような感じですね。藝大での学生生活の中で影響を受けた ものはありますか?

 

「藝大では描き方を教わるというよりは、自分で研究して試していくことが多いんです。村上隆さんに影響を受けました。これからの日本画の可能性について考え、自分で今までとは違う表現を試してみたりして、自分のやりたいことや表現方法が定まってきたと思います」

 

 

―自ら学んでスタイルを確立していったのですね。作品を描くとき、どんなことを大切にしていますか?

 

「作品自体に何らかの意味を持たせるようにしています。この作品だと真ん中の方に石があって、下の水面に金魚がいるんですけど・・・」

 

本当ですね!とびラー5人ははじめ誰も気がつかなかったけれど、黒一色と思っていた水面に目を凝らしてみると赤い金魚が泳いでいることに気がつきました。

 

みなさんも卒展で実際の作品を見たら探してみてください。モチーフには必ず意味があるので、作家がなぜそれを描いたのか、考えながら鑑賞すると面白いかもしれません。卒展では制作者である学生に直接話を聞けることもあるので、気になる方はぜひ聞いてみてください。

 

 

―大嶋さんが絵を描き始めたのはいつ頃でしたか?

 

「幼稚園の年長ぐらいの歳ですね。絵の先生と出会ったことがきっかけで、それから日本画を習い、高校も芸術系の科に進んで、ずっと描き続けています」

 

―ご家族も絵を描いていらっしゃるのですか?

 

「全然そういうわけではないんです。でも、絵を描くことをずっと応援し続けてくれていて、とても感謝しています」

 

―最後に、大嶋さんにとって日本画とは何ですか?

 

(それまでの朗らかな雰囲気とは打って変わって、少し考えこむ大嶋さん)

 

「ずっとやってきたことであって、自分の表現そのものかもしれません。」

 

 

大嶋さんの作品は、実物を前に目を凝らすほど「こんなところにも描き込みがある!」という発見があり、世界観に思わず惹き込まれます。
好奇心いっぱいのとびラーの質問に、丁寧に笑いを交えてお答えいただきありがとうございました!

 

みなさん、ぜひ卒業・修了作品展で、日本画の展示へ足をおはこびください。

 


取材|山中みほ、鈴木文子、久光真央、山本俊一、原田清美(アート・コミュニケータ「とびラー」)
執筆|山中みほ

 

とびラー7期の山中みほです。十日町、市原、珠洲、北アルプス、瀬戸内の芸術祭サポーターを経てとびラーになりました。普段は保健室の先生をしています。特技はテーピング。

 

 


第67回東京藝術大学 卒業・修了作品展 公式サイト
2019年1月28日(月)- 2月3日(日) ※会期中無休
9:30 – 17:30(入場は 17:00 まで)/ 最終日 9:30 – 12:30(入場は 12:00 まで)
会場|東京都美術館/東京藝術大学美術館/大学構内各所


★あなたもアートを介したソーシャルデザインプロジェクトに参加しませんか?
第8期とびラー募集

2018.12.01

12月1日(土)に「墨の無限の可能性」をテーマに、ミュージアムに展示されている「墨」の作品を鑑賞して、作品に迫るプログラムを開催しました。

上野公園にある東京都美術館と東京国立博物館がコラボレーションをして行われた今回のプログラムでは、小学校1年生から6年生の幅広い年齢層のこどもたちとその保護者、全16組30名のファミリーがともに活動します。もちろんこの日もアート・コミュニケータ(以下、とびラー)がプログラムのサポートをしっかりします。

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

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