2回目のアクセスプログラム(障がいのある方の為の特別鑑賞会サポート)実践講座は、白梅学園大学准教授の杉山貴洋先生を講師に迎えて「チームワークとアクセシビリティー」というテーマで行われました。
はじめはグループ編成からスタート。ただしワークショップ形式で編成が行われます。スタッフがとびラー候補生(以下:とびコー)の背中に7色のシールのいずれかの色を貼ってゆきます。とびコーさんは自分の背中に貼ってあるシールの色は知りません。全員の背中にシールが貼られたら、とびコーさんたちは声を出さずに、相手の反応を伺いながら、また、周囲のとびコーさんにジェスチャーで合図を出しながら、同じ色同士のグループにまとまるように動きます。グループが出来たら一列になって着席。この何気ないワークショップの効果で、グループが編成されたきには既に意気投合できる雰囲気も出来上がっていました。ちょっとした工夫でチームワークをつくる導入となるのだなと関心しました。
続いて、「早並びゲーム」。編成されたグループ対抗で行います。最初は「手の小さい順」にとびコーさんが整列し直します。早くできたら順から全員揃って着席。その後「名前の五十音順」「自宅から東京都美術館までの時間順」と続きます。実はこのワークショップ、ゲーム感覚で自己紹介を自然にする為の手法とのこと。
予め配られていた(個別の顔写真付き)シートに、各自のゲームでの答えを記入してゆくと、自己紹介カードが出来上がります。チームワークをつくるワークショップの手法を体験することはとても楽しく、こうした経験はこれから小学校との連携などで役立ててゆけそうですね。
続いては「クイズ東京都美術館」。早速ですが問題です。「プロジェクションされた4つの写真はいずれも東京都美術館の玄関です。A、B、C、Dの玄関を北口、東口、正面、搬入口 の順に並びかえなさい。」できた人から手をあげて解答します。2問目はかなりの難問。何も展示されていない4つの展示室の写真を入り口から出口の順に並び替えるもの。3問目は現在マウリッツハイス美術館展で展示されている絵画を入口から出口の順に並び替える問題でした。いずれの知識も、障がいのある方の為の特別鑑賞会サポートには必要な知識でしたが、こうした手法で覚えると学習意欲もあがります。解答結果はというと、さすが都美に精通しているとびコーさん、迅速に正解を導きだしていました。
^
後半は杉山先生に「障がいのある方の為の特別鑑賞会」を実施するあたり、「アクセシビリティー」をキーワードに具体的な注意事項などを含めたレクチャーをして頂きました。
^
この「アクセシビリティー」とは、基本的には「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」とほぼ変わらない「利便性」を指す言葉だそうです。しかし、「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」が建物に付帯するのに対して、「アクセシビリティー」はアクセスする側に主体性があるとのこと。東京都美術館はバリアフリーとなってはいますが、それで全ての利便性が補われる訳ではく、そこに見守る人の目があることが何よりも大事。そこで、次回の「障がいのある方の為の特別鑑賞会」でとびコーさんが担うべきことは、ご来館頂くみなさまに「安心で安全な鑑賞環境を提供すること」が第一であり、その上でより有意義な時間を過ごしてもらう工夫が必要とのお話を頂きました。また、何かしてあげなくてはという気持ちから、「サポート」が「おせっかい」にならないように注意し、特に、障がいの名前ではなく、その場の困っている状況に寄り添うことが大事とのことでした。
^
次回の「障がいのある方の為の特別鑑賞会」の組み立て方については、僕も杉山先生と事前にいろいろとお話をさせて頂きました。少人数のとびらスタッフで大勢の障がいのある方のサポートを行う場合、残念ながらケア出来る範囲にも限界が出てきます。なので、ご来場頂く方々が介助者の方と共に主体的に鑑賞して頂くことを基本とした上で、我々は「より何をすべきか」を考え、よりよい鑑賞体験を提供できる様に、とびコーさん一同と共に工夫をこらして行きたいと思っています。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)
2012.07.13