10月から1月にかけて東京都美術館で開催された「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」。この展覧会を題材に、「いろいろとび缶バッジ:ゴッホの毛糸玉~ゴッホの色選びを毛糸でやってみよう~」を実施しました。
日時 平成30年1月7日(日) 11時~15時
場所 東京都美術館 交流棟2Fアートスタディルーム
このプログラムは、ゴッホが毛糸玉で配色研究をしていたことから着想し、同展のメインとなる作品5点に使われている色の毛糸を用意しました。参加者はその毛糸を再構成して缶バッジを作ります。ゴッホの配色研究を追体験することで、鑑賞を深めようというプログラムです。
当日は、冬晴れの日曜日。そして会期末ということもあり、展示室は朝から大賑わい。その熱気とともにワークショップも大盛況でした。参加者は大人160名、子ども50名。合わせて210名の皆さんが楽しまれました。これから当日の様子をご報告します。
★ワークショップへのご案内
「ゴッホ展」の展示室と離れた場所で、このワークショップを実施しているため、展示室出口と美術館のエントランス付近で、とびラーが案内をします。ワークショップのちらしを配ったり簡単な説明をしたりと、会場に足を運んでくださった皆さんとの会話がスタートします。
毛糸の写真の看板に足を止めてくださったり、とびラーが付けている毛糸のスタッフバッジに目をとめてくださったりして、興味を持たれた方もとても多かったです。会場であるアートスタディルームに向かう際も、とびラーと一緒に展覧会のことやワークショップのことを話題に、会話が弾みました。
★ワークショップのはじまり(はじまり)
受付後、ゴッホが毛糸で配色研究をしていたことや、同展のメインの5作品から色を抽出し、毛糸を用意したことについて説明します。皆さん興味津々で耳を傾けていらっしゃいました。「初めて知りました」という方も多く、とびラーの説明にも力が入ります。一つ一つの毛糸の色を作品の中に見つけられている方もいて、嬉しくなりました。
★いよいよ制作
まず、台となる下地つき缶バッジを選びます。この下地は全部で5色あり、この5色も今回のゴッホ作品によく見られる背景の色から選んでいます。皆さん、どれにしようかと楽しんで選んでいる様子が伝わりました。
次に、ループ型缶バッジか、ポンポン型缶バッジか、どちらのスタイルの缶バッジを制作するかを決めます。缶バッジの見本や制作されている方の缶バッジをじっと見つめ、考えている皆さんの表情が輝きます。
そして、作業テーブルに向かい制作していきます。大人もこどもも、男性も女性も、ご高齢の方もご家族連れの方も、皆さん思い思いに楽しんでいらっしゃいました。ゴッホもこんなふうに配色を考えるのを楽しんでいたのでしょうか。どのテーブルも常に満席の状態で、時間によってはお待たせするくらい盛況でした。
とびラーとの会話はもちろん、参加された方同士の会話も各テーブルからたくさん聞かれました。知らない方同士も自然と会話が弾み、笑顔もいっぱい見られました。なごやかな雰囲気にアートスタディルームが包まれました。
★缶バッジができた
皆さんニコニコして出来上がった缶バッジを持ち帰ってくださいました。コートや帽子・バッグ等につけて帰られる方もとても多く、皆さんの満足感が伝わってきました。「こんなに良くできたよ。ああ、楽しかった。」と弾むように声をかけて帰られる方もいて、私たちとびラーの心も温まりました。
私たちが思い描いた以上の素敵な缶バッジが、次々と生まれました。参加された皆さんの自由な発想と工夫が可能性を広げていきます。
★終わりに
感想コメントもたくさん寄せていただきました。ここにいくつか紹介させていただきます。
・ゴッホが毛糸の中から色の組み合わせを考えていたという話を聞いて、涙が出そうになりました。
・今日は来て本当に嬉しかったです。フランスに行くよりも安全で安くて、ご親切でありがとうございました。
・バッジを自分で作れたから、オリジナルになった。楽しかったよ。ゴッホが毛糸で色の組み合わせを考えたなんて。
・ゴッホ展も残り2日となり、チケットを持ち、娘・孫娘と女3人で足を運びました。立ち寄らせていただいたブースでとび缶バッジ作りに挑戦。思いがけず良い出来に満足。楽しい一時をありがとうございました。スタッフさんも好印象でしたよ。
・初めてポンポン作りに挑戦しました。用意していただいた色から選ぶだけでも迷ってしまうほど組み合わせがあるのに、無限に色を重ねて描く画家の作業の深遠さに少しふれることができました。楽しい思い出をありがとうございます。
・ふわふわぽんぽん、心もはずむ気分です。ありがとうございました。
・缶バッジのイメージが一変。素敵なボンボンバッジができました。ゴッホの色を見直すのも楽しかったです。毛糸ってこの季節にぴったり。とびラーさんのようにあったかい素材です。
参加された皆さんが、自分で毛糸の配色を考え、缶バッジスタイルを選び、主体的にオリジナル缶バッジの制作に取り組み、楽しさと共に充実感を感じられたことは、私たちにとっても大きな喜びとなりました。
また今回は、「毛糸」という素材を使っての缶バッジワークショップでしたが、参加された皆さんの自由な発想と工夫とで、さらに缶バッジの可能性を広げることができたことも大きな成果です。
そして、感想コメントの中にも多く寄せられたように、「ゴッホが毛糸を使って色の配色を考えたということが新鮮でおもしろかったです」、「ゴッホの好んだ色を抽出するアイデアは素晴らしいですね」、「分解された色をまたまとめていくのがおもしろかった」等、今回の企画意図が参加された方に伝わったこと、参加された方にとって意味のある体験になったことを嬉しく思います。
参加してくださった皆さん、ありがとうございました。この日だけのスペシャルな時間となりました。
執筆:鈴木優子(アート・コミュニケータ「とびラー」)
2018.01.07