東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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第1回鑑賞実践講座「ガイダンス:作品・モノを介して生む活動の目指すところ」

よく晴れた海の日、鑑賞実践講座の一回目は東京藝術大学・特任助手 鈴木智香子さんのあいさつから始まりました。

今年度のキーワードは「学び合い」を大切にして、鑑賞によって生まれる場を丁寧につくることです。

この講座で目指す「まなざしを共有する」とは、誰かと一緒に作品を見ること。
目標は「対話が生まれる場をつくるプロセスを学ぶ。作品やモノを介して人をつなぐ場をデザインする」。
実際に作品の前で、人と作品が出会う体験を想像しながら、
スペシャル・マンデー・コースとの関わりや、課題なども含めて、一年間の流れを確認します。

次に、稲庭さんから鑑賞実践講座のねらいについてのお話し。

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居心地よい場づくりのポイントとして「人への関心・安心感・共感・聞く能力」をあげていました。
何かをしやすい環境のためには、「リラックスして、集中している状態」をつくるのが望ましいのだとか。

これからの鑑賞活動のなかで心に留めておきたいのは、
「関わりを築くことではなく、現にある関わりに気づくこと。
関わりが損なわれることを警戒することではなく、関わりを実感すること。」
新しい発見も大切ですが、今ここにいる人たちが、既にあるモノを通して
自分の周りの世界との関わりに気づいていくことが、対話によって可能なのです。

その後は三つの映像を視聴します。
一つ目は東京都美術館「メトロポリタン美術館展」に、慶応幼稚舎の子どもたちが訪れたときの様子。
美術館では、会場全体を巡る→ひとりで見る→とびラーや友だちとみんなで見るという活動をします。
学校に帰ってから、ひとりひとりがオーディオガイドの原稿をつくり、
後日、完成したガイドを聞きながらもういちど展覧会場をめぐります。
実際にできたガイドは個性的な言葉に彩られていました。

二つ目は「ティーンズ学芸員」。
東京都美術館、東京国立博物館、国立西洋美術館の三館をめぐり、
中学生や高校生が、自分の気づきや感動を言葉にしていく試みです。
こちらもオーディオガイドのツール作成を通して、自分の考えを伝えるプログラム。

まずは二つの映像を踏まえて三人組でシェア。
見た感想や、その場で起こっていたこと、プログラムの構造、もし自分が参加していたらどうする?などなど。
質問コーナーでは、運営から人間関係まで、これから活かせそうなところを注意深く観察した疑問が出てきました。

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そして、三つ目の映像は「鎌倉の立てる像」。鎌倉の中学生が松本俊介の作品「立てる像」と出会うプログラムです。
とびラーにはアートカードが手元に配られました。
同じ作品のイメージを共有しながら、子どもたちが紡ぐ言葉や活動を見ていきます。
その後に、作品を見ながら感想をシェア。
中学生が語っていたこと、話の広がり方に着目したコメントが多く出てきました。

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鑑賞とは、自分を開示することでもあります。
美術史の知識を知ることよりも前に、自分の経験を参照しながら、感じたことを言葉にしていくなかで、語る機会は自然と現れてきます。
後半では、まず年間課題とグループワークについておさらい。

最後に行ったのは「Show&Tell」のワーク。自分の持ち物を、記憶とともに相手に伝えるワークです。
テーマは「だれかに見せたいと思う、自分の大切なもの」。
なんてことないものでも、その人にとっては大切なものであり、自分の言葉で、思い出や大切に思っている理由を語ります。

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これから続けて顔を合わせるメンバーについて、モノを介しての対話をすることで短時間の間でもその人の人となりが伝わった、という声がとびラーより多く聞かれました。

・初めてお話をする方も多かったのですが、物を通して語られる思いはその人の人柄をとてもよく表してくれました。
・「もの」を通して自己紹介するだけで、その人の人となりがとてもよくわかりました。それは「もの」にその人がその人たらしめるための思い出や感じたことが詰め込まれているからです。
・持参した「もの」を介して、思い出を話したり聞いたりすることで、相手の感性を感じたり、自分の普段は改めてしないような話をするときの不思議な気持ちを感じたりしました。共通のルールやテーマ、ツールがあることで、初めて話す相手への興味関心や、コミュニケーションが生まれることを感じました。
ーーーとびラーのふりかえりアンケートより

これにて初回の講座は終了!
これから、いろいろなとびラーの経験値を通して《場を形成する》という視点を軸に、学びと実践を繰り返しながら自分たちで鑑賞の場をつくっていかれればと思います。

2016.07.18

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