東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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藝大生インタビュー⑤|『 生体建築(せいたいけんちく)』油画 4年生 中垣 拓磨

「これは一体…何?」
中垣さんのアトリエに一歩足を踏み入れてまず、「えっ!?」という驚きに襲われました。これはご本人曰く、「待ってました」のリアクションだそうです(笑)

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壁一面のドローイングと部屋の中央にそびえる天井すれすれのダンボール製の建築物。『油画の卒業制作=油絵』を想像していた人間には、目の前の事実(作品)を理解するのに少し時間を要しました。
後でお伺いしたところによると、油画の卒業制作は油彩というカテゴリーに縛られることなく非常にバラエティに富んでいるそうです。

アトリエの中央にそびえるダンボール製の建築物。これがまさに中垣さんの卒業制作『 生体建築(せいたいけんちく)』

「建物のように見えますが、生きているんです。生命のエネルギーが建物に宿り、自らが成長するんです。そこのところを表現したいと思いました。制作は今年の6月頃から始め、9月の芸祭で展示しました。最初は卒業制作として出品するつもりではなかったですね。2ヶ月ぐらいで作り終わるかな、と思っていたので。でも始めたらどんどんイメージが湧いてきて。まだいける、まだいける、といった感じでここまできました。今もまだここまでできたら終わりという完成のイメージはないです。ただ頭の中に湧いてくるものを描いて、形にしているだけです。」

まさに、作品は未だ成長中。

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そして作品を取り囲むように壁一面に貼られたドローイングについては、
「脚立がないと貼れないので」と話すように、床に置かれたままになったドローイングの束が。それらを合わせると既に125枚が描き上がっている。アトリエの壁全面に貼ると150枚貼れる計算とのこと。そしてその125枚は同じものが二つとないというこだわりぶり!

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このドローイングとダンボール製の建築物の関係について尋ねると・・・・
「必ずしもドローイングがこのダンボール製の建物の何処かの部分とピッタリと一致するということではないのです。描いていくうちに描ききれない部分をダンボールで作り、作ってはまた自分の中から湧いてくるイメージを描いてという繰り返しです。」

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材料にダンボールを選んだ訳は・・・・
「ドローイングの軽さを表現できるかなと思ってダンボールを選びました。ダンボールで正解だったと思います」子供の頃から馴染みがあるというダンボール、ボンドそしてガムテープ。私たちもよく知っている身近にある材料、資材で制作されていました。

そのダンボールにも中垣さんのこだわりが・・・・
「人が使っていたもの、今回はダンボールですが、そういったものには使っていた人の記憶が宿ると思うんです。それを使って制作するとその人の頭の中や心の中を覗いてるような不思議な気分になります。それも楽しいですね」(えっ!? これからはダンボールを捨てる時には注意したいものですね。中垣さんに頭の中を覗かれてしまうかも!?(笑) )

「音楽学部に使用済みのダンボールを捨てるプレハブ小屋があって、それを知った時はものすごく嬉しくなりました(笑) 実は、芸大の廃材置き場にあるダンボールは珍しい形が多くて、テンションが上がります!」
素材としてのダンボールに非常に強い愛着が感じられた瞬間でした。

子供の頃について・・・・
この作品を制作するにあたって影響を受けた人やモノはありますか?という問いには、「特にはないです。ガウディは好きですけど。この作品を作るために何処かに出かけて行ったとかそうゆうこともないですね」
「もしかして育った環境が影響しているかもしれません。」と話してくれた中垣さんのご実家は、造園業を営んでおり、お母様が設計士というご家族。「子供の頃の遊びにあった秘密基地が作れるような資材が家に沢山ありました。木と木に渡す板があったり、変な形の道具が置いてありました」「それから、妹尾河童さんの『河童が覗いた~』というシリーズの本があって、その本には世界中のトイレのスケッチが載っていました。子供の頃夢中になって何度も何度も読みました。沢山トイレのスケッチがあるけど一つとして同じものがないのです! もしかしてその妹尾河童さんの本の影響はあるかもしれないです。それから、子供の頃ロボットなんかで遊ぶ時も、僕は “場所” を重視していたように思います。布団やクッションで山なんかを作って”場所” を作ることに」その全てが今の中垣さんに繋がっているようですね。

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宮崎の大学で造園業を学んでいた3年生の終わり頃、絵が上手になりたいというただ純粋な気持ちで美術系の予備校に通い始めたそうです。
予備校時代に通学の車内で描いたポストカード大のドローイングを見せてくださいました。その数はおよそ100枚! ボールペン1本で描かれたそれらの絵は、ファンタジーの世界に「現実」を象徴のようなサラリーマンがたった一人存在するシリーズでした。

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芸大に入ってから感じたことは・・・・・

子供の頃から絵が好きで、絵が上手になりたくて入学した芸大。そこで念願の絵に没頭できる環境を手に入れた中垣さんは芸大での4年間をこのようにお話してくださいました。
「面白い人たちが多いなと思います。同じ志で入ってきているので結束感のようなものもありますし、同志のような感じですね。これまで絵が好きだ、制作が好きだという人が周りにいなかったので、今のこの環境がとても嬉しいです」

卒業後については?

「大学院への進学を希望しています。その先はまだ分かりません。その時の直感で決めたいと思います。でも手(描く事)はとめたくないです。これまでと同様自分の子供の頃の記憶、原風景を追求して行くことになると思います。」

これから先もずっと[作り手]として存在し続ける事への力強い言葉を聞くことができました。

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こんな風に次から次へと描きたいもののイメージが湧いて出てくるその頭の中を、是非覗かせてほしいと思いました。

「僕の絵や作品を見て何か感じてくれたら、それでいいと思っています。僕も子供の頃そういう経験があって今があるので」その言葉通り、中垣さんの作品にはまず「あっ!」と驚かされて、でも決して威圧的ではないその力強さに慣れてくると、どこか懐かしいと感じるものがありました。もしかして私たちの中にある子供の頃の記憶が呼び起こされたのかも?

卒展では、中垣さんの更に「成長した」作品にお会いできるのが今からとても楽しみです。

(2014.12.5)

執筆:河村由理、鈴木俊一郎(アート・コミュニケータ「とびラー」)

2014.12.25

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