東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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建築実践講座①|都美の建築と歴史

第1回建築実践講座「都美の建築と歴史」
 
日時|6月27日(土)13:30〜15:30
場所|zoom(オンライン)
 
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6月27日、2020年度最初の建築実践講座がオンライン開催されました。

本年度は7期から9期のとびラー約60名とともに建築について学び合います。

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初回である今回は、ガイダンスとして伊藤達矢さん(東京藝術大学 助教授)から本講座の目標を共有いただいたのち、河野佑美さん(東京都美術館 学芸員)から、活動拠点となる東京都美術館(以下、都美)の歴史と建築についてレクチャーいただきました。

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ガイダンス:建築実践講座の目標
 


 

まずは伊藤さんによるガイダンス。

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ーーなぜとびらプロジェクトで建築を学ぶのか
 

そもそも、どうしてとびらプロジェクトで「建築」を学ぶのでしょう。

伊藤さんは「自分の感覚を手がかりに建築を味わう」ことを講座の重要なテーマとして掲げています。

 

都美の建築に関する知識を学ぶだけでなく、それぞれが自ら建築を楽しむ目をもつこと。

さらに、とびラー自身の見つけだした美術館の魅力を他の人とシェアすることで、「建築」を通した学び合いの機会を作ることを目指します。

 

この学びの実践の場となるのが、とびラーによるオリジナルの建築ツアーです。

土曜昼の「建築ツアー」、金曜夜の「トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー」。

2012年のリニューアルオープン以降、このふたつを基盤としながら、さまざまな時間帯や対象者に目を向けた、バラエティに富んだツアーが開催されてきました。

 

参考サイト|とびラーによる建築ツアー

https://www.tobikan.jp/learn/architecturaltour.html

 

ーー建築を見ると、社会が見える?
 

いつものように道を歩くと、何気なく目にすることになる建物の数々。

そこに建築があるのには、かならず理由やねらい、ヒトの動向に関わる様々な意図があります。

 

「建築がもつ様式、技巧といったことだけでなく、その内に在る建築家の考えや用途の可能性などにも思いをはせてほしい」

 

そう考える伊藤さんは、Googleストリートビューを活用し、都美やその周辺の歴史ある建物を次々とご紹介くださいました。

 
とびらプロジェクトの活動拠点となる都美が位置する上野には、幕末以降から現在に至るまで、歴史ある建物が重層的に立ち並んでいます。
 

オンラインでの上野探検は、しばらく上野に足を運べていない講座参加者の多くにとって、今まで見てきた景色と建物を新たな視点からとらえ直す機会となったかもしれません。

 

 

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レクチャー:「都美の歴史と建築」

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つづいて、「都美の歴史と建築」に関するレクチャー。講師は学芸員の河野佑美さんです。

当時の資料や図面などをもとに、都美の歴史や建築家の人生を辿り、建物のデザインの特徴や、それらが生まれる背景をお話いただきました。

河野さんのレクチャーでは、その都度、小さなグループでの話し合いの場も設けられました。

 

ーー都美ってどんなイメージ?
 

まず、およそ60名の参加者が3人グループのチャットルームに分かれます。

そこで、それぞれが都美にいだく印象を5分間ほど共有しました。

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「なんだか複雑で迷宮みたい」「公募展が特徴的」「夜景がきれい」などなど。

ひとつの建築に対しても、かんがえることは三人三色。

ここで話し合われた内容は、zoomのグループチャット機能を通じて、参加者全員に共有されました。


 
ーー「都美の歴史と建築」
 

それぞれの都美へのイメージを確認したところで、この建物ができるまでの歴史をたどっていく河野さん。

 

まずは、都美の前身である東京”府”美術館(以下、旧館)について。

この旧館は、およそ100年前から構想が練られ、1926(大正15)年、現在の都美(以下、新館)に隣接する敷地に設立されました。

 

このときキーパーソンとなったのは、九州の炭鉱王、佐藤慶太郎。

たまたま東京に出張していたさい、新聞の社説を目にします。そこで、日本における美術館の存在意義を自覚。建設予算が十分でなかった東京府に100万円(現在の約33億円)を寄付しました。

 

それから100年の月日が流れた今でも、佐藤の胸像は、新館1階のアートラウンジから都美と行き交うひとたちの様子を眺めています。

 

 

どっしりとした造りの旧館は、岡田信一郎の設計によるもの。正面入り口の大きな階段と柱が印象的です。

岡田は、都美の近くにある「黒田清輝記念館」を手がけた建築家でもあります。

 

この旧館は、増築を繰り返しながら、1960年代まで使われてきました。

しかし、もともと想定されていなかった増築は、しだいに建物へ負荷をかけていくことに。

そこで、1966(昭和43)年から練られることとなった新たな美術館への構想。

「現代の美術館とはいかにあるべきか?」建築と機能の両面から検討されることとなります。

 

そして、1975(昭和50)年、オイルショックや労働者不足などの時代の荒波を乗り越え、建築家・前川國男の設計による新しい建物(=新館)が、旧館の隣の敷地に建設。この外観は、現在まで引き継がれています。

前川は、東京都から新館に求められた3つの機能を、それぞれの棟や展示室に以下のように割り振りました。

 

1、「常設・企画機能」企画展示室
2、「新作発表機能」 公募展示室
3、「文化活動機能」 交流棟

 

さらに2012年、リニューアルオープン。

前川によるデザインや設計のこだわりはそのままに、使う人のことを考えて、時代に合わせた内装の改修が施されています。

 

この改修工事の前に開催されたのが、「おやすみ都美館建築講座」。

都美では史上初となる、文化資源としての建築にフォーカスしたプログラムでした。

 

プログラムでは、建築ツアーも実施されました。

そのときガイドを務めたのは、建築を専門としない館の職員たち。

日ごろから新館に慣れ親しんだ人々による案内は、参加者から想定以上の好評を博すことになりました。

 

「おやすみ都美館建築講座」は、リニューアル後の館のプログラムとしての建築ツアーへと引き継がれていくことになります。

 

9期に紹介!「私の推しトビ」

 

この講座のメインフィールドとなる都美では、今年の3月から6月まで、感染症対策のため臨時休館の措置が取られていました。

そのため、今年度からプロジェクトに参加した9期のとびラーは、都美の建築をほとんど実際に目にできていない人も少なくはありません。

 

そこで企画されたのが、「私の推しトビ」。

7、8期の先輩とびラーが、グループチャット経由で、自身のオススメのスポットを紹介していきます。

(押し都美マップ)

 

チャットに次から次へと挙げられていく「推し」スポット

そして9期とびラーからは「きになる!」という声も

今回とくに人気だったのは、

・正門付近-銀色の大きな球体(=野外彫刻《my sky hole 85-2 光と影》)

・公募棟-四色の壁

・公募棟-カラフルな椅子のある休憩スペース

・交流棟-階段のホワイトとレモンイエローの壁

・中央棟-2階レストランからの眺め

などなど。建築ツアーでも取り上げられることが少なくない名物スポットです。

 

なかには、

・喫煙所横の石のベンチ

・ミュージアムショップ付近の誰にも読み取れないQRコード

・かくれ彫刻の数々

といったような、知る人ぞ知る穴場を紹介してくれたとびラーも。

 

参考資料|トビカンみどころマップ①

https://www.tobikan.jp/media/pdf/2017/ac_tobikanmap_combine.pdf

 

参考資料|トビカンみどころマップ② タイルの秘密編

https://www.tobikan.jp/media/pdf/h25/architecture_midokoro.pdf

 

これから都美に足を運ぶ9期とびラーだけでなく、今まで実際に活動してきた受講者も、あらためて活動拠点の魅力をしることができたのではないでしょうか。

 

 

 

まとめ:これからの建築ツアー

 

昨年度までは全6回の講座に加え、来館者に向けた6回の建築ツアーを実践の場としていました。しかしながら、今年度はコロナ禍の影響で、すでに2回分のツアーが中止になっています。

 

そして、今年度初となる建築ツアーは7月18日(土)に開催予定。

新型コロナウイルス感染症拡大防止に関する対策を十分に行なったうえで実施されます。

 

参加人数は従来の半分。それぞれ2メートルの間隔を保ちながら、目の前にある建築に触れないように。

 

これまでになかった制約のもと、どのように都美の魅力を発見し、共有していけるのか。

参加する人々が持ち寄ったアイデアを練り、これまでのツアーをアップデートしたうえで、いっそう深く建築を味わうことができればと思います。

 

 

(東京都美術館 インターン 久光真央)

2020.06.27

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