東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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【開催報告】都美の野外彫刻を味わう

2021年6月、8月、11月に、東京都美術館(以下、都美)にて「都美の野外彫刻を味わう」というワークショップを開催しました。

 

2020年から続いた新型コロナウイルスの影響で、美術館が休館したり、展示室内での対話が難しい状況が続いていました。

そうした中でもできるアートを介したコミュニケーションの場として、私たちが注目したのが都美の収蔵作品であり、常設展示されている「野外彫刻」でした。野外彫刻は全部で10点あり、そのうちの6点が正門から広がる空間(エスプラナード)に展示されています。
感染症予防対策の点でも、屋外だったら、ソーシャルディスタンスに気を付けながら参加者と安全に対話できるかもしれません。しかも観覧料が不要です。

このように考えて、3月にエスプラナードの野外彫刻を鑑賞するラボを立ち上げました。

 


 

いつも通り過ぎていた野外彫刻

 

東京都美術館にある野外彫刻といえば、真っ先に思い浮かべるのが、ランドマークにもなっている大きな銀色の球体《my sky hole 85-2 光と影》。

しかしそれ以外の作品は、あまり気に留めることもなく、素通りしていました。

そこでまずはラボのメンバー自身が作品に親しむため、作品研究からスタート。作品について調べていくうちに、どんどん愛着がわいていきました。

 

 

 

右上から時計回りに
堀内正和 《三本の直方体 B》(1978) ステンレス
五十嵐晴夫 《メビウスの立方体》(1978) 花崗岩

鈴木久雄 《P 3824 M君までの距離》(1977) 花崗岩

保田春彦 《堰の見える遠景》(1975) 花崗岩、ステンレス

堀内正和 《三つの立方体 A》(1978) ステンレス

井上武吉 《my sky hole 85-2 光と影》(1985) ステンレス、鉄

 

 

立体作品での対話型鑑賞に挑戦

 

とびらプロジェクトの活動のベースに、初年度にとびラーとしての基本的なコミュニケーションの在り方を学ぶ「基礎講座」と、実践的な活動の場を想定した「実践講座」があります。実践講座の中には「鑑賞実践講座」があり、対話を通した作品鑑賞のファシリテーションを学びます。

このラボに参加したとびラーの多くは鑑賞実践講座を受講していましたが、立体作品の対話型鑑賞のファシリテーションの経験がほとんどありませんでした。

野外彫刻で対話型鑑賞の場を作るために、とびらプロジェクトのスタッフと一緒にファシリテーションのコーチングを2回ほど行い、少しずつ立体作品の鑑賞に慣れていきました。

 

ファシリテーションの練習をしながら動線も確認。参加者を迎えて狭いエスプラナードの中で6点の作品をうまく鑑賞していくために、3チームで2作品ずつ回ることにし、それぞれのチームの動線がバッティングしないようにコースを検討しました。

参加者には「今日呼んでほしいお名前」を書いていただき、ネームフォルダに貼ってお渡しすることにしました。他に消毒用のアルコールも用意。

 


 

梅雨の晴れ間に実施した第1回目

 

5月開催を目指して準備を進めてきたものの、緊急事態宣言及び都における緊急事態措置等に基づき、新型コロナウイルス感染症拡大を防止する観点から、4月25日から5月31日まで東京都美術館が臨時休館。

6月13日に開催を目指すも、季節は梅雨。前日のお天気判断により、残念ながら中止となってしまいました。次のチャンスは6月30日。なんとかお天気も持ちそうだということで、無事に開催の運びとなりました。

 

日時:6月30日 10:00~11:00
参加者:募集により9名

 

《my sky hole 85-2 光と影》を鑑賞中。お互いの言葉に耳を傾け合います。

 

《メビウスの立方体》を鑑賞中。参加者が何かを見つけたようです!

 

《三本の直方体》を鑑賞中。参加者は作品の周りをまわりながらお気に入りの鑑賞のポジションを探しています。

 

各グループでは、参加者とともにいろいろな角度から野外彫刻をじっくりと鑑賞。対話も盛り上がっていました。

久しぶりのリアルでの交流に、とびラーたちも対話型鑑賞の楽しさを再認識!

アンケートのコメントも、「もっと見たかった」、「こんなにじっくりと野外彫刻を見たのは初めて」、「その場でご一緒した方たちとの意見交換が楽しかった」「見る場所により印象がガラッと変わった」など、好評でした。

 

 


 

第2回目は盛夏バージョン!

 

続く2回目は、真夏に実施しました。

午前、午後、夕方とエスプラナードの気温を測り、最も気温が低かった夕方に行うことに決定。2グループで1作品だけ鑑賞する、ショートバージョンに変更しました。

 

日時:8月20日 16:30~17:00
参加者:募集により7名

受付設営中。

 

《メビウスの立方体》の前で参加者と楽しそうに対話していたら、他の来館者も集まってきました。

 

《堰の見える遠景》を離れて見たり、覗き込んで見たり。ちょうどオリンピックの開催時期で、《my sky hole 85-2》の後ろに手荷物検査のテントが設置されていました。

 

暑さが心配でしたが、30分のプログラムが無事に終了しました。
アンケートには「今まで通り過ぎていた野外彫刻に興味が持てた」、「みんなで見る楽しさを知った」、「ほかの作品も見てみたい」など、嬉しいコメントをいただきました。

 

対話型鑑賞の面白さは、誰かの一言で作品の見方がガラッと変わることにあると思います。

参加者の言葉を拾い、集めて、みんなで作品に迫っていく。
ファシリテータの難しさとやりがいも同時に感じました。

 

 

 


 

第3回目は秋バージョン!
エスプラナード周辺の樹々も美しく紅葉する秋。空間と共に鑑賞を楽しむ「野外彫刻を味わう」ラボには最適な季節!3グループで2作品を鑑賞する、通常のバージョンで実施しました。
この秋バージョンより主な運営が8期より9、10期に受け渡されました。新たに参加してくれたメンバーと力を合わせ、試行錯誤を重ね開催を迎えました。

 

日時:11月10日 11:00~12:00
参加者:募集により10名

プログラム開始前まで、入念に進行を確認します。

 

プログラム前にエスプラナードを散策。参加者と笑顔でコミュニケーションをはかります。

 

《P 3824 M君までの距離》を観察中。作品から離れることで新たな見方がうまれます。その声掛けもファシリテーターの大切な役目です。

 

いろな角度から観察中。《三つの立方体A》は観察位置によって見え方が大きく変化する作品です。

 

《P 3824 M君までの距離》のポーズで記念撮影。

 

新たに参加したメンバーにとっても「鑑賞実践講座」で学んだことを磨き、実践できる貴重な機会となりました。参加した皆さんにも楽しんでいただけたようです!

コロナ禍の中、コミュニケーションをしながらの作品鑑賞が楽しめるプログラム「野外彫刻を味わう」ラボ。次年度も気持ちの良い季節にエスプラナードで「対話型鑑賞」を楽しみたいです。

 


 

 

執筆:有留もと子(とびラー8期)

雪の日の夕暮れ、ライトアップされたエスプラナードにたたずむ野外彫刻たちの姿が目に焼き付いています。

 

 

 

執筆:遊佐みさお(とびラー9期)

野外彫刻にはまったく興味がなかったのに、今では彼らが愛おしくて、しかたないです(笑)みなさんにもっとその魅力をお伝えしたい!

2021.11.10

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