午前最初のレクチャーは、中台澄之氏(株式会社ナカダイ)。テーマは「捨て方のデザイン」です。総合リサイクル業者のクリエイティブな取組みについてお話をして頂きました。廃棄物業の日常の業務を紹介するところからはじまった中台さんのレクチャーは、今回のオープン・レクチャーの序章として相応しい内容でした。
また、こうした試みで得ることができたのは社会貢献的は評価だけではなく、会社内部にも良い影響を与えているとのこと。地域の人たちや子供たちが、自社(株式会社ナカダイ)に関心を抱いてくれることから、会社のイメージが向上し、それにつれ社員の仕事に対する意識も高まり、業績も上向きになったとのこと。中台氏の、自社にとって顧客とは誰かを明確に捉え、自社の強みをクリエイティブな視点で再確認し、働く人を活かす卓越した経営マネジメント力を伺うことのできる、力強いレクチャーでした。
午後の二人目のレクチャーは田中浩也氏(慶應義塾大学環境情報学部准教授)。テーマは「リペアデザイン」です
田中氏がレクチャーで取り上げたのは「Fab lab」(ファブ・ラボ)という取組みです。「Fab Lab」(fabrication laboratory)とは、 3Dプリンタやカッティングマシンなど多様な工作機械を備えたスペースを地域のコミュニティなどで共有することにより、利用する個々人のアイディアや創造性によって様々なツールやアイテムを制作できる社会的環境の提案と、ものづくりへの意識変革を促す取組みです。「Fab Lab」は、コンピュータによる設計と、3Dプリンタやカッティングマシンなどの持つ実物への再現機能を駆使して、個人の必要性に応じて、必要な時に、必要な量だけ、自身で必要なツールやアイテムを作り出せるようになるような社会の在り方提唱しており、それを「ものづくり革命 (Industrial (Re)volution:第2次産業革命)」とも呼んでいます。
「Fab Lab 」の特徴的なのは、デジタル技術を素地としているため、個人のアイディアがデジタル・データとして蓄積されることで、他者の利用も可能になること。つまり、誰かが蓄積したツールやアイテムのデータを3Dプリンタやカッティングマシンで出力すれば、自分もそれを手にすることができるのです。「Fabrication」(ものづくり)と「Fabulous」(楽しい・愉快な)の2つの単語がかけられているこの取組みは、まさに新しい知の共有ともいえます。「Fab Lab 」は日本でも徐々に広まりつつあるとのこと。鎌倉やつくば市にもあるそうです。
2013.05.12