2019年3月3日日曜日、冷たい雨の降る桃の節句の日に、「女子美さんぽ」を開催
しました。
「女子美さんぽ」とは、東京都美術館公募棟で行われた、女子美術大学 大学院・大学・短期大学部 学生選抜作品展『JYOSHIBISION 2018 “アタシの明日”』を会場として、とびラー(アート・コミュニケータ)が開催した鑑賞と交流のプログラムです。
当日来館された参加者の方ととびラーが、少人数のグループで会場内をさんぽをするような気軽な感覚で作品を鑑賞したり、参加者同士、あるいは作家(女子美生)とお話ししたりしながら、会場内をめぐります。
とびらプロジェクトで「女子美さんぽ」を行うのは今年で5回目。
まずはロビーで参加者を募ります。事前申し込みの必要はありません。ほとんどの方が、当日のとびラーの呼びかけや、配布したチラシがきっかけでの参加です。
今回の参加者は9名。3グループに分かれ、各グループにとびラーが3名ずつ入りました。
これから会場を案内するとびラーの紹介や、ちょっとしたおしゃべりをしながら、初対面の人同士でも楽しく展覧会を回れるよう、気軽に思った事を言い合える「さんぽ」のような雰囲気をつくっていきます。
さあ、いよいよ展示室へ。「女子美さんぽ」の始まりです。
展示室をゆったりめぐっていきます。
実際に触ることができる作品もあります。触った感じはどうでしょう?
同じ体験をすると、自然と会話もはずみます。
デザイン、彫刻、油画、日本画など、様々な表現の作品が展示されています。
まずは個人でそれぞれ鑑賞。そのあとに、1つの作品を何人かで鑑賞して、お互いに自分の感じていることを言葉にしてみたり、他の人が思っていることを聞いたりして、感想を共有します。
和気あいあいとした雰囲気で、自然と笑顔も生まれてきました。
「さんぽ」の楽しみのひとつは、作家である学生さんと直接お話しできる事です。
作家は作品についてのコンセプトや想いを説明したり、参加者からの質問に答えたりします。
思いがけない作者の想いを聞く事ができたり、見る側の感想が語られたりと、作品を通して両者の間にコミュニケーションが生まれ、さらに作品の理解も深まります。
このときに、見る人が、自分で考え、感じたことをもって作者と話していくことで、より発見や共感が生まれる体験があります。その手助けをしたり、仲介したりできるのも、とびラーならではの面白さです。
なかでも小学生の参加者は、高校生の作品にとても興味を持ったようです。
年齢に関係なく、さまざまなやりとりが生まれました。
とても丁寧にお話ししてくれた、作家の学生さんたち。
作品へのあふれる想いが伝わってきました。
最後に作家へのメッセージカードを参加者に書いてもらいます。それぞれの作家にお渡ししたところ、とても喜んでもらえました。
桃の節句にちなんで、桃の形のお雛様付きカードです。
参加者の方からいただいた作家へのメッセージを、一部ご紹介いたします。
「人物の透明な不安な感じが良かったです。自分の意見が言いにくい世の中で、生きていく様子を考えさせる作品でした。」
今回参加した方の中には、「途中で抜けてもよければ・・・」という気軽な感じでいらした方もいました。しかし、「さんぽ」の魅力にはまったのでしょうか? 最後まで参加され、作家へのメッセージもしっかり書いてくださりました。
これまで面識のない人と一緒に作品を鑑賞して、意見を交換するということは、最初はハードルが高いかもしれませんが、他の人の言葉によって、気付きや発見があり、鑑賞の幅が広がっていくというおもしろさもあります。
若い芸術家と鑑賞者をつなぎ、交流を楽しみながら感想を伝え、彼女たちの活動を応援していくという、充実したプログラムを実施することができたと感じています。
来年もたくさんの方々に「女子美さんぽ」に参加していただき、この素敵な時間を楽しんでもらえたら、嬉しく思います。
とびらプロジェクトの中で、「本物を見たり触れたりできる美術館という空間はパワースポットだ」と教えてくれた人がいました。来館者を笑顔にしてくれる、アートの不思議な力を感じます。
2019.03.03