春は出会いと別れの季節。とびらプロジェクトも、ひとつの節目を迎えました。
3月26日(土)に行われたのは、2期とびラーの任期満了式「開扉会」。
3年間の活動期間を終えたとびラーたちが、上野からそれぞれのとびらへと進んでいく門出の日です。
開扉会の場をつくっていくのは、もちろんとびラー。
「3年目の節目を彩るプロジェクト」として、この日のために長い時間をかけて準備がすすめられてきました。
会のはじまりは、プロジェクトマネージャの伊藤さんと、東京都美術館の稲庭さんによって告げられました。ともに過ごした時間を振返りながら、美術館から社会的問題へアプローチしていくことについて考えていきます。とびラーの存在によってできたことや、生まれた活動、人とのつながり。とびらプロジェクトと連動するMuseumStartあいうえのの活動も、これまでの経験値を踏まえて変化していきました。
同じ時間を過ごし、様々な活動をともにしてきた仲間たち。これまでに作り上げてきたもの、迷い悩んだこと、来館者との出会い、成長していく子どもの様子、数えきれないほど重ねて来た話し合い。数々の記憶を思い返すと、自然に笑みがこぼれます。
3期、4期のとびラーも集い、限られた期間のなかでの活動や、任期終了後のことについて考えます。とびらプロジェクトのなかで築いた経験を、今後どう活かして行くかはそれぞれの課題です。ここでもらった種をどこに蒔くのか、どう育てるのか。これからの社会と美術館、それぞれの今後の活動をつくっていくきっかけを探る場を共有しました。
その後は、昨年任期満了した1期とびラーによる団体「アート・コミュニケータ東京」の紹介。
アート・コミュニケータ東京は任期を満了したとびラーの活動と、各所のつながりを支える一つの基盤です。楽しいプレゼンテーションにはたくさんの笑いが起きていました。
その後は場所を変え、3年間の活動拠点となった、東京都美術館の景観がみえるところへ。
いよいよ任期満了を記した「開扉の証」が授与されます。
とびラーひとりひとりの名前が伊藤さんによって読みあげられ、とびらプロジェクトの代表教員である東京藝術大学の日比野克彦さんと、東京都美術館の林久美子副館長から任期満了の証を手渡されます。
「開扉の印」に封入されているのは上野から次の場所に向かうための切符。2つ折りのカードの中には、東京都美術館・真室佳武館長、東京藝術大学・日比野克彦教授のお二人からのメッセージが書かれています。ひとつひとつが手作りです。
授与の後は、送り出すとびラーからの言葉。
3年間の感謝の気持ちと、今後の期待、そして、これからも人と人のつながりは続いていくことが伝えられました。
ここで、3・4期のとびラーから開扉するとびラーに向けてのプレゼント。2期生ひとりひとりにインタビューをして、それぞれの言葉を綴った冊子が贈られます。
インタビューの実施から執筆、企画から編集まで、とびラーらしい工夫や気遣いにあふれた一冊です。3年間の活動の記録も掲載されています。
懐かしい記憶がよみがえったり、一緒に過ごしてきたとびラーの意外な一面が見えてきたり。
続いて、開扉するとびラーからの言葉。
リハーサル無し、ぶっつけ本番!全員で声をあわせます。
旅立ちの声が揃って響きわたりました。
最後の「ありがとうございました」は、素敵な笑顔で締めくくられました。
そして、退任するスタッフからの言葉。石井理絵さんと伊藤史子さん。
とびラーとともにMuseumStartあいうえのをひっぱってきた2名にも、「開扉の印」が贈られます。
会の終盤では、東京都美術館で働く方々や、とびらプロジェクトを支える人々から祝辞が贈られました。
まず、東京都美術館より林副館長。
「文化財を通して人と人とのつながりをつくる大切さを、よく痛感します。これからもそれぞれの場所でがんばってください」
東京都美術館・山村学芸課長。
「絵を描く人だけでなく、絵を語る、楽しむ、広がりをつくる仲間が増えていったら、美術はもっと活気づいていくと思います。これからの活躍に期待しています。」
とびらプロジェクトスーパーバイザー、アーツカウンシル東京・森司さん。
「ぜひ、美術館をとびこえて活動を続けてください。ここでの経験を大事にして、歩みを止めることなく、アートの輪を広げる活動をしていってください」
東京藝術大学教授、とびらプロジェクト代表教員の日比野克彦さん。
「一つのことをやるにはどういうことが必要か、目の当たりにして学んできたかと思います。次からは自分で呼びかけて、自分なりのアート・コミュニケータ活動をしていってください」
東京都美術館アート・コミュニケーション担当係長・稲庭彩和子さん。
「一緒に歩いて来られて本当に嬉しいです。今年の開扉会では、去年とは違うビジョンが見えてきましたね。ここで蒔き、育てた種を、外に持って行ったり、温め続けたりしながら、また人と話すことでさらに育てていってほしいと思います」
最後に、東京藝術大学特任助教授・とびらプロジェクトマネージャの伊藤達矢さん。
「みなさんがここでつくったようなコミュニティを、ここから、他の場所へ広げていってください。お互いこれからも、がんばってやっていきましょう!」
その後はいつも活動するアートスタディルームでカフェタイム。
こちらもとびラーによる企画が満載のひとときでした。
これまでのワークショップに向けて作ってきたものを総動員!展覧会の思い出が詰まった道具たちで、思い思いに彩ります。
他にはとびラーが撮影したこれまでの記録映像を鑑賞したり、
とびラー考案のボードゲームに興じるスペース。一般向けにも開催された「ボッティチェリの人生ゲーム」は、大盛況でした。
最後の時間まで、話が尽きることはありません。とびラーの任期は終了しても、形を変えて人と人とのつながりは続いていきます。
本年度、次のとびらをあけたとびラーは33名。
33人のアート・コミュニケータは、これから1人1人が道をつくっていきます。
新しい所へ向かう人、今までいた所に戻る人。上野からの行き先は人それぞれです。
ここでみなさんと一緒に過ごした時間と、培ってきた体験は、全てがかけがえのない出会いに彩られていました。これからも自分らしく、アート・コミュニケータのマインドを大切に、次のとびらへ進んでいってください!
(とびらプロジェクト アシスタント 峰岸優香)
2016.03.26