2013.05.18
今年度最初の建築ツアーが行われました。今回ガイド役を努めたのは、昨年度「建築ツアー実践講座」を受講していたとびラーの方々です。春のあたたかな陽気で、まさにツアー日和でした。
まずは小野寺さん。壁に施された「はつり(削り)加工」について、漢字ではどのように書かれるのかを説明しています。
こちらは今回ガイドデビューを果たした辻さんです。館内の至る所に見られるカラフルな椅子。実はリニューアル前からリメイクして使い続けているものもあり、その「見分け方」をお話してくれました。現代人の脚の長さ、幅広い年齢の方の座りやすさを考慮し、椅子の脚が継ぎ足されており、この継ぎ目がリニューアル前から使われていた印です。
準備の様子を少しだけ。事前にミーティングをし、必要なツアー旗や資料などのガイドグッズをまとめています。
東京都美術館(以下:都美)にはこれまでもお伝えしましたように、沢山の見所が隠れています。おなじみの見所はもちろん、ガイド役のとびラーそれぞれの視点で様々なエピソードを交えながら建物の魅力を伝えていきます。
これからはじまる本年度の「建築ツアー実践講座」では、今年度新しく加わったとびラーと共に、さらに都美建築への知見を深めていきます。
ツアーについての詳細は都美ウェブサイトにてご案内していますので、是非ご参加ください。都美建築大好きとびラーがお待ちしております!
(とびらプロジェクトアシスタント 大谷郁)
2013.05.12
午前最初のレクチャーは、中台澄之氏(株式会社ナカダイ)。テーマは「捨て方のデザイン」です。総合リサイクル業者のクリエイティブな取組みについてお話をして頂きました。廃棄物業の日常の業務を紹介するところからはじまった中台さんのレクチャーは、今回のオープン・レクチャーの序章として相応しい内容でした。
また、こうした試みで得ることができたのは社会貢献的は評価だけではなく、会社内部にも良い影響を与えているとのこと。地域の人たちや子供たちが、自社(株式会社ナカダイ)に関心を抱いてくれることから、会社のイメージが向上し、それにつれ社員の仕事に対する意識も高まり、業績も上向きになったとのこと。中台氏の、自社にとって顧客とは誰かを明確に捉え、自社の強みをクリエイティブな視点で再確認し、働く人を活かす卓越した経営マネジメント力を伺うことのできる、力強いレクチャーでした。
午後の二人目のレクチャーは田中浩也氏(慶應義塾大学環境情報学部准教授)。テーマは「リペアデザイン」です
田中氏がレクチャーで取り上げたのは「Fab lab」(ファブ・ラボ)という取組みです。「Fab Lab」(fabrication laboratory)とは、 3Dプリンタやカッティングマシンなど多様な工作機械を備えたスペースを地域のコミュニティなどで共有することにより、利用する個々人のアイディアや創造性によって様々なツールやアイテムを制作できる社会的環境の提案と、ものづくりへの意識変革を促す取組みです。「Fab Lab」は、コンピュータによる設計と、3Dプリンタやカッティングマシンなどの持つ実物への再現機能を駆使して、個人の必要性に応じて、必要な時に、必要な量だけ、自身で必要なツールやアイテムを作り出せるようになるような社会の在り方提唱しており、それを「ものづくり革命 (Industrial (Re)volution:第2次産業革命)」とも呼んでいます。
「Fab Lab 」の特徴的なのは、デジタル技術を素地としているため、個人のアイディアがデジタル・データとして蓄積されることで、他者の利用も可能になること。つまり、誰かが蓄積したツールやアイテムのデータを3Dプリンタやカッティングマシンで出力すれば、自分もそれを手にすることができるのです。「Fabrication」(ものづくり)と「Fabulous」(楽しい・愉快な)の2つの単語がかけられているこの取組みは、まさに新しい知の共有ともいえます。「Fab Lab 」は日本でも徐々に広まりつつあるとのこと。鎌倉やつくば市にもあるそうです。
2013.05.11
3回目の基礎講座が開催されました。講師は西村佳哲氏。テーマは「きく力について考える」です。
「とびらプロジェクト」の基礎講座は「やり方」を教える講座ではないので、来館者の前で上手にお話ができる「話し方」などの講義はありません。アート・コミュニケータ(とびラー)に必要なのは、発信力より受信力、相手の意見や気持ちを受け止めることのできる力、すなわち「きく力」だと考えています。
そこで、今回の基礎講座は「きく力」をキーワードに進められました。講師の西村さんのお話を聞くだけではく、とびラー同士でコミュニケーション取りながらの講座となりました。そして、「きく力」(受信力)の話から、プロジェクトを進めてゆく上で必要となるさまざまな心構えや予備知識の話へと講座は展開して行きました。
各々どのように西村さんの話を「きいた」のかを共有したながら講座は進められました。
コミュニケーションを取りながらの講座は、自分だけの解釈の枠を越えて、さらに深い理解へと導いてくれます。
2013.04.27
こちらのグループは上野動物園へ。久々の動物園!というとびラーもいたようです。
こちらのグループは、国立科学博物館へと向かいました。上野公園には多くの文化施設が集積しています。どの文化施設も日本を代表する素晴らしい文化施設ばかりです。そうした文化施設の持つ可能性を、これまでとは違った視点で確認する。そして、上野公園を自分のホームグラウンドにして行く。アート・コミュニケータとしての経験値を高める大事なステップです。
外の文化施設だけでなく、基点となる都美も合わせてじっくりとリサーチした後は、基礎講座の教室(都美のアートスタディルーム)に戻り、文化施設を連携させることでできる新しいアイディアについて各グループ毎に話合いが行なわれました。
今回の基礎講座は、新たに入ったとびラー2期生と1期生の混合チームで進められて行きました。じっくりと話し合ってアイディアをまとめてゆきます。
日比野さんが見てまわります。
知り合って間もないとびラーも講座を通して徐々に打ち解けてきたようです。
最後は、各ブループ毎に考えたアイディアを発表しました。
個性的なアイディアがいくつも発表されました。例えば、動物園で「迷子にならないための迷子札」が発行されているというリサーチから、美術館では「迷子になるための迷子札」をつくってはどうかなど、非常に興味深いアイディアが生まれていました。作品を通してイメージの世界へ迷い込む、そんな美術館の持つ不思議な場所の印象を上手に捉えたアイディアでした。とびラーがファシリテータになって、都美だけではなく東京国立博物館や西洋美術館に迷い込む「金曜夜のナイトツアー」なんあったら楽しそうですね(勝手な妄想です)。こうした一つ一つのアイディアに日比野さんか適切なコメントを入れて行きます。「んーー25点(笑)」という厳しい突っ込みもありましたが、和やかな雰囲気で講座が進められて行きました。
2013.04.13
H25年度第一回目の基礎講座は「とびらプロジェクト」で活動を行なうためのガイダンスとなりました。スタッフの紹介をさせて頂いた後に、東京都美術館アート・コミュニケーション係長の稲庭学芸員より東京都美術館(以下:都美)の歴史やアート・コミュニケーション事業の目指すものなどのお話がありました。続いて僕、伊藤達矢(東京藝術大学特任助教/とびプロジェクトマネージャ)から、東京藝術大学の歴史と「とびらプロジェクト」の概要についてお話をさせて頂きました。
午前の部の最後は、東京藝術大学特任助手でとびらプロジェクトコーディネータの近藤美智子さんより今後の具体的なスケジュールや活動する上でのルールなどについてお話がありました。
午後は継続して活動しているとびラーがH24年10月~H25年3月までの活動の報告をしました。イベントとして公表されている「紙芝居プロジェクト」や「スケッチボードでGO!!」、また都美内にて活動を展開する「建築マッププロジェクト」館内情報紙「とびリア」、美術情報室の書籍を特別展と合わせて紹介する「ライぶらり」の発行経過などなど、たくさんの「とびラボ」から生まれた活動の報告がありました。
熱のこもったプレゼンで、新しく入ってきた55名のとびラーにも分かり易くこれまでの活動を紹介できたのではないかと思います。
とびラーが昨年度つくったさまざま印刷物も配布されました。
新規とびラーのみなさんは初回にもかかわらず、相当量の情報に少しびっくりされたかもしれません。。。でも、まずは基礎講座からゆっくりと入って行って頂ければと思います。
とびラーの活動紹介の後は、新しいとびラーも継続したとびラーも自己紹介を兼ねて前後左右の席4~5人でとびラーのプレゼンについての感想を共有する時間となりました。
2013.03.30
「エル・グレコ」展でも、子どもたちが名画を描く「スケッチボードでGO!!」が実施されました。磁気ボードを使って子どもたちが展示室の中でお絵かきをします。出口ではとびラーが子どもたちの絵をポストカードにしてプレゼントしてくれます。
3月29日・30日の2日間行なわれた「スケッチボードでGO!!」(磁気ボードの貸し出しは会期中常時行なわれました)には1日平均60人もの子どもたちが参加してくれました。
展示室の中では真剣に絵を描く子どもたちの姿に遭遇します。こうした光景は展示室の中の雰囲気さえも変えてしまいます。
今回の「スケッチボードでGO!!」では、これまでにはなかった新たな試みも行なわれました。いつもは子どもたちが描いた絵をポストカード状の塗り絵に仕立ててプレゼントするところまででしたが、今回は展示室から出たところに「塗り絵コーナー」を設けました。今描いた絵に、今色を着ける。今みたあの絵のことを思いだす。色を塗っている間に「もう一度作品をみてきたい!」と展示室に戻る子どもの姿もありました。
作業は真剣そのもの。ただ作品を鑑賞するだけでなく、子どもたち自身、自分が感じた名画の印象をじっくりと味わい、カードに残します。そしてそのカード家に持ち帰ることで、今日の体験を家族や他の誰かと共有することができます。
最後は「とびらプロジェクト」のロゴマークの前で記念撮影。上手に描けています。きっとエル・グレコの自画像かな?
2013.03.11
「障害のある方のための特別鑑賞会」が開催されました。今回は「エル・グレコ」展が会場となりました。介助の方を含めて凡そ800名もの方々にご参加頂きました。この「障害のある方のための特別鑑賞会」は月曜日の休室日を利用し、障害のある方に混雑していない展示室の中でゆっくりと作品を鑑賞して頂こうという企画です。入り口から展示室までの誘導や受付、車椅子の貸し出しなど、当日の運営はとびラー候補生(とびコー)が担当します。
エル・グレコの肖像画とされる作品です。エル・グレコ展に展示されている作品の多くは、キリスト教絵画ですが、どれもエル・グレコ独特の際立った配色とディフォルメされた人物のフォルムがみる者に強い印象を与えています。
展示室の中でとびコーさんが来場者の方と絵画について何気ないお話をすることもあります。小さなコミュニケーションが展示室の中の雰囲気を柔らかいものにします。
少しずつ絵画に近づいて行くところから、絵画との対話ははじまっています。
高さ3mもある「無原罪のお宿り」。しばし眺めていと絵の中に吸い込まれそうな気分になります。
展示室をでると、ミュージアムショップが設置されています。エル・グレコ展にちなんだアイテムがたくさん販売されています。