東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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チラシdeうちわプロジェクト:夏の活動報告

2012.10.05

とびらプロジェクトマネージャ伊藤達矢です

真夏のマウリッツハイス美術館展に並ぶ長蛇の列をクールダウンした「チラシdeうちわプロジェクト」から夏の活動報告が届きました。

記述はとびラー候補生の越川さくらさんです。

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■事の始まり
「今度のマウリッツハイス展では、一日に1万人の人が来るらしい」

 思えば「チラシdeうちわプロジェクト」はこの一言から始まりました。リニューアルした東京都美術館(以下、都美)の最初の特別展である「マウリッツハイス展」は入場者数の予想も桁外れのものでした。「夏の暑い中、お客さんが何時間も並ぶのか!?」「なんとかしなければ!」血気盛んな(?)とびラー達が色めき立ちました。長蛇の列対策プロジェクトが立ち上がり、瞬く間に数十ものアイデアがとびラー専用掲示板を埋め尽くしました。整理券配布、ファストパス、フリーペーパー配布、紙芝居、グッズの販売、椅子設置、伝言ゲーム、などなどなど…。
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それらのアイデアを引っさげ、早速ミーティングです。きっと今までにない画期的な長蛇の列対策が生み出されるに違いない!夢は膨らみます。しかし、2日間の集中ミーティングの終わりかけた頃、私たちは大きな無力感に襲われていました。私たちにできることがほとんどない事に気がついたのです。
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ミーティングの始め、私たちは数々のアイデアを“にぎやかし系”(列に並んでいる間にエンターテイメントを提供して楽しんでもらう)と、“おもてなし系”(暑い中列に並ぶ苦痛を軽減する)とに分類しました。そして、長蛇の列対策プロジェクトでは、主に“おもてなし系”の企画を実行する事にしました。“にぎやかし系”はとびラーの得意とする所らしく、絵から顔を出して写真撮影をする企画、「あなたも真珠の耳飾りの少女」プロジェクトなどがすでに走り出していたからです。
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しかし、“おもてなし系”の企画はそのほとんどが私たちとびラーの手に余るものでした。それもそのはず、数々の展覧会を開催している都美や朝日新聞社のスタッフさん達が、その経験から必要な策はすでに講じていらっしゃったのです。それに、もてなすからには来る人全員をケアしなければ!と気負っていたせいでもあると思います。落胆する私たちは「それでも、私たちらしく、私たちにできる事をやろう」と、とあるスローガンを思いつきました。
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「とびラーは、あなたの待ち時間を全力で応援します!」という言葉です。
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このスローガンを思いついた途端、みんなの中で何かが変わりました。とびラーが“ボランティアさん”なのか、“単なるおもしろい人たち”なのか、そんな定義もまだ何も見えていない頃です。それでも“私たち”は力及ばないまでも“全力で”来場者の方々を“応援したい!”のです。やりたいからやる。やれる範囲でやる。楽しくやる。そんなイメージを、その場のみんなが共有できた瞬間だったように思います。
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不思議な事にその瞬間、一つのアイデアが頭に浮かびました。
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「うちわ、作ってみる?」
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 はい。普通ですね。暑いから、うちわ。普通すぎます。でも、普通のうちわじゃないんです。あるものをリユースしたうちわ。そのあるものとは、どこの美術館にも必ずあって、とても大事だけれど、ある期間が過ぎてしまったら廃棄するしかないもの…そう、チラシの登場です。こうして、チラシdeうちわプロジェクトが始まりました。

■ミーティング!ミーティング!ミーティング!

1、コンセプトを考える
―チラシを半分に折って、厚紙の持ち手を付け、うちわにする―
このシンプルなアイデアは、他のとびラー達からも温かく迎えられました。
「いいじゃん!これ!簡単だし。エコだし」
「そういえばチラシって配布期間が終わってしまったものが余ってるはずよね」
「涼しい涼しい!いいね、これ。へー、こんなのでうちわになるんだね」
大好評です。メインメンバー4人も集まり、さあ後は作るだけ!のはずが、チラシdeうちわプロジェクト、略してうちPはこの後なんと5回もミーティングを重ねる事になります。
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始め、私たちはまずうちPのコンセプトについて話し合いました。
①   来館者に涼をとってもらいたい[cool]
②   配布期間の過ぎたチラシを有効活用したい[re-use]
③   来館者ととびラーとのコミュニケーションツールとしたい[communication]
④   チラシを美術館の歴史と捉え、そのデザインも大切に有効活用したい[re-design]
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といった項目が上がりました。
しかし、ここでいくつかの疑問が生じました。
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・  [re-use]の観点から、新たなゴミとなってしまう可能性のある「持ち手部分」 を新しく作らなければいけないことへの疑問。
・  [re-design]の観点から、半分にしたチラシに持ち手をつけると、大体の場合、メインとなる図像が逆さまに使用されてしまうという欠点。また、あまりにも元々のチラシの情報(展覧会名など主に文字情報)がはっきり見えすぎてしまうと、持ち手部分にある情報との食い違いがおこり、見る人に混乱を招くのではという懸念。
・  [communication]の観点から、当初は対面のワークショップで来館者自らうちわを作ってもらう実施方式が検討されていたため、ホッチキスの使用は危ないかもしれないという危惧。
などです。そこで、チラシを利用した新たなうちわのアイデアが検討されました。
2、折り紙方式
その新しいアイデアとは、折り紙方式のうちわです。この折り紙方式にはモデルがあります。ある本でたまたま見つけた「四万十新聞バッグ」がそのモデルです。
この新聞バッグは高知県出身の梅原真さん(梅原デザイン事務所)が、ふるさとの高知県で始められた活動です。四万十川の流域で販売する商品は、全て新聞紙で包もうという「ラストリバーのこころざし」、「モッタイナイ×オリガミ」などのコンセプトのもとに新聞でエコバッグを作る試みです。 中でも、私が一番共感したのは「考え方」を伝える。という点でした。折り紙のすばらしい所は「折り方と四角い紙さえあれば、誰でも、いつでも作れる」という事だと思います。それを、古新聞を使いバッグを作ることに活用し、さらに「環境を汚さない」という「考え方」を伝える活動です。この活動は今や全国に広がり、海外にも「折り方」と「考え方」を輸出しているとの事。これを知ったとき私は、コレだ!と思いました。チラシを「折り紙」する事でうちわができたら…上記の問題点が全て解決し、更にうちわに新たな価値が加わります。
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しばらく、実際にチラシを折りながら考えていましたが、そうすぐに良い折り方が見つかるはずもありません。四万十新聞バッグの折り方を最初に考えたのは四万十川流域に住むおばちゃんだったそう。私たちも誰かに聞いてみよう!聞きたい事を90人の仲間達にすぐ聞けるところが、とびらプリジェクトの良い所。早速、掲示板で呼びかけます。「うちわの折り方募集中!」するとやっぱり出ました色々なアイデア!もの作り大好きな小学生(とびラーのお子さん)や、折り紙大好き!なとびラーさんから折り方のアイデアが色々と寄せられました。
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しかし残念ながら、今回この折り紙案は実施まで漕ぎ着けませんでした。
・  ワークショップ形式の場合:(お客さんが)暑くて折り紙をしてくれる余裕がない。
・  作って渡す場合:制作時間がかかりすぎる。
・  「折り紙」としては面白いが、「うちわ」としては涼しさの点で問題が残る。
等がその理由です。
けれど、この折り紙案はメンバーの間でも想いが強く、次の機会があればまた挑戦したいと思っています。
3、持ち手のデザイン
この辺りから、実施方法はできあがったうちわを配る方式。うちわは厚紙の持ち手つき。持ち手は8×8cmの正方形を斜めに使用する。ということとが徐々に決定してきました。次は、持ち手部分の厚紙に印刷する内容の検討に入ります。メンバーの新倉さんの作ったデザインを元に5回目のミーティングです。このミーティングには、今までホワイトボード上でうちPの動きを見守っていたとびラーも参加してくれました。外からの新鮮な空気が、少し視野が狭くなっていた私たちにもう一度、このうちPの意義を再認識させてくれました。
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①   使用期間の過ぎたチラシを有効利用して、来館者に涼をとってもらうこと。
②   とびラーの存在を知ってもらう名刺代わりとすること。
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その2つが最終的なうちPの目標となりました。小さな持ち手の中で、最低限この2つをどう伝えていくかを考え、使う言葉やデザインを考えました。
作る!そして配る!
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作業
持ち手部分をボール紙に印刷したものが出来上がってくると、後はひたすら折ってホチキス留めすれば完成です。とびラー掲示板に「うちわ作りのお手伝い募集!」と募集をかけると十数名のとびラーが集まってくれました。ワイワイお話をしながら折っては留め、折っては留め、うちわ1000枚が2時間で出来上がりました。あとは配るだけ。さて、パッと見ただけではうちわと分からないこの“チラシdeうちわ”。来館者の方々は、果たして受け取ってくれるのでしょうか…。
<表>
<裏>
■実施
実施日は8月15、水曜日。暑い盛りのシルバーデーを選びました。シルバーデーとは、65歳以上の方が無料でマウリッツハイス展を鑑賞できる日です。7月のシルバーデーには120分という待ち時間ができてしまっていました。来館者の待ち時間を応援するならこの日をおいて他にないという日です。
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「どのくらいの人がうちわを受け取ってくれるんだろう」試行錯誤の末出来上がった“チラシdeうちわ”をやっと来館者の方に届けることができるという喜びと、一抹の不安を胸に、うちわの入った箱を抱え、屋外に長々とできた行列へと向かいました。しかし、いざ配り始めるとそんな不安は吹き飛んでしまいました。列に並んでいた来館者の多くが“チラシdeうちわ”を欲しがってくれたのです。ご自分で扇子をお持ちの方の中にも「私にも貰えますか」と手を伸ばしてくださる方もいます。結局とびラーは5名様ずつ位の幅広の列の中に入り込み、間を縫ってほとんどの方にお配りする程の好評ぶりでした。「こんにちは!とびラーです!」「うちわをどうぞ!」と言いながら、あっと言う間、40分程で全てのうちわを配り終えてしまいました。
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後から「公園を歩いている人がみんなチラシのうちわをヒラヒラさせていて不思議な光景だったよ!」という嬉しい報告も耳にしました。
本当に一瞬のできごと。一瞬の”上野公園チラシdeうちわジャック”です。
念のため用意したうちわ回収ボックスにも、返却されたうちわは20枚ほどでした。
その他
◎プロジェクトの進め方について
うちPが始まる直前まで、私たちはとびらプロジェクトの基礎講座をうけていました。そこでは人の話を「きく力」、ミーティングの進め方など、プロジェクトを進める実践的な方法をこれでもかというほど叩き込まれました。だからまず、やってみたかった。実際にプロジェクトをやってみたいという想いがとても強かったです。「きく力」を研ぎすまし、「居合わせた人がすべて方式」で、最小単位3人が、イメージを共有しあい、各ミーティングをタスクに変える習慣をつければ本当にプロジェクトが進行するのか。そして、その試みがどんなに小さいものでも、それがとびラーの足跡となり波紋となり、私たち自身が「新しい公共」となり得るのか。「自ら行動する実験台になってやろう」という気持ちは今も変わっていません。
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またうちPはミーティング以外でのメンバー間でのやりとりをweb上のとびラー専用ホワイトボードで行うことにこだわりました。正直、メールでのやりとりの方が早いのですが、進捗状況をネット上にアップしておけば、他のとびラーたちの途中からの参加も可能だと思い、情報公開に留意しました。この事で結果的に、活動が自動的にアーカイブされ、今この活動報告を執筆するにあたっても役立っています。
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◎他館でのうちわを使った取り組みの調査
•新江ノ島水族館 一回200円でオリジナルうちわを作ることが出来る。まず背景3種類を選び、うちわを作った後、好きな深海の生き物のシールを3つ選び、貼って完成。
•井の頭自然文化園 園内をクイズ形式でスタンプラリーで回り、全てのスタンプを押すとゴールでうちわをもらえる。厚紙のみを使用したエコなデザインのうちわ。
新江ノ島水族館うちわ  井の頭自然文化園うちわ
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■むすび
作ったのはただのうちわでした。
配れたのはたったの1000枚でした。実現できたことよりも、諦めたことの方が多かったと思います。しかし、このプロジェクトを終えた事で、私たちの中に何かとても確実なものが降り積もりました。とびラーとは何なのか?まだ答えのでない疑問に私たち自身がヒントをもらったような気がしています。また、私たちが本気で取り組んだ結果を来館者の方々が興味を持って受け入れてくれた事。この事は今後、私たちが様々な活動をしていく上で大きな自信になると思います。
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※参考資料
しまんと新聞ばっぐ 公式サイト http://shimanto-shinbun-bag.jp/
新江ノ島水族館 公式サイト http://www.enosui.com/
井の頭自然文化園 公式サイト http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ino/〈チラシdeうちわプロジェクトメインメンバー〉
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越川さくら、鬼澤舞、新倉千枝、山中麻未
その他沢山のとびラーにご協力頂きました。

とびラー候補生:筆者:越川さくら(こしかわ さくら)
夫と3才の娘、2匹のフェレットと共に東京都三鷹市に在住。

 

シルバーデーだ!とびらプロジェクト!

2012.08.15

8月15日、この日の東京都美術館(以下:都美)は「シルバーデー」。65歳以上の方は無料となりました。マウリッツハイス美術館展を鑑賞するために午前中から沢山のお客様が来館され、敷地の外に出てしまう程の行列が出来ていました。

 

そこに現れたのが「真珠の耳飾りの少女」とお揃いの青いターバンを巻いたびラー候補生(以下:とびコー)の皆さん。8月5日に3つの企画をお客様の前でお披露目し都美デビューを果たしたとびコーの皆さんですが、もっと多くのお客様に楽しさとワクワクをお届けしたい!という思いから、「シルバーデー」であるこの日も出動しました。

 

長蛇の列に容赦なく照り付ける夏の太陽。猛暑の中ご来館されたお客様へ配布期限の過ぎた展覧会チラシを再利用した「ウチワ」をプレゼント。このウチワ、とびコーさんが一つひとつチラシを折ってつくっています。

 

数百枚のウチワをお一人おひとりのお客様に手渡しで、配らせて頂きました。

 

正門を入ってすぐ、入場待ちの方とお帰りの方が行き交うスペースで、おなじみの”とびら楽団”が楽しげな演奏をしています。

 

とびら楽団が隊列を組んで練り歩いたりと、暑さにも負けないパフォーマンスを披露。新曲の「カントリーロード」も初めて皆さんの前で演奏することができました。

 

そしてこちらはフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」になって記念撮影が出来る「あたなも真珠の耳飾りの少女プロジェクト」。前回の8月5日同様大盛況で、沢山の方が「真珠の耳飾りの少女」になって下さいました。

 

「あたなも真珠の耳飾りの少女プロジェクト」の額縁の裏側を少しだけご紹介。都美限定名画誕生の裏では、その名の通り名画を支える人々がいます。このようにして都美での記念すべき1ショットができあがります。ご参加頂いたお客様には夏の思い出としてお持ち帰り頂けたのではないでしょうか。
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軽快な音楽とウチワのプレゼント、なんといっても黄色と青色のターバンがお客様の視線を引きつけ、今回も沢山の方から「次回はいつでしょうか?」というお声を掛けて頂きました。「マウリッツハイス美術館展」の会期終了も迫り、とびコーの皆さんによる関連企画のお披露目をご覧頂けるチャンスもあとわずか。次回実施は9月9日を予定しています。その翌週9月16日が会期中お会い出来る最後の機会となります。
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暑い中の待ち時間、美術館からの帰り道、都美にいらっしゃる皆さんの気持ちを少しだけ盛り上げるべく、今日もとびコーの皆さんは様々な企画に取り組んでいます。
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最後に、本日の「真珠の耳飾りの少女」をご紹介しま〜す。
(とびらプロジェクトアシスタント 大谷郁)

 

 

ついに都美デビュー!はじめまして、とびラーです!

2012.08.05

「マウリッツハイス美術館展」の作品が展示されている企画棟の1 階、2階には、見晴らしの良いラウンジがあります。作品を観たあとに、カラフルな椅子に腰を下ろしてひと息ついたり、買ったばかりのカタログをさっそく広げる人も。大きなガラス面からは、東京都美術館(以下、都美)の正門から入口に向かう人の波も見えます。
「なんだ、あれ?」
「青いターバンがいっぱい…コスプレ?」
おや、正門周辺の様子がいつもと違うようです…早速、見に行ってみましょう!!

正門から、にぎやかな旋律が聞こえてきます。どこかで聴いたことがある懐かしいメロディ。演奏しているのは、とびラー候補生(以下、とびコー)有志で編成された「とびら楽団」です。団員はフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」と同じ青いターバンを巻いています。美術館入口で青ターバンがライブ演奏という予想外の出迎えに、暑さの中、足を運んでくさったお客様の顔も思わずほころびます。

演奏曲は、NHK「みんなのうた」でおなじみの「メトロポリタン美術館」。この曲はもともとニューヨークのメトロポリタン美術館を舞台とした物語をモチーフにしていますが、都美もTokyo Metropolitan Art Museum であり、秋にはニューヨークのメトロポリタン美術館展が開催される縁もあって、最初のレパートリーに決定したのでした。

楽団結成は5月末。演奏が好きな人、歌なら歌えるという人…経験不問、やりたい人全員ウェルカム!カスタネット、サックスから旅先で買った打楽器まで、楽器はすべて持ち寄りでスタートしました。8月まで2ヶ月あったとはいえ、平日は学校や仕事があるメンバーが多いため、自主練習と数回の合同練習で当日を迎えましたが、その演奏は、お客様を笑顔にするには十分なものでした。

楽団を横目に歩みを進めると、今度は楽団とは別の青いターバンの集団がいます。
「顔の向きはそのまま!視線をこっちに!」
「そうそう!はいっ、撮ります!」
撮るって…いったい何を???見ると、お客様が青いターバンを着けて大きな額縁から顔を出してにこやかにカメラに収まっていました。旅先で、歴史上の人物の等身大看板の顔がくりぬかれたところから顔を出して写真を撮ったこと、ありますよね?仮にそれを「顔出し」と呼ぶとします。その顔出しを更に進化させ、マウリッツハイス美術館展の目玉作品、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」でやってみよう!というとびコー発案企画「あなたも『真珠の耳飾りの少女』プロジェクト」だったのです。

ターバンをつけて撮影なんて、本当はやりたくても人前では恥ずかしいかもしれない。誰かがサクラで並ぼうか、という声もありましたが、始めてみると「やってみたい」というお客様があっという間に列を作りました。写真映えする手作りの衣装、リアルな額縁、フェルメールに扮した企画発案者(とびコー)・小野寺伸二さんの目線指導付きの撮影に、有料サービスかと思い込み「おいくらですか?」と聞く人もいたほどです。もちろん、全て無料です。とびらプロジェクトはプライスレスな活動です。

このプロジェクトも当初は、額縁はどうする?衣装はどうする?…と「どうする?」だらけでしたが、とびコーがそれぞれの特技を生かして、ひとつひとつクリアしていきました。見てすぐに「フェルメール!」とわかる色と質感のターバンを何枚も縫った時田薫さん、額を原寸大で下書きから描き、模様をグルーガン(スティック状の樹脂を溶かして接着させるもの)で立体的に作った山近優さんをはじめ、多くのとびコーの手と汗が、オリジナルの「真珠の耳飾りの少女」を観た人もがっかりさせない“ホンモノらしさ”を作りあげたのです。

鑑賞を終え、涼しい会場から出た途端に吹き出す汗。そうだ、外はこんなに暑かった…そんな時、思わず手が出るプレゼントも用意されていました。展覧会のチラシを再利用したエコな「うちわ」です。美術館にあるチラシは色やデザインが美しいものが多く、「次はこれを観に行こう」と持ち帰ったり、印象に残った展覧会のチラシはいつまでもカタログに挟んでとっておくことがあります。そんなチラシも、残念ながら、配布期限が過ぎれば配ることはできません。とても残念です。「カワイイデザインのチラシなのに、無駄にしたくない」、そんな想いから「チラシ de うちわ」プロジェクトがスタートしました。

何度も試作を繰り返し、形を決めるまでに長い時間をかけました。とびコーの手で1 枚1 枚心をこめて仕上げたうちわ。嬉しいことに、用意した100 枚は次々にとびコーからお客様の手に渡りました。実は、うちわをゴミにしないように回収ボックスも用意していましたが、その箱に戻されたうちわはわずか数枚でした。残暑が厳しい今年の夏、今日もどこかで小さな風を送っていることでしょう。

 

とびコーのアートコミュニケータ研修が始まってからおよそ4ヶ月。この日初めて、研修の合間を縫って取り組んできた企画を来館者に向けて発信しました。1時間という短い時間でしたが、お客様の「作品を鑑賞する」という当初の目的に、ささやかなサプライズとなったのではないでしょうか。お客様の笑顔や、「次回はいつやりますか?」という声に、手ごたえを感じたとびコーも多いことでしょう。うちわの配布は規模を拡大して8 月15 日のシルバーデーでも実施。別のプロジェクトの準備も進んでおり、とびコーの都美デビューはこれからも続きます。

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最後に、本日の「真珠の耳飾りの少女」です!

ご来場、ご参加ありがとうございました。

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とびラー候補生:筆者:山本明日香(やまもと あすか)
千駄木で夫と2人暮らし。15 年勤めた民放テレビ局を数年前に退職。会社の仕事にかまけて出来なかったことに少しずつ挑戦中。美術以外で気になるテーマは、うつわ、テキスタイル、リフォーム、ニュージーランド、そして食。食べて鍛える「舌の筋トレ」歴10 年。
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