東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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「パパトコ・ミュージアムトリップ」トライアル実施報告

2017.02.17

週末にご家族でお出かけしようとした時、どこに行きますか?公園、動物園・・・でも美術館は敷居が高いなぁと思われる方もいるかもしれません。この企画は、美術館をパパとこどものお出かけの場所にしてもらおう!子育てをきっかけに大人達にも美術館が身近に楽しめる場所になったらいいな、という思いから始まりました。

 

今回、とびラーでトライアル企画「パパトコ・ミュージアム」を開催しましたので、その様子をお伝えします。今回の企画は、東京都美術館から近い、国立西洋美術館の常設展を親子で鑑賞してもらい、その結果を絵本にまとめるという内容です。とびラーの紹介で、3組のパパとこども達、ママも併せると9人の方々に参加いただきました【こども4人(1才2人、4才、6才)/大人5人】。

 

まずは東京都美術館に集合。とびラーからの挨拶、企画の目的や流れをお話した後、自己紹介タイムです。
そして、国立西洋美術館に行く前の予習として、紙芝居をしました!紙芝居の中では、パパとこどもが国立西洋美術館に行きます。そこで見つけた9つの作品を紹介しながら、とびラーから「絵の中に何を見つけたかな?」「この絵は何に見えるかな?」と問いかけていきます。「桃を見つけた!」「赤い丸は地球?梅干し?」こども達も元気に参加してくれました。紙芝居は、参加者の皆さんにこれから鑑賞する作品を楽しんでもらうきっかけにしていただければと思って作ったものです。

 

 

次に、いよいよ鑑賞です。参加者の方々は、親子3組がそれぞれとびラーと一緒に国立西洋美術館に行き、作品を楽しみました。国立西洋美術館では、紙芝居で紹介された作品を見つけて、駆け寄っていくこどもも。初めて見る作品もたくさんあります。こども達が作品を見てどんな反応をしてくれたでしょうか・・・大人にとって意外な反応もたくさんありました。

 

 

そして鑑賞を終えて、再び東京都美術館に戻ってきました。皆さんそれぞれ一休みしながら感想を話されています。鑑賞後、絵本づくりで使いたい写真を5枚程選んでもらい、メールで送信していただきました。

 

休憩後、パパとこども達で鑑賞を振り返り、絵本づくりを行いました!こども達が作品を見た時の感想も取り入れて、作品や鑑賞時の写真、また一言を書いたアルバム形式の絵本を作成していきます。宗教画を選ぶこどももいます。「この杖がかっこいい!」

 

 

最後に、パパとこどもで作った絵本を、参加者の皆さんの前で発表しました。

 

 

彫刻もありました。困っているのかな、「いい子、いい子」と頭をなでてあげる子も。

 

 

大好きな果物も見つけてくれました。

 

 

皆で行った記念写真も絵本に。

 

 

トライアルを振り返って、参加したパパ達からは、「最初の紙芝居でこども達が作品に興味を持ってくれた」「絵本を親子で話しながら作ることができて良かった」「こどもが作品を見た時の反応が楽しかった」「美術館を親子のお出かけ場所にできるかも」との感想をいただきました。終わった後、参加してくれたこども達が絵本を大切に抱えて、喜んで持って帰ってくれた姿が印象的でした!

今回はトライアルでしたが、参加してくださった方々、本当にありがとうございました!鑑賞の前後に紙芝居と絵本づくりをすることで、パパもこどもも興味を持ってくれたり、鑑賞を親子で楽しむきっかけになったり。企画したとびラーの私達にとっても、パパ達、こども達の思いもよらない作品の見方を教えていただき、また素晴らしい絵本づくりに感動し、楽しい時間となりました。今後も美術館をもっと色々な方々に楽しんでいただけるよう、様々な企画に活かしていければと思います。

 


執筆:松山大美(アート・コミュニケータ(とびラー))
とびらプロジェクトに参加して1年目、多様な方々との出会いに感謝しています!

アクセス実践講座⑦

2016.11.27

11月27日に年内最後のアクセス実践講座を行いました。

前回(10/9)の講座では、年間課題を取り組んでいくためにグループごとに分かれて企画書をつくるワークを行いました。
年間課題に取り組んでいってもらうために、今回の講座では舘野泰一さんの「ワークショップ・メイキング」に関するレクチャーの復習と、企画書をつくるためのプロセスを順序立てて考えるワークを行いました。
まずは、とびらプロジェクトマネージャの伊藤達矢さんと一緒に舘野さんのレクチャーを振り返ります。

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続いて、グループごとに年間課題に取り組むワークに入っていきます。

この日は、企画書の構造を考えるにあたってツール(ワークシート)を用意しました。

このワークシートは5枚で構成されていて、
「ワークショップを通じて伝えたいことは?」「募集する対象者を具体的にイメージする」「ワークショップの内容を決める」「場を設定する」「企画の通し方をつかむ」というフレーズが書かれているものです。この一連の流れに沿って企画を考えていくと、舘野泰一さんのレクチャーが活かされている企画書を作成できる、というものです。とびらプロジェクトでは、アクセス実践講座に限らず全ての講座でこうしたツールを随時開発していて、とびラーがより深い学びを経験できるようにしています。
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企画書のブラシュアップをした後は、前回同様にワールドカフェ形式で、他のグループの取り組みを聞きます。
付箋にコメントバックをして、その場で出されたコメントを随時整理しながら進めていきます。

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この講座を終えた後はいよいよ企画書の提出です。
どんな対象者を設定して、その人たちのために有効なアプローチをとびラーたちが考えます。提案された企画が全て実現するわけではありませんが、内容によってはトライアル実施されるものもあります。一般公開する企画ではありませんが、トライアル実施されたものについては、またブログをご報告していきます。

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執筆:奥村圭二郎(東京藝術大学美術学部特任研究員)

アクセス実践講座⑥

2016.10.09

10月9日にアクセス実践講座(第6回目)を行いました。

4月からのプログラムスタート以降、下期に入りました。
今年度のアクセス実践講座では、美術館にアクセスすることができない人たちの状況について専門家を招いてレクチャーを受けました。
ここからはいよいよ実践編ということで、とびラーはグループごとに別れてアクセス実践講座の年間課題に取り組みます。

テーマ:
自分の周りにいる美術館に行く環境にいない人と、都美もしくは上野公園内のミュージアムを一緒に体験する。

この日の以下の流れで進行しました。

模造紙を広げて企画アイディアのブレスト

グループごとに共有

ワールドカフェスタイルで検証。ポストイットを使ってコメントバック。

コメントを受けて企画をグループごとに練り直し

企画書に仕上げて発表

前回の講座(9/25)では、舘野泰一さんからワークショップメイキングのレクチャーをしていただきました。
今回は、前回の講座を受けて実際に自分たちで企画書を作ってみる、という意図を込めています。またグループワークですので、とびラボとは違ってとびラーはグループメンバーを選ぶことができません。ゼロから関係を育み、同じ目的に向かっていくプロセスそのものが、アクセシビリティとどのように対峙するかということにつながると考えています。

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まずはチームごとにブレストをする時間です。

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話し合いの中で出て来たことを、どんどん模造紙に書き出していきます。

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ブレストの結果を全体で共有した後は、ワールドカフェ形式で他のグループの企画を聞き、コメントバックをする時間です。
3種類の付箋「いいね!(水色)」「なぜ?(黄色)」「こうしたら(ピンク色)」を用意し、色ごとにコメントの意図を分けて、他のグループの企画に対してどう考えたかお互いの意見を出し合います。

前回(9/25)の舘野泰一さんの講座では、他者に伝える事で経験的な学びにつながるということを知りました。自分たちでゼロから作った企画を他者に伝えることの難しさを学びます。

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他のグループのコメントを受けて企画内容を見直した後は、企画書のフォーマットに内容を落としていく作業です。
広がった内容を企画書という決められた体裁にどのように書き換えるか。企画書は他者に内容を伝える重要なツールですので、言葉の選び方、説明のプロセスをイメージしながら、伝わる企画書に仕立てていきます。

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最後はグループごとに発表してもらいました。
今回は講座の時間内で企画書を1本作る、という設定でしたが、とびラーには今回と同じテーマで年間課題に取り組んでもらいます。今回のワークを受けて、まずは企画書を提出していただきます!

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執筆:奥村圭二郎(東京藝術大学美術学部特任研究員)

 

アクセス実践講座④⑤「ワークショップデザイン入門 体験を通して学びを深める場作りとは?」

2016.09.25

2016年9月25日(日)アクセス実践講座④⑤
「ワークショップデザイン入門
体験を通して学びを深める場作りとは?」
講師:舘野泰一 氏(立教大学経営学部助教)

 

この日のアクセス実践講座では、ワークショップメイキングの基礎的知識や方法論、他者への伝え方について、立教大学の舘野泰一さんをお招きし、1日かけてレクチャーをしていただきました。とびラーたちは舘野さんから事前に出された課題に取組み、当日を迎えました。
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アクセス実践講座②③

2016.07.17

この日は今年から始まる《ミュージアム・トリップ》で対象となるこどもたち(①養護施設のこどもたち、②貧困など経済的困難を抱えるこどもたち、③カルチャー・ギャップなどの困難を抱える海外にルーツのあるこどもたち)について、3名の専門家をお招きして、レクチャーをしていただきました。
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講師:
1 渡辺由美子氏(NPO法人キッズドア)
http://www.kidsdoor.net/otona/mission/message.html

2 高取しづか氏(NPO法人JAMネットワーク代表)
http://www.takatori-shizuka.com/profile

3 小山紳一郎氏
https://www.meiji.ac.jp/ggjs/professor/koyama_shinichiro.html
http://www.clair.or.jp/tabunka/portal/column/col-koyama.html


 

 

1 渡辺由美子氏(NPO法人キッズドア)

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今回のレクチャー、まず初めにNPO法人キッズドアの渡辺由美子さんからのお話を伺います。

キッズドアは生活保護や一人親家庭の支援をしている団体で、2007年に立ち上げ、今年でもう7期目になります。
大学時代に工業デザインを学んでいた渡辺さんですが、キッズドアの活動を初めるきっかけとなったのは、
旦那さんのお仕事の関係で1年間滞在したイギリスでの生活が大きな動機となっているそうです。
当時のブレア政権は教育に対して手厚く予算をつけていたこと、また、美術館などの文化施設は全て無料で、日本とイギリスの差に大きく衝撃を受けられたそうです。格差で言えば、格差で言えばイギリスの方が日本より格差が大きいが、子供にはその影響を感じさせない施作が取られているとのことです。

日本は親が教育にとてもお金がかかる国です。親の収入が少ないと、教育を受けづらい事実があります。
親の収入が低い→子供に十分な教育を受けさせられない→子供はやる気を無くしてしまう、という貧困の連鎖に繋がっています。これをもう少し広い視野で見ると、階層の固着化になっていると渡辺さんは指摘します。
日本の子供の貧困は見えづらいく、服装だけじゃ見分けられないということも仰っていました。
*日本の貧困率:16.3%→6人に1人。年間122万円以下で暮らす人。

こうした日本の子ども達の貧困化は非常に新しい出来事だと渡辺さんは仰います。
これまでは一億総中流社会だったから貧困の子供はいないと思われていて、リーマンショック以降、顕在化してきた。正社員だった人たちがホームレスになる、無保険の子ども達。
こうした社会背景を元に、2009年には厚労省が日本の子供の貧困率を出しました。新しい課題として認知され、なんの手立てを取ってこなかったことが明らかになりました。
もう一つの大きな特徴はひとり親家庭が多く、OECDの中でも一番だそうです。

ではなぜひとり親家庭の子供の貧困が高いのか?
日本は養育費の支払い率が低く、正社員だったが子供を産んだ女性の収入が低い、なかなか正社員になれないという状況があります。
Wワーク、トリプルワークをしている親が多く、その状態が続くと体を壊してしまう。
母子家庭で、親が働いていないのは、働けない状況です。

なぜ教育はうまくいっていないのでしょうか?
端的に言うと、国が教育にお金を支出していないからだそうです。
教育費を税金で賄っている部分が少なく、そのほかは私費から出ている。
このため親の経済力が教育に直結している構図が生まれてしまいます。
高度経済成長を終えた今の日本では、安定していて高収入の職種は、高学歴でないとなれない。
どんなに優秀な子でも、家にお金がなければ医者や弁護士になれない。
高い教育を得るにはお金が必要、お金を得るには高い教育が必要。
そのループから一度出てしまうと、なかなか上がれない構造があります。

なぜ低所得の子供の学力が低下してしまうのでしょうか?
生活環境が悪く。勉強部屋、机がない。
家で勉強していて、わからなくなればそこで止まってしまう状況があります。

こうした子ども達の状況に対して、キッズドアでは様々な取り組みを行っています。
「学習支援事業・ガクラボ」「低所得世帯の中学生向け無料高校受験支援」です。
これらの事業の成果として、子ども達が世界を知る機会になっていることが挙げられます。
コミュニケーション能力が低く、まともに話したことがあるのは親ぐらい、という子ども達にとっては、
将来の仕事感が備わりません。成人するまでに、仕事に対するやる気が芽生えていなければ、その後の就業につながらず、負のループに陥ってしまうと渡辺さんは仰います。こうした子ども達を生み出す構図は、日本の社会全
体にとっても大きな課題です。
他にも、子供を通じた家庭への支援(食品提供)や奨学金の情報提供など、
「教育支援が窓口となり生活支援他の貧困の世代間連鎖を断ち切る支援を繋げる」ための事業をキッズドアでは取り組まれています。またそれ以外にも、現在来てくれているボランテイア学生をどう支えていくか、ということも課題とのことでした。

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2 高取しづか氏(NPO法人JAMネットワーク代表)

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続いて、NPO法人JAMネットワーク代表の高取さんから「児童養護施設に入所するこどもたち」の状況についてお話を伺います。

<話の進行>
(楽しいアクティビティ)
3 こどばキャンプの様子

1 ことばキャンプとは?

JAMネットワークが行う「ことばキャンプ」はゲームを通じたワークショップです。
アメリカのオーラルコミュニケーションがベースにあり、自分も相手も大切にしながら人と関わる7つの力を養います。2002年から活動を続けています。
アメリカではことばを使って伝え合うオーラルコミュニケーション教育が盛んです。
JAMネットワークの活動を始められる前に、米国ミシガン州へ視察をした時、に練習すれば上達し、
大人顔負けでプレゼン、理由も含めて意見を言えるようになっている事に感動を覚えたと高取さんは仰います。

JAMネットワークでは、これまで26冊著書を出されていて、活動に対してのオファーが全国からあるそうです。
これまでに約72施設に訪れたそうです。

2 社会的養護のこどもたち

◯社会的養護の子どもの現状
対象児童は、約46,000人(H25.3)
• 日本では施設に入る子どもたちが多い。
• 国としては里親の受入数を増やそうとしている

◯社会的養護 施設の現状
• 乳児院
• 児童養護施設
• 情緒障害児短期治療
• 児童自立支援支援
• 母子生活視線施設
• 自立援助ホーム

◯過去30年間における子どもの施設入所理由
• 近年は「親の虐待」が増えている
• 虐待によって精神のバランスを崩す

◯児童虐待相談件数の推移と障害児比率の推移
• 年々相談件数が増加
• 具体的な症状や課題
>衝動のコントロールが出来ない、年齢相応の生活習慣を獲得していない

◯過酷な環境を生き抜く仲で身に付いてしまったもの
• 虐待開扉型の非行
• 「解離」という精神の防衛機能
• 暴力・性的行動に対する高い親和性

児童養護施設の子どもたちは、一見素直でかわいい子どもたちです。
ただ、時として色々な問題が抱えています。成育歴の中で、気持ちを伝える言葉がけをしてもらった経験が乏しいと、心とは裏腹の行動をとってしまうことが多いと高取さんは話します。

◯児童養護施設で活動する際のポイント
1 個人情報の保護に十分注意する、施設名・子どもの名前は絶対出さない。SNSは厳禁。フルネームはあまり聞かない。

2 暴言や逸脱した行動があった場合は、常識の範囲内で大人として対応する。

3 不適切な質問をしない。家族、過去のことなど。

4 気になることはJAMネットワークのスタッフに何でも相談する。

5 施設職員、親御さんを尊重する、否定しない。

ことばキャンプの目的は、ドラえもんに出てくるしずかちゃんのコミュニケーションに例えられます。
じゃいあんは人に意見を押し付ける、のび太はドラえもんにしか意見を言えない。しかし、しずかちゃんは自分も相手も大切にしながら上手に伝えるコミュニケーション=「自尊他尊」の気持ちがあります。

続いて、児童養護施設で高取さん達が行なっている具体的な活動「ことばキャンプ」のワークを紹介していただきました。

◯ことばキャンプ
「どっちにす~る?」 (論理力のトレーニング)
「好きですか?嫌いですか?」(10人いたら意見が違うことを知る)
「ババチョップ」(応答力のトレーニング)
「聞くトレーニング」(聞くことを覚える)

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3 小山紳一郎氏

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最後は、明治大学の小山紳一郎さんより「多文化共生」についてのレクチャーです。

小山さんはこれまで、神奈川県立地球市民かながわプラザで、
1学校・NGO向けの国際理解教育講座
2外国人支援試策に関する調査研究
3外国人のこどもの教育に関する相談
を実践されてきました。

◯はじめに
まずは2年前に調査で訪れた韓国多文化家族支援センターのお話です。
・国際結婚した母子をサポートするセンター
・韓国内で現在、政策課題が深刻化してきている
・2010年1年間:10組に1組が国際結婚という統計データ

韓国では2008年に多文化家族支援法を制定。
この背景には、韓国内の外国人人口が増加傾向にあることがあります。
2006年53万人→2015年174万人(全人口で3.4%)この25年で非常に増えてきているそうです。

これに対して、日本はどうなのか比較してみます。
(在留外国人(短期滞在含む)のデータ)
・右肩上がりに増加。2015年:223万人(全人口で1.76%)
・日本の人口の推移 2012年:1億2773万人より減少していく一方
・外国人比率は上がっていく予想(厚労省データ)

これを受けて「選択する未来」委員会(内閣府作成)が発足され、
今後の人口減少・少子化に向けた検討会が開かれるようになりました。

都人口と外国人人口の推移としては、2年前から外国人の人口が再び上がってきていて、2020オリンピックに向けて定住外国人が増えていくのではないか予想されています。
また、中国、韓国・朝鮮、フィリピン・ベトナム・ネパール等、アジアからの移住者多いことが特徴として挙げられます。
日本での国際結婚の状況にも変化があります。
最新のデータでは、28組に1組が該当し、外国人女性と日本人男性のカップルが圧倒的に多いそうです。

公立学校に在籍している外国人児童生徒数は3万人まで増えてきており、日本語指導が必要になっていると、小山さんは仰います。

基本的なことを学び、ここで一旦グループワークに入ります。

◯グループワーク
・グループごとに自己紹介(アート以外で興味のある分野)
・外国にルーツを持つ子どもが学校で起こる課題を想像する

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・ジェスチャーが違う
・食文化の違い
・漢字テストで悪い、英語テストで良い>個人のせいではなくルーツのせいにされる
・クラスメイトと笑いのポイントが違う
・文化の違い、学習内容(歴史、道徳)に困る
・保護者の方にも日本語が読めない>学校からのお便りが読めない
(持ち物・宿題が持って来れない)
・進路相談で困る(親が日本の現状を知らない)
・言葉がわからない
・宗教に関する習慣(ラマダンのとき、どうしているのか)
・異性との関わり方
・宿題を家で教えてもらえない
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小山さんのまとめ
・日本語の壁(学習思考言語の習得)
・異文化適応
・いじめ
・友人ができない
・アイデンティティのゆらぎ(自分がベトナム人なのか、日本人なのか。思春期の悩み)
・高校進学率の低さ(学力遅滞)
・高校中退率の高さ(不十分なサポート)
ーーーーーーーー

小山さんが仰るにはこどもだけでなく、親御さんの悩み(通知や連絡が理解しにくい等)もたくさんあるそうです。

外国にルーツを持つ子どもを取り巻く状況に対して、行政の取り組みについてへと話は続いていきます。

◯外国人児童生徒支援の現状
人員:日本語学級担当教員の増員→23区内11区。中学校には23区内5区。
予算:モデル事業に予算投じる

○都教育庁(教育委員会)の取り組み
・都立高校の外国人特別募集枠など
・教材作成、情報提供、相談

行政施策だけでは十分に対応できていないと、小山さんは仰います。
これらの対策例としては、第三セクター(件・市区国際交流委員会)による日本語教室が挙げられます。
例)多文化共生センター(荒川区)みんなのおうち(新宿区)レガートおおた(大田区)
IWC国際市民の会(品川区)、CCS(全域)

また、認定NPO法人多文化共生センターでは、以下の取り組みを行なっています。
・教育相談
・多言語による高校進学ガイダンス
・放課後学習支援
・親子日本語クラス
・実態調査
・講師派遣

ここで、小山さんの教え子でもある新宿アートプロジェクトの海老原周子さんから、ご自身の活動についてご紹介いただきます。

 

新宿アートプロジェクトは7月より「一般社団法人kuriya」になります。
これまで15年間、多文化共生に関する活動を行い、外国ルーツを持つ子どもたちの人材育成を行なっています。

2009年〜2013年までは、新宿を中心に、アーティストを呼んで地域の子どもたちと、外国にルーツを持つ子どもたちをつなぐ「第3の居場所」としてのアートワークショップを年間30回開催してきました。
2014年からは、居場所を用意するのではなく、自分たちで作っていく人材育成事業を手がけられています。

「なんで、外国にルーツを持つ子ども達がミュージアムに来ないんだろう?」と考えたりすることで、新しいニーズにつながるのではないか、と海老原さんは仰います。社会問題ではなくポテンシャルである、と捉えていると良いそうです。

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この日は長時間に渡り、私たちの社会で様々な状況にある子どもたちのことについて学びました。
最後に行った質疑応答も活発で、個人の中で疑問が多くの残ったことはポジティブな結果だと言えます。
今年は「ミュージアムトリップ」の活動がこれから本格的に始まります。ここで得た知識や施設に伺う際の注意点を実践の場で役立たせて行こうと思います。

執筆:奥村圭二郎(東京藝術大学美術学部特任研究員)

 

アクセス実践講座①

2016.07.10

2016年7月10日(日)

アクセス実践講座①
「創造・想像から排除された人々へとひらかれる美術館」
熊谷晋一郎氏(東京大学先端科学技術研究センター准教授)

 


 

今回のアクセス実践講座では、美術館にアクセスしづらい人々について、より具体的に先進的な事例から学びます。第1回目となる回では、医師で当事者研究をされている熊谷晋一郎さんをお招きしました。

障害はどこに宿るのか

生まれつき脳性麻痺の熊谷さんは車椅子で生活をされています。
熊谷さんが生まれた1970年代は少しでも健常なひとに近づこうというトレーニングが主流でした。当時脳性麻痺は治ると思われていたそうです。
80年代になってレジデンスが支持されるようになり、それまでは偉い人が治るといえば治ると言われていたが、しっかり研究したうえでその結果を知ろうという流れになってきました。81年に入ると当事者運動が起こります。

ここで一枚のスライドが映し出されます。
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「みなさんはどこにやどっていると思いますか」

「階段を指差す」
「車椅子を指差す」
「周り。まわりに人がいないから。」
「足。足に障害があるから階段がのぼれない。」

他の場所で行った例で、こどもたちは頭を指さして「根性がたりない」と言ったそうです。どれも正解です。

障害がやどる場所は大きく2つにわかれる、と熊谷さんは仰います。
本人の体のなかに宿っている医学モデルと本人の体のそとに宿っている社会モデル。

80年代は医学モデルから社会モデルに意識が移動した時期で、その背景には脳性麻痺はなおらない、当事者問題(社会が変わるべきなんだ 障害者に限らない問題。個人は変わらない。社会が変わるべきなんだ)が挙げられるそうです。医学モデルから社会モデルの変化は、熊谷さんにとって生きるための大きな変動だったそうです。

「みなさま東日本大震災はどこにいましたか?」と熊谷さんからとびラーへの投げかけがありました。震災の時、熊谷さんは研究室にいらっしゃいました。エレベーターが動かず結局救助されて担ぎ出された時に「これが障害だ」と思ったそうです。
健常者は階段に、はしごやロープに依存して逃げることができるので、エレベーターに依存しなくても逃げる手段がたくさんあります。この社会は健常者の身体用にカスタマイズされており、健常者は依存先が多いです。しかし、障害をお持ちの方にとっては、依存先が少ない。階段にもはしごにもロープにも依存できず、エレベーターへむける矢印が太いと熊谷さんが仰います。

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健常者は本数が多く矢印が細い
矢印の本数と依存度は反比例する
矢印の本数が多ければ多いほど依存度は低く、矢印の本数が少なければ少ないほど依存度が高い。

 

そもそも依存という概念に太さと本数のバラメーターを知らないと足元を掬われてしまいます。太さと本数のバラメーターを混ぜてしまうから間違った解釈が起こり、本数が多く矢印の細い方が自立していることになっています。結果として、依存先を奪うことが自立支援だということになります。

 

例として、薬物物依存症を挙げます。依存しすぎるのが依存症ではなく、
身内から虐待されている人、トラウマを抱えている人等、「人に依存してはいけない」「人なんか信用していたら大変なことになる」という人の病です。その結果物質や、一部の神格化した誰かにしか依存でき無くなります。これは、障害の問題にも通じることです。

 

回復するにはどうすれば良いか?矢印の数を減らすことではなく、薬物以外に依存するツールをふやす支援が大切であると熊谷さんが仰います。

 

1970年代までの身体に障害を持つ人々にとっては、依存先がとても少なかった状況でした。年老いた親か、施設に身を置くしかありませんでした。依存先が少ないということは、暴力の被害者になる確率が増え、共依存に陥ることが多くなります。こうした背景を変えるため、自立生活運動へと時代は進んでいきました。様々な視点からよりよい生活デザインの提案がされ、その結果、地域と市場に依存先を開拓することが可能となり、飛躍的に暴力事件は減りました。

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後半

前半より、自立生活運動の話が続きます。

 

自立生活運動では大きな二つのスローガンが掲げられました。
・自己決定の原則
・手足論
この2つは、介助者に支配されないためにどうすれば良いか、という課題から考えられました。
文化的な生活というのはそれをするためにたくさんの条件が必要ということを伝えたい、と熊谷さんは仰います。

 

当時は自己決定の権利を失ったら支配されてしまうと思っていたそうです。
しかし、例えば、シャワーを浴びる時、介護者は指示がないと動くことができません。
左腕から、左腕のどこから?脇から?爪先から?
日常生活のあらゆるところにこの構造があるが、全てこれに支持していたら生活が果てしなく終わりません。
しかし健常者の人はこれらのことを、ほぼ習慣として自己決定しています。手足に良き計らいボタンがあると、熊谷さんは続けます。
つまり、自己決定と手足論は同じ意味に成り立ちません。

このようなことを実現するためには、自分のベーシックレベルを相手に意識してもらうことが大事だと言えます。例えば、いつお風呂にはいるのか、いつ行くのかは自己決定だが、腕のどこから洗うのかなどは徹底しなくてもよい領域です。このベーシックレベルの幅は人によって違う。

ここで「自分の声を制御することができないから、会話に入れない。」という障害を持つ方の事例が出されます。

フィードバックが大事
A発生期間の筋肉
B肉体電線フィードバツク
C空気伝導
D他者のリアクションのフィードバック

発話を構造的に整理します。
・予想していたよりも喉の動きが大きかった、予測しながら運動していた
・運動指令とフィードバックをしている
・予測誤差に直面するとは話せなくなる。
・たとえば自分の声が違うようにきこえる、それだけで話しづらくなる。
・予測誤差の敏感さが自閉症の根本にあるのかもしれない

 

発声だと思考と運動が直列になり、手話だと思考と運動が並列になるそうです。
これはパソコンに通ずる親和性があると言えます。

 

人間の意識の状態について、3種類のモードを事例として説明されました。

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●あたふたモード
予想をたてた瞬間から予想を裏切られる状態が続いていること
予測誤差と自己決定がたくさんせめられている状態
親の気持ちがわからないなど
社会的弱者の子が多い

●すいすいモード
生活の中のおおよそ扉がひらく。
身体を含めた生活の基盤が予測可能な状態で、初めて人はクリエイティブにな意識を立ち上げることができる。

●ぐるぐるモード
世界とオフラインになる。過去の記憶だけど思い出して反芻する。生産的なこともあるし、ネガティブなこともある。

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薬物依存症の人は、日中は覚醒しあたふたしてしまいます。しかし夜になるにつれて、あたふたからぐるぐるに移動する。この時間帯が一番危ないと考えられます。そういったときにクリエイティブな気持ちになるのは難しい。

少数派の人たちは、単に不便さを享受しているだけでなく、すいすいモードや文化的体験の機会を剥奪されていると言えます。社会的排除、文化的生活の排除を受けている人たちにとっては、創造的な活動ができるために美術館が「安全な場所」である必要があります。そして安全な場所であると分かれば、すいすいモードになり、創造的活動をはじめて行うことが可能になると熊谷さんは仰っていました。

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執筆:奥村圭二郎(東京藝術大学美術学部特任研究員)

アクセス実践講座②

2014.07.27

 アクセス実践講座の第2回目です。今日の講座では、お二人の講師をお招きし、お話を伺います。

林建太さん(視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ 代表)

 林さんが代表されている「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」についてのお話を伺います。林さんがなぜ、視覚に障害のある方々と鑑賞をしようと思ったのか、その原点や鑑賞中(活動中)に交わされる言葉などについても話しが及びます。
 2014年3月には、とびラーによる「視覚に障害のある方々との鑑賞プログラム『トーク∞トーク』」の実施に向けても、林さんたちにご協力頂きました。(東京都美術館で行なわれている「障害のある方のための特別鑑賞会」内において実施)その時のわたしたち自身の活動についても振り返ります。


杉山貴洋先生(白梅学園大学子ども学部准教授)

 こどもの表現についてのお話の後、実際に手を動かす活動も行いました。「芸術の原型に近づこう!」という杉山先生の呼びかけの下、筆と墨汁で自分の目の前に座っている人の自画像を描きます。左手だけで描く、一筆書きで描く、画面を見ないで描く…、様々なルールをかせられて描く絵。少しずつ絵がのびやかに変化していきます。絵を見る時間よりも、目の前の対象をじっくり見る時間をもつこと。相手を感じて描きます。


 実際に自分の手を動かすワーク。頭で理解したことが、身体と結びついたとても楽しい時間でした。

(東京芸術大学美術学部特任助手:近藤美智子)

アクセス実践講座①

2014.07.06

 4月から6月に開催されていた「基礎講座」が無事終わり、とびラー対象の3つの「実践講座」が始まりました。

 今日は、そのひとつ。アクセス実践講座の初回日です。アクセス実践講座の目標は「障害のある人も、介護や介助が必要な人も、小さなこどもたちも、そしてそのご家族も、誰もが何のためらいもなく文化資源に出会える環境を目指して、様々な対応や状況への理解を深める」ことです。

 今日の講座では、東京都美術館アート・コミュニケーション事業の担当学芸員である稲庭彩和子さんから、初回ガイダンスが行なわれました。稲庭さんご自身が働いていた神奈川県立近代美術館と養護学校が連携して行なった「音でつながる私とアフリカ 」の活動のお話、そして海外の博物館などで行なわれている認知症の方へのプログラムなど、他館で行なわれている様々な取り組みを学びます。

 その後、白梅学園大学子ども学部准教授である杉山貴洋先生から、「障がいのある子どものためのWS」についてお話して頂きました。とびらプロジェクトで活動するとびラーは「Museum Start あいうえの」で実施しているこども向けプログラムにて、こどもたちの冒険の仲間としても活動しています。昨年度活動したプログラムのひとつ、障害のあるこどもたちを含むすべてのこどもたちのためのプログラム「のびのびゆったりワークショップ」を振り返り、今年度に向けて、意識を高めていきます。
 

 昨年度の映像を見ながら、顔がほころぶとびラーたち。今年度もたくさんのこどもたちに会えることが今から楽しみです。

 (東京芸術大学美術学部特任助手:近藤美智子)

アクセス実践講座:ワークショップに向けて

2013.09.15

アクセス実践講座:障害のある子どもの表現について

2013.08.25

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