東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

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2016.11.26

「アート筆談de対話鑑賞」耳の聞こえない人⇔聞こえる人 /ゴッホとゴーギャン展
【日時】11月26日(土)13:30~16:00
【会場】東京都美術館 ゴッホとゴーギャン展、アートスタディルーム

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耳の聞こえない人と聞こえる人が、一緒に作品を見て鑑賞したら、どんな対話が生まれるのでしょう。
今回は、「アート筆談」という、いつもとちょっと違う方法を使って対話鑑賞を実施しました。さてさて・・・どんな世界が広がったのでしょうか?

 

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まずは、「初めまして」の自己紹介。
アイスブレイクのお題は「ゴッホと言えば何?」
東京都美術館にいつも設置している磁気ボード「とびらボード」を使って伝え合いました。
そのあとは「ゴッホとゴーギャン展」の展示室へ。
生憎この日は混んでいたため、各自でグループの「共通の作品」を鑑賞し、またそれぞれ「気になった作品」を選んでもらいました。
鑑賞後は再びアートスタディルームへ。
いよいよメインワークの「アート筆談」が始まります。

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_mg_4772最初は戸惑いながら、でもだんだん慣れてきて、さまざまな画材を使っての対話が繰り広がっていきました。
聞こえない人が聞こえる人に手話を教えたり、ジェスチャーを使ったりとさまざまなコミュニケーションを交えて対話はどんどん盛り上がっていきました。

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すごいと思ったのは、アート筆談は普通の言葉の会話より、「作品のどこからそれを感じたのか?」「どんなイメージが浮かんだのか?」視覚的に一目瞭然に捉える事ができます。
また、参加者が個々に描く絵や文字から「その人らしさ」が見えてきます。普段の会話では見えない部分です。
さらに、一度話したことが消失せず、支持体に残っているので、遡って話をつなげたり、会話を膨らませることができます。時間軸、空間、概念(イメージ)・・・などなど、
メインワークはまるで「三次元」「四次元」の世界の対話のようでした。

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最後は各グループの「アート筆談」の痕跡(板ダンボール)を前に、どんな対話が広がったのか発表してもらいました。

あるグループは4人の描いた絵から、新たなストーリーが出来上がり、「アート筆談」から新たな作品が生まれる?ような対話もあったようです。
参加者は「描くことによって、よりゴッホの気持ちが深く理解できたように感じた」とコメントしました。また「男性の感じ方と女性の感じ方が違いがあるのかも。」など、さまざまな視点が広がったようでした。

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今回は、全体説明では手話通訳だけではなく、とびラーによるPCの文字情報保障もつけました。またメインワークで少しでも対話の時間を増やすために、ファシリテーターの質問カードを作成したり、椅子を丸椅子に変えて動きやすくするなど工夫しました。前回のトライアルの反省点を踏まえてとびラーで何度もミーテイングを重ねてきた内容を、今回はいくつも実現できたように思います。

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最後に今回の参加者16名全員にアンケートを記入して頂き、「満足した」の回答を100%頂くことができました。

 

【聞こえる人のアンケートコメント】(一部抜粋)
・「最初は聴覚障がい者の人とどう接すればいいかわからなかったけれど、いろいろなコミュニケーションができて楽しかった。」
・「童心に戻ったように、夢中になった」
・「アート筆談だと、話しているのと同じような気分になった」
・「フラットに話ができて、あらたな気づきを得られました。」

【耳の聞こえない方からのアンケートコメント】(一部抜粋)
・「まったく手話ができない聴者とも一緒に楽しめた。」
・「美術館は観るところと思っていましたが、描く・書く、楽しさを味わいました。」
・「実際見るだけよりも、描いた方がいろんな発見がありました。」
・「新たな人間関係を築いていける方法として大変効果的だと思いました。」
・「耳が聞こえないというハンデを忘れることができました。」

 

【おわりに・・・】
初めて出会う聞こえない人と聞こえる人が、作品を見て一緒に対話鑑賞するにはどうしたらいいのだろう。
案外知られていないのですが「聞こえない人」といっても手話のできる人、できない人、発話できる人、文字が苦手な人、さまざまな人がいます。みんなで一緒に対話するにはどんな工夫が必要になるのだろう・・・そんなことを考えるうちに「そもそもコミュニケーションって何?」「言葉って何だろう」と改めて原点に立ち戻るきっかけにもなりました。

コミュニケーションとは「伝え合うこと」。普段の何気ない会話でも、伝え合う事って難しいと感じることは良くありますよね。「どうして伝わらんないんだろう」と思ったり、逆に伝わったときは喜びを感じます。
今回の「アート筆談de対話鑑賞」で一番大きな発見は「アート筆談は言葉になる前の概念(イメージ)を言葉にすることができる」という事でした。
人が相手に一番「伝えたい」ことって「言葉になる前の概念(イメージ)」だったりしませんか。
またひとつ「アート筆談」の新たな可能性を感じた一日でした。
ご参加くださった方、お手伝い下さったスタッフ、とびラーさん本当にありがとうございました。

 


執筆者:瀬戸口裕子(とびラー・アートコミュニケータ)

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