2024.02.25
日時|2月25日(日)13:30〜16:00
場所|東京都美術館 ASR・スタジオ
講師|小牟田 悠介
テーマ|「1年間のふりかえり」
これまでの講座の内容と、その講座を受けたとびラーからのふりかえりを紹介し、グループでシェアしました。
講座の内容についてふりかえった後は、講座で扱ったテーマ以外で
「ミュージアムにアクセスすることが難しい人たちって?」をテーマに話し合いました。
とびラーからのふりかえりを抜粋します。
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・この一年間受講してみていかに自分は狭い視野だったんだろう、社会知らずだったのだろうと打ちのめされました。無自覚な接し方を少しでも減らしてアートを楽しんでもらえるようとびラー活動に活かしたいです。
・障害への差別意識はないと思い込んでいたが、それよりもどんな困り事があるのかを「知ること」のほうが大事だと感じた。 これまでも漠然と思っていたが、この講座で具体的な足掛かりができ、自分ができることから関わっていきたいと思うようになった。
・大変気づきの多い時間となりました。また、これらの問題解決のために様々な支援を行っている方の活動も知ることができました。現状を受け止めて常に意識していかないと何も変わっていきません。これから何に取り組もうか、目指す方向性が見つかったことも大きな収穫となりました。
・毎回受講する毎にアクセシビリティに関する現状を知り、驚きでした。時間の経過とともにそれも薄れていく中で、1年をふりかえる時間は貴重でした。頭の片隅にでもアクセシビリティを意識していないと、情報を見逃したり、忘れてしまいがちだと思います。
・知的障がいを持つ方たちと街に出るとき、私はとても周囲に気を使います。一般社会への気配りは裏を返せば、一般社会側が「障がい者」を受け入れていないと感じているためだと思います。しかし今回、教室の一番後ろの席から1年間の振り返りを聞いていた時、「少なくとも私の前に座っている人たちは、もし私たちが外に出て困っていたら手を差し伸べたり、温かく見守ってくれる人たちなんだ」と思ったと瞬間、とてつもない安心感と喜びが沸き上がりました。こんなに沢山の「味方」がいるんだと思いました。 こんなにたくさんの「味方」を目の当たりにできたこと、本当にうれしく思っています。
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1年間、お疲れ様でした!
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤 阿貴)
2024.02.17
第7回建築実践講座|「ふりかえり」
日時|2024年2月17日(土)14:00〜17:00
会場|ASR・スタジオ
いよいよ最終回。
まず、初回から前回までの講座の内容をふりかえり、
次に、年間課題である「建築を、みる、楽しむ、伝える」を実践した内容を、グループ内でシェアしました。
課題は、
<目的>「誰かとみる」を楽しむ
<内容>東京都美術館以外の建築ツアーに参加する、
建築関連のイベントに参加するなど、 誰かと建築を楽しもう。楽しんだ後はホワイトボードで他のとびラ ーにも体験をシェアしよう。
というもの。とびラー同士で誘い合いながら、またはそれぞれ旅先で、または友人を誘うなど、様々な方法で誰かと建築を楽しみました。
各々スマートフォン・タブレットで撮った写真や現地でもらったパンフレットなどの資料を見せながら、見学した建物や参加したツアーについて熱く語りあいました。
その後、東京都美術館の「とびラーによる建築ツアー」で、すでにガイドを務めているとびラー10名によるツアーを行いました。
この「とびラーによる建築ツアー」は年間6回、各回定員30名で実施されており、大変好評をいただいているツアーです。
とびラーになる前に参加した人もいますが、多くはこのツアーを体験していません。
実際にどのように行われているのか、何を感じるのか、とびラーならではの場づくりはどのようなものなのかをそれぞれが意識しながら参加し、
ツアー終了後はふりかえりを行いました。
今年度の締めくくりに3人組でシェアしたのは、「これからアート・コミュニケータとして人々をつなぐ場をデザインするために、これからどのような行動をおこしたいか」です。
とびラーからのふりかえりを抜粋します。
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・1年間の講座に共通して感じたことは、建築はその建物だけでは成り立たないということ。そこには必ず人が存在しているということ。鑑賞する際には、その建物の設立された背景や使っている人の営みの積み重ねがあり、現在の姿があることを意識したいと思った。
・建築をよく見て考えてシェアするには、他の人と安心して過ごしつつ集中できる場作りが必要で、そのためにとびラーの役割があると改めて感じた。
・東京都美術館の資源を活用して、同じ経験がここでも生まれていて「自分の感覚を手掛かりにすること」、今まさにこの場所に繋がっている。 建物を楽しい、と、思った「発見」を大切に、同じように参加者の方、鑑賞者の方へ伝えたい思いが更に増している。
・建築講座を一年受講してみて、とても愛に満ちた講座だなと思いました。色んな方の愛の形を見せてもらった気がします。
・今年の建築講座の仕立ては、みんなで建物を見る楽しさを体感する機会の創出、その経験の中で自分は何を推したいのかが徐々に明確になっていくプロセスが良かったと思います。知識の引き出しに関しても、先生方の講座で十分すぎるくらいにご提供いただけました。そもそも、知らないものは推せないし、知りたくなった時に取りにいけるので。
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例えば、東京都美術館のひとつひとつのディテールが、誰に、どんな思いで使って欲しいかを考えられてそこにあるのかがわかると、愛着がどんどん増します。
その良さや感動を自分だけのものにするのではなくて、誰かに共有することで、大切に思ってくれる人が増え、その建築がこれからも使われ続けることにつながります。
建築を物理的・構造的に見るだけではなく、そこに人がどう関わるのかをデザインした人がいて、利用する人がいて、今も大切にされているということ。
そこにとびラー(アート・コミュニケータ)がいることでさらに何かが生まれること。
とびラーには、開扉した後もそれぞれの場所で建築を介したコミュニケーションの場を作っていって欲しいと願っています。
1年間、お疲れ様でした!
(とびらプロジェクト コーディネータ 工藤阿貴)
2024.02.13
消しゴムはんこラボ。
消しゴムを彫ってはんこを作るラボ、と思われるかもしれませんがそれは活動の一部です。
作品を鑑賞してそれをモチーフにはんこを彫り、「障害のある方のための特別鑑賞会」の参加証送付用封筒に押し、参加証を封入し、特別鑑賞会でその封筒を展示して、来館者の方々に見て頂き、感想を聞くラボです。長いですね。
「障害のある方のための特別鑑賞会」とは障害のある方がより安心して鑑賞できるように、東京都美術館の特別展の休室日に開催する鑑賞会です。申込んだ人には参加証をお送りしていますが、よりウェルカムの気持ちをお伝えしたいと思い、特別展に関連するはんこを作成し、送付用の封筒に押して送付しています。
今年度は「マティス展」、「永遠の都ローマ展」、「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」で実施しました。
「マティス展」の特別鑑賞会の様子はコチラ
「永遠の都ローマ展」の特別鑑賞会の様子はコチラ
まずははんこのモチーフとなる作品を選びます。
展覧会で作品を鑑賞しながら、またはチラシや公式ホームページから彫りやすそうな、いえ、彫りたいと心が動く作品を選びます。
作品を選んだらどの部分を彫るのかデザインを決めます。
封筒に押すサイズは9×7cmです。これに収まるように縮小したり、一部分を切り取ったりします。
同じ作品でも切り取り箇所や表現に個性が現れます。
例えばチラシにも使われたこちらの作品。
同じ作品を元にしたのに、彫ったモチーフはこんなに違います。
このようにバリエーション豊かなはんこが出来ました。
そしてメインの彫り押し作業です。
初めて消しゴムはんこを彫る人も多かったですが、道具は100均でも揃えられ、
中学時代の彫刻刀を数十年ぶりに取り出す人もいました。
また道具を一度に揃えられない場合は、ラボのメンバーに借りて仕上げたりもしました。
線を彫るのか残すのか、どの線を生かすのか、おのおの作品と対話をしながら、黙々と彫り進めます。カニでも食べているのかと思うほどの無言の時間が流れます。彫っているところの写真はいつも頭頂部しか映りません。
彫り方はとびラー同士で教え合います。何期も前のとびラーから受け継がれている技もあります。事前にYouTubeの動画を観て勉強してくる人もいました。
彫れたらいよいよ封筒に押します。
図案を反転して彫っているので、押して初めてどんな作品かわかります。
また、インクの色や押し方でもイメージが変わります。
こうしてはんこの押された参加証送付用の封筒が完成しました。
様々なはんこができました。
並べると壮観です。
線そのものを彫る、線の周りを彫る、の違いや、一色で表したり、浮世絵のように色を重ねたり、同じモチーフでもこんなに違ったはんこになります。
違いを楽しむのも、消しゴムはんこの面白さです。
完成した封筒に参加証を入れる封入作業もスタッフと一緒に行っています。どんな方のお手元に届くのか、喜んでもらえるのか、どきどきしながら作業をします。
また、今年度から特別鑑賞会当日に消しゴムはんこを押した封筒の展示を行いました。
今まで参加証の封筒を受け取られた方から、押されたはんこについて「これは誰が彫っているの?」「みんな同じ絵柄なの?」「他にどんな絵柄があるの?」というお声を頂いたので、来館者の方々に消しゴムはんこを紹介しようとなったのです。
先ずは机上で展示のレイアウトを考えます。
その後、車椅子の方にも見やすいよう、目線を考慮して位置を調整していきます。
そして特別鑑賞会当日。
全ての封筒を展示したボードをアンケートコーナーに設置して、来館者を迎えました。
特別鑑賞会の申し込み方法は、Webフォームと、メール、はがきの3種類です。
メールとはがきで申し込んだ方には、参加証を封筒でお送りしますが、Webフォームで申し込んだ方は、参加証がメールで届くので、はんこが押された封筒の存在を知りません。8割以上の方がWebフォームからの申し込みなので、はんこが押された封筒をここで初めて見る方が大多数です。
また、封筒をお持ちの方も、他にどんな絵柄があるのか興味深げに見てくださいました。
封筒の絵柄や、モデルの実物の作品の感想を語ってくださったり、同じ作品でも彫る人によって表現の違いがあることに気付いてくださったり、多くの方が足を止めてくださいました。
今まで届いた封筒を全部取っておいている方、届いた封筒のはんこをイラストに描いてくれた方もいらっしゃって嬉しい驚きでした。
中には封筒が欲しいから次回はWebフォームではなく、はがきで申し込むと言う方もいらっしゃいました。嬉しい反面、時代に逆行して頂くのも気が引けるので、Webフォームで申し込んだ方には、封筒の代わりにはがきサイズの紙に押したはんこをランダムで1枚お土産として持って帰って頂きました。
裏返しにした紙を1枚引きます。どんな絵柄かは引いた後に表を見てからのお楽しみです。絵柄を見た方からは楽しげな歓声があがっていました。
消しゴムはんこラボは長く続いているラボですが、その時々で形を変えながら活動をしています。封筒の展示はコロナが明けた今年度から始めたことでしたが、今まで聞けなかった来館者の方たちの感想やお話を伺える貴重な機会となりました。
消しゴムなんて初めて彫るというとびラーも大勢参加してくれました。また、彫らなくてもボードの作成や封入作業に参加してくれたり、鑑賞会で来館者にボードの案内をしてくれるメンバーもいて、展示を盛り上げてくれました。
印刷かと見紛うほどの繊細なはんこを彫る人も、味がある太い線のはんこを彫る人も、彫らない人も、はんこを通じて作品と鑑賞者に向き合う。それが消しゴムはんこラボです。
美術館で作品を観た感動を何かに残したいと思ったそこのあなた、文章、模写の他に消しゴムはんこも一つの選択肢にぜひ加えてみてください。
執筆: 篠田綾子(10期とびラー)
超絶技を繰り出す人もいる消しゴムはんこラボで、初めての人も気後れせずに参加できるような大雑把なはんこを彫っています。上手くなくても楽しければいいんです。
2024.02.13
日時|2024年2月13日(火)10時〜16時
展覧会|印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵(会期:2024年1月27日(土)~4月7日(日))
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・東京都美術館で開催された「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展にて、「障害のある方のための特別鑑賞会」を実施しました。この鑑賞会は、障害のある方がより安心して鑑賞できるよう、特別展の休室日に事前申込制で開催しているものです。
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・当日は、障害のある方やその介助者770名以上が東京都美術館を訪れ、これまで日本で紹介される機会の少なかったアメリカ印象派の魅力に触れていました。
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・来場者を迎えるのは、アート・コミュニケータです。とびらプロジェクトで活動中のとびラーや、3年の任期を満了したアート・コミュニケータも数多く参加し、受付や展示室内など、館内の様々な場所で来場者のサポートをしました。
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・普段は混雑することもある展示室。
・この日は、事前申込・定員制のため、移動や混雑した状況に不安のある方にも、より安全にゆったりと展覧会をご覧いただくことができます。
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・来場者は、同行した介助者やアート・コミュニケータとのお話を楽しみながら、展示室でゆったりとした時間を過ごしていました。
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・とびラーの発案で、作品が見えにくい方のために、作品画像を拡大して見られるタブレットも用意されました。
・拡大してさらに作品の良さが見えてくることで、来場者とアート・コミュニケータの会話にもぐんと熱が入ります。気がつくと、一緒にタブレットを覗き込んでいた人同士のコミュニケーションも生まれていました。
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・とびラーが毎回の特別鑑賞会用にデザインしている案内状封筒の展示も行いました。今回のウスター美術館展でも、ウスター美術館展の作品を題材にしたさまざまな消しゴムハンコ作品が封筒を彩りました。
・実際に消しゴムはんこを彫ったとびラーと、封筒を受け取った来場者も、話に花を咲かせていました。
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・アート・コミュニケータは、車でお越しの方の待ち時間や、エレベータやエスカレータに乗り降りする場面など、美術館の様々な場所で来場者を見守ります。
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・来場者の美術館での時間がより思い出深いものになるように、ちいさなコミュニケーションを大切にしながら館内のあらゆる場所でサポートしました。
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・次の鑑賞会でもみなさまにお会いできるのを、アート・コミュニケータ一同楽しみにしています。