2016.05.15
5月15日。5月晴れの爽やかな日曜日にとびラー主催、1日限りの「若冲らうんじ」をオープンしました!連日大人気の若冲展。展覧会を観に来られた方に“ゆっくり“楽しく”過ごして、改めてじっくりと若冲の作品と向き合ってもらいたい。そんな思いを込めて様々な角度から若冲の作品が「体感できる」と、とびラーが企画したプログラムを6つご用意しました。
目印はとびラーが作ったカラフルなビジュアル。
2016.05.14
今回は「作品を鑑賞すること」について考える講座です。午前中にアートスタディールームで3つの映像を見て話し合い考え、午後には実際に東京都美術館の展示室で、対話による鑑賞を体験しました。
講師をつとめるのは、東京都美術館 学芸員 アート・コミュニケーション担当係長の稲庭彩和子さん。
2016.04.30
第二回基礎講座のテーマは「社会装置としてのミュージアムの役割とは何か、そこでのとびラーの役割とは何か」でした。今回の講座は、「Museum Start あいうえの」のミュージアム・スタート・パックを持って上野公園のミュージアムをめぐる午前の部と、文化施設の役割とは何か、アート・コミュニケータの役割と実践とは何かを、講師のトーク・セッションを通じて考える午後の部で構成されました。講師は東京藝術大学教授の日比野克彦さん、アーツカウンシル東京の森司さん、そして、東京都美術館の稲庭彩和子さんです。
講座がはじまるとまず稲庭さんから、「Museum Startあいうえの」のティーンズ学芸員(→活動の様子はこちら)の様子が動画で紹介されました。アート・コミュニケータや学芸員との対話を通じて作品を鑑賞し、感じたこと、考えたことを文字と声に起こして、オーディオガイドで発信するプログラムです。ティーンズの動画から、自分の目で見て考えるとは一体どんなことなのかを学んだら、さっそく東京国立博物館、国立西洋美術館のそれぞれに向かう2つのグループに分かれて、自分のお気に入りの作品を探す冒険へと出発です。
こちらのグループは、国立西洋美術館へと向かいました。
2016.04.30
4月30日(土)、「藝大ガイドツアー〜春らんまん編」を開催しました。
校内の建築、植栽、彫刻を1時間程かけてじっくりご案内。ガイドは3年の任期を満了したとびラーたちが立ち上げた「アート・コミュニケータ東京」のメンバーと、とびラーが務めました。
■受付
当日は、美しい新緑に木漏れ日が射す、春うららかな気持ちの良いお天気。ツアー開始15分前の受付時間になると、メンバーの呼び掛けに合わせて、お客さまがぞくぞくとお集りくださり、午前の部、午後の部で計57名の事前にお申し込み頂いた、全てのお客さまにご参加頂きました。
メンバーのオリジナル製作によるカードを持ってお出迎え〜受付。
2016.04.16
2016.03.27
3月27日(日)東京都美術館のMUSEUM TERRACEにて、とびらプロジェクト5回目のオープンレクチャー「上野で語る。100人で語る。文化の杜の未来。」が開催されました。
様々な文化施設が集まる上野公園。美術館や博物館、動物園や図書館、音楽ホール、大学など、日本の多様な知と財産が集まる場所です。今回は上野公園を「文化の杜」として育てていくために、多様な人々がフラットに語り合う、ワールド・カフェの形式で対話を育みます。交流を育みながら様々な視点やアイデアを共有することで、考えを深めていきました。集まったのは、上野にある9つのミュージアムで働く人々や、上野公園に関する仕事をしている人、とびラー、上野にゆかりのある人から初めて来た人まで、約100人。それぞれの言葉で、上野への想いと未来について語ります。
スタートは17時。会場に着いたら、くじをひいて、ランダムに着席します。
司会の方によってスタートが告げられ、テーブルについたら「チェックイン」。
簡単な自己紹介と、いま感じていることや、今日の気分など、思い思いのことを話します。
互いのことを聞き合い、対等に話し合える場をつくっていくことから始まりました。
まず始めに、東京都美術館アート・コミュニケーション担当係長・稲庭彩和子さんよりご挨拶。東京都美術館×東京藝術大学の活動として「とびらプロジェクト」「MuseumStartあいうえの」の紹介がありました。
続いて、コミュニティデザイナーの山﨑亮さんによる基調講演。
テーマは「多様な人々が、異なった価値を持ち寄り、並べ、組み合わせることで生まれる未来」。
副題についていた「No community,No Life?」のフレーズに感銘を受けた人も多かったようです。
山﨑さんが各地で行ってきた活動の紹介を受け、コミュニティの在り方・作り方について考えを巡らせていきます。
講演のあいだ、参加者に渡されていたのは「ストーリーメモ」。自分が気になった部分や、大切に感じたところ、疑問に思ったところなどを書き留めておくためのツールです。
山﨑さんのお話の後、それぞれのメモを元に感想を語っていきます。
ここまでが前半の内容でした。
後半までの休憩時間では、軽食をとりながら過ごします。まだまだ議論が続くテーブルも多くありました。
くだけた雰囲気のなかで会話が進みます。
後半では、いよいよ上野の未来に焦点を当てたテーマについて話し合います。
第1ラウンドは「あなたが上野について『誇り』や『愛着』だと感じていること」。
上野の魅力とは?誇れることは?1人1人のバックグラウンドを元に言葉を紡ぎます。
ワールド・カフェでのルールは、「考えと経験をオープンにすること」「語り手の話をよく聴くこと」「それぞれのアイデアを結びつけること」「議論を掘り下げること」。
お互いの話を大切に聞きながら、自分の言葉で語り、考えを深めていきます。
テーブルにセットされていた白い紙が、みなさんのアイデアでカラフルに彩られていく様子。
第2ラウンドのテーマは「上野をもっと『誇り』と『愛着』を持てる場所にしていくためには?」
テーブルを移動して、違う場所から集まってきた人で新たに話し合いを始めます。
それぞれのテーブルで話したことをシェアしながら、様々な議論が展開していきます。
第3ラウンドのテーマは「上野がより『誇り』『愛着』を持てる未来になったとき、上野とはどんな場所になっているか」。
移動したテーブルからもとのテーブルに戻り、改めて未来の上野に思いを馳せます。
タイムアップのサイン「口を閉じて両手をあげる」が会場に行き届いたところで、語り合いの場は終了。
その後は今日のことを振返りながら、感想や疑問、気づき、今後の抱負をポストイットに書き出します。全参加者のコメントを集約したホワイトボードは圧巻!
参加した方の声からは、上野がそれぞれにとって思い入れのある場所であること、そして人々の交流・連携が今後の上野を作る要であるということが語られました。
最後に、上野「文化の杜」新構想推進会理事・東京藝術大学教授である北郷悟さんから終わりの言葉をいただき閉会です。
100人がそれぞれの観点から見た上野。語ることで共有できたビジョンや、新たに見えてきたこともあるでしょう。今回のワールド・カフェでの出会いや、生まれたアイデアは、今後どう活かさされていくのでしょうか。上野にいる人たちがつながり、ともに歩むことから未来は形づくられていきます。
2020年のオリンピック、そしてその先の未来に向けて、上野とはどんな場所になっていくのでしょうか?会場に来られなかった方も、上野の未来について考え、誰かとシェアしてみてください。
上野に来た人、いる人、これから来る人、全てのみなさんによって、上野は彩られています。未来の上野を考えていく新たな出発地点に、みなさんと一緒に立てていることを嬉しく思いました!このご縁を大切に、これからも上野を考え続けていける場が、ミュージアムであったらいいなと思っています。
(とびらプロジェクト アシスタント 峰岸優香)
2016.03.26
春は出会いと別れの季節。とびらプロジェクトも、ひとつの節目を迎えました。
3月26日(土)に行われたのは、2期とびラーの任期満了式「開扉会」。
3年間の活動期間を終えたとびラーたちが、上野からそれぞれのとびらへと進んでいく門出の日です。
開扉会の場をつくっていくのは、もちろんとびラー。
「3年目の節目を彩るプロジェクト」として、この日のために長い時間をかけて準備がすすめられてきました。
会のはじまりは、プロジェクトマネージャの伊藤さんと、東京都美術館の稲庭さんによって告げられました。ともに過ごした時間を振返りながら、美術館から社会的問題へアプローチしていくことについて考えていきます。とびラーの存在によってできたことや、生まれた活動、人とのつながり。とびらプロジェクトと連動するMuseumStartあいうえのの活動も、これまでの経験値を踏まえて変化していきました。
同じ時間を過ごし、様々な活動をともにしてきた仲間たち。これまでに作り上げてきたもの、迷い悩んだこと、来館者との出会い、成長していく子どもの様子、数えきれないほど重ねて来た話し合い。数々の記憶を思い返すと、自然に笑みがこぼれます。
3期、4期のとびラーも集い、限られた期間のなかでの活動や、任期終了後のことについて考えます。とびらプロジェクトのなかで築いた経験を、今後どう活かして行くかはそれぞれの課題です。ここでもらった種をどこに蒔くのか、どう育てるのか。これからの社会と美術館、それぞれの今後の活動をつくっていくきっかけを探る場を共有しました。
その後は、昨年任期満了した1期とびラーによる団体「アート・コミュニケータ東京」の紹介。
アート・コミュニケータ東京は任期を満了したとびラーの活動と、各所のつながりを支える一つの基盤です。楽しいプレゼンテーションにはたくさんの笑いが起きていました。
その後は場所を変え、3年間の活動拠点となった、東京都美術館の景観がみえるところへ。
いよいよ任期満了を記した「開扉の証」が授与されます。
とびラーひとりひとりの名前が伊藤さんによって読みあげられ、とびらプロジェクトの代表教員である東京藝術大学の日比野克彦さんと、東京都美術館の林久美子副館長から任期満了の証を手渡されます。
「開扉の印」に封入されているのは上野から次の場所に向かうための切符。2つ折りのカードの中には、東京都美術館・真室佳武館長、東京藝術大学・日比野克彦教授のお二人からのメッセージが書かれています。ひとつひとつが手作りです。
授与の後は、送り出すとびラーからの言葉。
3年間の感謝の気持ちと、今後の期待、そして、これからも人と人のつながりは続いていくことが伝えられました。
ここで、3・4期のとびラーから開扉するとびラーに向けてのプレゼント。2期生ひとりひとりにインタビューをして、それぞれの言葉を綴った冊子が贈られます。
インタビューの実施から執筆、企画から編集まで、とびラーらしい工夫や気遣いにあふれた一冊です。3年間の活動の記録も掲載されています。
懐かしい記憶がよみがえったり、一緒に過ごしてきたとびラーの意外な一面が見えてきたり。
続いて、開扉するとびラーからの言葉。
リハーサル無し、ぶっつけ本番!全員で声をあわせます。
旅立ちの声が揃って響きわたりました。
最後の「ありがとうございました」は、素敵な笑顔で締めくくられました。
そして、退任するスタッフからの言葉。石井理絵さんと伊藤史子さん。
とびラーとともにMuseumStartあいうえのをひっぱってきた2名にも、「開扉の印」が贈られます。
会の終盤では、東京都美術館で働く方々や、とびらプロジェクトを支える人々から祝辞が贈られました。
まず、東京都美術館より林副館長。
「文化財を通して人と人とのつながりをつくる大切さを、よく痛感します。これからもそれぞれの場所でがんばってください」
東京都美術館・山村学芸課長。
「絵を描く人だけでなく、絵を語る、楽しむ、広がりをつくる仲間が増えていったら、美術はもっと活気づいていくと思います。これからの活躍に期待しています。」
とびらプロジェクトスーパーバイザー、アーツカウンシル東京・森司さん。
「ぜひ、美術館をとびこえて活動を続けてください。ここでの経験を大事にして、歩みを止めることなく、アートの輪を広げる活動をしていってください」
東京藝術大学教授、とびらプロジェクト代表教員の日比野克彦さん。
「一つのことをやるにはどういうことが必要か、目の当たりにして学んできたかと思います。次からは自分で呼びかけて、自分なりのアート・コミュニケータ活動をしていってください」
東京都美術館アート・コミュニケーション担当係長・稲庭彩和子さん。
「一緒に歩いて来られて本当に嬉しいです。今年の開扉会では、去年とは違うビジョンが見えてきましたね。ここで蒔き、育てた種を、外に持って行ったり、温め続けたりしながら、また人と話すことでさらに育てていってほしいと思います」
最後に、東京藝術大学特任助教授・とびらプロジェクトマネージャの伊藤達矢さん。
「みなさんがここでつくったようなコミュニティを、ここから、他の場所へ広げていってください。お互いこれからも、がんばってやっていきましょう!」
その後はいつも活動するアートスタディルームでカフェタイム。
こちらもとびラーによる企画が満載のひとときでした。
これまでのワークショップに向けて作ってきたものを総動員!展覧会の思い出が詰まった道具たちで、思い思いに彩ります。
他にはとびラーが撮影したこれまでの記録映像を鑑賞したり、
とびラー考案のボードゲームに興じるスペース。一般向けにも開催された「ボッティチェリの人生ゲーム」は、大盛況でした。
最後の時間まで、話が尽きることはありません。とびラーの任期は終了しても、形を変えて人と人とのつながりは続いていきます。
本年度、次のとびらをあけたとびラーは33名。
33人のアート・コミュニケータは、これから1人1人が道をつくっていきます。
新しい所へ向かう人、今までいた所に戻る人。上野からの行き先は人それぞれです。
ここでみなさんと一緒に過ごした時間と、培ってきた体験は、全てがかけがえのない出会いに彩られていました。これからも自分らしく、アート・コミュニケータのマインドを大切に、次のとびらへ進んでいってください!
(とびらプロジェクト アシスタント 峰岸優香)
2016.03.19
上野公園の桜の蕾がほころび始めた3月19日。「ボッティチェリ・鑑賞・香り~聞こえない方と聞こえる方のサイレントコミュニケーション~」のワークショップが開催されました。耳の聞こえない方と聞こえる方が、美術館において、手話通訳を介した交流だけではなく、お互いの感覚を活かしながら・・・鑑賞を共有する、新しいアプローチの提案、コミュニケーションの可能性を広げる様な“体感の場”を目指しました。
◆ようこそ!東京都美術館へ
◆アイスブレイク
自己紹介の後に、アイスブレイク(初対面同士の緊張をときほぐすウォーミングアップ)!
ボッティチェリに関してのキーワードでジェスチャー当てゲーム(手を上げてヒラヒラする動作は聴覚障害者の方の「拍手」の意。いつの間にか、みなさん取り入れてらっしゃいますね)
◆展示室へ
グループごとに、実際に展示室に作品を観に行きます
◆作品鑑賞
展示室に入り、耳の聞こえない人と聞こえる人が一緒に、一つの絵を観て感じた事などを自由にボードを使いながら言葉にしていきます。
◆香り選び
作品から受けたイメージを14種類の香り(お香)の中から、選びます。
【参加者の声】
○絵が立体アートになって良かったです。脳内環境が100%満たされる?!
○香りを使ったコミュニケーションは、初めてだったので緊張もあり、少し疲れました。いかに日頃無神経だったかを実感します。
◆サイレントコミュニケーション
見た絵について、どのあたりからどのような香りや印象を感じたかを記入していきます。この際、耳の聞こえる人は発話せず、
耳の聞こえない人は手話を使わずに実施しました。
【参加者の声】
○最初は難しかったけど、だんだん話が分かると、楽しくなりました。
○戸惑いと迷いと工夫、創造の間で揺れつつコミュニケーションを考えるから、伝えていこうとするプロセスが何故かとても楽しい
◆グループごとの発表
参加者:聞こえない方9名 聞こえる方7名 計16名
◆おわりに・・・
耳の聞こえない方と聞こえる方、一人一人の違いや共通するものをアートを介して探っていくという時間でした。今回、鑑賞を深めるコミュニケーションツールとして「香り(お香)」を取り上げました。この「香り」や「サイレントコミュニケーション(手話や音声日本語を使わない)」は、とびラー達が試行錯誤しながら、独自に辿り着いた手法です。
芸術作品(アート)とは、無限の可能性を秘めていると思います。
その場で出会った人々と「香り」を通して、新たな価値を創造していくというプロセス。
その場でしか生まれない科学反応を、今後もカタチを変えながらデザインしていければと思います。
ご参加頂いたみなさま、柔らかい香りで包まれた空間をありがとうございました。
2016.01.30
1月30日(土)、卒展が行われている東京藝術大学のキャンパス内でとびらプロジェクト初となる藝大をめぐるツアーを開催しました。
◆受付
当日は、降雪によるキャンセルも覚悟したあいにくの空模様。10 時過ぎに何とか雨が止みましたが、 寒空の中、事前に予約を澄ませたお客様達は本当に来てくれるのか・・・と不安の中で受付を開始。 当日のキャンセルも有りましたが、午前の部、午後の部で計 26 名のお客様にご参加頂きました。
メンバーのオリジナル製作によるカードを持ってお出迎え〜受付。出発までの間は大切なアイスブ レイクタイム。参加者には「藝大ガイドツアー」シールを貼ってもらいました。
◆ツアースタート
小さなお子さんから大人までの幅広いお客様が集まった今回のツアー。和やかな雰囲気の中で、ま ずはガイドの自己紹介からスタート。藝大の生い立ちについて、江戸時代には寛永寺の境内だった 頃からのランドスケープの変遷を交えて判りやすく説明し、参加者も興味津々の様子。
◆門・アカンサス
植生している実際のアカンサスの前で、大正 11 年に施工されたレンガ造りの門扉の柵にデザインさ れたアカンサス紋様の前で、アカンサスをモチーフとした藝大の徽章をファイルで見せながら、「芸 術」「技巧」を花言葉に持つアカンサスのお話し中のガイドたち。
◆陳列館
我らが東京都美術館の前身の東京府美術館と同じ岡田信一郎の設計ときたら、ガイドに熱も入りま す。スクラッチタイルに触れ、象徴的なギリシャ・ローマ風の天窓を外から室内から見上げます。 二重橋から移設された飾電燈のナゼ?を話すと、参加者からへぇ〜との声が。
◆正木記念館
ここだけで30分はガイドできるであろう、ネタの宝庫。何と陶器製の正木直彦座像、見上げると数々 の顔の鬼瓦、旧本館の正面玄関を移築した門、そして室内に入ると和室の展示空間。高村光雲作に よる透し彫りの欄間をお子さんに見せるお父さん。少しピンぼけしているけど、この写真好きです。
◆屋外彫刻・植生・大浦食堂
岡倉天心座像が鎮座する六角堂に移動する道中、木々・植物を見ながら、屋外彫刻を見ながら、参 加者との会話を楽しみました。大浦食堂のバタ丼を紹介すると、20年くらい前に食べたことある! 懐かしい〜という声も!?
◆岡倉天心/六角堂
平櫛田中作の岡倉天心像を見ながら、早熟の天才「岡倉天心」は勿論のこと、縁起の良い108歳の 長寿を全うした「平櫛田中」の逸話に耳を傾ける参加者たち。子ども達に「六角形」で思いつくも の何?と聞くと、蜂の巣、ダイヤモンドといっぱい答えてくれました。
◆絵画棟大石膏室
ツアーのハイライト!撮影不可で写真が無いのが残念ですが、参加者からは「こんな素敵な場所が あるんですね!」との声が。パチパチパチと拍手を頂き、ツアーお開きとなりました♪
執筆:小林雅人(アート・コミュニケータ「とびラー」)
2016.01.30
藝大生の卒業・修了作品を展示する“卒展”が今年も1月末に開催されました。週末(1/30,31)にはとびフェスの一環として、卒展さんぽという企画を実施しました。来館者ととびラーが、5~8人程度のグループで卒展会場である東京都美術館と藝大キャンパス内を”おさんぽ”しつつ、卒業・修了作品を鑑賞します。
東京都美術館でのさんぽの様子です。参加者もとびラーも作者も(!)みんなでおしゃべりしながら作品を鑑賞します。
この記事では、私が担当した藝大のキャンパスでのさんぽについてご紹介します。
一日目、1月30日のさんぽは当日参加制でした。私のグループには保育園の年長さん三人と、そのお父さんお母さんが4人、計7人が参加してくれました。藝大のキャンパスに足を踏み入れるのはみんな初めて。「朝から夜まで、ずっとお絵かきか工作をしているお兄さんお姉さんの学校なんだよ!」と年長さんたちに紹介すると、「どんなところなのかな?」と期待が高まります。
最初に向かったのは、工芸科が展示をしている正木記念館です。普段は入ることのできない建物ですが、卒展期間中は公開しています。
ここでは、彫金を専攻している修士二年の水谷奈央さんの作品を鑑賞しました。
「頭につけて髪飾りにしてみたいな」「私はお部屋に飾りたい」「リビングのテーブルに置いたらいいと思う」と口々に話し合う年長さんたち。「何のために作ったものなのか、どのような素材・製造方法で制作しているのか気になります」と大人たち。おしゃべりしながら正木記念館を出ると、そこで待っていたのは、作者の水谷さんでした!
実は、この卒展さんぽでは、あらかじめ打ち合わせておいた藝大生が作品の近くで待ってくれていて、一緒におしゃべりをしながら作品を鑑賞できるのです。
水谷さんの作品は、シルバーで作ったティアラとブローチ。トチの木の「芽吹き」の力強さに着想を得て制作したのだといいます。思い通りの形にするために、道具から自分で手作りしているそうで、制作に対するこだわりが感じられます。今後は、ジュエリーにかかわる仕事をしていくとのことです。とびラーによる制作中のインタビューをこちらで読むことができます。
自分のほしいものを、自分で作り出してしまう水谷さんの話に興味津々の子供たち。ものづくりをする人の真剣さ、面白さに触れることができました。
次に向かったのは、先端芸術科の展示です。パッと見ただけでは分からない、一筋縄ではいかないような作品ばかりで、みんな言葉を選んで話し合います。
何のために作ったのだろう?どうやって作ったのだろう?この作品は私たちとどういう関係があるだろうか?
藝大生の頭の中で何が起きているのか、想像しながらおしゃべりします。
ここでお話を伺ったのは、先端芸術科修士2年の杉本憲相さんです。
暗室の中、青い光の中に浮き上がる黒い人影、黒い丸に白い丸、楕円形。
“青い光やうつむいた人影から、ネガティブな印象をうける” “楕円形や、白い月・黒い太陽は周期的なものを表しているのだろうか”
見る人それぞれが作品の物語やメッセージを見出そうと話し合いました。それに応えるように、作者の杉本さんも一つの答えとして自分の考えを話してくれました。
最後に向かったのは、デザイン科の展示。普段の生活の中では見られない、新しい発想の“デザイン”に、ただ目をみはるばかり。初めに入った部屋で気になったのは、たくさんの紙が湧き上がるように敷き詰められた作品です。
“ゴミがいっぱい……”“全部、人の写真だ!”“これからどんどん、増えていくのかな?”“なんか、広告みたい” 気づいたこと、考えたことがどんどん口から出てきます。
“水たまりみたいで、きれいだね”“透明な作品の部分もきれいだけど、影のところもきれい”“作者に、感想を書いていきたいな”
ということで、常備したあった感想ノートに、書いていきました!
デザイン科でお話ししてくれたのは、学部4年生で、とびラーでもある佐藤絵里子さんでした。
佐藤さんは、宇宙に興味を持ち、ダークマター(宇宙の大部分を構成する暗黒物質)について勉強をしたそうです。そして、天文好きが高じて、プラネタリウムを制作してしまったのだそうです。中でみられるのは、星空の再現ではなく、透明な業務用ネットを使って作った佐藤さんオリジナルの星空。子供たちはその“小宇宙”をすっかり気に入って何度も出たり入ったり。大人たちは、佐藤さんの語る宇宙の不思議に耳を傾けていました。
今日のさんぽはここまで!話をしてくれた作者一人一人に感想を書いてから解散しました。
***
さんぽ二日目の31日は、事前申込制。親子で参加する企画でした。私の班は、お父さん・お母さんと小学生の女の子、三人家族が参加してくれました。
集合場所の東京都美術館から、藝大へ歩いて向かいます。普段は閉鎖している北口が、卒展期間中は開放してあるので近道できるのです。
最初に来たのは、藝大美術館。地下一階では、先端芸術科の展示を見ました。
粘土で作った道具たちが並べて展示されています。
“なんのために使うどうぐなのかな”“とても丁寧に作られているものと、雑に作られているものがあるね”“この並び順には意味があるのかな”
道具や並び順に法則性があるのか。どんな法則性なんだろうか。思いつくままに話し合います。
ここで、作者の登場です! 先端芸術科修士2年の渡辺拓也さんが話してくれました。(下の写真の右端の方です)
この作品は、渡辺さんが制作期間中に使った道具を粘土で作って、小さいものから大きいものへ、形の似ているものを近くに置きながら、並べていったものなのだそうです。丁寧に作りこんであるものほど渡辺さんが頻繁に使っていたもので、でこぼことしていて形の分かりにくいものほど、あまり使わなかったものなのだそうです。
“同じはさみでも、丁寧に作ってあるのとそうでもないものの二つあるのはどうしてなんですか?”と参加者から質問が。
これは、制作に使ったはさみは頻繁に使っていたけれど、家のキッチン用のはさみはあまり使わなかったからなのだそうです。
同じ作品の中でも、見る人によって注目しているポイントが異なっていて、話し合う中でどんどん気づきが生まれていきました。
次は、彫刻科の展示している彫刻棟に向かいます。向かう途中、藝大のキャンパス内の植物にも注目します。
“あの木の幹が、彫刻に見える……作品じゃないよね?”“作品をたくさん見ていると、木や落ち葉も作品に見えてくるよね”
作品をよくみて話し合う、ということを重ねていると、普段は気に留めないような気づきもつい口に出してしまいます。藝大の自然もしっかり鑑賞したところで、彫刻棟に到着しました。
出迎えてくれたのは、白い石の像。“どんなに近づいて見ても、顔がよく見えないね”“おじいさんみたいに見えるけど……”“石を削って作っているんだろうね、どんなふうに削るのかな”
そんなことを話しながら、彫刻棟の奥のほうまで進みます。
鑑賞したのは、フィギュアと、古代・近代・現代のヒーローを主人公にした映画でした。
どういうストーリーなんだろうか、それぞれのヒーローはどんな性格なんだろうか、考えをめぐらせます。特に注目したのは、顔のない人々が散らばって立っているわきに、飛行機がある作品。この顔なし人間たちは、いったい誰なのか、何をしているのかについて話し合いました。
ここでお話ししてくれたのは、彫刻科修士2年の横川寛人さんです。
横川さんは、もともと映像を作る人で、今回の作品は過去にとったヒーローの映画の主人公をフィギュアにしたのだそうです。
なるほど、だから映像とフィギュアだったのか、と納得する参加者ととびラー。フィギュアは、実際の役者さんの顔をかたどりして制作したのだそうです。
ここで今日のさんぽはおしまい。作者への感想を書いて解散しました。
***
藝大卒展さんぽでは、他にもたくさんの藝大生に協力していただきました。ありがとうございました!
執筆:プジョー恵美里(アート・コミュニケータ「とびラー」)