2018.07.06
2018年7月6日、『プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画』にて、ヨリミチビジュツカンを開催しました。事前申込制で、11人の方にご参加いただきました。
ヨリミチビジュツカンは、2013年にはじめて開催され、仕事や学校帰りに、気軽にふらっと、美術館に寄り道してほしいという思いから、金曜夜に不定期に開催されてきました。とびラーと来館者が対話をしながら展示室をめぐり、人と人、人と作品が出逢う素敵なプログラムです。今回は、約1年ぶりの開催です。
プーシキン美術館展は、65点の風景画が展示され、美しい風景をめぐる『旅』がテーマです。ヨリミチビジュツカンでも、『旅』をテーマに3つのグループで展示室をめぐりました。
3つのグループ名は、こちらです。
1.藤田観光
2.ツール・ド・ヤス
3.クラブKHM
ご一緒するとびラーメンバーの名前をつけて、旅行会社のような名前にしました。
まず最初に、各グループごとに旅をともにする仲間と出逢います。自己紹介を兼ねて「最近行った、または印象に残っている旅先」について紹介し合いました。
自己紹介が終わったら、さぁ、いよいよ、旅の始まりです。
Bon Voyage、良い旅を。行ってらっしゃいませ。
ツアーの構成は、3部構成になっていて、序盤はグループで作品をみる時間、中盤は1人で作品をみる時間、終盤はカフェタイムです。
まず、序盤のグループで作品をみる時間です。
3つのグループで違う作品をみました。それぞれのグループでどんな旅になったのでしょうか。
藤田観光 コンスタン・トロワイヨン《牧草地の牛》(1850年代)を鑑賞中です。
「牛たちが平和そう。」
「柵が描かれているけれど、満たされているように見えるので絶対に逃げなそう。」
という発言がある一方で、
「空の一部分が曇っているから、平和な時間も長くは続かなそう。」という気づきも。
こちらは、ツール・ド・ヤス。 モーリス・ド・ヴラマンク《小川》(1912年)を鑑賞中です。
「手前の木々は、何か暗くて、不気味で、人の気配が感じられない。」
「遠景には、明るい色彩で家が描かれていて、救われる。」
「風が吹いているみたい。ざわざわとした音が聞こえるよう。」
など、いくつもの作品の見方が積み重なっていました。
写真には鑑賞している作品が写っていませんが、どんな作品をみているか、想像してみてくださいね。
クラブKHM アンドレ・ドラン《港に並ぶヨット》(1905年頃)を鑑賞中です。
「描かれている人たちが何をしているのか気になる。」
「網かな。」「何か干しているのかな。」「赤と青で表現されているのは魚かな。」
時には旅のアイテム、アートカードでも確認しながら、一緒に想像を巡らせています。
ここでは、一作品ずつのご紹介ですが、各グループで違う作品を3作品ずつみました。
旅の中盤は、1人で作品をみる時間です。
「あなたにとっての旅の風景画」をテーマに1作品を選んできてもらいます。
選んだ作品番号やタイトルだけではなく、感じたことをメモしてくれている方もいました。
また1作品だけではなく、たくさん選んできてくれた方もいました。
そして、旅もいよいよ終盤。旅の仲間と再会して、カフェへと向かいます。
旅の道中も各々がみてきた景色に話がつきません。
お茶とお菓子で旅の疲れを癒しながら、カフェタイムの始まりです。
図録で作品を確認しながら、1人1人が選んできた「あなたにとっての旅の風景画」について話しました。
「自分も英雄となってこの絵の中に入りたい。」
「この絵の中で、お弁当を広げて、ピックニックがしたい。」
「自分が実際に行った旅を思い出した。」
等々、「あなたにとっての旅の風景画」を選んだ理由は様々です。
全体での共有の時間では、グループでみた作品の話題にもなり、他のグループがみた作品も気になるというコメントも。
最後は、1人1人が選んできた「あなたにとっての旅の風景画」をグループだけではなく、全体で紹介し合って終わりました。
「モネの時代の作品はよくみてきたけれど、それより昔の作品は、教科書でもあまり見たことがなくて、新鮮だった。」と、作品との新しい出逢いについてや、
「『あなたにとっての旅の風景画』をテーマに、作品を見る時間が新鮮だった。好きな作品をみがちだけれど、テーマがあるとそれに合うようなものを探す。好き嫌いとは、また違う軸で見るというのが新鮮だった。」
等、ヨリミチビジュツカンのプログラムについての感想もいただきました。
旅のお土産、ラベンダーの良い香りで、余韻にひたるなか、旅は終わります。
皆様のおかげで、私たちもたくさんの発見と出逢いがあり、とても楽しい旅ができました。
ご参加いただいた方々、参加はできなかったけれど、応援してくれた方々、誠にありがとうございました。皆様の次の寄り道を心よりお待ちしております。
執筆:有泉由佳子(アート・コミュニケータ「とびラー」)
とびラーから海外とびラーへ。もうすぐベトナム!Hẹn gặp lại nhé!!
執筆協力:北田郭時、藤田まり、鈴木康裕、木村仁美、大谷聡子
2017.02.12
『ヨリミチビジュツカン』へようこそ!
ここでは、いつも自分が過ごしている場所からちょっと離れて、ゆったりとビジュツカンにヨリミチして過ごす時間があります。
その場に集った人たちと、作品を前に感じたことや考えたことを自由にお話していくと、思わぬ発見があったり、深まったり。
ひとりで来る時とは違う美術館でのひと時をゆるりと過してもらえたらと、これまでは金曜日の夜間開館の時間帯に行ってきました。
ですが今回はいつもと違うのです。
『ティツィアーノとヴェネツィア派展』での開催は2月の日曜日の昼下がり。
寒い中にも少しずつ春の気配を感じる光が美術館の窓からやわらかく差し込んでいます。
集合は、北欧家具が並ぶ一階の佐藤慶太郎記念アートラウンジです。
参加者の皆さんはなんと全員女性。遠方からお越しくださった方もいらっしゃいました。
まずは最初に『カード』を使ってアイスブレイク。選んだカードに記されているお題と共に自己紹介をします。その一言にその方の雰囲気やお人柄が伝わってきて段々と場も和んでいきます。そして一緒に展示室を巡る少人数のグループに分かれます。
展示室に出発する前に、「ヨリミチカード」をお渡しします。
このヨリミチカードは展示室内での気づきなどのメモに使っていただくもの。とびラーたちが展示会ごとに趣向を凝らして制作しているのです。
今回のテーマは『惹かれるまなざし』です。
『ヨリミチビジュツカン』は2部構成となっていて前半は作品鑑賞、続く後半はカフェタイムです。
では展示室に向けて出発しましょう。
『ティツィアーノとヴェネツィア派展』では、ティツィアーノが活躍した時代を中心に大きく三つの時代がフロアごとに構成されています。
テーマの「惹かれるまなざし」を探りながらグループで巡っていきます。
最初のフロアはアーチをくぐり15世紀の水の都ヴェネツィアへいざなわれる様に始まります。
ここでは多くの聖母子像が並びます。
その聖母マリアについて着目する参加者もいらっしゃれば
「少し硬さを感じる表情とまなざし」
「母子の視線が絡まっていない」
対する子イエスの表情について気になるという方も。
「堂々とした目」
「自信ありげな表情」
同じ作品を見ていても視点は各々違っています。
グループごとに気になる作品の前で立ち止まってみます。
みなさんから発せられる感じたこと、考えたことをとびラーが言葉をひろいつつ対話を深めていきます。
次のフロアでは正面にこの展示の広報でもおなじみの『フローラ』など女性の肖像が並び、また少し進むと男性の肖像画が待っています。この時代の女性や男性の描かれ方に女性ならではの視点も上がります。
女性の肖像画に対してはこんなコメントも。
「私を見て!と自信たっぷり」
「こんな人になりたい」
「香りがしそう」
「美しいけど現実離れしている」
「男性から見た女性の理想だろうか?」
男性の肖像画に対しては
「リアルな感じ」
「鋭い視線で目が離せない」
などなど、どの人物が好みでどんなタイプなのだろうか、また先ほどの女性の肖像画に比べて描写についての違いに触れた意見も出て、話が弾んでいきます。
最後のフロアでは『教皇パウルス3世』の鋭いまなざしに出迎えられます。
「信頼してなんでも相談ができそうな目」
「ずっと見ていたい」
「長い年月の積み重ねを感じる」
などの感想が上がります。
展示室での時間もあっという間に過ぎ、もう少し作品を見ていたい気持ちもありますが、後半はアートスタディルームに移動しお話の続きはそちらで。
とびラーが温かいお飲み物やお菓子をご用意してみなさんのお帰りを待っています。好きな飲み物を選んだらカフェタイムの始まりです。
いくつかのテーブルに分かれて、ゆるやかに会話が広がっていきます。
図録を使って展示室内のふり返りをしたり、付箋に感想を書いたり。
他のグループではどんな感想が出たのでしょうか?この左の写真の中の男性の肖像画は各テーブルでも話題に。
テーマの『惹かれるまなざし』について他のグループではどんな作品に立ち止まって、どんな話が出てきたのか、図録で確認しつつ共有する中で、またそこで新たな気づきが生まれ、そんな風に思ってもみなかったなどいろんな話が展開していきます。
参加された皆さんからは
「ひとりで見ていたら“美しい”だけで響かなかった。」
「他の人の気づきにハッとした。」
「複数の方と鑑賞できて新たな見方を発見できてよかった。」
「ひとりなら通り過ぎてしまう作品にも一緒に立ち止まってみることで面白さがあった。」
など、初めて出会った人とも作品の前で過すと、ひとりの時よりも新しい視点が生まれ展開があったり、そしてコミュニケーションが広がっていく楽しさがあるという声が聞かれました。
とびラーにとってもこのことは面白く魅力のある事と感じています。
その場で出会った方たちと作品とで生まれるコミュニケーションの魅力。
一人でなく何人かで一緒に見ることで広がる視点や人の出会いの面白さ。
そんないつもとは違った美術館でのヨリミチ時間はいかがでしたでしょうか?
参加してくださった皆さん、ありがとうございました。
執筆:大川よしえ(アート・コミュニケータ「とびラー」)
2016.08.31
土曜夜の「木々との対話展」を、とびラーと一緒に対話をしながら見てまわります。お気に入りの作品を選び、それについてお話ししましょう。鑑賞のあとは、お茶をしながら展示室では話しきれなかったことをおしゃべりするカフェタイム。美術の詳しい知識はいりません。おひとりでも、お友達同士でも、お気軽にどうぞ。夜の美術館へヨリミチしてみませんか。
注意事項|
※作品解説のガイドツアーではありません。
※定員に達し次第、申込み受付を終了いたします。
※木々との対話展のチケットを購入したのちに集合場所へお越しいただきますようお願い致します。
※「木々との対話展」は当日ご本人様に限って、同じチケットで再入場が可能です。プログラムの前に会場をご覧頂くことも可能ですが、会場を一度出る際に、再入場を希望する旨を入口係員までお声掛けください。
※広報・記録用に録音・撮影を行う場合があります。ご了承ください。
2016.08.26
夏も盛りの8月26日、夜間開館の時間帯に、ヨリミチビジュツカンを開催しました。
金曜の夜にぶらりと美術館に足を運び、そこで出会った人たちと、作品をみながら自由にコトバを交わす時間を過ごしてもらいました。今回は7名の方にご参加いただきましたが、音楽関係者の方が多めの回となりました。
受付をすませたみなさんが徐々に集まり、簡単な自己紹介のアイスブレイクをします。今回はポンピドゥーセンターにちなんでフランス国旗のシールを用意し、みなさんにつけてもらいました。そして用意したヨリミチカードを引いてもらい、同じ色の方同士2名にとびラー1名が加わった3人一組のグループに分かれます。こうして展覧会場に出発です。
グループ毎にざっと会場をめぐって展示空間を把握し、集合場所を確認したうえで、最初は30分間の個人鑑賞の時間です。カードに書かれたテーマ「あなたにとって傑作はどれですか?」にフィットする作品をそれぞれ探してもらいます。ひとりで作品と向き合ってもらう時間です。
この展覧会は、1906年から1977年までのタイムラインにそって、1年ごとに1作家の1作品を紹介するという特徴的な構成になっています。その意味ではバラエティに富んだ作品が集まった展覧会ともいえます。また、3つのフロアの展示空間が、それぞれ異なる色や動線でデザインされていて、そこも見所です。
個人鑑賞を終えて、それぞれの傑作をメモしてカードを手にみなさんが集合場所に戻ってきました。ここからは3人のグループで話しながら、それぞれが選んだ「傑作」を順に鑑賞します。グループが一つのフロアに集中しすぎないように、全員の選んだ作品番号を聞き、順路を割り振って鑑賞に向かってもらいます。
この展覧会では、通常の作品のキャプションに加えて、それぞれの作家の言葉が書かれています。なかなか含蓄のあるものばかりで、これも話の材料になっていたようです。みなさん通常は一人で展覧会に行くことが多いそうですが、今日は感想を共有しながら見る展覧会を楽しんでもらいました。
グループ鑑賞を終えると、ASR(アートスタディルーム)に場所を移して、ヨリミチカフェの時間です。お茶とお菓子でリラックスした雰囲気の中、もういちど図録で作品を見ながら、あらためて話が弾みます。ここでは別のグループが鑑賞した作品の話も共有します。
今回のテーマであった「傑作」とは何かについて、いろいろな話が出てきました。
「その時代の中でインパクトがある作品」
「今の自分に強く訴えかけてくる作品」
「好きな作品と傑作は違う?」
などなど。
最後に、カフェの時間に伺った参加者のみなさんの感想からいくつかご紹介します。
「自分が選んだ作品を人に伝えるために言葉にすると、見えてくることがある」
「自分の今が”気になる”作品と重なるのが良かった」
「芸術には答がないので、おどおどすることなく安心して自分の意見を発信できる最強のツールなのかなと感じた」
「他の参加者の方の意見を聴いて、自分の考えが拡がっていく感覚が楽しかった」
話も尽きない中、そろそろ20時となり、ヨリミチカフェも閉店の時間になりました。
また、ときどき美術館にヨリミチしてください。
文:羽片俊夫(アートコミュニケータ)
2016.01.06
「ボッティチェリ展」を、とびラーと一緒に対話をしながら鑑賞しましょう。
ボッティチェリ展の展示作品の中で、「気になる人物や気になる場面はどの作品ですか?」 あなたの感性で自由に選んでみてください! 鑑賞の後は、お茶をしながら展示室では語りきれなかったことをお話しするカフェタイム。美術の詳しい知識はいりません。お一人でも、お友達同士でも、どうぞ。
※ガイドツアーではありません。
※ボッティチェリ展のチケットを購入したのちに集合場所へお越しいただきますようお願い致します。
※広報、記録用に撮影を行います。ご了承ください。
2015.11.27
上野公園の大銀杏が、美術館へ向かう道を黄色く染めています。
街路樹の葉は赤く色づき、夕暮れの空に半円の月が顔を出している。
街の色が鮮やかな晩秋の金曜日、今日は、ビジュツカンへヨリミチする日です。
会社や学校、おでかけ帰りの金曜日の夜。
普段の生活圏から離れ、ふらっと美術館に寄り道して、作品を見た印象や感想を、みんなで共有する。
「ヨリミチビジュツカン」は、作品を通して人と出会い、人を通して作品と出会うことを大切にしています。
2年半ほど前からはじまったこのプログラム。今回は、「モネ展」が舞台です。
じっくり、ゆったりとアートに触れて、人とも出会っていただきたいので、プログラムは全体で2時間ほどかかります。長時間となるため、事前申し込み制です。
とびらプロジェクトのホームページから申し込んでいただいた参加者の皆さんは、受付場所に集合して、とびラーやほかの参加者の皆さんとアイスブレイク。
お互いの緊張を解し、作品を見るテンションを作っていきます。
手に持っているカードは、「シャベリカ」。トークテーマが書かれていて、簡単な自己紹介と共に、それについて少しお話します。「運転してみたい乗り物」や「理想の朝ごはん」などがテーマです。
アイスブレイクが終わったら、とびラー1名、参加者2名のグループを作ります。じゃんけん、グーパーで決めていきます。
準備が整ったら、いよいよ会場へ出発! いってらっしゃーい。
会場内では、3人グループで作品を鑑賞しながら、気づいたことなどをお話していきます。
作品から受ける印象は、人それぞれ。とびラーは、参加者の方がおっしゃった印象や感想をすくい、深堀して広げていきます。
モネの学生時代から晩年まで、幅広く作品が展示されている中で、「晩年に向けて作風や題材に変化がある」という声や、「睡蓮」に描かれている水の透明感に注目する方も。
「多数の人と見ると、自分では気づかない発見がある」、「話しながら見ると、自分にはない表現を聞けてより深く見ることができる」と参加者の皆さんがおっしゃる通り、一人で鑑賞するときとは違い、複数の視点が交わることによって、新たな発見があるのも面白いところです。
とびラーは学芸員ではないので、美術の専門的知識はありませんが、人の声に耳を傾けて、寄り添うことにかけては抜群! アート・コミュニケータの本領を発揮して、皆さんの声をひろっていきます。
はじめは少し緊張していた皆さんも、お話していくうちにリラックスして笑顔が増えていきます。
プログラム後半は、館内のアート・スタディルームに移動してカフェタイムです。
展示室内での鑑賞を、他のグループも混ざって振り返ります。
「対話をすることで、記憶に残るからいいですね」、「いろんな年代の方とお話できて楽しかった」、という感想や、モネの人物像に関するお話など、お茶とお菓子を食べながら和やかに。
お友達と一緒に見た映画の後のカフェブレイク、のような感じで、感想の共有をします。
まだまだ話足りない名残惜しさも残しつつ、ヨリミチビジュツカンは閉館時間となりました。
とびラーが門までお見送り。ライトアップされた美術館がロマンチックです。
今回も、様々な作品と人に出会うことができました。作品や人を通して出会う不思議なご縁。
一人では素通りしてしまう作品でも、他の人がいると、それまで気づかなかった魅力に出会えます。
「一期一絵」を大切にしながら、これからも素敵なヨリミチを作っていきたいです。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
次回は2016年、ボッティチェリ展でヨリミチします。 是非、美術館に寄り道しに来てくださいね。
執筆:アート・コミュニケータ(とびラー) 太田 代輔
アートを介したコミュニケーションに惹かれ、実践の場を求めてとびラーになる。
多彩な人々やアートとの出会いが楽しい3年目。まだまだアート・コミュニケーションします!
2015.11.04
ヨリミチビジュツカン「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」編を開催します。
「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」を、とびラーと一緒に対話をしながら見てまわります。あなたが気になった作品や、好きな作品について自由にお話ししてみましょう。その場に集まった人たちと一緒に鑑賞すると、作品のあらたな魅力を見つけられたり、作品をより深く味わえたりするかもしれません。隣の誰かの素敵な言葉に出会えるかも!? モネ展鑑賞の後は、お茶をしながら展示室では語りきれなかったことをお話しするカフェタイム。美術の詳しい知識はいりません。お一人でも、お友達同士でも、どうぞ。少し変わった美術館へヨリミチしてみませんか?
※ <ひとりで見る+みんなで見る+カフェタイム>構成のプログラムです。
※ ガイドツアーではありません。
※ 定員に達し次第、申込み受付を終了いたします。
※モネ展のチケットを購入したのちに集合場所へお越しいただきますようお願いいたします。
※ 広報、記録用に撮影を行いますこと、ご了承ください。
2015.03.17
2月13日と27日に「ヨリミチビジュツカン 新印象派—光と色のドラマ展編」を開催しました。
ヨリミチビジュツカンは、作品を通して人と出会い、人を通して作品と出会うことを大切にした、鑑賞とコミュニケーションをテーマにしたとびラボです。
一人で美術館に行った時に、作品を見て感じたことを誰かに伝えたいな…と思ったり、SNSに書き込む感想を直接誰かと話し合ったりしたいな…と思うことってありませんか?このプログラムはそんな思いを叶えます。
金曜日は夜8時まで開館している東京都美術館。仕事帰りや学校帰りに、気軽にふらっと寄り道してほしいな、という思いから、ヨリミチビジュツカンは夜間開館の時間に開催しています。
毎回試行錯誤を重ねて実施していますが、今回は1年前の初回と同様に事前申し込み制とし、ドレスコードの「ヨリミチアイテム」も復活!これは参加申し込みからプログラム当日までを、楽しみにワクワク過ごしてもらうための工夫です。
新印象派展のヨリミチアイテムは「好きな色」。展示室に並ぶ作品はどれも色とりどりですが、参加いただいた皆さんがチョイスしてきた色も様々でした。私の担当したグループは偶然にも5人中4人が「青」でしたが、同じ青でも色のニュアンスの違い、色々な青がありました。
さて、夕方を過ぎ、展示室の混雑も落ち着いてきた頃、参加者の方々が集まり始めます。
受付を済ませると、パレット型のヨリミチカードが手渡されます(このカードもとびラーが作っています!)。まずはひとりで展覧会を見に行き、「入ってみたい絵」を1点選んできてもらいました。選んだ作品はこのカードにメモしておきます。
30分ほどひとりで見てきた後に、グループ鑑賞が始まります。
描かれている人と哲学の話をしてみたい、あたたかな夜の光が気になった、家の周りを散歩してみたい、色の移り変わりが綺麗だった…作品の前で選んだ理由を聞きながら、みんなで絵の中に入っていきます。入ってみたい理由をきっかけに、作品から受ける印象や感じたことを共有します。
同じ作品を見ていても、感じることや注目する箇所は人それぞれです。自分とは違う視点を聞き合い、ひとりではさっと通り過ぎてしまう作品もじっくりと見ることができるのがヨリミチビジュツカンの良いところです。「他の人の見方や感じ方を知ることができて面白かった」との感想をよくいただきますが、自分ではない誰か(しかも大抵それは初めて会う人!)を通して作品をみる体験から、その人自身の視点が広がると良いなと思います。
小学生に人気の作品を紹介すると、立ったりしゃがんだり身体を使った視点探しが始まりました。背の高い人は空に視線が向きがちですが、子供の背の高さになってみると視線の先には人々や町並みがありました。
近距離、中距離、長距離と作品との距離を変えると見え方が変化し、まるで違う絵のように見える発見は、点描技法を用いた新印象派の展覧会ならではかもしれません。
展示室には静かに沈黙の中で作品と対峙したいという気持ちで来館している方もいらっしゃいます。いかに同じ展示室内で共存するのか、このとびラボでいつも考えていることですが、本物の作品からのインスピレーションを受けながら、他者と一緒に過ごす時間の価値も大切にしていきたいなと思っています。これからもより良い方法を探っていきたいと思います。
鑑賞の後は、カフェタイムです。私たちとびラーが普段活動拠点としているアートスタディルームでお茶をしながら、皆で一緒にプログラムを振り返ります。お菓子も展覧会に合わせてとびラーが用意しています。今回の持ち寄りは、カラフルがテーマ。いかがでしたでしょうか?
ここでは、形式的になりがちなアンケートを取ることをやめ、参加の皆さんに今日の感想や心に残ったキーワードを、話をしながら付箋に書き出してもらいます。
作品について話すときは図録を使うこともありますが、図録を開くとがっかりするほど、本物の作品が持つ色彩の鮮やかさや輝きを再認識する時間になりました。やっぱり本物がいいね〜と展示室で感じたことを思い出しました。
このカフェタイムでは、初対面同士でもこんなに話って盛り上がるのものなんだな〜と毎回思います。作品のこと、普段行く美術館のこと、私たちとびラーやとびらプロジェクトのこと、閉館時間ギリギリまで、話題は尽きません。まだ話足りない!という気持ちを残しながら、夜間のライトアップで参加者の皆さんをお見送りして終了です。
最後に、今回のプログラムの中で聞こえてきた皆さんの言葉をいくつか紹介します。
「(モヤがかかっているように見えるのは)そこにいる人々の息遣いで空気があたたかくなっているからかもしれない」
「(夕暮れの色合いが綺麗なので)夜になってしまうのがもったいない」
「朝の光、昼の光、夜の光、いろんな光がある」
「本当に水面が揺れているようにみえる」
「好きなものを好きと言えた」
「自分の直感で良いと思うものを選べるようになった」
まだまだ沢山ありますが、作品に関すること、このプログラムに関すること、参加者の皆さんと交わす会話は、私たちとびラーにとっても新しい気付きになっています。
そして、「ヨリミチビジュツカンに参加したことで、美術館に行くスイッチが入った!」とのとても嬉しい言葉をいただきました。これからもいろんな人の美術館スイッチを押していきたいと思います!
実は1年前に参加者として来ていたメンバーも、一緒にヨリミチビジュツカンで活動しています。他の美術館で参加者の方に偶然お会いしたこともありました。今回ご一緒できた皆さんとも、また都美や他の美術館で再会できることを楽しみにしています!
ご参加いただいたみなさま、素敵な時間をありがとうございました!
—–
近藤乃梨子(アート・コミュニケータ)
3度の飯よりアートが好き♡とびらプロジェクトへの参加をきっかけにアートに携わる人生が本格的に始まりました。様々なご縁に感謝して日々を過ごしています。
2014.10.28
「楽園としての芸術」展開催期間中の9月19日に、とびラボから生まれた恒例企画、「ヨリミチビジュツカン」を開催しました。
ヨリミチビジュツカンとは、金曜日の夜間開館時間をつかって、美術館に寄り道してもらおう!そこで作品や人との新たな出会いや交流を楽しみ、美術館をもっと好きになってもらいたいという「とびラー」の思いからスタートした企画です。 今までの事前予約制から、当日参加型に変えて臨んだ今回。11名の方にご参加いただき実施しました。
19:30
まず、受付を済ませた方から順にグループに分かれて、自己紹介とファシリテーター役のとびラーからプログラムについての説明を受けます。
先ほど知り合ったばかりの人同士が、アートを通して互いにコミュニケーションをとることができる。なんか少し不思議ですよね。
同じ作品を鑑賞していても、見方や感じ方は人それぞれ。互いに言葉を交わしながら、そんな違いを認めることができるのも、この企画の魅力です。
どのグループの方も言葉につまることなく、自然と意見を述べていた姿がとても印象的でした。
気付いたらグループ同士の交流も!
鑑賞が進むに連れて、だんだんトークも盛り上がり、参加者の皆さまからは自然と笑顔が増えていきました。肩の力が抜けてリラックスして鑑賞する様子が、写真からも伝わりますね。
鑑賞後はカフェタイム!場所は、普段なかなか入る機会のないアートスタディルームです。
20:10
カラフルな椅子や、とびラー持ち寄りのお菓子を配したテーブルを見て参加者の方からは思わず「楽しそう!」という声も。
そんなわくわく空間を、今回は特別にカフェスペースにアレンジして、参加者の皆さまをとびラーがおもてなし。各自好きなドリンクを選び、先ほど鑑賞したグループごとにテーブルへ移動します!
お茶を飲んでリラックスしながら、鑑賞を通して感じたことや気付いたこと等をグループ内で共有します。
各自配布された付箋を使用して、思ったことを次々と書き込んでいきます。そして、書き込んだ付箋を見せ合い、お互いの思いを共有していきます。
展覧会の図録を見ながら、さらに話は盛り上がっていきます。どのグループの方も身振り手振りで思いを表現する姿がとても印象的でした。
みんな表情がいきいきしていますね。付箋に書き込んだことについて、お互いに質問したり、気になったことを話したりと対話も段々と熱が入ります。
21:00
ただ、楽しい時間ほど早く過ぎてしまいますね。あっという間に閉館時間の21時を迎えてしまいました。
プログラムの終了を名残惜しみながら、参加者の皆さまをとびラーがお見送りします。
参加者の皆さま、19時半からの長丁場お付き合いいただきありがとうございました!
参加者の皆さまが、それぞれ作品を通して受け取ったものは、形を変えてたくさんの意見や感想として集まりました。ヨリミチビジュツカンに参加したからこそ出会えたもの、人々の新たなつながりやコミュニケーションがあります。
金曜日の夜、仕事終わりの時間を利用して、ふらっと美術館に立ち寄ってみませんか。そして、そこで生まれる新たなコミュニケーションを、次回はあなたも体験してみませんか?
著者:アート・コミュニケータ(とびラー) 日野 南
普段は自治体職員としてはたらく傍ら、多種多様なひとびとが集まるとびラーに魅力
を感じ、アートコミュニケータとして活動中!