東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

2025鑑賞実践講座⑦|作品えらび・作品のシークエンス

2025.12.16

 

 


 

第7回 鑑賞実践講座|作品えらび・作品のシークエンス

日時|12月16日(火)10:00〜15:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 


12月16日(火)、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオにて、第7回鑑賞実践講座「作品えらび・作品のシークエンス」を開催しました。講師は三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構)です。

 

これまでの鑑賞実践講座では、VTSの考え方やファシリテーションの基礎、展示室での場づくり、事前準備、そして実践をふりかえる方法について学んできました。第7回は、それらをふまえたうえで、鑑賞プログラムの質を大きく左右する「作品えらび」と「作品のシークエンス」について考える回として位置づけられました。

 

とびラーがファシリテータとして関わる鑑賞プログラムでは、プログラム参加者と鑑賞する作品をとびラーが自由に作品を選べる場面ばかりではありません。展示室内での人数の偏りを防ぐため、プログラム担当者からあらかじめ2作品程度のシークエンスが指定されることが多くあります。とびラーには、その与えられた作品の組み合わせをどのように読み解き、対象となる鑑賞者にとって意味のある鑑賞体験として立ち上がらせていくかが、ファシリテーションの技量として求められます。

 

 

講座の前半では、三ツ木さんから、美的発達段階の考え方と、それを作品理解や鑑賞プログラムの設計にどう生かすかについてレクチャーがありました。鑑賞者は年齢や経験、背景によって、作品のどこに注目し、どのような言葉を紡ぎやすいかが異なります。作品えらびとは、「良い作品」を選ぶことではなく、鑑賞者の状態や文脈に応じて、どのような出会いをつくるかを考える行為であることが共有されました。

 

 

続いて、2作品のシークエンスを題材にしたワークに取り組みました。とびラーは、指定された2作品について、それぞれの特徴だけでなく、「なぜこの順番なのか」「この組み合わせによって、どのような見方の変化や思考の広がりが生まれうるのか」を読み解いていきます。作品単体ではなく、作品と作品のあいだに生まれる関係性に目を向けることで、展覧会全体の表す鑑賞のストーリーをも構想する視点を養いました。

 

ワークの中では、対象者を具体的に想定することで、どのような問いから対話を始めるのが有効かについても考えることができました。作品のシークエンスを読み解くことは、鑑賞者の背景や美的発達段階を想像し、鑑賞の場全体をデザインすることにつながっていきます。

 

 

後半では、鑑賞者を迎えるファシリテータとして、与えられたシークエンスの中で自分がどのように場をひらいていくかを具体的に考えました。第4回・第5回で学んだ展示室での場づくりや事前準備、第6回で共有したふりかえりの視点とも結びつけながら、実践につながるイメージを膨らませていきました。

 

 

第7回は、「作品を選ぶこと」また、「与えられた作品やシークエンスをどう読み解き、鑑賞の場として立ち上げるか」を考える回となりました。とびラー1人1人が、作品と鑑賞者、そして場の関係をつなぎ直しながら、鑑賞体験をデザインしていくための重要なステップとなりました。

 

次回はいよいよ1年間の学びをふりかえる回となります。これまで積み重ねてきた講座・実践・ふりかえりをあらためて見つめ直し、とびラーとしてのこれからの鑑賞のあり方を考えていきます。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025鑑賞実践講座⑥|ファシリテーションのふりかえり

2025.11.24

 

 


 


第6回 鑑賞実践講座|ファシリテーションのふりかえり

日時|11月24日(月・休)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|越川さくら(東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手、とびらプロジェクトコーディネータ)

 



鑑賞実践講座では、講座で学ぶこと、実践の場に立つこと、そしてそれを振り返ることを循環させることで、とびラーのファシリテーション力が育っていきます。

 

とびラーがファシリテータを担当する現場は多岐にわたります。東京都美術館で開催される毎回テーマの変わる特別展や企画展、東京藝術大学大学美術館の作品や展覧会でのプログラム。また、対象者も「Museum Start あいうえの」に参加する子どもたちから、「Creative Ageing ずっとび」に参加する高齢者まで、非常に幅広い層にわたっています。

 

第6回は、こうしたさまざまな現場で実践を行ってきたとびラーが、どの実践に参加していても、自分自身でふりかえりを行い、スキルアップを目指していける方法を共有する回として位置づけられました。

 

 

10月13日(月・祝)、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオを会場に、第6回鑑賞実践講座「ファシリテーションのふりかえり」を開催しました。講師は、鑑賞実践講座担当コーディネータの越川さくらです。

 

とびらプロジェクトでは、講座に参加しているすべてのとびラーが、同じ実践の場に立てるわけではありません。スペシャル・マンデーをはじめ、さまざまな鑑賞プログラムがあるなかで、とびラーはそれぞれ異なる実践の場に関わっています。だからこそ、第6回では「どの実践に出ていても使えるふりかえりの方法」を身につけることを大切にしました。

 

 

講座の冒頭では、「とびラーのファシリテーション力は、講座・実践・ふりかえりを行き来しながら育っていく」という考え方を、あらためて共有しました。特に、ふりかえりを客観的な視点で行うことが、ファシリテーション力の向上に欠かせない要素であることを、とびラーといっしょに確認しました。

 

 

 

 

客観的な視点に立って自分のファシリテーションをふりかえる具体的な方法として、「録音して、きく」という手法に取り組みました。とびラーは4人組になり、小さな作品画像を用いてVTSを行い、ファシリテータ役になった際のやり取りを録音し、実施後すぐに聞き返します。

 

 

 

 

録音を聞き返す際には、いくつかの視点を示しました。鑑賞者の言葉を丁寧に聞き、作品のどこに、どのように注目して話しているのかを捉えること。次に、ファシリテータとしての自分の言葉を聞き、鑑賞者の意図に沿って聞けていたかを確認すること。さらに、実際には行わなかった別のはたらきかけの可能性についても考えました。講座2・3年目で実践経験が多いとびラーには、対話全体の流れや、事前の作品研究との関係性まで含めて分析する視点も意識してもらいました。

 

 

その後、グループでのシェアを行い、録音を聞いて気づいたことを付箋に書き出し、共有しました。

 

 

 

第6回は、「どの実践でも、とびラー自身が成長していくためのふりかえりの方法」を共有する回となりました。録音を使って客観的にふりかえることで、自分のファシリテーションを見つめ直し、次の実践につなげていくことができます。12月のスペシャル・マンデーでは、各自がこの方法を使ってふりかえりを行い、講師やコーチによる見取りやフィードバックも予定されています。

 

講座・実践・ふりかえりを行き来しながら、とびラー、スタッフみんなで、とびラーのファシリテーション力を育てていきたいと思います。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025鑑賞実践講座⑤|ファシリテーション事前準備

2025.10.13

 

 


 

第5回 鑑賞実践講座|ファシリテーション事前準備

日時|10月13日(月・祝)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 


10月13日(月・祝)午後、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオを会場に、第5回鑑賞実践講座「ファシリテーション事前準備」を開催しました。講師は三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構)です。

 

 

第5回は、第4回で学んだ展示室での場づくりをふまえ、鑑賞の実践に向けて、作品の魅力にどのように近づき、どのような準備を行うのかを学ぶ回として位置づけられています。鑑賞の場は、当日のふるまいだけでなく、ファシリテータが事前にどれだけ作品と向き合っているかによって大きく左右されます。この回では、その「事前準備」に焦点を当てました。

 

講座の前半では、VTSのファシリテーションに向けて行う作品研究の考え方についてレクチャーが行われました。作品研究というと、作者や制作年代などの情報を集めることを想像しがちですが、ここではその前にまず、作品をよく見て、鑑賞者が何を感じ、何を語るのかを想像すること、そしてその発言の裏付けとなる、より客観的な要素を作品の中から丁寧にたどることの大切さが共有されました。

 

また、鑑賞者が作品を見るときにもつさまざまな視点のバリエーションを想定し、視点を整理・分類しておくことで、作品の全体像や魅力をファシリテータ自身がつかんでおくことの重要性も確認されました。

 

 

続いて、グループに分かれて作品研究のワークを行いました。参加者は、作品画像を前にしながら、形や色、構図、モチーフなどに目を向け、気づいたことを言葉にしていきます。個人での観察と、グループでの共有を往復することで、ひとりでは気づかなかった視点や、見方の広がりを体験しました。

 

 

後半では、先ほどのグループワークで行った作品研究を、一人で行いました。とびラーからは、グループワークと違い、自分一人で作品をみる際には、視点の広がりや深さを自分自身で生み出す必要があるため、より難しさを感じたという声が聞かれました。VTSのファシリテーションには、ファシリテータ自身の鑑賞体験の豊かさも重要であることが、実感を伴って共有されました。

 

 

第5回は、ファシリテーションを「その場でうまく進める技術」として捉えるのではなく、事前にどれだけ作品に近づき、準備を重ねているかが鑑賞の質を支えていることを学ぶ回となりました。

次回の第6回では、ファシリテーションのスキルを高めるために不可欠な、実践のふりかえりに取り組んでいきます。

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025鑑賞実践講座④|展示室で学ぶ場づくり〜スペシャル・マンデーを例に〜

2025.09.08

 

 


 

第4回 鑑賞実践講座|展示室で学ぶ場づくり〜スペシャル・マンデーを例に〜

日時|9月8日(月)14:30〜17:30
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ、ギャラリーA/C
講師|手代木理沙(東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手、Museum Start あいうえのプログラムオフィサー)
・・・新留璃子(東京都美術館専門家委託、Museum Start あいうえのプログラムオフィサー)
・・・越川さくら(東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手、とびらプロジェクトコーディネータ)

 


 

9月8日(月)、東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ、展示室を会場に、第4回鑑賞実践講座「展示室で学ぶ場づくり」を開催しました。講師は、Museum Start あいうえののプログラムオフィサーの手代木理沙さん、新留璃子さん、また、とびらプロジェクトコーディネーターの越川さくらが務めました。

 

第4回は、これまでに学んできたVTSやファシリテーションの考え方を、実際の展示室という現場に引き寄せて考える回として位置づけられています。学校単位で、小学生から高校生までが来館する、あいうえのの鑑賞プログラム「スペシャル・マンデー」を具体的な想定として、鑑賞の場をどのように準備し、どのように立ち上げていくのかを学びました。

 

 

講座の前半では、学校プログラムにおける事前準備から当日、事後までの流れを確認しました。子どもたちが美術館を訪れる際に、どのような情報や環境が必要か、鑑賞の時間や動線について、実際のプログラムをもとに共有しました。

続いて、現在開催中の展覧会「つくるよろこび 生きるためのDIY」(会期:2025年7月24日(木)〜10月8日(水))の展示室で、「スペシャル・マンデー」のプログラムの基本的な流れを実際に体験しました。展示室では、作品そのものだけでなく、空間の広がりや明るさ、音、人の動きといった要素が鑑賞体験に大きく影響します。これまでの講座から一歩進んで、展示室環境のなかで、来館者がどのような鑑賞体験を紡いでいくのかを、実際にプログラムの流れを体験することが目的です。

 

 

鑑賞体験の後には、チームで振り返るためのワークシートを使い、グループごとに振り返りを行いました。鑑賞の中で起きていたことを整理しながら、ファシリテータの声かけや立ち位置、参加者同士の関係性が、鑑賞の深まりにどのように影響していたのかを言語化していきます。ひとつの正解を探すのではなく、場で起きていた出来事を丁寧に振り返ることを重視しました。

 

 

後半では、自分がファシリテーションを行うことを想定し、自分ならどのような声かけや場づくりを行うかを具体的にイメージしながら、ワークシートに書き込んでいきました。鑑賞者一人ひとりが安心して作品と向き合えるようにするために、ファシリテータとしてどのように立つのか、声のトーンや動き、参加者との距離感など、細かな要素について考えました。その後、とびラー同士でお互いのシートを共有し、意見を交わしました。

 

 

第4回は、鑑賞やファシリテーションを「方法」として学ぶだけでなく、展示室という場の中で実際に起こる出来事をもとに、鑑賞の場をどう支えるのかを具体的に考える回となりました。9月には、実際の「スペシャル・マンデー」で、とびラーが学校の子どもたちを迎えます。プログラムに向けて準備を進め、当日の子どもたちの鑑賞を、より豊かな時間にしていきたいと思います。

 

次の第5回鑑賞実践講座は、9月末の「スペシャル・マンデー」や10月の「名品リミックス!を対話で楽しもう!(ブログリンク)」などの実践を経て、10月に行います。実践後のとびラーのみなさんの成長が楽しみです。このあとの講座は、鑑賞の事前準備や、スキルアップのためのふりかえり方法について考える回へと進んでいきます。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025鑑賞実践講座③|ファシリテーション基礎(2)

2025.07.21

 

 


 

第3回 鑑賞実践講座|ファシリテーション基礎(2)

日時|7月21日(月・祝)10:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 

7月21日(月・祝)、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオにて、第3回鑑賞実践講座「ファシリテーション基礎(2)」を開催しました。講師は引き続き、三ツ木紀英さんとARDAコーチの皆さんです。

 

 

第3回は、第2回で体験したVTSをあらためて見直し、鑑賞の場で何が起きているのかを分析し、理解を深める回として構成されました。対話のプロセスから鑑賞の場で起こっていることの結果と、それが起こった原因を観察し、言語化することがこの回のテーマです。

 

講座の前半では、子どもたちとのVTSの映像を用いた分析を行いました。ファシリテータの問いかけや、参加者の発言のつながり方に注目しながら、対話がどのように展開していくのかをとびラーがそれぞれ観察しました。問いの順序や言葉の選び方が、鑑賞者の思考にどのような影響を与えているのかについて、具体的に考えていきます。

 

 

後半では、再びVTSの実践を行い、その後、グループで振り返りを行いました。ここでは、とびラーがファシリテータ・鑑賞者・観察者に分かれ、VTSの鑑賞の中で起こっていたことの観察から、その原因をグループで分析する形でふりかえりが行われました。

 

 

きこえにくい方の参加について、第2回から引き続き、自動文字化アプリとサングラス型モニターを使用しながら行いました。ただ、サングラス型のモニターは視界への負担が大きく疲れも出てきました。そのため、様子を見て手話通訳サポートしてもらいながら進めていきました。

 

第2回と第3回を通して、参加者はVTSを「やってみる」だけでなく、「考え、振り返り、次に生かす」ための視点を身につけていきます。このファシリテーション基礎(1)(2)は、今後の現場での実践に向けて、とびラー全体のVTSの知見を揃えるための重要な土台となりました。この後、講座事前準備や場づくり、作品選びへとつながる重要なステップとなりました。次回第4回では、実際の展示室で、実践の場を視野に入れた準備について学んでいきます。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025鑑賞実践講座②|ファシリテーション基礎(1)

2025.07.20

 

 


 

第2回 鑑賞実践講座|ファシリテーション基礎(1)

日時|7月20日(日)10:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 


7月20日(日)、東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオにて、第2回鑑賞実践講座「ファシリテーション基礎(1)」を開催しました。講師は三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構)とARDAコーチの皆さんです。

 

 

第1回では、とびらプロジェクトが大切にしている鑑賞体験の全体像を共有しました。第2回・第3回は、その土台の上に立ち、Visual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。以下、VTS)を中心に、鑑賞の場をつくるファシリテーションの基礎を、体験と理論の両面から学ぶ回です。

 

第2回ではまず、ARDAコーチがファシリテーションを行い、グループで作品画像を鑑賞する体験から始めました。ここでは、2つの作品を60分かけてじっくりと鑑賞し、グループのなかで対話がどのように立ち上がるのか、グループ全体の鑑賞の深まりがどのように進むのかを体感しました。また、その体験をふりかえり、「VTSで作品をみることでどんな発見があった?」という問いで意見を交わしました。

 

次に、三ツ木さんがファシリテーションを行い、東京都美術館で開催予定の展覧会「アート・コミュニケーション事業を体験する 2025 みること、つくること、つながること「Museum Start あいうえの」12年と現在地(以下、AC展。会期 2025 年 7 月 31日(木)~8 月 10 日(日))」の出品作品の画像を用いてVTSを行いました。ここでは、8名の1年目のとびラーが鑑賞者、それ以外のとびラーが観察者役となりました。観察者役は、ファシリテータが行なっている声掛けや問い、態度などを観察し、鑑賞の場にファシリテーションのはたらきかけがどのように作用しているかを考えました。

 

 

 

 

続いて、VTSの基本的な考え方や構造についてレクチャーが行われました。VTSでは、作品をよく見ること、他者の発言に耳を傾けること、作品を見て感じたことの根拠を作品の中に見つけることを繰り返しながら、考えが重ねられていきます。こうしたプロセスがどのように鑑賞の面白さや思考の広がりにつながるのかを、実例を交えながら確認しました。

 

後半には、レクチャーの内容を踏まえた上で、もう一度別の作品で三ツ木さんのファシリテーションによるVTSの体験と観察を行いました。

これまでの体験と観察をふまえ、最後にとびラー全員が、小さな作品画像を使い、実際にVTSのファシリテーションにトライしてみました。実際にやってみるとファシリテーションはなかなか難しく、経験が必要であることを実感する時間となりました。

 

 

 

きこえにくい方の参加について、第2回からは、VTSの手法を用いた鑑賞で複数の人が言葉を交わす場面が増えてきます。そのため、対話の内容が、「なるべくリアルタイムで」「正確に」伝わるにはどうしたらよいのか、きこえない方といっしょに方法を考えました。当日は、手話通訳と音声の自動文字化アプリを併用してみることにしました。VTSをするときには、自動文字化アプリをサングラス型のモニターに投影し、作品に目を向けながら、発話者の言葉が文字化されたものを同時に見ることができるように工夫しました。また、全体へのレクチャーやグループでの振り返り等の場面では、手話通訳にもサポートしてもらいながら進めていきました。

 

 

第2回は、VTSで深まる鑑賞の面白さに触れながら、ファシリテーションとは何かを観察とレクチャーを通してつかむ回となりました。次回の第3回では、鑑賞の実践を振り返り言語化することで、ファシリテーションについての解像度をあげ、実践に向けて理解を深めていきます。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025鑑賞実践講座①|とびらプロジェクトで大切にしている鑑賞体験とは?

2025.06.30

 

 


 

第1回鑑賞実践講座|「とびらプロジェクトで大切にしている鑑賞体験とは?」

日時|2025年6月30日(月)14:30〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|熊谷 香寿美(東京都美術館 学芸員 アート・コミュニケーション係長 )

 



6月30日(月)、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオを会場に、第1回鑑賞実践講座「とびらプロジェクトで大切にしている鑑賞体験とは?」を開催しました。講師は熊谷香寿美(東京都美術館学芸員 アート・コミュニケーション係長)さんです。

 

この講座は、さまざまな人が自分の感じ方を大切にしながら作品をよくみるためのコミュニケーションの場づくりができるようになること、そして作品を媒介にして、複数の人が共同的かつクリティカルに思考する場をデザインできるようになることを目標に、1年間を通して学びと実践を重ねていく鑑賞実践講座の初回にあたります。

 

講座の前半では、熊谷さんによる「みること」を掘り下げるレクチャーのあと、参加者が持ち寄った「手のひらサイズの見がいのあるもの」を使ったよく見て、その良さを伝えあう活動を行いました。3人組でそれぞれの持ち寄ったものをよく見て、感じたことや気づいたことを言葉にして共有します。
このワークでは、作品鑑賞に入る前段として、複数の人と一緒に実際のものを観察することの面白さや、感じ方の違いが思考を広げていくプロセスを体験的に理解することができます。

 

例年、鑑賞実践講座の初回では、2〜3年目のとびラーのファシリテーションによるVisual Thinking Strategies(ビジュアルシンキングストラテジーズ:複数の人で対話をしながら作品を鑑賞する手法。以下、VTS)を体験することが多くありましたが、今年度の第1回では、あえてVTSの実践は行いませんでした。

その代わりに、VTSの概要をレクチャーで紹介し、実際の鑑賞プログラムの映像を視聴しながら、ファシリテーターの役割や、鑑賞の場がどのようにデザインされているかを考える構成としました。

 

 

 

その背景には、今年度新しくとびらプロジェクトに参加している14期とびラーに、きこえない・きこえにくい方を4名迎えたことが理由としてあります。今年度の鑑賞実践講座には、その4名の中から、きこえにくい方1名が参加しています。これまでの実践を通して、参加者の聞こえの状態やコミュニケーションの特性によって、情報の伝わり方や、対話への入りやすさに差が生まれることをふまえ、初回ではまず鑑賞体験の全体像や、とびらプロジェクトが目指している鑑賞のあり方を共有することを重視しました。具体的な方法としては、レクチャーや映像で情報を伝える→小さなグループ(3人組)で、共有するという流れでいくつかのワークを進めていきました。

 

 

後半のグループワークでは、「VTSを使って、どんな鑑賞の場を実現したいか」をテーマに話し合いました。映像で見た実践や、これまでの自分自身の経験をもとに、鑑賞を方法ではなく場として捉え直す時間となりました。

 

 

この第1回は、ここから始まる鑑賞実践講座全体の土台となる回です。次回以降、VTSの実践や分析、事前準備、場づくり、作品選びへと進んでいくための共通認識を、参加したとびラー全体でつくることを目指した第1回目となりました。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2024鑑賞実践講座⑧|「ファシリテーション研究」「1年間のふりかえり」

2025.01.07


第8回鑑賞実践講座|「ファシリテーション研究」「1年間のふりかえり」

日時|2025年1月7日(火)10:00〜15:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)、熊谷香寿美(東京都美術館アート・コミュニケーション係長 とびらプロジェクトマネジャー)、越川さくら(東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手 とびらプロジェクトコーディネータ)
内容|ファシリテーションの言葉の編集作業について/1年間のふりかえり


第8回の講座では、ファシリテーションにおける「言葉の編集作業」について理解を深めました。また、1年間のまなびをふりかえり、今感じている疑問や気づきを全体で共有する時間を持ちました。

午前中は、子どもたちとの鑑賞プログラムの様子を収録した映像を視聴しました。特に「ファシリテータが、鑑賞者の対話の流れをどのように編んでいくのか」に注目し、繰り返し見取りながら分析しました。

午後は、1年間の講座と並行してとびラーが参加してきた鑑賞プログラムをふりかえり、実践を重ねてきたからこそ生まれた疑問や新たな気づきを全体でシェアしました。

この全体シェアは、事前にとびラーから集めた質問をもとに、講師の三ツ木さんと熊谷さんが答えるQ&A方式で進められました。

 


今年度は、全盲のとびラーが仲間に加わったことで、「見えない人と鑑賞体験をどのように共有するのか」を考えながら講座を進めてきました。毎回の講座では、スタッフが制作した「触図」(触ることで、モチーフの輪郭や全体の構図がわかるもの)を使って、情報を補足しながら鑑賞を補助しました。「触図」を制作する際には、どこまで・どのように触れる部分を作るとわかりやすいのか、フィードバックをもらいながら検討しました。

後日、全盲のとびラーがファシリテータとなり、作品画像を鑑賞する会をとびラーとスタッフで実施しました。

鑑賞会とは別の事前準備の日には、複数のとびラーが集まり、作品選びと、作品研究を行いました。選んだ作品を細部まで観察し、想定される意見を出し合いながら、全盲のとびラーの「脳内マップ」に作品の視覚的な情報をマッピングする作業を行いました。また、ファシリテーション時の立ち位置などについても検討しました。

鑑賞会当日には、モニターに投影した作品画像を使って鑑賞会を行いました。ここで初めてファシリテーションを担当した全盲のとびラーは、講座でのまなびを最大限に活かし、鑑賞者の新たな視点や対話を引き出していました。

また、ここで鑑賞者の役割をしていたとびラーが、次の鑑賞会を自主的に企画するなど、次の動きにもつながっています。


2024年度の鑑賞実践講座がすべて終了しました。今年度もとびラーは、小さなお子さんから高齢者まで、また、様々な文化的背景を持った方々と作品との出会いの場を作ってきました。

3年目の11期とびラーは、とびらプロジェクトを任期満了し、それぞれの道へ。

1・2年目の12・13期とびラーは、2025年度のまなびと実践の場へと進みます。

7月からの半年間をともにした三ツ木さんから、激励とともに挨拶がありました。

「VTSのファシリテーションには、これでOKという完成はありません。常に模索しながら、一緒にアート・コミュニケーションの活動を作っていきましょう。またお会いしましょう!」

みなさんのこれからの活躍を期待しています!


 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2024鑑賞実践講座⑦|「作品選びについて」

2024.12.09

 


 

第7回鑑賞実践講座|「作品選びについて」

日時|2024年12月9日(月)10:00〜15:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)
内容|事前準備。作品を選ぶ。作品のシークエンスを作る。テーマ:〜鑑賞者の鑑賞プロセスをイメージする〜

 


第7回の講座では、Visual Thinking Strategies(VTS)で鑑賞する作品の選び方について考えました。鑑賞者の年齢や、作品鑑賞の経験、人生経験の違いを踏まえて作品を選び、鑑賞体験をデザインすることはファシリテーションの第一歩です。

まず、講師の三ツ木さんが「美的発達段階」という概念について説明しました。これは、人が作品を理解していく際に、ある程度体系化された鑑賞体験の段階のパターンがあるという考え方です。この考え方を手がかりに、どのように作品を選ぶかについてのレクチャーがありました。

レクチャーのあとは、あらかじめ選ばれた2つの作品を題材にしてグループワークを行いました。このワークでは、作品選びの5つの観点に沿って、それぞれの作品の特徴を話し合いました。

続いて、開催中の「上野アーティストプロジェクト2024 ノスタルジア─記憶のなかの景色」展にて、鑑賞者の属性(年齢や参加プログラム)を想定し、そこに向けた2作品の鑑賞順序を考えました。

このように、VTSのファシリテータは、作品を選ぶ過程で鑑賞者の立場を想像し、対話の展開をイメージしながら、鑑賞の場を作る準備を進めます。その過程を通じて、ファシリテータ自身の「作品をみる力」も養われ、鑑賞者の気づきを受け止める土台ができていきます。

講座も残り1回となりました。

VTSの奥深さに気づく一方で、その難しさを感じるタイミングでもあるかもしれません。しかし、実践で出会う鑑賞者との経験と、講座での学びを互いに影響させながら、さらにステップアップしていけることを願っています。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2024鑑賞実践講座⑥|「ファシリテーションのふりかえり」

2024.11.04


 

第6回鑑賞実践講座|「ファシリテーションのふりかえり」

日時|2024年11月4日(月・休)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)、ARDAコーチ5名
内容|VTSファシリテーションのふりかえりについて

 


・・

第6回の講座では、Visual Thinking Strategies(VTS)鑑賞のファシリテーションをどのようにふりかえるかについて、実践を交えながら考えました。

まず初めに、今年度の講座の実践の場である「スペシャル・マンデー」や「ずっとび鑑賞会」について、とびラーのファシリテーションに対する三ツ木さんのフィードバックを伺いました。

VTSを実施することがゴールではなく、鑑賞者が会場に到着してから帰るまでの体験全体をどのようにデザインするかが重要であるという視点が語られました。実践を重ねたからこそ気づく新たな視点に、とびラーたちは頷きながら話を聞いていました。

三ツ木さんからのフィードバックが終わると、今日のテーマである「VTSファシリテーションの実践とふりかえり」に移ります。実際にVTSとふりかえりを行う前に、まず、とびラー同士がクリティカルかつ協働的に議論を進めるために、どのような点に気を付けるべきかを改めて話し合いました。

その後、チームに分かれてVTS 実践とふりかえりを繰り返していきました。VTS実践では、チーム内でファシリテータ・鑑賞者・観察者・対話記録の役割に分かれ、それぞれの立場から鑑賞の場を体験し、観察しました。

ふりかえりの際には、それぞれの立場から体験・観察したことを出し合い、対話の流れを追って検証していきました。

鑑賞者の考えが深まったタイミングでは、ファシリテータがどのような働きかけをしていたのか。その逆に、深まらなかったときには何が影響していたのか。それぞれの視点から意見を出し合いながら、ふりかえる方法を体験しました。

お互いに客観的な視点を持ちながら鑑賞の場を検証し、とびラー同士でファシリテーションのスキルを高め合うことは、実は簡単なことではありません。しかし、経験を積むことで、ふりかえりの方法自体もスキルアップしていけるはずです。

今日の講座をきっかけに、実践とふりかえりのサイクルがさらに回っていくことを願っています。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

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