2016.11.27
11月27日に年内最後のアクセス実践講座を行いました。
前回(10/9)の講座では、年間課題を取り組んでいくためにグループごとに分かれて企画書をつくるワークを行いました。
年間課題に取り組んでいってもらうために、今回の講座では舘野泰一さんの「ワークショップ・メイキング」に関するレクチャーの復習と、企画書をつくるためのプロセスを順序立てて考えるワークを行いました。
まずは、とびらプロジェクトマネージャの伊藤達矢さんと一緒に舘野さんのレクチャーを振り返ります。
続いて、グループごとに年間課題に取り組むワークに入っていきます。
この日は、企画書の構造を考えるにあたってツール(ワークシート)を用意しました。
このワークシートは5枚で構成されていて、
「ワークショップを通じて伝えたいことは?」「募集する対象者を具体的にイメージする」「ワークショップの内容を決める」「場を設定する」「企画の通し方をつかむ」というフレーズが書かれているものです。この一連の流れに沿って企画を考えていくと、舘野泰一さんのレクチャーが活かされている企画書を作成できる、というものです。とびらプロジェクトでは、アクセス実践講座に限らず全ての講座でこうしたツールを随時開発していて、とびラーがより深い学びを経験できるようにしています。
企画書のブラシュアップをした後は、前回同様にワールドカフェ形式で、他のグループの取り組みを聞きます。
付箋にコメントバックをして、その場で出されたコメントを随時整理しながら進めていきます。
この講座を終えた後はいよいよ企画書の提出です。
どんな対象者を設定して、その人たちのために有効なアプローチをとびラーたちが考えます。提案された企画が全て実現するわけではありませんが、内容によってはトライアル実施されるものもあります。一般公開する企画ではありませんが、トライアル実施されたものについては、またブログをご報告していきます。
執筆:奥村圭二郎(東京藝術大学美術学部特任研究員)
2016.11.26
「アート筆談de対話鑑賞」耳の聞こえない人⇔聞こえる人 /ゴッホとゴーギャン展
【日時】11月26日(土)13:30~16:00
【会場】東京都美術館 ゴッホとゴーギャン展、アートスタディルーム
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耳の聞こえない人と聞こえる人が、一緒に作品を見て鑑賞したら、どんな対話が生まれるのでしょう。
今回は、「アート筆談」という、いつもとちょっと違う方法を使って対話鑑賞を実施しました。さてさて・・・どんな世界が広がったのでしょうか?
まずは、「初めまして」の自己紹介。
アイスブレイクのお題は「ゴッホと言えば何?」
東京都美術館にいつも設置している磁気ボード「とびらボード」を使って伝え合いました。
そのあとは「ゴッホとゴーギャン展」の展示室へ。
生憎この日は混んでいたため、各自でグループの「共通の作品」を鑑賞し、またそれぞれ「気になった作品」を選んでもらいました。
鑑賞後は再びアートスタディルームへ。
いよいよメインワークの「アート筆談」が始まります。
最初は戸惑いながら、でもだんだん慣れてきて、さまざまな画材を使っての対話が繰り広がっていきました。
聞こえない人が聞こえる人に手話を教えたり、ジェスチャーを使ったりとさまざまなコミュニケーションを交えて対話はどんどん盛り上がっていきました。
すごいと思ったのは、アート筆談は普通の言葉の会話より、「作品のどこからそれを感じたのか?」「どんなイメージが浮かんだのか?」視覚的に一目瞭然に捉える事ができます。
また、参加者が個々に描く絵や文字から「その人らしさ」が見えてきます。普段の会話では見えない部分です。
さらに、一度話したことが消失せず、支持体に残っているので、遡って話をつなげたり、会話を膨らませることができます。時間軸、空間、概念(イメージ)・・・などなど、
メインワークはまるで「三次元」「四次元」の世界の対話のようでした。
最後は各グループの「アート筆談」の痕跡(板ダンボール)を前に、どんな対話が広がったのか発表してもらいました。
あるグループは4人の描いた絵から、新たなストーリーが出来上がり、「アート筆談」から新たな作品が生まれる?ような対話もあったようです。
参加者は「描くことによって、よりゴッホの気持ちが深く理解できたように感じた」とコメントしました。また「男性の感じ方と女性の感じ方が違いがあるのかも。」など、さまざまな視点が広がったようでした。
今回は、全体説明では手話通訳だけではなく、とびラーによるPCの文字情報保障もつけました。またメインワークで少しでも対話の時間を増やすために、ファシリテーターの質問カードを作成したり、椅子を丸椅子に変えて動きやすくするなど工夫しました。前回のトライアルの反省点を踏まえてとびラーで何度もミーテイングを重ねてきた内容を、今回はいくつも実現できたように思います。
最後に今回の参加者16名全員にアンケートを記入して頂き、「満足した」の回答を100%頂くことができました。
【聞こえる人のアンケートコメント】(一部抜粋)
・「最初は聴覚障がい者の人とどう接すればいいかわからなかったけれど、いろいろなコミュニケーションができて楽しかった。」
・「童心に戻ったように、夢中になった」
・「アート筆談だと、話しているのと同じような気分になった」
・「フラットに話ができて、あらたな気づきを得られました。」
【耳の聞こえない方からのアンケートコメント】(一部抜粋)
・「まったく手話ができない聴者とも一緒に楽しめた。」
・「美術館は観るところと思っていましたが、描く・書く、楽しさを味わいました。」
・「実際見るだけよりも、描いた方がいろんな発見がありました。」
・「新たな人間関係を築いていける方法として大変効果的だと思いました。」
・「耳が聞こえないというハンデを忘れることができました。」
【おわりに・・・】
初めて出会う聞こえない人と聞こえる人が、作品を見て一緒に対話鑑賞するにはどうしたらいいのだろう。
案外知られていないのですが「聞こえない人」といっても手話のできる人、できない人、発話できる人、文字が苦手な人、さまざまな人がいます。みんなで一緒に対話するにはどんな工夫が必要になるのだろう・・・そんなことを考えるうちに「そもそもコミュニケーションって何?」「言葉って何だろう」と改めて原点に立ち戻るきっかけにもなりました。
コミュニケーションとは「伝え合うこと」。普段の何気ない会話でも、伝え合う事って難しいと感じることは良くありますよね。「どうして伝わらんないんだろう」と思ったり、逆に伝わったときは喜びを感じます。
今回の「アート筆談de対話鑑賞」で一番大きな発見は「アート筆談は言葉になる前の概念(イメージ)を言葉にすることができる」という事でした。
人が相手に一番「伝えたい」ことって「言葉になる前の概念(イメージ)」だったりしませんか。
またひとつ「アート筆談」の新たな可能性を感じた一日でした。
ご参加くださった方、お手伝い下さったスタッフ、とびラーさん本当にありがとうございました。
執筆者:瀬戸口裕子(とびラー・アートコミュニケータ)
2016.11.20
「あいうえの特別企画:今日からはじまるミュージアム冒険。ミュージアム・スタート・パックを手に入れよう!」が、11月19日(土)・20(日)の2日間に渡り、計4回開催されました。この特別企画は、Museum Start あいうえののプログラムをより多くの方にご参加いただけるよう、新たな試みとして企画した45分のプログラムです。
プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)
2016.11.20
「よく見て話して」は、何かのきっかけで都美にやって来た人達ととびラー達が共に過ごすことで、美術館を訪れた経験をより豊かなものにしていただくための活動プログラムです。
プログラムの実施
11月20日(日曜日)千葉県の長生村から37名の方々が「ゴッホとゴーギャン展」を見学に来ることになり、プログラム「よく見て話して」を実施することになりました。
参加者の特徴
参加者の中には「ゴッホとゴーギャン展を見たい」という人達ばかりではなく、「見学会ツアーに参加して美術館に行ってみたい」という人達もいます。また、「初めて美術館に行くのに、一人で行くより村の見学会ツアーの方が安心」という人達や、「友達に誘われたから」という人もいます。
年齢層はこれまでのとびラボに見られなかったご高齢の方々です。
(40歳代2名、50歳代3名、60歳代9名、70歳代20名、80歳代3名)
その他、いくつかの特徴があります。
・広報誌による募集なので、参加者同士知らない人も多い
・夫婦8組、親子1組を含む
・男性10名、女性27名
・美術館デビュー7名、これまで都美を訪れたことがある15名
参加者に合ったプログラムを考える
今回、長生村の企画の主旨は「展覧会見学会」なので、作品鑑賞をメインに新たな体験の機会を作るプログラム内容にしました。また、年齢の高い方の参加申し込みが多かったので、移動時間に余裕を持たせたスケジュールを考えました。
「作品鑑賞の前に、学芸員さんによるゴッホとゴーギャン展の見どころについてのレクチャーを受ける」、「少人数のグループに分かれて作品鑑賞と振り返りを行う」などの体験活動を盛り込みます。
また、都美のある上野公園内の文化施設を知っていただくため、とびラーによる「上野公園ツアー」をプログラムに加えることにします。
プログラム内容を伝える
プログラムにスムーズに参加し充実した鑑賞の時間を持つために、村から都美に向かう移動時間に参加者の皆さんに鑑賞の準備をしていただきます。大きな文字で見易く作った資料を使い、プログラムの内容を具体的に伝えます。展示室でのルールについてやさしく書いた資料を使い、初めての方でも躊躇することなく展示室に入れるように説明をします。これまで美術館に行ったことのある方でも、見易い資料です。
展覧会の図録を、事前に見ることはあまり無いことですが、全員に展覧会の図録を回覧して、これから行われるプログラムへの興味や作品鑑賞意欲が高まるよう工夫をします。
また、今回のプログラムでは18名ものとびラー達が一緒に活動することを伝え、これによってプログラムへの期待感と親近感が生まれたと思います。
また、終了後にアンケートへの記入をお願いし、体験を振り返る機会としていただきます。
時間通りに池田家上屋敷表門近くに到着し、6名のとびラーが長生村の皆さんをお迎えしました。
お天気も良く、参加者にとっても、とびラーにとっても、新しい体験の始まりです。
アートスタディルームに到着すると、すでに移動中に伝えてあったグループに分かれていただき、とびラー達と対面していただきました。
今回のプログラムのスペシャルの1つ、学芸員による「ゴッホとゴーギャン展の見どころ」のお話を聞きました。短い時間でしたが、分かり易く盛りだくさんの内容で、参加者もとびラー達も話に引き込まれていました。ゴッホやゴーギャンが、あたかも自分たちの知り合いだったかと錯覚するほど彼らを身近に感じたのではないでしょうか。レクチャーがあることを事前に知らせたことと、最適な資料を用意したことによって、鑑賞に向かうための貴重な時間になりました。
4,5名のグループに分かれて展示室に向かいます。
その前に、とびラー達から参加者に鑑賞方法について2つの提案がありました。
1つは「お気に入りの作品をみつけてくること」、もう1つは「指定された作品をよく見てくること」です。
鑑賞後それぞれについて話をする時間を持つことを伝え、新たな活動の説明をしました。
これについても、事前に知らせてありましたが、参加者に少し緊張した様子も見られました。
鑑賞時間は1時間ほど予定していましたが、展示室に向かうのに手間取っているグループがありました。どうやら、トイレタイムが原因のようです。移動時間は余裕を持ったつもりでしたが、いろいろな場面で予想以上の時間がかっていました。
さらに、この日は「家族ふれあいデー」が催されていて来場者が多く、展示室に行列ができ、最終グループは予定を20分近く遅れた入室になってしまいました。展示室内も混雑していて、混雑した展示室でのとびラーの伴走について課題を残しました。
鑑賞後に、作品についてみんなで話をするということは、参加者にとってはおそらく初めての経験です。作品について誰もが話をしてくれるかと心配がありましたが、活発な話し合いが行われました。参加者から積極的にとびラーに話しかける姿も見られました。
鑑賞、話し合いの後は、気持ちを切り替えて、上野公園にある文化施設を巡るツアーに出かけます。10名程の4つのグループで行動します。ツアーガイドとびラーによる「上野公園ツアー」はとても興味深い内容です。
参加者の年齢を考えてゆったり巡る25分間のツアーは、作品鑑賞とは違った美術館の印象となり、参加者ととびラーとの間でも様々な会話が生まれました。上野公園ツアーから全員が戻ったところで、今回のプログラムは終了しました。
プログラムを終えて
いただいたアンケートの中には、「以前のように自由な活動のほうが良かった」、「展覧会だけゆっくり見ていたかった」いう意見もありましたが、「ゴッホやゴーギャンの本物の作品を見ることができて感激した」、「展示室でとびラーさんと一緒だったので安心でした」、「見どころの説明を聞いて鑑賞が深まった」、「作品の感想を受け止めてくれてありがたかった」、「いろんな意見が聞けて、絵の中の物語を見たようでした」「知らない人同士でも意見が多く出るものだと感じた」「話をすると絵の印象がいつまでも残るような気がする」「今までにない体験で、また参加したい」「美術館、公園、アートに親しみました」など、プログラムに参加して得た新たな体験を喜ぶ意見もいただいました。
混雑した展示室での過ごし方や、移動時間の設定などについての反省課題もありましたが、それによって、私達とびラーが考えるプログラムと参加者が参加しやすいプログラムとの違いも見えてきました。
また、地域や年齢に関わりなく、展覧会で作品を見たときのたくさんの気付きは、聞く人がいることによって豊かに表現されていくものだと、改めて知らされました。
文 : とびラー4期 中島惠美子
2016.11.15
11月14日(月)に学校向けプログラム「スペシャル・マンデー・コース」が行われました。
「スペシャル・マンデー・コース」とは、休室日(月曜日)に学校のために特別に開室し、ゆったりとした環境の中でこどもたちが本物の作品と出会い、アート・コミュニケータと共に対話をしながら鑑賞するプログラムです。
今回は保育園年長のお子さんから、小学1年生、さらに中学生のみなさんが来館しました。
アート・コミュニケータは、こどもたちの状況に合わせた対応を行います。
プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)
2016.11.13
2016年11月13日、都内の児童養護施設で暮らす小学生4名と引率の施設職員の方3名が上野公園のミュージアム冒険にやってきました。「ミュージアム・トリップ」のはじまりです。
「ミュージアム・トリップ」はさまざまな状況にあるこどもたちにミュージアム・デビューの機会をと本年度から取り組むインクルーシブ・プログラムです。経済的に困難な家庭のこどもの支援団体や児童養護施設、海外にツールをもちカルチャー・ギャップなどの困難を抱えるこどもを支援する団体など、各分野の専門機関と連携して実施しており、「ミュージアム・トリップ」という名の通り、日常とは違うミュージアムという空間で、作品やアート・コミュニケータと出会い、共に旅するようなプログラムです。
プログラムの様子はこちら→
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2016.11.07
2016.11.7(月)<展示室で学ぶ場づくり②>
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スペシャル・マンデー・コース準備日<作品選びのワーク>
13:00〜15:00
⬛︎三ツ木紀英さんよりレクチャー
⬛︎学校概要の説明
⬛︎会場にて作品選び(対象:東京学芸大学附属小金井小1)
15:00〜17:00
⬛︎グループ鑑賞 3作品
⬛︎三ツ木さんと全体共有
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今回は、次週実施予定の「スペシャル・マンデー・コース」(「Museum Start あいうえの」学校向けプログラム)の準備ワークとして実際に展示室で行ないました。
スペシャル・マンデー・コースとは、休室した展示室に学校のこどもたちが来館して作品鑑賞を行なうプログラムです。鑑賞実践講座を選択しているアート・コミュニケータ(とびラー)にとっては、その機会が実践の場となります。
こどもたちにとって美術館での時間をより良いものにつくり上げるために、講座の中で事前準備のワークに取り組みました。
まずは、講師の三ツ木紀英さんより作品選びのポイントについてレクチャー。
——–
・物語性
・多義性
・興味を刺激する
・親しみやすさ
・理解可能
——–
という5つのポイントを伝え、また次週来館する予定の学校の概要を伝えたうえで展示室へ移動。
今回アート・コミュニケータのみなさんが実施するのは<小学1年生(東京学芸大学附属小学校)>を対象に、グループ鑑賞するための2つの作品を選ぶワーク。
会場は、東京都美術館で開催中の<ゴッホとゴーギャン展>。
次週11月14日(月)に、実際にこどもたちが来館する予定です。
事前準備というだけでなく作品選びのワークを通して、今年のテーマである<場づくり>を学ぶ機会となることも狙いとしています。
・小学1年生には作品がどう見えるのか?その目線になって考えてみたり。
・近くのペアとも情報交換しながら、導線でぶつからないか確認するのも場づくりのひとつ。
・作品が各班ごとに決まったら、7〜8人組になって3つの作品をフロアごとにグループ鑑賞を行いました。
ファシリテーターを実践したのは、来週スペシャル・マンデー・コースに参加する予定のとびラー。
ファシリテーションを体験して、こどもたちからどんな対話や言葉が生まれるかを想像できる機会にもなります。また鑑賞者の目線からも、人のファシリテーションを学ぶ機会となりました。
・こどもと同じ目線になってゆったりと鑑賞できるのも、休館日ならではの贅沢。
鈴木智香子(東京藝術大学 美術学部特任助手)
2016.11.06
11月5日(土)、あいうえのファミリー向けプログラム「うえの!ふしぎ発見:ゴッホ部」が行われました。東京国立博物館、東京都美術館を会場に実施した今回のテーマは「ゴッホ」。小中学生とその保護者計27名と共に、伴走役をつとめる「とびらプロジェクト」のアート・コミュニケータ(とびラー)16名が活動しました。今回はファミリープログラム初の夜間の開催。普段より静かな東京都美術館で「ゴッホとゴーギャン展」を観た後、東京国立博物館で浮世絵を鑑賞しました。
プログラムの様子はこちら→
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