東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑪」『それ』ができるまで編

2018.09.06

こんにちは、とびラーの松原です。今日は『デザイン・芸術学・作曲・弦楽』チームの御輿の制作現場をレポートします。来週末には待望の出番を迎える『それ』。進捗状況は如何に!

 

↑BGMが流れる現場で余裕すら感じさせる隊長の神出さん(デザイン科)ですが、ほぼ毎日終電で帰宅とか。後方には完成間近の御輿本体とマケット(御輿のミニチュア版模型)が見えます。前回は台風で青天井だったテントも修復されてます。

 

制作中の『それ』への思い入れや、アピールポイントは2回に渡って詳細にレポートされていますので、今回は汗や葛藤、涙?がにじむ、今までの制作工程と道具(武器)についてレポートします。

お聞きした山口副隊長(デザイン科)の話では、制作工程はこんな感じです。

 

  1. テント作り。(完成に2日間、修復に毎日→今年は2度の台風に遭遇)
  2. 御輿の土台、担ぎ棒作り。(今回は昨年の土台を活用)
  3. 心棒作り。(木造で構築→構造図は彫刻の先生にチェックしてもらったとか)
  4. 発泡スチロールブロックの取り付け。(心棒の周りにボンド等で張り付ける)
  5. 荒どり。(電熱線、鋸、カッター等の「武器」を使用し外観を作って行く)
  6. 金櫛、おろし金、鉄やすり等で荒削りする。(今日の段階)

 

今後、紙やすり等で、隊長こだわりの筋肉(特に脇腹筋!)を滑らかに削り強調する。その後色付けに入り、怪しげなパーツを取り付けて完成していくようです。

 

↑目の前で、電熱線を使ったカットが行われていました。2人が電熱線の両端を巻きつけた木棒を持ち、もう1人が横で変圧器を操作しています。かなり高温になり危険なので、慎重な操作、信頼関係が必要なようです。ワイルドだ!

 

↑御輿制作で使われていた道具たちです。切る、削る、貼る、掃除する、といった作業に不可欠で大切な工具(道具?)には、先輩から引き継いだチーム独自の年代物の武器(!)もあるようです。(写真は他チームの道具も含まれてます)

 

隊長、副隊長へのインタビュー後、建物内に置いてある怪しげなパーツのそばで休んでいた戸澤さん(デザイン科)に話を聞いてみました。

「隊長は穏やかな人だけど、御輿への情熱を誰よりも持っています!ちなみに、このチームは幹部4名を中心に編成されていて、御輿づくりに携わる人や『それ』ができるに至るストーリーを作る人がいるかと思えば、全体をマネージメントする人がいたりと、様々な作業が進んでいます。幹部以外のメンバーも含めて、だんだんとバランスのとれたチームになって来た感じがします。私は全体を俯瞰しながら、人手が必要なところを手伝ったり、御輿づくりの記録を取ったりしています。自分の性に合っていると思うし、そうやって関わっていけるのが楽しい部分もあります。」と素晴しいコメントをいただきました。

 

↑『それ』の周辺に取り付けられるパーツのパーツです。怪しい!

 

最後になりますが、台風直下の前回はテント修復等に大わらわで、どこか災害現場のレポートをするような緊迫感を感じました。今回はBGMが流れるほっこりした雰囲気の中、メンバー皆さんの顔つきや表情から、和やかで一体感あるチームになって来たな、という印象を受けました。『災い転じて福となす』かな?

怪しげなパーツが装備された『それ』とMADなパフォーマンスが見どころの本番をお楽しみに。


 

執筆:松原誠一(アート・コミュニケータ「とびラー」)

コメント:制作現場を訪れる度に、学生達の変化を感じます。メンバー間の意見の相違、衝突などを乗り越えて同じ課題や目標に向かって行く学生達の一体感と成長が素晴しいです。制作現場はまるで、それぞれの個性的な楽器が主張しながらハーモニーを奏でているライブ会場のようです。

 

 


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公式サイト→(http://geisai.geidai.ac.jp/2018/index.html)

開催期間:9/7(金)8(土)9(日)9:00〜20:00  / 東京藝術大学上野校地にて

【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑩」白蛇の鱗編

2018.09.06

こんにちは。とびラーの大澤です。

9月に入り、仕事や学校等が本格的に再開した方も多いのではないでしょうか。

未だにジメジメとした湿気が残り、台風の影響等にも心配を募らせるばかりですが、夜間になると「あっ……秋の気配を感じるぞ。いい虫の音だなぁ…!」と一人感じる瞬間が徐々に増えてきたような気がします。

今回は、8月の最終週(8/29)に実施した藝祭御輿インタビューの模様を皆さんにお届けしたいと思います。

お邪魔したのは、『日本画・工芸・邦楽・楽理』チームによる烏天狗の御輿制作現場です。

早速、御輿制作現場へと急ぐ我らとびラー。

この日は暑すぎず、且つ強風・雨もないという天気で、まさにインタビュー日和でした。

 

 

後ろに見えるのが御輿本体の制作場所。手前のブルーシートテントではパーツの調整等が行われています。

 

左奥が「烏天狗」の頭部、手前にあるのが「白龍」の頭部です。かなりリアルでドキッとさせられます!

「烏天狗」の方は、なんとなく山伏とカラスとおじいちゃんを足して3で割ったような顔立ちをしているように私は感じました。眺めていると、変な安心感を覚えるような…。

 

とある藝大生3人は「白龍」の出来具合を確認しつつ、「ハクじゃん!(笑)」と談笑。確かに、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』に登場するイケメン少年の素顔に酷似しています…!

 

周囲に散らばる発泡スチロール(一部の学生は“はっぽう”と略して呼んでいました)の破片によってが現場感がを増していました。

みんな身体や頭に“はっぽう”の粉がついてもそんなことお構いなし! はらってもはらっても無限にくっついてしまう“はっぽう”に気を取られているほど、彼ら彼女らに時間・心理的余裕はありません…。(汗)

「白龍」頭部を正面から見た様子。牙と舌があります!

角は後付けするのでしょうか…?

 

MAD SCIENTISTがテーマの御輿(『デザイン・芸学・作曲・弦楽』チーム制作)や三頭の象を表した御輿(『油画・建築・声楽・指揮・打楽器・オルガン・古楽』チーム制作)など、他の御輿に比べるとサイズ的にはさほど大きくはない御輿ですが、進捗を伺うと、かなり急ぎ目で進める必要がある…とのことでした。

 

藝祭当日まで、本格的にカウントダウンが始まっている今。どのチームも心身共にフル回転で制作に取り組んでいるようです。

 

テント入り口手前にある90ℓのごみ袋。ポカリらしきドリンクのペットボトルでパンパンに…。涙ぐましい&微笑ましいほどの努力を察しました。

 

メインでお話を伺ったのは、『日本画・工芸・邦楽・楽理』チームの隊長さんです。

こちらは隊長の中川さん(工芸)。

茶色から明るい赤へ、ヘアカラーチェンジ! 見ている我々も、ますます藝祭当日に向けての雰囲気が増したように感じられました。

結構お疲れの様子で、それもそのはず……毎日朝9時から夜の8時まで作業に取りかかっているとのこと。

他の3チームに比べ進み具合がやや遅れており、「隊長としては心配事が多いのではないか」と質問すると、「人員が足りていないわけではないものの、全体的な工程の進度は現状の3倍ほどスピードアップしたい」と仰っていました。

これからの予定は、「各パーツの粗削り・ディテール仕上げ」→「合体」→「彩色」となっているため、絵の具の購入も含め急ピッチでの準備が行われるようです。

 

御輿制作と並行するかたちでパフォーマンスのリハーサルも順次行われているそうで、噴水広場での練習のことも教えてくださいました。

パフォーマンス用の音源については、隊長の中川さんから「とてもかっこよかった!」との感想が。レコーディングには30人程度が参加したそうで、御輿本体は美術学部、音源は音楽学部といった大まかな役割分担が機能しているなぁと感心しました。

 

また、当日はオリジナルグッズの販売も行うため、Tシャツやトートバッグの用意も着々と進んでいるそうです。

 

隊長以外のチームメンバーの体調や意識の変化については、意外と大丈夫な様子で、逆に日を追うごとに士気の高まりがみられるとお聞きしたので、こちらとしても一安心しました。

 

「御輿制作や一連の祭が終わった暁には…」という質問に対しては、「ビール飲みたい!」との答えが即答で返ってきました。(笑)

 

続いてこちらはもう一人の隊長の山本さん(日本画)。

インタビュー中に友人からの差し入れをもらって、にっこり!

 

写真ではわかりませんが、山本さんも中川さんと同様、髪の毛先を金色っぽくブリーチしたとお話ししていました。「今から染めるんですね~」という発言に「いや、これはベースなんでここからさらに何かします」と中川さん。藝祭当日にどんなヘアカラーになっているのかが楽しみです…!

 

本番である当日への意気込みは、楽しみと不安が半々とのこと。そりゃあそうですよね、とこちらも納得。すべてがうまくいくかどうかはその時次第である以外にも、御輿やパフォーマンスの全貌を藝祭当日にリアルタイムで把握できるのは観客に他ならず、演じ手である制作メンバーは来場者とは少し異なった視点から藝祭を楽しむことになるのではないでしょうか?

この発泡スチロール2個分が、基準となる発泡スチロールのサイズだそうです。かなり大きい状態から、細分化・粗削りしていくことで、単なる白くて軽い物体が重厚な御輿の一部へと変化していきます。全部で合計すると、24個ほどの発泡スチロールの塊を御輿1基の制作に使用しているそうです。

テント内部に入らせていただき、「白龍」の鱗を観察することができました。全体像がイメージできるような段階にまで至った経緯を間近で見守ってきたからこそ感じられる感動がありました!

 

作業には飲み物と虫よけが必須! インタビュー中も、周りでは蚊がブンブンと羽音をたてていました。

 

以上で、今回のインタビュー記事は終わりです。

これで皆さんも、9/7藝祭当日に竹の台広場にて行われる「開口一番」や9/9に袴腰広場で開催される「法被コレクション(通称:ハピコレ)」などがますます楽しみになってきたのではないでしょうか??

来場した方は、法被投票なるものに参加できるそうです! その結果をもとに、今年度の法被表彰が行われるということで、こちらも気になりますよね…。

 

東京藝術大学構内にお邪魔し、実際に現場の雰囲気を感じたり、学生にインタビューを行ったりしたことを通して、私自身は藝祭が如何に学生一人一人の想い・ドラマの集合体であるかを体感することができたと思います。

 

インタビューは藝祭直前である次回が最終回となります。

どうぞご期待ください!


 

 

執筆:大澤桃乃(アート・コミュニケータ「とびラー」)

藝祭2018公式グッズのピンバッジとTシャツ、手に入れたいなぁ…。

 

 

 

 


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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑨」完成までのカウントダウン編

2018.09.06

とびラー鈴木重保が、2018藝祭に登場する『油画・建築・声楽・指揮・打楽器・オルガン・チェンバロ・リコーダー』チームの御輿の制作現場をレポートします。

8月29日、音校(※音楽校地)の門を入って、烏天狗の住処のわきを通り過ぎると、

「パオーン」

いやいや、「パオーン」「パウォーン」「プウォォーン」と3回、野生の巨大生物の咆哮を聞いたような気が・・・・。

いやいや、そんなはずはない、それはテントの中で完成を待つ、御輿の巨大三頭象。前足を大きくあげ、3つの頭に高くあげた鼻がつけられた象は、その存在感を誇示している。

先週は、インドラ神の災いか台風の大風で大変だったテントも、今日はしっかりとその三頭象を包み込んでいるが、リアルさを増した象はそのテントの隙間から飛び出してきそう。

そんななか、今日は涼しげな表情の隊長・伊勢さん(建築専攻)。

 

ーもうどのくらいできているんですか?

「造形部分は60-70%くらいできています。」

「象の後ろにつく屋城の部分は、いまテントの外で組み立て中です。」

たしかに、テントの外では木材を模した棒状の白い部材を組み立てていて、足の踏み場もない。

いつも、なんでも受け止めてくれそうな隊長・林さん(油画専攻)。

「彩色は金曜か、土曜にスタートできれば良いけど・・・。」

そう、色を塗るのは油画の得意技。

今はマジックで描かれている目も、ちゃんと描かれたら、象らしさがぐんとアップしそう。

 

ーだいぶ疲れもたまってきてません?

「ちょっと前のほうが疲れていました。今は1日経てば、昨日のことは忘れます。」と伊勢さん。

「寝れば大丈夫です。」と林さん。

うーん元気だね。でもよく聞くと、朝の9時から夜の10時まで制作をしているみたい。伊勢さんからは、家との往復の時間が勿体無いので、近くのおばあちゃんの家に泊まっているという話もでてきました。

 

ーパフォーマンスの準備も進んでますか?

「このまえ、インド風の曲調の音楽ができたので、そのレコーディングに立ち会ったけど、総勢30名くらいの声楽の人たちの歌声がインド風の演奏に重なってきたところで、ぞくぞくっときました。」

「開口一番のパフォーマンスで披露するダンスの練習もはじめています。」

 

さすが、音校のメンバーもチームの一員というのは心強い。インド風の曲調に声楽の合唱が合わさるってどんな音楽なんだろう。ボリウッド風? いやいや多分違う。どんなものができるか楽しみ。ぜひパフォーマンス「開口一番」は見に行かなくっちゃ。

 

ー今回の御輿づくりで、建築と油画がいっしょになってよかったことは?

「建築と油画はまったくの別世界。普通に学生生活を送っていても交流する機会はあまりない。でもこうしていっしょに御輿をつくっていたら、お互いのことがわかるようになった。」

 

そうなんだね。確かに普段付き合いがなくても、一つのことを一緒にやれば相手のことも分かってくる。それは良かった。

あんまり邪魔をしちゃいけないから、今日はこのくらいにして、また来週来ます。その時はもう色が塗られているはず。

最後の頑張りに期待してます。がんばってね。


執筆:鈴木重保(アート・コミュニケータ「とびラー」)

藝祭Webサイトには、御輿パフォーマンスの時間割ももう発表されていました。そんななか藝祭ワクワク感に感染してしまった、大人とびラーです。

 

 


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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑧」細部まで、お見逃しなく!編

2018.09.06

こんにちは!とびラーの藤田です。

『彫刻・先端・管楽器・音環・ピアノ』チームの御輿制作現場についてレポートします。

 

発泡スチロールを積み上げた印象が強かった前回から、アヌビス神はどれくらい姿を現し始めたのか。また、今回はアヌビス神をつくるにあたってのこだわりについてもお話を聞かせていただきました。

 

台風一過で晴天!とはいえ強い風が吹き荒れる校内。現場を訪れると、テントの幕をおろして制作が進められていました。

 

隊長の伊藤さん(左・彫刻)と西山さん(右・先端)。今日もいろいろと聞かせてください!

 

インタビューをしている横で、彫り出した大きな腕にパイプを通して腕をグルグル回転させ始めた二人が。楽しそうな表情でパイプを操っているけど、そういう遊び?

 

ある程度腕を回転させたらテントの中へ移動。あ、アヌビス神の右腕なのね!

パイプの部分はコブラをあしらった杖が取り付けられるそう。ということで、遊びではなくれっきとした作業だったのでした。失礼しました。

前回から一気に進んで、アヌビス神の顔や上半身も出来上がりつつあります。

「彫刻の子たちのおかげ。」と西山隊長(先端)。

「左右対称のようなポーズなので、遠くから像を見て歪みがないかをチェックしつつ作業を進めています。」と伊藤隊長(彫刻)。

 

作業の進み具合に感心しながらアヌビス神を見つめていると、作業のため像によじ登ったメンバーがアヌビス神の頭部におもむろに包丁を刺す、という衝撃的な瞬間を目にすることに。

前回のインタビューでも御輿本体に刺さった包丁を各現場で見たけど、それはまだどこのパーツなのかわからない時の話。頭部だとわかる今回は衝撃の度合いが違います。

アヌビス神、包丁刺されても無表情だけど痛くないのかしら・・・と思わず思ってしまいました。

アヌビス神が鎮座する台座について、伊藤隊長が説明してくれました。

「このレリーフは『彫刻・先端・管楽器・音環・ピアノ』を表しています。左から、彫刻刀を持っているので『彫刻』、Macを持っているので『先端』。右の二つはピアノを弾いているから『ピアノ』、トロンボーンを持っているから『管楽器』です。」

なるほど!各科の特徴を端的に表しているし、ピアノを弾いたりMacを手にする姿がかわいくもあります。

何より、チームに属する学科を御輿にさりげなく表現しようという考えが素敵です。

御輿には各学科のメンバーがいろいろな形で関わっているんだと、改めて教えてもらった気がしました。

けど、あれ?真ん中の1体は他4体と違うような・・・というか、これって千手観音じゃないですか?

「音環は千住キャンパスにあるので、千手観音にしました。」

そうきたか!台座の制作は先端が担当しているとのこと。彼らの頭の柔らかさに脱帽しました。

アヌビス神の装飾品となるパーツを別の場所でつくっているとのことなので、西山隊長に案内してもらいました。

台座や装飾品制作は先端が担当しているとのこと。案内いただいた現場でも、メンバーが黙々と作業を進めていました。

「リアルさを出すために、アヌビス神が身に着ける装飾品のパーツも全て発泡スチロールから切り出しています。小さなパーツだけで、多分数千個はつくることになると思います。」

え?!じゃあこの床に散らばった小さな丸い粒や長方形の発泡スチロールは全て・・・

「はい、全て装飾品のパーツです。長方形のパーツについては、全て面取りをします。」

何てこと!御輿が完成した暁には、装飾品もちゃんと見ます。

こちらは装飾品のイメージ図。いろいろな形のパーツで構成されていることがわかります。

これを全てつくり出すのか・・・。限られた時間の中でも、一つ一つ手で作るからこそリアルさを追及するその姿勢に、御輿にかける情熱、もっと言うなら藝大生のプライドを垣間見た気がしました。

みんな、藝大に入学してまだ数ヶ月しか経ってないんだよね?

「これがアヌビス神のイメージ図になります。先端の子が描いてくれました。」

西山隊長が持ってきてくれた紙をのぞくと、そこには威厳漂うアヌビス神が。

「着色も先端が中心になって進める予定で、来週からその作業に入れたらいいなと思っています。装飾品や杖に塗る金色は経年変化を感じさせるようなくすんだ金色にしたりと、古代遺跡らしさを出すために色にもこだわりたいです。」

 

 

制作現場では黙々と作業が進められ、両隊長も冷静に対応してくれるので、『彫刻・先端・管楽器・音環・ピアノ』チームは淡白さを少し感じさるような、落ち着きのあるチームかと思っていました。

が、その奥底には御輿づくりに対する熱意、妥協をゆるさない姿勢が存在することが今回のインタビューでわかり、制作に真摯に取り組むチームという印象に変わりました。

次回インタビューではよりリアルなアヌビス神に出会えるのか?!


執筆:藤田まり(アート・コミュニケータ「とびラー」)


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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑥」鳥天狗が羽ばたく日は…編

2018.09.03

こんにちは。とびラーの鈴木康裕です。お盆休みも明け、8月20日から再開した御輿づくり。『日本画・工芸・邦楽・楽理』チームの「烏天狗」御輿の第2回取材を8月24日に行いました。緩んだと思っていた暑さがぶり返し、折しも19・20号のダブル台風の影響でときおり強風に見舞われながらのインタビューでした。

蝉時雨が響く音校(※音楽校地)敷地内を進み、記憶に新しい巨大テントの前に立つと、風を避けるように出入口が閉ざされていました。声をかけると、テントの中からおなじみの仲良し二人組が出てきてくれました。人よんで「隊長シスターズ」といったところでしょうか?

 

山本さん(日本画)と中川さん(工芸)です。ねじり鉢巻きを解き、発泡スチロールの細片を払ってインタビューに応じてくれましたが、手には大根おろし器を曲げて作った「ヤスリ」が・・まさに作業も佳境に入っているようです。

 

(ヤスリは包丁などとともに先輩から受け継がれている由緒正しき(?)アイテムです。)

 

前日の大雨でテント上部に大量に水がたまり、雨漏りもあったとか。発泡スチロールは濡れると水を吸って重くなって乾きにくく、電熱線を使って切断したり削ったりすることが難しいため、なかなか思うように進まないそうです。進捗状況を聞くと「だいぶ遅れています。今は本体部分の大きなカタチを出しているところで、来週からディテールに入りたいです!」とのことでしたが、天幕をあげ中の様子を見せていただきました。以前よりもカラスの嘴や全体の造形がハッキリしてきています。天狗と絡む「龍」の頭部のつくり込みも進み、お盆休みに入る前の取材からの進捗ぶりがわかります。

(「龍」が上を向いている様子。どんな表情になるのでしょう。)

 

10人でシフトを組んで作業しているとのことですが、テント内を見上げると天狗サマの右肩あたり・・・なんと、さりげなくスマホが刺してあって、そこから音楽が響いています。「テンションアップしています!」一昨日は筝曲を流したとか。40度を超えることもある暑いテントの中での作業。ついついだらけたり、イライラしてぶつかり合ってしまったりすることもあるそうです。そんな過酷な条件下の雰囲気づくりや、日本の伝統的なモチーフのイメージづくりにむけた隊長の心配りが感じられました。この御輿は今年制作される4基の中で、唯一和風のものになるそうです。

 

(何でも発泡スチロールに刺しちゃいます。スマホが音源です。)

 

テントの外に目を向けると、6本の幟の上部に載せる「目」の造形を絶賛制作中。その近くにいたのは楽理科の2人。制作現場で片づけや掃除などでサポートするほか、パレードでは「天狗の手下」として踊るので、別の場所でその稽古もしているそうです。10人の手下が舞い踊るなか、烏天狗が白煙を上げて羽ばたく姿が見られそうです。その時に流れる音楽はもちろん邦楽がベース。邦楽・楽理が連携して新曲を作曲し、既にスタジオ録音が完了しているとか。「御輿づくりまでは全く知らなかった美校の友人がたくさんできました!」と、とてもうれしそうに語ってくれました。

(楽理のお二人。「サンバパレードも是非見てください!」)

 

藝祭まであと2週間をきりました。遅れていると危機感を募らせつつも、ディテールの造形に入ってゆくこれからが工芸・日本画の腕の見せどころ。「細かいところは任せて!」という頼もしい言葉も聞けました。総力を結集した高い完成度が期待できそうです。御輿ばかりでなく、幟や法被、音源やパレードの練習など、いろいろな準備が同時進行しています。これからの二週間でどんな盛り上がりがみられるでしょうか。ワクワクしますね!


執筆:鈴木康裕(アート・コミュニケータ「とびラー」)

アートの真髄は作品を介した作家と鑑賞者とのコミュニケーションだと思います。自分が楽しみながら、少しでもそのお手伝いをしたくてとびラーになりました。藝祭はまさにそんな双方向のコミュニケーションが生まれる場です。ぜひ足を運んでみてください!


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【藝祭2018】「とびラーによる御輿制作インタビュー⑤」 鎮魂と再生の象編

2018.08.30

こんにちはとびラーの大川です。

取材の日は、前夜からの台風が通り過ぎたもののキャンパス内は風で大荒れ。テントや御輿は大丈夫なのでしょうか?

 

『油画・建築・声楽・指揮・打楽器・オルガン・チェンバロ・リコーダー』の学科がチームになって制作している御輿テントを訪ねました。

 

入り口では隊長のお二人、油画専攻の林さん・建築専攻の伊勢さんが出迎えて下さいました。台風の影響で少しテントが傷んだものの、作業は着々と進んでいる模様。テント内には前回の戸邊さんのレポートよりさらに姿を現しつつある象が。前脚を高く上げて立ち上がる姿からはやがて現れる雄姿が感じられます。

「かわいそうな象」がモチーフになっている御輿ですが、隊長たちのお話では反戦の意よりも、死んでいった象がよみがえる「魂の再生」という想いが込められているそうです。

今回はテントの片隅でひとり熱心に細い筆を走らせている油画専攻の小坂初穂(こさかはつほ)さんに着目。

造形担当者からマケットを引き継ぎ、彩色作業をされています。ペルシャ絨毯などを参考にしながら描いているという背中の紋様はとても繊細で美しく、思わず見入ってしまいます。

ベースとなる象の肌の色は、よりリアルな表現になるよう色味に注意し、

さらに迫力も追求するために油画の技法を駆使して色を重ねていっているそう。

アクリル絵具でなく油絵の具を使い下地から段々に色を重ねていく事で、色合いの様子が変化するとのことです。一見白い肌の様ですが、その下地には写真の様に鮮やかな色が隠されていました。下地がポイントってメイクと同じですね。

また、仕上げにオイルを使ってテカリを出すことで、光が様々な方向から乱反射し「下からじわっと」深みが出てくるそうです。色を重ねつつ試行錯誤を繰り返しています、とお話しされているその姿をとても凛々しく感じました。

 

 

そして、これから更に象の背中に建造物が取り付けられていきます。構造設計もなされ、象の背中には3人が乗っても大丈夫だそうです。制作途中の象の大きさから想像すると、心拍数が上がりそうな高さです。

隊長お二人の専攻は油画と建築。別の所属なんですよね。油画に所属する学生は一学年で55名、一人一人がとても豊かな個性をもっているそう!一方で建築の人数は15人。こちらも一人一人があじわい深い個性をもちながら、どこかで調和をとろうとする性格があるのだとか。

 

最初こそ、御輿のデザインや進め方の方向性で折り合いをつけるのが大変だったけど、「雨降って地固まる」で今は「やるしかない!」と建築科の伊勢さんが一言。悲喜こもごもいろんなドラマがあるようですが、御輿と共にチームも盛り上がっていくようです。

そうそう、あの大人なスイカのデザート、お味はいかがでしたか?粋な差し入れでしたね!

 

これから艶やかに変化を遂げる御輿と各チーム、そしてサンバ部隊。

一緒に楽しみましょう。ぜひ、上野へ!

 


 

執筆:大川よしえ(アート・コミュニケータ「とびラー」)

いろんな方たちとの出会いが面白いとびラーの活動。

あっという間の3年目。今はそんな経験を、届きにくい小さなところにもお伝えできるといいなと考えています。

 

 

 


★藝大生やとびラーが活躍する「藝祭2018」を一緒に楽しみませんか?

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開催期間:9/7(金)8(土)9(日)9:00〜20:00  / 東京藝術大学上野校地にて

【あいうえの連携】うえのウェルカムコース:吉見町立吉見中学校 美術部(2018.8.29)

2018.08.29

2018年8月29日(水)、学校向けプログラム「うえのウェルカムコース」も本年度4回目を迎え、 埼玉県吉見町立吉見中学校の美術部の生徒たちを迎えました。

1~3年生の計24名は、夏休みの部活動の一貫として来館。東京都美術館で開催されている「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」を東京都美術館で活動する「とびラー(アート・コミュニケータ)」のみなさんと一緒に鑑賞しました。

東京都美術館のアートスタディルームに着くと、あいうえのスタッフととびラーが出迎えました。「とびラー(アート・コミュニケータ)」とは東京都美術館で活動し、多様な人々を結びつけるコミュニティのデザインに取り組む人々です。ミュージアムの楽しみ方をたくさん知っている大人の人たちです。今回は、「BENTO おべんとう展」の鑑賞体験やワークを生徒のみなさんと一緒に楽しみ、サポートしていきます!

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

建築実践講座③|ツアープランニング1・都美建築を紹介する

2018.08.25

【あいうえの連携】ミュージアム・トリップ:多文化共生センター東京(2018.8.25)

2018.08.25

2018年8月25日(土)にファミリー向けプログラム「ミュージアム・トリップ」が行われました。

「ミュージアム・トリップ」とは、家庭等の状況によりミュージアムを利用しづらいこどもたちと、その保護者をミュージアムに招待するプログラムです。
今回は、荒川区にあるNPO法人多文化共生センター東京との連携で、外国にルーツのあるこどもたち14名、保護者の方3名が、東京都美術館に来館しました。
多文化共生センター東京は、外国にルーツのある方々を対象に日本語の学習支援を行なっている団体です。毎週土曜日には小学生や小学生以下のこどもたちとその保護者向けに「親子日本語クラス」、そして中高生世代を対象には「子どもプロジェクト」という学習支援教室をそれぞれ開催しています。今回の参加者は、それぞれの教室より募集をかけました。

 

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

【あいうえの連携】夏のあいうえのスペシャル(2018.8.20)

2018.08.20

すごく暑かった今年の夏休み。みなさんはどんなふうに過ごしましたか? 8月20日(月)、今年度最初の「あいうえのスペシャル」が開催されました。

「あいうえのスペシャル」とは、これまでの「あいうえの」プログラムに参加し、ミュージアム・デビューを果たしたこどもたちとその家族が、ふたたび上野の冒険を楽しむ一日です。

いつもならたくさんの人で賑わう上野公園ですが、月曜日はほとんどのミュージアムが休館のため、いつもよりちょっと静かに感じられます。当日開館していたのは上野の森美術館・東京都美術館・国立科学博物館・東京文化会館の4つの施設でした。

夏休み真っ最中のこの日、参加したこどもたちとそのファミリーが、ミュージアムをたっぷり楽しんだ様子をレポートします。

プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)

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