2015.05.18
4月26日。この日、東京都美術館では12人の大人たちが楽しそうに美術館内を歩き回り、
時には真剣なまなざしで屋外彫刻を見つめる、そんな光景が見られました。この方たちは「Museum Quest〜ある建築家が遺したもう一つの扉を探せ〜」の参加者のみなさんです。
このプログラムは、美術館に興味はあるけれど、ハードルの高さを感じてなかなか一歩踏み出せない人たちに向けて、私たち、とびラーが企画したものです。
鑑賞以外の目的でも美術館に足を運んでほしい、そしてもっと美術館を身近に感じてもらえたら。そういう思いから生まれた企画です。
プログラムの内容は、この日初めて会った人同士3人1組のチームに分かれて、東京都美術館の屋外彫刻や建築に関する謎を解くものです。
謎解きを通じて、チーム内のメンバー同士やとびラーとのコミュニケーションを楽しんで頂くことも、この企画の目指すところです。
さぁ、謎を解くための調査員として集められた参加者のみなさんは、新しい出会いを見つけ、そして美術館に遺されたもう一つの扉を見つけることはできたのでしょうか。
謎解きの前にアイスブレイク。見知らぬ人同士のチームなので、まずは自己紹介から始めます。今回は謎解き好きの方が多く集まったので、謎解きの話題ですぐに打ち解けていたようでした。
新たな出会いの始まりです。
アイスブレイクで少し打ち解けたところで、謎解きの開始です。東京都美術館の敷地内を舞台に、屋外彫刻や建築に関する謎を解いていきます。1つの都市をイメージして設計されたというこの美術館は、構造が少し複雑で、場所によって様々な表情を見せてくれます。美術館全体に散りばめられた謎を探して、調査員のみなさんは歩き回ります。
みなさん無事に謎を解き終えて、制限時間内に元の部屋に戻ってくることができました。部屋に戻るとラストミッションが待っています。
ここでも、みなさん協力して、すぐに謎を解いてしまいました。写真はとびラー側のミスで、答えが先に出てしまったときの様子。少しくらいのハプニングは、楽しみの一つと思って頂けたようです(笑)。
謎解きが全て終了したら、カフェタイムでより一層コミュニケーションを深めます。お茶を飲んだり、お菓子を食べたりしながら、参加者同士や参加者ととびラーとのコミュニケーションをゆったりと楽しんでいただきました。参加者のみなさんは、普段から謎解きのイベントに参加しているとのことで、今回の謎は少し簡単だったようです。でも、美術館という非日常的な空間での謎解きがとても楽しかったと語ってくれました。
また、謎解きが好きな人同士だったことで、コミュニケーションの輪が謎解きを通じて広がっていくのがわかりました。
今回はその要素として美術館や彫刻があったので、謎解きの思考だけでなく、あの彫刻はおもしろいよねとか、美術館ってどんな時にくるかなとか、いつもの謎解きとは少し違う会話が生まれていたようでした。
ある参加者の方のお話では、謎を解くという行為は、何か分からないことを、主体的に解明して答えを見つけることだとおっしゃっていました。
作品の鑑賞という行為は、自身の内省を促したり、他者との対話を誘発したりすることに加え、作者はどんな人か、どんな思いでつくったのかということに思いを巡らせたり、調べたりして解釈していくこともあると思います。謎解きの思考と鑑賞の思考を行き来する様子から、参加者のみなさんがこれまで経験したことのない体験をしていることが伺えました。
今回Museum Questへ参加して頂いたことで、これまで美術館に足を運ぶことが少なかった方々に、作品を通じた謎解きという擬似的な鑑賞体験を感じてもらえたのではないでしょうか。
参加者のみなさんが、今回の体験をきっかけにアートの世界にも興味を持って頂けたらうれしいです。
いかがでしたでしょうか?あなたも東京都美術館を舞台とした謎解きで、新しいミュージアム体験をしてみませんか?次はどんな出会いが待っているか、私たちも楽しみです!
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【筆者】アート・コミュニケータ 上神田健太(カミカンダケンタ)