2017.08.20
2017年8月17日、あいうえのファミリープログラム「ミュージアム・トリップ」が行われました。
本年度3回目となる「ミュージアム・トリップ」とは、さまざまな状況にあるこどもたちにミュージアム・デビューの機会を提供するインクルーシヴ・プログラムです。経済的に困難な家庭の子どもを支援している団体や児童養護施設、海外にツールをもちカルチャー・ギャップなどの困難を抱える子どもを支援する団体など、各分野の専門機関と連携して実施しています。今回は都内にある児童養護施設が参加しました。
5名の男の子たち(未就学児2名、小学生2名、中学生1名)が早起きして上野公園まで来てくれました。彼らを迎えるアート・コミュニケーター(以下、とびラー)4名と共に活動しました。
プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)
2017.08.20
「TURNさんぽ」を開催しました。
TURNフェス3は、2017年8月18日(金)~20日(日)の3日間開催、会場には20人以上のアーティストが滞在していました。アーティストは、「できごと」を作品にしています。福祉施設との交流で生まれたできごと、来館者と一緒に生み出すできごとが、東京都美術館の中で重なり合っていました。「どこから見ようかな?何をみたらいいのかな?」と戸惑っている方たちのためにアート・コミュニケータ(とびラー)と一緒にお散歩する気分で展示室をめぐり、アーティストの話を聞いたり、おしゃべりをしたり。いろんな出会いを一緒に楽しみ、30分程度の短い時間で展覧会を楽しんでもらうのが「TURN」さんぽです。会場各所にある映像作品などは、簡単にご紹介するのみとし、短い時間でも体験していただけるよう工夫しました。開催期間中1日1回行った「TURNさんぽ」の模様をダイジェストでご報告します。
入り口から展示室に入ると、まずは東京大学先端科学技術センター「アルテク」のブースです。テーブルに並んだ電子機器が目に止まります。日常のつまずきを支援する「アルテク(=身の回りにあるテクノロジー)」について、様々な紹介がされています。例えば、教科書をiPadで撮影すると文章を読み上げてくれるソフトや、身体の一部を動かすだけで、照明のオンオフができるシステムなどを、参加したみなさんは熱心に試されていました。
「苦手をフォローしてくれるテクノロジーをもっと日常的に使用し、学習障がいのある人やこどもがもっと楽しく学べるようになるといいなと思います。決められた方法以外での学び方を小中学校でも取り入れてほしいです!」
建築家の馬場正尊さんによる「知覚のライン」。会場の一番初めから終わりまで、壁の下から70センチほどの高さに設置された出っ張りです。それを指先でさわりながら、次の展示室へ移動して行きます。
暖簾をくぐると、まず壁一杯の作品に圧倒されます。山縣良和さんの「ここのがっこう」の作品と、障がいのある方のアートで知られている「しょうぶ学園」の作品、そして二つの施設の 交流によって生まれた作品が、部屋全体に混ざるように展示されています。
そして、続いての展示室はアーティスト山城大督の「《まっしろな絵本》キックオフ・フォーラム」でした。
社会福祉法人きょうされん洗びんセンターにお勤めの高橋さんの日課は、全国の高速道路地図を独自のスケールで丁寧に書き写していくこと。毎日新しい紙を足しながら、きれいに折りたたんで行きます。そして1年が終わると、また最新の道路地図を購入し新しく書いていく、それをもう30年間も続けています。そして、「まだその地図全体を広げたことがなかった!」のだそうです。この写真展示は、きちっと折りたたんだ高速道路を高橋さんが東京体育館で広げるプロジェクトを写真家の川瀬一絵さんがドキュメントしたものです。
川瀬さんは、手振りを加えて「高橋さんが地図を開く、その瞬間のエネルギー」を感じた、と語られました。
高橋さんはなぜ道路? 絵の順番はどう管理していらっしゃるの?とか、みなさんとはちがうところが気になって、機会があったら、聞いてみたいと思いました。
続いてはノンバーバルの部屋!アーティストの富塚絵美さんとマダム ボンジュール・ジャンジさんによる空間。「中ではしゃべってはいけない!」部屋にはいる入口でまずそう説明があります。戸惑いながら少し暗い展示室にはいると、スタッフが「鯛の形をしたシールに今やりたいこと書いて!」とジェスチャーで教えてくれます。書いたらこの「やり鯛」シールを胸に貼ります。あなたは「お腹がすいているのね!」「そうか、眠たいんだ!」。「今やりたいこと」をきっかけに、隣の人とこんなアイコンタクトが始まりました。またある所では寸劇が始まったり。
幸運なグループは、1日に数回披露されるマダム ボンジュール・ジャンジさんのパフォーマンスに遭遇。ハイヒールにターバン、背中の羽。目の大きさも4倍になるジャンジさん。気がついたらドラッグクイーンと呼ばれていた彼女の、圧巻ながら音がないパフォーマンスに、私達はピンク色の手袋をはめて参加し、一緒に踊ることができました。
次の展示室に移って、しばらくしてから「喋っていいんだ」と気がつく人、ピンク色の「やり鯛」を貼ったまま歩いている人、靴を脱いだまま裸足で出てきた人もいて・・とてもリラックスできる空間でした。後から聞いたのだけれど、ノンバーバルな部屋には、耳の聞こえない人だけでなく、様々な背景をもった方もいた、とか。
富塚絵美さんたちが創り出した、知らないうちに混ざり合う居心地のよさを堪能しました。
ノンバーバルのブースは自分のカラの固さを強く感じました。言葉に頼っていることを改めて感じさせられました。
大西健太郎さんと板橋区立小茂根福祉園のブースに行くと、専属のサポートスタッフが、「風あるき-宙にのぼる」について説明してくれました。まず目にはいるのが、スノコの上に照明をキラキラと反射させている大きなフィルム。つぎに目に入るのが下から高い天井までつづいているリール。採寸台のような大机など。「2人か、3人でグループになってください。」「一人がフィルムの上でポーズをとり、他の人がそこに色鉛筆で型を取っていきます。」「交代して「ひとがた」を取り合います。重なっても構いません。むしろ重なることで面白い形になります。」「今度は協働して自分の好きな線をハサミで切って一つの型を切り出してください。出来上がった姿を想像してくださいね。」「これを「みーらいらい」と呼んでいます。」「凧のように骨をつけて、リールに吊るしてハンドルを回せば、天井まで登って行きます。」「みーらいらいは、天井付近にある照明でキラキラ光り、重なり合った人型が宙を舞います。」
大西健太郎さんは、さんぽの参加者をスノコの上に案内してくれました。そして車座になり静かに話し始めました。「風あるきとは、重い障害をもった小茂根福祉園の人たちと車椅子で散歩をするとき、他者によって切り取られた自分のひとがたを宙にかざして、陽の光や木陰、空や風になびかせながら歩く行為です。」「小茂根でみーらいらいをつくる時は、まず、車椅子からこうやって身体を抱えて2人で介助しながら、フィルムに降りてもらいます・・・そして、好きなポーズを3つ決めてもらい、その人の型をうつし取ってとっていきます。」
最後は交流スペースの、身体をすっぽりと沈められる椅子に座り、参加者のみなさんにはカードに感想を書いていただきました。
素で接していただいたので、こちらも未知の世界に構える事なく触れることができました。/ 30分という短い時間でしたが、TURNの雰囲気を体感できました。また、ゆっくりと見てみます。/ 説明を伺わないとわからないことが多かったので、ツアーは有意義でした。/ 会場全体が初めつかめなかったので、さんぽで大まかに回れてよかった。/ 他の参加者の方、作家さん、ワークショップでお話いただいた皆様、アートコミュニケーターの皆様とcommunicateできたことが、本日の収穫でした。
参加者とコミュニケーションしている時「東濃さんにとってTURNって何ですか?」と聞かれました。「運動体、ムーブメントだと思っています。TURNに参加することで今自分が抱えている様々な殻を破っていきたいと思っています。」と正直に答えると、肯いてくれました。「TURNフェスをもう一度見て回るのに助けとなります。」との感想をいただき解散しました。
執筆:東濃誠(アート・コミュニケータ「とびラー」)