2018.08.16
暑い、今年は特に暑い。でも、もっと暑くて、もっと熱いところがあります。東京藝術大学(以下、藝大)の敷地に建てられたテントの中です。そこでは今年藝大に入学した学生が、9月7日から9日に開催される藝大の学園祭「藝祭」に向けて、御輿づくりの真最中です。
藝大に興味があり、毎年の藝祭も楽しみにしている、とびらプロジェクトのアート・コミュニケータ(愛称「とびラー」)の有志は、今年も、藝祭まで待てずに、御輿づくりの現場に突撃取材しようということになりました。学園祭を学生だけが楽しむのは勿体無い、周りの大人も楽しんじゃおうというノリです。改めましてみなさんこんにちは、とびラーの鈴木です。
昨年までは、藝祭では8基の御輿を制作していましたが、今年は、諸々の事情で4基になったということで、パワーが倍増するのか、はたまた大勢の船頭が御輿を山に登らせてしまうのか、興味津々です。
今年第一回の御輿取材は、8月10日に行いました。ここからは、そこで取材させていただいた、『日本画・工芸・邦楽・楽理』チームが制作している御輿「烏天狗」に関するレポートになります。
「烏天狗」は、音校(※音楽校地)をちょっと入った所で、大きなテントの中で制作されていました。台風13号が通過した後の取材日の東京はすごく暑かったのですが、このテントは西日があたり特に暑く感じられます。こんな中で、どんな人が御輿を作っているのだろうと興味が湧いてきた所で、「隊長さんいますか」と声をかけます。すると、御輿の本体を制作中のテントではなく、その近くにある小さなテントから、裸足の女性が飛び出して来てくれました。彼女が、隊長の一人、日本画の山本さんでした。そこに、もう一人の隊長、工芸の中川さんも加わって、お二人から話を聞くことができました。
テントの中では、もう発泡スチロールのブロックが積み上がって本体の制作が進んでいたので、「もう始めてからどのくらい経ったんですか?」と聞くと、2週間くらいとのこと。2週間でテントを建て、ここまでできるんですね。驚きます。でも、藝祭までもう30日をきっていますから、このくらいできていないと、順調とは言えないのかもしれません。大変だなと思います。
このチームの今年のモチーフは「烏天狗」だと公式藝祭Webサイトに発表されていました。「今回の「烏天狗」はどのように決まったんですか?」と伺うと、チームの中から出て来たアイデアの中で、最後に残ったのが「龍」と「烏天狗」で、その2つで競った結果、最後に「烏天狗」になったそうです。でも、後日談があり、よく調べてみると、天狗の元は仏法を守る八部衆の中の迦楼羅(カルラ)で、その迦楼羅はもともと龍を常食としていたということが分かったので、そこで再び龍が登場して、烏天狗と龍が対峙する図柄になったということです。このチームは、日本画、工芸、邦楽、楽理の混合編成ということで、御輿のモチーフも日本の伝統を意識しているようです。
日本画と工芸が一緒のチームで御輿づくりをするのは、今年が初めてということなので、「二科の混成チームでうまくいっていますか?」と、ちょっと意地悪な質問。すると答えは、最初は、作品に対するアプローチなど合わないところもあって、「工芸の方が大きく形を取るところから始めよう」というのに対し、「日本画の方は細部へのこだわりがあった」など、対立もあったそうです。けれど、共同作業を進めるなかで、いまではお互いのことがわかるようになり、立体は造形、色は日本画というように、お互いの良いところを出し合って進めているようです。よかった。
お二人にどうして隊長になったのですかという質問をすると、お二人とも自らの立候補だということでした。工芸の中川さんは、高校2年生の頃から、藝祭御輿の隊長をやりたいと思っていたそうです。すばらしい意気込みですね。
作業台の上には接着剤と並んで、栄養ドリンクの空き瓶が転がっています。柱にかかっている温度計は42度になったこともあるそうです。素晴らしい御輿も、こんな過酷な環境から生まれると考えると、感慨に打たれます。
今はまだ、嘴や羽は別の場所で作成中であり、本体は発泡スチロールの塊の中から頭の丸みが出て来ているだけの段階なので、最終形は想像するしかできません。でも、この御輿の見所はそのポーズにあるという隊長の話もあり、これからどんな姿を現してくるのか楽しみです。また、9月7日の御輿アピールのパフォーマンスでは、邦楽と楽理の得意分野の「烏天狗」を題材とする邦楽を使うということなので、それも見逃せません、いや聞き逃せません。
取材でお邪魔した後、帰ろうとすると、トンボが一匹飛び去って行きました。11日からは学校も夏季休日で御輿作業も中断。少しお休みして、また9月に向けて頑張ってねと思う、取材とびラーでした。
執筆:鈴木重保(アート・コミュニケータ「とびラー」)
…「過ぎ去る夏に突如現れる藝祭御輿、これからもフォローします。」
写真:藤田まり(アート・コミュニケータ「とびラー」)、峰岸優香(とびらプロジェクト アシスタント)
★藝大生やとびラーが活躍する「藝祭2018」を一緒に楽しみませんか?
公式サイト→(http://geisai.geidai.ac.jp/2018/index.html)
開催期間:9/7(金)8(土)9(日)9:00〜20:00 / 東京藝術大学上野校地にて
2018.08.11
東京都美術館で開催される「TURNフェス4」をアート・コミュニケータ(とびラー)と一緒に楽しみませんか。お散歩する気分で展示室をめぐり、アーティストの話を聞いたり、おしゃべりをしたり。いろんな出会いを一緒に楽しみましょう!
※広報や記録用に撮影・録音を行います。ご了承ください。
2018.08.02
「ふだん行けないところに行けて、とても楽しかった。」
シンプルな、でも実感のこもった感想を伝えてくれたのは、2018年8月2日に行われたミュージアム・トリップの参加者のひとり。
そう、世界はひろく、たくさんのおもしろいものや人がいるのに、わたしたちはふだん、決まったところで生活をし、なかなかその外へ出ることができません。ひとりで出掛けるのが難しい、新しいことに挑戦する機会が少ないこどもたちなら、なおのこと。
だからこそ、出会いの宝庫であるミュージアムにこどもたちを招待し、世界がひろがるきっかけをプレゼントしたい。こんな思いから、さまざまな環境にあるこどもたちにミュージアム・デビューの機会を提供するインクルーシブ・プログラム、ミュージアム・トリップははじまりました。
これまで、児童養護施設や、経済的に困難な家庭のこどもを支援している団体、海外にルーツを持ちカルチャー・ギャップなどの困難を抱えるこどもを支援している団体など、各分野の機関と連携して実施しています。
昨年度、一昨年度に続き「NPO法人キッズドア」(以下、キッズドア)という、こどもたちに無料で学習支援を行なう団体と連携して実施しました。
プログラムの様子はこちら→
(「Museum Start あいうえの」ブログに移動します。)