四月にとびラーとしての活動が始まり、はや三ヶ月。基礎講座もいよいよ最終回。
本日の講師は西村佳哲さんです。
今日の講座は、3人で集まって「美術館とはどんな場所か」話すことからスタート。
これまでの基礎講座で聞いたこと・話したこと・考えたことを振り返ります。
年齢、性別、職業、考え方、話し方…様々なことが違う100人の人たちと出会って気付いたこと。
第4回目基礎講座「きく力」、第5回目基礎講座「グッドミーティング」を通して、対話することへの意識が変化していった方も多いようです。
最初に、西村さんからとある事例紹介。
最初は個々人のやってみたいことや、「こうなったらいいな」「こうだったら楽しいな」というアイデアから生まれた小さな会社。仕事が順調にすすみ、会社の規模が大きくなって、時間が経つと働く人の生活環境には違いが生まれてきます。暮らし方や働き方の変化を受け、会社の在り方を考える局面で、何を大切にするか?高い成果の追求だけが、一人ひとりにとって、本当に健やかな環境をつくっているか?今日のテーマ「その場にいる人がすべて方式」を考える、大切な視点です。
次は、その場にいる3人でどんなプロジェクトができそうか、実際に考えてみます。
テーマや目標、成果はひとまず、置いておいて。
3人で計画をたてる前に、「仕事に向かうための3つの要素」について、まずは自分と向き合います。
一つ目は「やりたい」こと。絶対に今やりたいこと、死ぬまでにトライしてみたいこと、ちょっと気になっていること。
二つ目は「できる」こと。やりたいことはあるかもしれないけれど、力を発揮できることとは違います。自分にできること、もっている能力や資源は何か。
三つ目は「やるべき」こと。頼まれてもいないのに、使命感・責任感を感じていること。自分の気持ちが強く向いていること。
それぞれノートに書き出してみます。
三つの力が重なる場所で、その人のエネルギーは一番発揮されるのだとか。
その後、15分の話し合いのなかで実現できるアイデアを考えてみるワーク。
美術館の中でも、外でも構いません。自分が本当にやりたいことは?実現できることは何か?他の人のアイデアと組み合わせるどうなるか?組み立てるプロセスを体験してみます。
「その場にいる人がすべて方式」を料理に例えるなら「今夜の晩ご飯を、既に冷蔵庫にあるもので何かつくる」こと。最初からフレンチや懐石料理を目指して材料をそろえるのではなく、今の自分たちがつくれる、おいしいものを考えよう、という姿勢です。大切なのは、楽しんでトライできる技術とセンス。「ご飯のおいしさ」をどこに見出すかも重要ですね。
東京のように様々な人がいる場所は、目的にあわせたベストチームを作りやすい状況です。
しかし、住んでいる人が少ない地方や、小さな集団では、「グッドアイデア」だけではうまくいかないことがあります。何かをする時に、一番大きな要素は「人」。どんなによい方法でも、実際にいる人のことを考えなければうまくいきません。
「新しいアイデアとは、すでにあるものの、新しい組み合わせである」と西村さん。
既存の要素たちを、どう新しく組み合わせていくか。そのためには、既にあるものを見逃さないこと、その人のことを「きく」力が大切です。結果を急がず、プロセスを丁寧に共有していくことがよいチームを作っていくそう。
誰かの言葉を「きく」こととは、話の内容を聞くことだけではなく、その人に現れる様々なことをよく見て、感じとることでもあります。言葉から表現したいことを察し合い、互いに気付き合う関係が、それぞれのユニークさを引き出すポイントです。
また、「本人が自分をどうみているか」という視点が他人にも投影され、他者への態度をつくります。誰かと向き合うことは、単なるスキルではではありません。相手の状況が見えてくれば、自ずと関与の在り方に気付けるはず。
以上のお話をふまえて、「3人組からはじめる」「この指とまれ」「解散式を楽しむ」のポイントを示して頂きました。
午後のワークでは、さっそくこれらの方法を実践してみます。
実は毎年おなじみとなっている。スパゲッティ・キャンティレバーのワークショップ。(去年の様子はこちら)
30分のなかでパスタ・糸・テープを駆使し、3人1組で横にのばす構造体をつくるワークです。
そして、大切なのは「ふりかえり」。単なる反省会ではなく、ワークショップのなかでどんなコミュニケーションが起きたか、それによってどんな効果があったか、分析していきます。「やり方が違うから、結果も違う。」作業しやすい環境は、どこから生まれてくるのでしょう?
失敗は成功の母・・・とも言いますが、チャレンジする時のキーワードは「早めに失敗する」こと。小さなトライ&エラーを繰り返しながら、どんどん作り直していくことが洗練された結果につながっていきます。
「重要な2割に8割の成果が含まれる」。重要な資源である「時間」をどう有効活用するか?
これまでとは違う世の中で、美術館はどう変わっていくのか、どう使えるのか。とびラーとしてどんな活動を生み出していけるのか。
今後の活動のヒントがたくさん散りばめられていて、これから何度も思い出したいポイントが溢れる最終回となりました。
とびラーの活動はいよいよここからが本番!「楽しむ」センスを大切に、新しいチャレンジがたくさんできたらいいですね。
(とびらプロジェクト アシスタント・峰岸優香)
2016.06.25