・東京都美術館で開催された「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(会期:2025年9月12日(金)~12月21日(日))にて、展覧会の休室日にあたる10月27日(月)に「障害のある方のための特別鑑賞会」を実施しました。
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・当日は、とびラーとアート・コミュニケータ東京(任期満了したアート・コミュニケータの団体)が連携し、館内のさまざまな場所で来館者お一人お一人が安心して過ごせる環境を整えていきました。
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・今回の特別鑑賞会でも、ミロ展に引き続き、とびラーが「とびラボ」で発案したアイデアが行われました。案内状のデザインや、手元のiPadで拡大画像を明るく見ることができる工夫、また、東京都美術館が制作した触図(しょくず・作品の構図やモチーフを凹凸のある線や点で立体的に表わした図版)を用いた鑑賞サポートも行われました。事前の準備段階から複数のとびラーが関わり、来館者が展覧会に出会うための入口をつくってきました。
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iPadに入れた作品画像を手元で拡大して細部を見やすくサポート
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・触図を用いての鑑賞サポートでは、アート・コミュニケータが来館者と一緒に作品を鑑賞します。アート・コミュニケータは作品に描かれているものを説明したり、作品から受ける印象をお話しします。同時に、来館者の指先を触図にふれさせながら、構図や質感をイメージしてもらいます。
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・触図《種まく人》の前でも、多くの声が交わされました。まず多かったのは、触ることによって作品の全体像が立ち上がる驚きです。
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ロービジョンの参加者からは、
「本物は会場が暗くてよく分からなかったけれど、触図だと木の太さや種をまく男の姿がよく分かる。見やすい」
という声が聞かれました。・
・また、触図を使ったアート・コミュニケータとの会話から、作品の細部に気づいていくことも多くあります。
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「太陽はうすく赤くなっているのですか?色はどういう感じですか」
「青い袖を着ているんですね。種をまく手はどちら?」
「右手ですね。土に向かっている。左手は袋を持っている…あ、持っているのが分かります」
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など、触図を起点に、色・身体の向き・動作が具体的なイメージとして共有され、鑑賞が深まっていきました。
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・鑑賞会後のアンケートには、「安心して、ゆっくり鑑賞できた」「人混みを気にせず美術館に来られた」という声が多く寄せられました。
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・アート・コミュニケータについても、「そっと声をかけてくれた」「一緒に見てくれた」「新しい気づきがあった」といった感想が並び、鑑賞をともにつくる存在として受け取られていたようです。
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・とびラーから寄せられた当日のエピソードの中には、印象的なやりとりがいくつもありました。
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《種まく人》の前を行ったり来たりしている来館者の方がいました。
「見づらいですか」と声をかけると、
「違うのよ。ほら、こっちから見ると絵の具がきらきらして、きれいでしょ。」
そう言って、右側に連れて行って教えてくださいました。
来館者の方の笑顔も、きらきらしていました。・
・説明する側・される側などの関係ではなく、作品の鑑賞を分かち合う時間が、自然とそこに生まれていました。
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・また今回は、慣れない移動や人混み、周囲の視線、音、光等の混在により不安やストレスを感じた際に気持ちを落ち着かせたい方のために、「カームダウンスペース」や「センサリーキバッグ」(イヤーマフやセンサリートイなどが入ったバッグ)を導入しました。また、お声掛けが苦手な方にスタッフやアート・コミュニケータが気がつけるようにするための目印(白紙の名札)も用意しました。
・すべての方に安心して展覧会を楽しんでいただくための模索は続きます。
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・特別鑑賞会は、一度きりの特別な日ではなく、皆さまと美術館との関係の入口となる1日です。
・この日のご来館をきっかけに、今後も皆さまとのご縁が続いていくことを願っています。
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・次回は、2026年2月9日(月)、東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやきにて開催を予定しています。
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次の鑑賞会でもみなさまにお会いできるのを、アート・コミュニケータ一同楽しみにしています。
2025.10.27