2012.08.26
リニューアルした都美には、3つのカフェ・レストラン―1階カフェ「M cafe」、1階レストラン「IVORY」、2階レストラン「MUSEUM TERRACE」―があります。
今回は、3店舗の統括マネージャである田中俊一さんから貴重なお話を聞かせて頂きました。
(*表記は●→とびラー候補生、○→とびらプロジェクトマネージャ 伊藤。)
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●まず、田中さんのご所属と、お仕事の内容を教えてください。
[田中]僕達は、株式会社zetton(ゼットン)という飲食店の企業から、今回都美のリニューアルに際して3店の飲食店を展開しています。僕は店長として主に「MUSEUM TERRACE」で働いています。同時に全3店舗の統括マネージャーを兼任しているので、他の2店舗の店長とやり取りをし、お客様の声を拾い上げて、様々な問題の改善に努めています。また、美術財団のパーティーやレセプションも請け負います。お客様からご相談を受けて、今までにないようなレセプションや場所の使い方を日々模索しています。
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●田中さんは都美に来る以前から飲食のお仕事をなさっていたのですか?
[田中]そうですね。ぼくは学生を卒業してからずっと飲食で働いていて、もともと銀座・日本橋エリアを担当していました。zettonは六本木や渋谷など東京全域にお店がありますが、僕は足立区出身ということもあり、最近は地元から近い東エリアを担当しています。今回の都美での店舗展開のお話も、上野なら是非やりたいと自ら手を上げました。
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●田中さんは、働く以前にも都美を訪れたことはありましたか?
[田中]いや、ないと思います。ただ、もともと学生の時に遊びに来る最初の街は上野だったので、上野公園にはよく遊びに来ていました。記憶にはありませんが、小さい時に課外授業などで都美に訪れていたと思います。今回のお話を頂いてから、都美のリニューアルのことも初めて知りました。お恥ずかしい話ですが(笑)。
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●都美でレストランを営業して、オープンからすでに5ヶ月が経ちましたが、現段階でどのような印象をお持ちですか?
[田中] 一番強く感じたのは「もともと歴史がある」ということです。通常お店を出す時は、「ゼロから始まる」という感覚ですが、都美の場合は、長い間美術館があり、レストランや食堂などの飲食店も、またその長い歴史の中にありました。昔の都美を知り、今でも通っていらっしゃるお客様がすごく多いんですよ。なので、お客様とのコミュニケーションの中から「以前のレストランはこうだったよ」と歴史が垣間見えたり、「これを復活して欲しい」といった要望もあったりと、実際現場に立ってみて、都美でお店を「出させていただく」という意識をさらに強く感じています。都美の歴史の「新たな一ページ」として参加させていただいている、という感覚です。
(2階レストラン「MUSEUM TERRACE」)
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●zettonとしては、美術館というある種特殊な空間での飲食展開は初めてですか?
[田中]いえ、もともと公共施設の中に飲食店を展開する「パブリック・イノベーション」という事業があります。一昔前だと、立地が良く、色々な人が集まる素敵な場所であるにも関わらず、公共施設のレストランの料理のクオリティは正直高いとは言えませんでした。対して、僕達は街場のカフェやレストランで培ってきたノウハウを生かすことで、そうした場所のブランド力をあげ、訪れたお客様の思い出をグレード・アップさせることを目指しています。zettonはこうしたプロジェクトに5年ほど携わっているため、その実績から、今回の都美でのお話を頂けたのかと思っています。前例で言えば、僕は以前三井記念美術館のミュージアム・カフェで働いていました。
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(1階レストラン「IVORY」)
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2012.08.25
建築ツアー4回目はいよいよお客様をご案内する実践の場。しかし、とびラー候補生(以下:とびコー)はまだ修行中の身なのでサポートにまわります。ツアーの案内をするのは松隈洋先生(京都工芸繊維大学教授・建築史家)です。2年前に実施された「おやすみ都美館建築ツアー」でもツアーの案内人をされた東京都美術館(以下:都美)の建築(前川國男設計)を知り尽くすベテラン案内人。リニューアルオープン後第一回目となる今回の建築ツアーには24名の方にご参加頂きました。早速ツアースタート、地下1階のロビー階から中庭へ移動します。改修前と改修後にどのような変化があったのかなど、詳しく教えて頂きながら歩いて行きます。
続いて地上1階の正門付近へと移動します。この場所からは都美の外観を一望することができます。都美の改修工事でもっとも難しかったことの一つは、一見レンガづくりに見える都美外壁の再現だったそうです。実はこれ、レンガではなくタイルなのです。「打ち込みタイル工法」という技法を用いており、これも前川國男建築の特徴の一つでもあります。
改修前と改修後では大きく違うところもあります。都美はバリアフリー化を積極的に進め、改修前にはなかったエレベーターとエスカレーターが設置されました。
館内には大正時代に都美創設に大きく貢献した九州の炭鉱王佐藤慶太郎を記念するラウンジが設けられています。
このあと、企画展示室で開催中の「生きるための家展」を鑑賞しながら、新しくなった展示室を見学しました。
続いて北口へ。一番下のLB階にはミュージアムショップ、一つ上が地上1階で佐藤慶太郎記念アートラウンジ、その上2階がレストランを臨めます。この2階レストラン部分も今回の改修工事で新たに増設された部分です。
2012.08.20
「スクールマンデー(対話を通した作品鑑賞)」の実践講座の2回目が行われました。講師はNPO法人芸術資源開発機構のアートプランナーである三ツ木紀英さん。前回に引き続き、対話による鑑賞方であるVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)の体得を目指した実践講座が開かれました。まずはよりVTSを理解するために、鑑賞者グループ(VTS体験)、観察者グループ1(鑑賞者を観察)、観察者グループ2(ファシリテータを観察)の3つのグループに別れ、それぞれローテーションで全員が体験して行きます。そうすることで、VTSで起こるさまざまな変化や出来事をつぶさに観察することが出来ます。
ファシリテータは三ツ木さん。早速VTSがスタートします。1点の作品に凡そ20分程度の時間をかけます。
みなさん、それそれのグループの立場で、VTSを観察しています。
2点目、3点目とグループの役割を交換しながら、VTSが進められて行きました。
1時間以上にも及ぶ深い鑑賞体験はかなりの集中力を必要とします。またそれ以上に、立て続けに3回連続でファシリテータをされた三ツ木さんにも脱帽です。
少し休憩をとってから少人数のグループに分かれて、VTSの観察体験について意見交換を行いました。自分の感じたこと気付いたことをシェアすることによって、よりVTSについて理解が深まったのではないでしょうか。
最後に「VTSの美的発達段階と適切な作品選び」と題してレクチャーをして頂きました。アメリカのMoMAで開発されたVTSの背景(前回のブログ参照)や、レフ・ヴィゴツキー「発達の最近接領域」、ジャン・ピアジュ「認知発達の4つの段階」、アビゲイル・ハウゼン「美的発達段階」などかなり専門的な内容にも触れて頂きました。また、VTSを行う上で適切な作品の選び方などもご指導頂きました。
2012.08.19
__私は上野(うえの)都美子(とみこ)。都美子という名前は、都美館が大好きな母が付けたの。友達からは“とび子”って呼ばれてます__
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この日の上演は、14時と15時の2回。上演前は紙芝居の宣伝のため、館内のお客さんたちに声を掛けて回りました。手作りの青いターバン、宣伝用のポスターと人形たちが人目を引きます。リカちゃん人形のお洋服は、なんと!とびコーのお手製です!
1回目の客数は…少し寂しい結果となってしまいましたが、2回目の上演では、企画展の出口に絞って呼び込みをする宣伝の効果もあってか、20名以上の方が足を運んで下さいました。
2012.08.15
8月15日、この日の東京都美術館(以下:都美)は「シルバーデー」。65歳以上の方は無料となりました。マウリッツハイス美術館展を鑑賞するために午前中から沢山のお客様が来館され、敷地の外に出てしまう程の行列が出来ていました。
そこに現れたのが「真珠の耳飾りの少女」とお揃いの青いターバンを巻いたびラー候補生(以下:とびコー)の皆さん。8月5日に3つの企画をお客様の前でお披露目し都美デビューを果たしたとびコーの皆さんですが、もっと多くのお客様に楽しさとワクワクをお届けしたい!という思いから、「シルバーデー」であるこの日も出動しました。
長蛇の列に容赦なく照り付ける夏の太陽。猛暑の中ご来館されたお客様へ配布期限の過ぎた展覧会チラシを再利用した「ウチワ」をプレゼント。このウチワ、とびコーさんが一つひとつチラシを折ってつくっています。
数百枚のウチワをお一人おひとりのお客様に手渡しで、配らせて頂きました。
正門を入ってすぐ、入場待ちの方とお帰りの方が行き交うスペースで、おなじみの”とびら楽団”が楽しげな演奏をしています。
とびら楽団が隊列を組んで練り歩いたりと、暑さにも負けないパフォーマンスを披露。新曲の「カントリーロード」も初めて皆さんの前で演奏することができました。
そしてこちらはフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」になって記念撮影が出来る「あたなも真珠の耳飾りの少女プロジェクト」。前回の8月5日同様大盛況で、沢山の方が「真珠の耳飾りの少女」になって下さいました。
「あたなも真珠の耳飾りの少女プロジェクト」の額縁の裏側を少しだけご紹介。都美限定名画誕生の裏では、その名の通り名画を支える人々がいます。このようにして都美での記念すべき1ショットができあがります。ご参加頂いたお客様には夏の思い出としてお持ち帰り頂けたのではないでしょうか。
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2012.08.13
とびラー候補生(以下:とびコー)がさまざまなちまたのランチをリサーチする「とびランチ」がスタートしました。記念すべき第一回目は、我らが東京都美術館1階にあるIVORYです。今回はとびらスタッフも同行しました!(毎回行く可能性もあります。)
通常のコースメニュー数種に加え、マウリッツハイス美術館展にちなんだスペシャルメニューも用意されています。どれにするか相当迷います。結局、ブランチコースとマウリッツハイス美術館展スペシャルメニューを手分けして注文することになりました。ちなみに、マウリッツハイス美術館展スペシャルメニューは、オランダ・フランドルの郷土料理を洗練された技法で仕上げた、展覧会期間だけの特別コースです。
マウリッツハイス美術館スペシャルメニューの前菜は”ベネルクス風 ニシンマリネ アンディーブサラダ添え”。素朴な風合いながら、後味のすっきりとした一品です。
食べてみて下さいとしか言いようがありません。相当美味しいです!
こちらは、マウリッツハイス美術館展スペシャルメニューのメインディッシュ ”オランダビールで仕上げた牛肉のカルボナート フランドル風”濃厚かつトロッとしたお肉が素晴らしい!
ともて幸せなひと時です。
2012.08.12
はじめは「おおきなわ」というワークショップからスタート。まずは、手をつないで輪になります。しかし、及部先生が合図をしたら、今まで触れていたところでない場所で、隣りの相手と繋がらなくてはなりません。
繰り返して行くと、徐々におかしな格好になってきます。いろいろな形のポーズが組み合わさると、身体という素材を使った空間表現にも捉えられます。絵や彫刻が主流のアートとして認識されていた時代に、一般の方々を相手にこれをやるのはかなりアバンギャルドだったのではと想像します。
繋がることでさまざまな形が生み出されることを体験した後は、「大切な布」をつかったワークショップに移ります。参加者には事前に「大切な布」を持参してお越し下さいとお伝えしてありました。そして、思い出のある「大切な布」を広げて、円陣に座ります。
一人ずつ、布に込められている思いを語って頂きました。彼女が手に持っているのは、彼女のおしゃれ感覚に大きな影響を与えた、古着屋で買ったラルフローレンのスカートとのこと。布の紹介が終わったら、みんなで布を隣りから隣りへと手渡しで触れて行きます。お話から得た布の印象と、触ってみた感触が一体となった時、その布に込められた思いを、少しだけ共有できたような気持ちになれます。
布に込められている思いを語ったり触ったりした後は、それぞれがその思いを「三行の詩」でまとめます。いろいろな思い出が持ってきて頂いた布に込められています。本当にみなさん「大切な布」を持ってきて頂きました。
そしてなんと、みなさんの「大切な布」をクリップや安全ピンで繋ぎ合わせて、オブジェ?のように組上げて行きます。もはや素材が繋がるという域を超えて、そこに込められている記憶が形を紡ぎだすような作業に感じられました。
続いて、「三行の詩」は1行ずつビリビリと切り離されます。
参加者は自分の詩の中から1行だけ選び、他の参加者のものと順不同に並べます。すると、今度は「大切な布」の記憶の断片を結びつけることで生まれる、一風変わった詩が生まれました。これを「群読」してゆきます。声をそろえて強調して読むところ、反復するところ、一人で読むところなど、相談しながら、詩を読むリズムをつくってゆきます。
最後に「大切な布のオブジェ」を舞台として、「群読」に「おおきなわ」でやったような身体表現を加えれば、前衛的な演劇へと集約されて行きます。初対面の参加者同士がわずかな時間で意思の疎通を行い、それぞれの身体や記憶の片鱗から浮かび上がる表現の糸口をコミュニケーションを通してたぐり寄せ、声や形を共有する表現体験へと結実させて行くプロセスは大変魅力的に感じられました。
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椎原さんから、谷中の歴史と美味しいお店を教えてもらった参加者は、早速まちに繰り出して行きます。谷中を見学しながら、ランチを食べて、グループごとに親睦を深めます。
東京藝術大学からほど近いところに、老舗カフェ「カヤバ珈琲」があります。とびらスタッフはここでランチです。
店内はそれほど広くはありませんが、昭和の雰囲気と、おしゃれなでボリューミーなメニューが楽しめるお勧めスポットです。稲庭さんはハンバーグランチセット、近藤さんはハヤシライス。どちらも美味しそうです。
お腹がいっぱいになった後は、「旧平櫛田中邸」へ。椎原さんから教えていただいた通り、一般公開されていました。
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玄関先では丁度、韓国人アーティストのユ・カンホさんのワークショップが開催されていました。丸太をのみで削って、椅子をつくっています。とびらプロジェクトアシスタントの大谷さん、のみ捌きなかなか上手いね。
谷中散策を終えて再び都美へ。みなさんランチを食べながら、午前中のワークショップのことや、谷中のことなど色々話合ってきた様子でした。早速、及部先生のワークショップ午後の部再開です。二人組になって向かい合い、床に置かれた白い紙の上に、毛糸を垂らしてお互いの似顔絵を描きます。毛糸は上から垂らすだけ、画面に触れてはいけません。
難しい!と思いきや、凄い! 結構似てくることにびっくりしました。
続いて、「一筆描き自画像」鏡は使いません。自分の顔の記憶を頼りに一本の線でぐいぐい描いて行きます。
上手ですね。良く描けてます。
なんか、似てます。(笑)
記憶や印象を形にする感覚が少し身に付いたところで、次のワークショップに移ります。5色の布と毛糸、それに谷中散策の途中でもらったチラシや地図などを使い、谷中散策を形にしてゆきます。
これは、三軒間というスペースでお昼を食べようと向かったチームの中の一人の作品。店の前まで行ったのに、営業時間になっておらず、入れないで立ち尽くすグループ一同を表現しているそうです。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)
2012.08.10
リニューアルした都美には、念願のエスカレーターに「誰でもトイレ」等々が完備。これらは、リニューアルオープン以前から実施されていた「障がいのある方のための特別鑑賞会」に参加していた私たちにとっては夢のような設備です。しかし、まだ利用者の視点が入る余地があるのではないかと感じられ、リニューアル間もない都美に足しげく通う我々とびコーが、まずは調査確認を行おうということになりました。
そして、宮山さんが中心となり2012年6月9日、「アクセサビリティ」について初めての会合がもたれました。
一つひとつ丁寧に確認する為に、6月23日の基礎講座最終回後に館内を車いすを使って移動してみました。
お恥ずかしいくらい拙い初めのペーパーです。でも、これが次への第一歩。調査を箇所を写真撮影、その結果をまとめ、冊子にすることがプロジェクトの大枠として決定しました。
そして、冊子作成へと作業が進みました。館内のアクセシビリティーに加え、辻さんが「都美館HPアクセス情報補足案」として作成しました。
空閑さんが冊子の編集を行いました。8月上旬ついに完成しました!
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2012.08.10
アクセスプログラム4回目は、「障がいのある方の為の特別鑑賞会」当日のサポート体制をより具体化させるための日となりました。まずは、杉山貴洋先生(白梅学園大学准教授)の指導のもとチーム編成。凡そ40名のとびラー候補生(以下:とびコー)が4班に別れ、展示室での鑑賞サポートはもとより、美術館の敷地内での誘導サポートも担当します。
展示室内や美術館の敷地内で、人的なサポートが必要と思われる場所は予めピックアップしてあり、各担当の班が持ち場を守ることになりますが、どのようなローテーションを用いて、起こりうるだろう不測の事態に備えるかは、それぞれの班の現場判断に委ねられています。自分たちで決めた現場対応の布陣であるからこそ、様々な局面にも柔軟に対応することができると考えています。
一度現場に立ったら、トラブルに対する迅速な対応や的を得たサポートは、各自の適切な判断でしか成し得ません。みなさん真剣に話し合っている様子です。
2012.08.05
「マウリッツハイス美術館展」の作品が展示されている企画棟の1 階、2階には、見晴らしの良いラウンジがあります。作品を観たあとに、カラフルな椅子に腰を下ろしてひと息ついたり、買ったばかりのカタログをさっそく広げる人も。大きなガラス面からは、東京都美術館(以下、都美)の正門から入口に向かう人の波も見えます。
「なんだ、あれ?」
「青いターバンがいっぱい…コスプレ?」
おや、正門周辺の様子がいつもと違うようです…早速、見に行ってみましょう!!
正門から、にぎやかな旋律が聞こえてきます。どこかで聴いたことがある懐かしいメロディ。演奏しているのは、とびラー候補生(以下、とびコー)有志で編成された「とびら楽団」です。団員はフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」と同じ青いターバンを巻いています。美術館入口で青ターバンがライブ演奏という予想外の出迎えに、暑さの中、足を運んでくさったお客様の顔も思わずほころびます。
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演奏曲は、NHK「みんなのうた」でおなじみの「メトロポリタン美術館」。この曲はもともとニューヨークのメトロポリタン美術館を舞台とした物語をモチーフにしていますが、都美もTokyo Metropolitan Art Museum であり、秋にはニューヨークのメトロポリタン美術館展が開催される縁もあって、最初のレパートリーに決定したのでした。
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楽団結成は5月末。演奏が好きな人、歌なら歌えるという人…経験不問、やりたい人全員ウェルカム!カスタネット、サックスから旅先で買った打楽器まで、楽器はすべて持ち寄りでスタートしました。8月まで2ヶ月あったとはいえ、平日は学校や仕事があるメンバーが多いため、自主練習と数回の合同練習で当日を迎えましたが、その演奏は、お客様を笑顔にするには十分なものでした。
楽団を横目に歩みを進めると、今度は楽団とは別の青いターバンの集団がいます。
「顔の向きはそのまま!視線をこっちに!」
「そうそう!はいっ、撮ります!」
撮るって…いったい何を???見ると、お客様が青いターバンを着けて大きな額縁から顔を出してにこやかにカメラに収まっていました。旅先で、歴史上の人物の等身大看板の顔がくりぬかれたところから顔を出して写真を撮ったこと、ありますよね?仮にそれを「顔出し」と呼ぶとします。その顔出しを更に進化させ、マウリッツハイス美術館展の目玉作品、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」でやってみよう!というとびコー発案企画「あなたも『真珠の耳飾りの少女』プロジェクト」だったのです。
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ターバンをつけて撮影なんて、本当はやりたくても人前では恥ずかしいかもしれない。誰かがサクラで並ぼうか、という声もありましたが、始めてみると「やってみたい」というお客様があっという間に列を作りました。写真映えする手作りの衣装、リアルな額縁、フェルメールに扮した企画発案者(とびコー)・小野寺伸二さんの目線指導付きの撮影に、有料サービスかと思い込み「おいくらですか?」と聞く人もいたほどです。もちろん、全て無料です。とびらプロジェクトはプライスレスな活動です。
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このプロジェクトも当初は、額縁はどうする?衣装はどうする?…と「どうする?」だらけでしたが、とびコーがそれぞれの特技を生かして、ひとつひとつクリアしていきました。見てすぐに「フェルメール!」とわかる色と質感のターバンを何枚も縫った時田薫さん、額を原寸大で下書きから描き、模様をグルーガン(スティック状の樹脂を溶かして接着させるもの)で立体的に作った山近優さんをはじめ、多くのとびコーの手と汗が、オリジナルの「真珠の耳飾りの少女」を観た人もがっかりさせない“ホンモノらしさ”を作りあげたのです。
鑑賞を終え、涼しい会場から出た途端に吹き出す汗。そうだ、外はこんなに暑かった…そんな時、思わず手が出るプレゼントも用意されていました。展覧会のチラシを再利用したエコな「うちわ」です。美術館にあるチラシは色やデザインが美しいものが多く、「次はこれを観に行こう」と持ち帰ったり、印象に残った展覧会のチラシはいつまでもカタログに挟んでとっておくことがあります。そんなチラシも、残念ながら、配布期限が過ぎれば配ることはできません。とても残念です。「カワイイデザインのチラシなのに、無駄にしたくない」、そんな想いから「チラシ de うちわ」プロジェクトがスタートしました。
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何度も試作を繰り返し、形を決めるまでに長い時間をかけました。とびコーの手で1 枚1 枚心をこめて仕上げたうちわ。嬉しいことに、用意した100 枚は次々にとびコーからお客様の手に渡りました。実は、うちわをゴミにしないように回収ボックスも用意していましたが、その箱に戻されたうちわはわずか数枚でした。残暑が厳しい今年の夏、今日もどこかで小さな風を送っていることでしょう。
とびコーのアートコミュニケータ研修が始まってからおよそ4ヶ月。この日初めて、研修の合間を縫って取り組んできた企画を来館者に向けて発信しました。1時間という短い時間でしたが、お客様の「作品を鑑賞する」という当初の目的に、ささやかなサプライズとなったのではないでしょうか。お客様の笑顔や、「次回はいつやりますか?」という声に、手ごたえを感じたとびコーも多いことでしょう。うちわの配布は規模を拡大して8 月15 日のシルバーデーでも実施。別のプロジェクトの準備も進んでおり、とびコーの都美デビューはこれからも続きます。
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最後に、本日の「真珠の耳飾りの少女」です!
ご来場、ご参加ありがとうございました。
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