2013.03.30
「エル・グレコ」展でも、子どもたちが名画を描く「スケッチボードでGO!!」が実施されました。磁気ボードを使って子どもたちが展示室の中でお絵かきをします。出口ではとびラーが子どもたちの絵をポストカードにしてプレゼントしてくれます。
3月29日・30日の2日間行なわれた「スケッチボードでGO!!」(磁気ボードの貸し出しは会期中常時行なわれました)には1日平均60人もの子どもたちが参加してくれました。
展示室の中では真剣に絵を描く子どもたちの姿に遭遇します。こうした光景は展示室の中の雰囲気さえも変えてしまいます。
今回の「スケッチボードでGO!!」では、これまでにはなかった新たな試みも行なわれました。いつもは子どもたちが描いた絵をポストカード状の塗り絵に仕立ててプレゼントするところまででしたが、今回は展示室から出たところに「塗り絵コーナー」を設けました。今描いた絵に、今色を着ける。今みたあの絵のことを思いだす。色を塗っている間に「もう一度作品をみてきたい!」と展示室に戻る子どもの姿もありました。
作業は真剣そのもの。ただ作品を鑑賞するだけでなく、子どもたち自身、自分が感じた名画の印象をじっくりと味わい、カードに残します。そしてそのカード家に持ち帰ることで、今日の体験を家族や他の誰かと共有することができます。
最後は「とびらプロジェクト」のロゴマークの前で記念撮影。上手に描けています。きっとエル・グレコの自画像かな?
2012.12.16
12月15日・16日「マウリッツハイス美術館展」で好評だった「おえかきボードでGO」が「メトロポリタン美術館展」でも開催されました。今回は「どうぶつボードでGO」と名前を改めての実施です。
上野恩賜動物園と連携したジュニアガイドをもとに「どうぶつボード」(磁気式描画ボード)を使って、展示室内にある動物をモチーフにした作品の絵を描くプロジェクトです。普段は込み合う展示室の中では、全ての作品をお絵描きの対象とすることが出来ません。そこで、動物をモチーフにした作品の中から6種類を指定し、ジュニアガイドで推奨させて頂きました。しかし今日は「親子ふれあいデー」、推奨した作品以外の展示作品でも、「どうぶつボード」を使いながら親子で楽しく描いて頂きました。「どうぶつボード」と「メトロポリタン美術館展・ジュニアガイド」は展覧会場入り口で常時貸出し・配布が行なわれております。
まずは、入り口でジュニアガイドをもらって中に入ると、とびコーさんから「どうぶつボード」を借りることができます。使い方はとびコーさんが説明してくれます。みなさんおなじみの磁気ボードですからとても簡単です。
展示室の中では、子どもたちが作品を鑑賞しながら早速絵を描いていました。
こちらは、お父さんとお子さんが一緒に彫刻を鑑賞しながら、じっくりと描画中。
ふたり並んで、写真の作品をみながら鳥の絵を描いていました。よくみると、1枚の「どうぶつボード」の中に、幾つもの動物の絵や、他の展示物の絵が描かれています。はじめに描いた作品から、次にその絵のとなりに描く作品を選ぶ、そんな風にしてこどもたちは展示室の中を歩いている様子でした。つまり、1枚の絵を深く鑑賞する体験が、次にじっくりと鑑賞したい作品を選ぶことに繋がってゆく、そうしたプロセスが生まれてことが分かります。何をみたらいいかわからない、そんな戸惑を上手く解決してくれる思わぬ効果がある様でした。
「どうぶつボード」をもって展覧会の出口にむかうと、そこにはとびコーさんたちが待機しています。凡そ5分程度で子どもたちの描いた作品がポストカードになります。今回は12月ということもあり「クリスマス」「お正月」「ノーマル」の3種類のフレームをご用意させて頂きました。どれも、とびコーさんたちのオリジナルデザインです。
クリスマスのフレームに羊の群れ。きっとミレーの絵からヒントを得たのかな。
お正月のフレームに、お魚。きっとウィリアム・ド・モーガンの大皿かな。
これはライオンの兜ですね。上手です。
2012.08.31
マウリッツハイス美術館展では、小学生以下の子供を対象に、夏休み期間にお絵かきボードを貸し出していました。この磁気ボードに描いた絵をデジカメ写真に撮り、ハガキサイズのカードに印刷してプレゼントする企画「お絵かきボードでGO!」をとびラー候補生(以下、とびコー)が企画しました。開催は、8 月29 日から31 日までの3日間。新学期へのカウントダウンが始まるこの時期、美術館に来る余裕のある子はどれ位いるのでしょうか?はるか昔の自分を振り返れば、見て見ぬふりをしていた宿題に追い詰められ、過ぎ行く夏を惜しむ余裕なんてなかったけれど…。
入場待ちの長い列の中に…いるいる!日に焼けた子供たち! 入口の手前で、とびコーがフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」と同じ、青いターバンをかぶって子供たちに声をかけます。パパとママについてきただけ、という子も、青いターバン姿と「お絵かき」という言葉に「なんだかおもしろそう」と思ってくれたようです。展示会場前で磁気ボードを手に立っていると、子供達の方から近づいてきてくれました。手を動かしながらボードの使い方を覚えて、さあ出発。今日の混み具合だと、大人の背中の間から作品を覗くことになるかも…。
会場が混んでいて描きづらいのではないか、という心配は杞憂に過ぎませんでした。子供たちは絵画にじっくりと向き合い、真剣に、つぶさに、絵をみていました。
磁気ボードに描いたとは思えない繊細な筆致、迷いのないまっすぐな輪郭、彼らは実にのびのびと、自分の目で見たものをストレートに表現しています。背景を黒くするなど、磁気ボード独特の表現技法を見つけた子もいました。
では、さっそく印刷してみましょう。額縁が更に絵を引き立てます。そのまま自宅で飾るのもよし、白黒で印刷することで「ぬり絵」になるので、展示作品を思い出しながら色鉛筆などで色を塗る楽しみもあります。
「子供が夢中になって、描き終わるまで親が待つはめになりました」、「小さい子供を連れてくるのが不安だったのですが、この企画のおかげで助かりました」お父さんやお母さんにとっても、子供たちの反応は想像以上だったようです。何よりも嬉しかったのは、カードに印刷された自分の絵を見た時の、子供たちの照れたような、でも嬉しそうな笑顔でした。もっとやりたい、と会場に戻って別の作品を描いて持ってきた女の子、お絵かきボードとカードに印刷された絵を何度も何度も見比べていた男の子。彼らにとって、美術館は「混んでいて退屈な場所」にはならないことでしょう。また、絵の正面のスペースを子供たちに空けてくださったり、ボードに描かれた子供たちの絵を観ながら、改めて作品の感想を語り合う大人のお客様の姿も印象的でした。
ずっと観てみたかった名画に美術館で会えるだけで確かに満足できます。でも、その名画の前で絵を描く子供がいたり、その子の絵をみて話しかける大人、カタログを手に1 枚の絵をじっと見つめる人など、美術館で思い思いに作品を楽しむ人々の姿があったら、そこで過ごす時間はさらに豊かに、心に残るものになるのではないでしょうか。この3 日間で「お絵かきボードでGO!」を体験した子供たちはおよそ440 名。この子たちは次に東京都美術館に来た時も、きっとお絵かきボードを探すことでしょう。「大人はお絵かきが出来ないのですか?」という声も沢山いただきました。この企画を終わらせることなく、さらに工夫を重ねて、またいつかみなさんをお迎えしたいです。
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2012.05.20
2012.05.19
隔週で行われている基礎講座の間の週の金土日は、ゆるやかに刺激的な活動をつくるための研究会の日(通称とびラボ)です。5月19日(土)に行われたとびラボは学芸員の稲庭彩和子さんを中心に「綴プロジェクト」について考える会でした。「綴プロジェクト」とは、キヤノンから寄贈頂くことを予定している高精細複製品の6曲1双の屏風2双を使ったプロジェクトです。<「桜図屏風:さくらずびょうぶ」(伝俵屋宗達筆)、「群鶴図屏風:ぐんかくずびょうぶ」(尾形光琳筆)の高精細複製品>複製品といってもキヤノンの技術をつくした一品で、金箔は本物、貴重な資料です。「綴プロジェクト」では、この屏風を使ってどんなことができるか、現在とびラー候補生ともども考えを巡らせています。本物と違って、ガラスケースにいれて鑑賞する必要はなく、弱視の方により近距離で鑑賞頂くこともできます。また、展示室ではなく、例えばロウソクの明かりで屏風をみるなど、日常の生活空間の中で屏風の存在を感じる試みも可能です。「綴プロジェクト」面白くなりそうです。(伊藤)
2012.04.22
初回基礎講座や、リニューアル開館記念式典などを無事に乗り越え、とびらプロジェクトも少しずつ波に乗ってきました。4月22日の「とびラボ」では、東京藝術大学 先端芸術表現科の博士課程に在籍している佐藤悠君に講師として来て頂き、ワークショップを通してとびラー候補生同士の交流が行われました。佐藤悠君のワークショップは、「いちまいばなし」→「いちまいはた」→「いちまいがたり」とワークショップ連鎖の3段組。3時間の長丁場でしたが、さすがはとびラー候補生たち、なかなかの仕上がりです。
この「とびラボ」とは、90名を超えるの大所帯のとびらプロジェクトでは、なかなかとびラー候補生同士がゆっくり話しあう時間がつくれません。そこで、よりとびラー候補生同士が深く知り合えるために、自由にとびラー候補生同士が使える「時間」と「場所」をつくりました。
4月〜6月までのとびラボは、基礎講座の無い週の週末(金土日)の午後に、アートスタディールームやプロジェクトルームを解放しています。いつ来ていつ帰っても自由。ふらっと来ると誰かがいて、お話するもよし、展示を一緒にみるもよし。自由なコミュニケーションの場として利用して頂き、とびラー同士のネットワークをつくっていただければと思います。アートコミュニケータなので、まずは一番身近な同期生同士のコミニュケーションからスタートです。(伊藤)