2016.12.12
2016.12.12(月)
<見てきたこと・実践したことからふりかえる>
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13:30〜17:30
■外部プログラム見学のふりかえり
・外部プログラムに参加した人からのシェア
・♡良かった点(とびらプロジェクトに活かせそうなこと)と△悪かった点(もやもやしたこと・疑問に思ったこと)をグループごとにまとめて、シェア
■三ツ木さんによるレクチャー:VTSの基本を見つめ直そう
・映像観察(小学生の例)
・レクチャー①:ファシリテーションをプラスアップさせるための2つのキーワード
<コンディショナル・ランゲージとフレーミング>
・映像観察(ウェズリー美術館:大学生の例)
・レクチャー②:ファシリテーションをプラスアップさせるための2つのキーワード
<メタ認知とコビト論>
・映像観察(幼稚園の例)
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・グループごとに「良かった点(とびらプロジェクトに活かせそうなこと)と悪かった点(もやもやしたこと・疑問に思ったこと)をまとめるワーク
その後、全体でポイントを共有しました。
上がったキーワードは以下の通り。
<導入部分について>
♡アイスブレイクが効果的だった!
♡はじまるまでの時間や環境を活かした世間話や自己紹介を実施
♡名札の活用(名前を覚えられていたのが嬉しかった)
△どんな質問がいいのか?(プライベートな内容は避けた方が良いケースがある)
△名札は万能ではないのでは?(プログラムの性質によって使い分けが必要)
<チーム分けについて>
♡多様なメンバーだと、対話が活性化された
△仲良し同士が一緒だと、そこだけで盛り上がってしまっていた。
<ファシリテーションについて>
♡ファシリテーターも多様だと鑑賞が豊かになった
♡鑑賞者からの気づきによって上手にキャプションの情報を伝えていた
♡サポートとの連携がチームで良くできていた(事前準備がしっかりできている)
<その他・場のデザインについて>
♡今までの発言が言葉になっている仕掛け→一人で行っても対話が楽しめる
△集合場所がわかりにくい。事前案内などちょっとした配慮、もてなしの気持ちが伝わるかが大事。
■後半:三ツ木紀英さんによるレクチャー
3つの映像を見ながら、VTSファシリテーションの基本やプラスアップのためのアイディアについて考察しました。
鈴木智香子 (東京藝術大学 美術学部特任助手)
2016.11.07
2016.11.7(月)<展示室で学ぶ場づくり②>
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スペシャル・マンデー・コース準備日<作品選びのワーク>
13:00〜15:00
⬛︎三ツ木紀英さんよりレクチャー
⬛︎学校概要の説明
⬛︎会場にて作品選び(対象:東京学芸大学附属小金井小1)
15:00〜17:00
⬛︎グループ鑑賞 3作品
⬛︎三ツ木さんと全体共有
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今回は、次週実施予定の「スペシャル・マンデー・コース」(「Museum Start あいうえの」学校向けプログラム)の準備ワークとして実際に展示室で行ないました。
スペシャル・マンデー・コースとは、休室した展示室に学校のこどもたちが来館して作品鑑賞を行なうプログラムです。鑑賞実践講座を選択しているアート・コミュニケータ(とびラー)にとっては、その機会が実践の場となります。
こどもたちにとって美術館での時間をより良いものにつくり上げるために、講座の中で事前準備のワークに取り組みました。
まずは、講師の三ツ木紀英さんより作品選びのポイントについてレクチャー。
——–
・物語性
・多義性
・興味を刺激する
・親しみやすさ
・理解可能
——–
という5つのポイントを伝え、また次週来館する予定の学校の概要を伝えたうえで展示室へ移動。
今回アート・コミュニケータのみなさんが実施するのは<小学1年生(東京学芸大学附属小学校)>を対象に、グループ鑑賞するための2つの作品を選ぶワーク。
会場は、東京都美術館で開催中の<ゴッホとゴーギャン展>。
次週11月14日(月)に、実際にこどもたちが来館する予定です。
事前準備というだけでなく作品選びのワークを通して、今年のテーマである<場づくり>を学ぶ機会となることも狙いとしています。
・小学1年生には作品がどう見えるのか?その目線になって考えてみたり。
・近くのペアとも情報交換しながら、導線でぶつからないか確認するのも場づくりのひとつ。
・作品が各班ごとに決まったら、7〜8人組になって3つの作品をフロアごとにグループ鑑賞を行いました。
ファシリテーターを実践したのは、来週スペシャル・マンデー・コースに参加する予定のとびラー。
ファシリテーションを体験して、こどもたちからどんな対話や言葉が生まれるかを想像できる機会にもなります。また鑑賞者の目線からも、人のファシリテーションを学ぶ機会となりました。
・こどもと同じ目線になってゆったりと鑑賞できるのも、休館日ならではの贅沢。
鈴木智香子(東京藝術大学 美術学部特任助手)
2016.09.05
2016.9.5(月)第5回鑑賞実践講座
<展示室で学ぶ場づくり①>
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13:30〜16:30
⬛︎アートカードで導入
⬛︎展示室へ移動・散歩
⬛︎グループ鑑賞 3作品
⬛︎個別鑑賞
⬛︎グループで共有
⬛︎三ツ木さんと全体共有
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今回は、次週開催する「スペシャル・マンデー・コース」(Museum Start あいうえの・学校向けプログラム)に向けた事前準備のワークを行ないました。
スペシャル・マンデー・コースとは、学校のこどもたちが休室した展示室に来館して鑑賞の授業を行なう鑑賞プログラムです。
鑑賞実践講座を選択しているアート・コミュニケータ(とびラー)が、このスペシャル・マンデー・コースにおいてこどもたちを迎え対話型鑑賞を実践することになります。
今年度初めての機会となるスペシャル・マンデー。どういう導線・ルートで移動するのか、作品との距離感などを把握するために実際に鑑賞する予定の「木々との対話展」の展示室に行ってワークに取り組みました。
まずはアートスタディルームで導入となるワーク。
■気になるアートカードを選んで、自己紹介
このアートカードを使った活動は、実は学校の事前学習でも行なっている内容です。
とびラーにもこどもたちと同様に、このワークを体験してもらいました。
■展示室へ移動・散歩
各グループ5〜6名ずつになり、展示室へ移動します。
展示室へ移動するというのは、ただの移動時間ではなくその後の鑑賞の場を温める交流の時間となったり展示室に慣れるための大切な時間です。
■グループ鑑賞 各グループ3作品
実際に当日グループ鑑賞する予定の作品のファシリテーションを行い、みんなで鑑賞。
これまで三ツ木さんと学んだVTSファシリテーションを実践できる機会。
少し緊張しながらも、複数で対話することを自分たち自身で楽しみました。
■個別鑑賞
グループ鑑賞の後はひとりの時間。学校プログラムで実施しているのと同様に、とびラーも展示室で「ひとりの時間」を体験しました。
「つぶやきシート」という、発見したことをメモまたはスケッチできるシートを用意して、お気に入りの作品を1つ決めたらひとりでじっくり見て確認しました。
■ふりかえり
一般のお客さんがだれもいない展示室で贅沢に作品鑑賞の体験を味わったあとは、ふりかえりです。
グループごとに、<場づくり>の視点からこのスペシャル・マンデー・コースの流れについて話し合いました。
【導入・あいさつ】【展示室への移動・散歩】【グループ鑑賞】【個別鑑賞】それぞれの時間軸の中で何が起こっているのか・その時どう感じたのか、そしてそれはどこからそう思ったのか?などについてワークシートを元に話し合われました。
最後には三ツ木さんの進行のもとで、全体共有。
その時出たキーワードをご紹介します。
—————
◎アートカードの活動において
・アートカードで見ていたから、実際の作品をよく見るようになった
・自分たちで選ぶことで、「これから見に行くんだ」という気持ちづくりができた、主体的になった
◎展示室への移動+散歩
・移動の時間で、参加者(こども)の反応や表情を観察するようにしている
=参加者のことを知る時間
・集合場所や選んだ作品の場所、自分がいるフロア(階)の位置などを把握できるように伝える
=参加者に空間把握してもらうための時間
◎グループ鑑賞
・ファシリテーターが近づくとこどもも近づいてしまうので、立ち位置を意識する
・彫刻作品を鑑賞する時・・・
「ちがう角度から見てみましょう」を対話の途中で挟むことで、話の転換、新たな気づき、時間がもてる
◎個別鑑賞
・ひとりでほっとできる時間
・対話(グループ鑑賞)は時間はあくまできっかけ。
—————
以上のとびラーからの気づきのように、とびラー自身に体験することによりプログラムの骨格やそれぞれの時間の意味について理解を深めることができました。この体験をもとに、来週のスペシャル・マンデー・コースに臨みます!
鈴木智香子(東京藝術大学 美術学部 特任助手)
2016.08.08
2016.8.8(月)第4回鑑賞実践講座<ファシリテーション基礎②>
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(午前)9:30~12:50
⬛︎(復習)レクチャー:美的発達段階とアーツダイアローグの意義
⬛︎きく・応答するワークショップ
⬛︎対話型鑑賞体験 1作品
⬛︎ミニ・ファシリテーション実践(前半)
(午後)13:40~14:30
⬛︎ミニ・ファシリテーション実践(後半)
⬛︎対話とリフレクション:彫刻作品で実践
⬛︎グループ作品研究
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本日も真夏の朝から始まりました、第4回鑑賞実践講座。
いよいよファシリテーション基礎を学ぶ後半戦の内容となります。
講師の三ツ木紀英さんの元気な挨拶から一日が始まります!
⬛︎(復習)レクチャー:美的発達段階とアーツダイアローグの意義
まずは前回の復習から:ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーが生まれた背景に、美的発達段階を参照にしていること。その発達段階に合わせて、この対話による鑑賞を活用している、という学術的な背景をレクチャーしていただきました。
⬛︎きく・応答するワークショップ
次に、とびらプロジェクトでも大切な力:きく力を発揮するワーク「聴く・応答するワーク」を実践します。
3人1組になり、2人が対話し、1人はその様子を観察します。
テーマを元にお話しし、聞き手は話し手が話したことを自分の言葉に置き換えて、確認します。その人が本当に言いたかったことは何なのか?コミュニケーションとはどんなことなのか?ということをこのワークで考えます。
ふりかえりのときに出てきた重要なキーワードとして、「話し手の動きや聞き手の在り方」によってコミュニケーションが変わってくる、というのがありました。話す内容やテクニックではなく、聞き手の態度が相手の気持ちに寄り添っているかどうかによって、相手の言いたいことを引き出せるようになるのでは、という意見が出てきました。
⬛︎対話型鑑賞体験 1作品
少し休憩を経て三ツ木さんによるファシリテートを元に、大人数での対話型鑑賞を体験。
⬛︎ミニ・ファシリテーション実践(前半)
それを体験したうえで、今度は自分たちでアートカードを使ったミニ・ファシリテーションを実践します。4人組になって、一人ずつ順番にファシリテーションを体験します。
見るのとやるのとでは大きく違う・・・苦労もあるけれど、前回よりは楽しもうとしたり安心感をつくるためにリラックスしながら実践したり、2回目の体験でだいぶ意識できているようでした。
ーーーーーーー
⬛︎ミニ・ファシリテーション実践(後半)
お昼を挟んでこのワークを続けたのですが、毎回ふりかえりも行います。
そのふりかえりの中で出てきたのは、「ファシリテーターの在り方」に関する疑問・質問でした。どれだけ中立的であればいいのか、個人的な意見を言わずに個性をどのように出したら良いのか、という疑問はファシリテーションを行なっていくにあたり必ずぶつかる壁だと思います。
三ツ木さんは、「中立的」であることは「無個性」であることとは異なると、説いていました。個々人の「間」や「視線・表情」によって場づくりも大きく異なります。自分自身にできるファシリテーションというのを身につけていきながら、形を探っていくしかないのだと思います。
⬛︎対話とリフレクション:彫刻作品で実践
その、ブラッシュアップを具体的に行う「対話とリフレクション」のワークを行います。ずっとアートカードを使っていたので、今度は屋外や美術館内に設置されている本物の彫刻作品を活用しました。
各作品に1名ずつのファシリテーターを選出し、実際の作品で挑戦してみます。
一人1作品15分間の鑑賞の後に、10分間のふりかえり。
屋外彫刻で実践するからこその場づくりの難しさ、また絵画作品でやるときとの違いなど、実践ならでは得られる一言がありました。作品について「事前に知っていることの重要性」「場当たり・下見の大切さ」などの意見も出ていました。
そして、このワークで大切なのはとびラー同士でも言い合えること。とびラー同士で、お互いに批判的になることで、お互いのファシリテーションがブラッシュアップされていきます。
⬛︎グループ作品研究
最後のワークは作品研究です。
一つの作品について、みんなで話し合い、言葉出しをします。出てきた言葉を元に分類・分析していきます。
これは対話型鑑賞を実践する事前準備として有効なワークです。
一つの作品について多角的な視点で見て、どんな対話の言葉が出てくるのかを事前に準備することができます。また、出て来た言葉たちを分類することで「色」「形」「構図」など、別の言葉に言い換えるためのキーワードを打ち出すことができるようになります。
出てきたワークの様子を少しだけ、ご紹介。
ーーーーーーー
長く充実した学びの2日間を終えたあと、いよいよこれからはそれを実践していくことになります。
学んだことを活かし、実践の経験を重ねてこそ、アート・コミュニケータとしてのファシリテーション力が磨かれていくことと思います。
たくさんの方々との対話が生まれるような、作品と人をつなげる活動が活発になっていく様子を、これからご期待ください!
鈴木智香子(東京藝術大学 美術学部特任助手)
2016.08.01
2016.8.1(月)第3回鑑賞実践講座<ファシリテーション基礎①>
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(午前)9:30~12:30
⬛︎アートカード体験(神経衰弱ゲームとものがたりづくりゲーム)
⬛︎対話型鑑賞体験 2作品(鑑賞者と観察者に分かれて体験)
⬛︎ファシリテーターの仕組みを考える
(午後)13:30~16:30
⬛︎ファシリテーターの3つの質問と7つの要素をふりかえる
⬛︎ミニ・ファシリテーション実践
⬛︎レクチャー:美的発達段階とアーツダイアローグの意義
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いよいよ実践のためのファシリテーションの基礎を学ぶ連続講座、長い1日のはじまりです。
VTSファシリテーションを学ぶこの講座で講師となっていただくのは、三ツ木紀英さん(NPO法人芸術資源開発機構ARDA)です。
前回までの講座で出ていた、大事なキーワードって何だったでしょうか?
前の席の方から聞こえたのは「場づくり」という声。
そう、今年の講座で繰り返し伝えているのは「どうやって場をつくるか」。
この場づくりの仕方について、ノウハウやルールはありません。
場所や時間に応じて、形成していくものなので、学んだことを現場に応じて実践していってください、と三ツ木さんからの導入がありました。
■最初にアートカード体験
3つのテーブルに分かれて、今日はARDAのファシリテーターの3名の方(コッシー・ペコ・キャサリン)とご一緒に行います。
テーブル内で、体験者と観察者とで分かれます。体験者は楽しそうにアートカード・ゲームに参加。観察者はどんな場が起こっているのか、<場をつくる視点>で観察をします。
1つ目のゲームは「神経衰弱」。
ランダムに引いた3枚の共通点をみんなで探します。このカードとこのカード、本当に共通点あるの?
よく見ます。
「黒っぽい」「雨が降っている」「あ、縦の線が一緒?」「人がいるよ」など、どんどん出てくる気づきに対して、ファシリテーターがたずねます。
「どこにいますか?」「あ、絵のこのあたりを指しているんですね」「わ~そんなところに気づいたんですね」
どんどん盛り上がって、時間内に終わらないほどでした!
ゲームのあとは、前回のアートカード体験との違いをふりかえり。
ファシリテーターの存在は、その場にどんな意味があったのか?
次の発言につながるための問いかけがあったり、その人の意見を肯定的に受け止めてくれる感覚があったり、話しやすい環境づくりのためにどんな工夫がされているのかについて、話し合われました。
一つ一つの発言をファシリテーターが丁寧に拾い上げることによって場が変わっていく、ということを実感する時間となりました。
2つ目のゲームは「ものがたりづくり」。
ランダムに配られた3枚のアートカードを使って、ものがたりを作ります。
体験者と観察者が入れ替わって、ゲームがはじまります。
最後にふりかえりで出てきた意見では、ゲームの構造の違いやファシリテーターが参加者のことをよく観察していたことで、話しやすくなったり発言の引き出し方が変わっていた、ということがありました。
⬛︎対話型鑑賞体験 2作品
午前中の後半は、実際にプロジェクション投影でみんなで対話型鑑賞を体験。
2つの作品を30分ずつ、じっくり対話を重ねながら見ていきます。
⬛︎ファシリテーターの仕組みを考える
そのあとに、3人組でふりかえり。
「どんなことが起こっていた?ファシリテーターはどんなことをしていた?」
アートカードと同様に発言が繰り返されたことについての意見も出ましたが、さらに体の動きで指し示していることやどのようにして話しやすい場づくりができていたか、という発言が出ていました。
特に議論が巻き起こったのは、1点目と2点目の最初の問いかけの違い。
1点目は「この絵の中で何が起こっていますか?」
2点目は「この絵を見て、どう思いますか?」
その違いは、絵によって変えているのか、質問によって鑑賞者の見え方・発言の仕方が変わるのでは、ということについて盛り上がりました。
もう一つ議論があったのは、理由をたずねられる質問について。
ただの思いつきで話したかもしれない発言について、自分でもう一度深く考えられるきっかけになったそう。その時のファシリテーターの問いかけは、「なぜそう思ったの?」ではなく、「絵のどこからそう思ったの?」でした。単純に理由を問うのではなく、絵に戻す質問にすることで根拠づけができるようになるということです。
ーーーーーーーーー
⬛︎ファシリテーターの3つの質問と7つの要素をふりかえる
午後の活動は、午前中のファシリテーターが実践していた10個のポイントをふりかえるところからスタート。
3つの質問と7つの要素について、三ツ木さんが整理して伝えてくださいました。
⬛︎ミニ・ファシリテーション実践
そのあとは、いよいよ本日参加しているとびラー全員が体験するミニ・ファシリテーション!
4人組で、A4サイズのアートカードを使っていきます。
午前中のことと、今学んだ要素を実際に活用してみる体験です。
8分間の対話+5分間のふりかえり+7分間の全体共有を4ラウンド、繰り返します。
対話も盛り上がる一方で、感じるもやもやや気づきもたくさん・・・
人生で初めての作品を鑑賞するファシリテーションを体験してみて、
自分自身が緊張しすぎて一人一人の発言を聞けなかったり、沈黙に耐えられなくなって話しかけてしまったり、うまく質問をはさめなかったり、なかなか苦労が多いようです・・・。
一番最初の講座で稲庭さんが話していた中にもあった通り、場をつくる目的は「安心感を生む」こと。
この「安心感」を生むには、ファシリテーター自身が集中して、リラックスしていることが何より大事です。
鑑賞者の発言に集中し、「どんなことを言ってくれるんだろう」ということを楽しみながら実践してみよう、という三ツ木さんからのメッセージがありました。
その他にも、「最初の問いかけの質問の仕方」や「作品から大きくはずれて空想の世界に入ってしまい、勘違いしたまま終わってしまわないのか?ファシリテーターは何もしなくて良いのか?」という疑問について、全体で考えながら話し合いました。
まさに、三ツ木さんがファシリテーターとなりながら、出てきた発言についてみんなで取り組み、その意見を言い換えながら、ファシリテーションに関する議論が進んでいきます。
⬛︎レクチャー:美的発達段階とアーツダイアローグの意義
最後に、三ツ木さんからのレクチャーでは、こどもの美的発達段階に応じて「VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)」がどのように活かされるか、歴史的背景とともに話されました。
ーーーーーーーーーー
たっぷり体験→対話でふりかえり→体験と、とても集中力の高い状態を6時間続けていました!
次回は後半戦。ミニワークも引き続き取り組みながら、より実践的なワークを行っていきます。
外の暑さに負けず、鑑賞実践講座も熱く盛り上がっていきます!
鈴木智香子(東京藝術大学 美術学部特任助手)
2016.07.25
7月25日(月)、鑑賞実践講座の2回目が行なわれました。テーマは「実践する場(フィールド)について」。これからさまざまな鑑賞者と関わっていくとびラーたち。美術館のなかで、作品と人に向き合う心構えを作ります。
初めに美術館で行なう「対話」の意味について、前回のおさらいも含めて、稲庭さんからの導入。
なぜ美術館で「対話」を行なうのでしょう?作家たちの「何かを伝えたい」というエネルギーを持つものが、アート作品や文化財であり、これらは対話を促進するものだと考えられています。
では、この美術館というフィールドで、人々はどのように社会に関わっていけるのでしょうか?
2016.07.18
よく晴れた海の日、鑑賞実践講座の一回目は東京藝術大学・特任助手 鈴木智香子さんのあいさつから始まりました。
今年度のキーワードは「学び合い」を大切にして、鑑賞によって生まれる場を丁寧につくることです。
この講座で目指す「まなざしを共有する」とは、誰かと一緒に作品を見ること。
目標は「対話が生まれる場をつくるプロセスを学ぶ。作品やモノを介して人をつなぐ場をデザインする」。
実際に作品の前で、人と作品が出会う体験を想像しながら、
スペシャル・マンデー・コースとの関わりや、課題なども含めて、一年間の流れを確認します。
次に、稲庭さんから鑑賞実践講座のねらいについてのお話し。
2015.08.03
2015年8月3日(月)、先週・先々週と再びとびラーのみなさんがアートスタディールームに集まりました。
本日のメニューはご覧の通り。
外の暑さに負けないくらい、本日も三ツ木さんによる熱い講座内容がはじまります!
本日最初のワークは、「聴く・応答するワークショップ」。
発言した相手に対して、その発言者が本当は何を伝えたいのか、その真意をきちんと汲み取っているかを確認するワークです。
まずは三ツ木さんと鈴木が例を示します。
テーマは「好きなもの」。
「朝のコーヒーの香りが好き」と発言した三ツ木さん。
鈴木はそれに対して、「好きなのは朝のコーヒーの香りを嗅ぐことができる時間全体のこと?」と尋ねると三ツ木さんから「×」のサインが。
改めて話を進めると、「コーヒーを淹れた時の朝の一杯に幸せを感じる」ということを聞き出すことができた。
トークの後、全体で共有したコメント・・・
・やりとりをする中で、自分の言いたいことが見えてくる(はっきりしてくる)。
・聞き手の頷きや受け答えが、話し手の気持ちを開かせる。
・それによって、表面的な話から、深い話・本音の話に進む。
今度はとびラー同士で3人組になり、そのうち1人は発言役、1人は聴き役、最後の1人は観察者役です。
2人の間で何が起こっているかを観察します。
和気あいあいと行われています。
ワークの後、全体で共有したコメント・・・
・聞く側が相手に興味がないとコミュニケーションがうまく行かない(対話型鑑賞では、作品に対して興味があることが大事)。
・テーマによって構成を変える必要がある。
・一言でポイントを返す。
その後、三ツ木さんによるファシリテーションで2作品を鑑賞します。
その後、ワークとファシリテーションとの共通性を話し合っています。
実はこの「聴く・応答するワーク」こそVTSにおける「パラフレーズ(言い換え)」にあたり、鑑賞者の発言に対してきちんとその真意を汲み取っているか、その訓練方法とも言えるワークなのです。
もちろん、対話型の鑑賞プログラムにおいては様々な要素が絡み合いますが、この「聴く・応答するワーク」がファシリテーターにおいて重要な内容になってきます。
まさに、基礎講座で西村さんから伺った「きく力」ですね。
〜〜〜
午後は、いよいよとびラーが実際にVTSのファシリテーションに挑戦です。
それだけでなく、VTSのスキルを高めていくために欠かせないコーチングについて学ぶため、コーチ役も加わって体験します。
コーチは、対話の要点・流れを書きとめ、シートに従ってふりかえりの進行役を務めます。
コーチを行うことにより、対話の場について客観的になることができ、「この場で何が起こったか」を観察する目が育てられます。ひいてはファシリテーターとしての視点を育てるのにも、有効です。
三ツ木さんからもご意見をいただいたところで、本日は終了。
無事に2週連続の「VTS集中講座」を終えられました。
講座3回目にして初めてのファシリテーションまで行い、とびラーのみなさんの意識の高さが窺えました。
VTSファシリテーションの基礎体力を身につけたところで、いよいろこれか自分たちで実践していってもらいたいと思っています。
ただVTSファシリテーションを実践することが目的ではなく、それを体得した先にいったいどんな鑑賞の場づくりがあるのか?その可能性も一緒に探ることになるのだろうと思います。
鑑賞の場とはどれほどクリエイティブな場か。ぜひその楽しみを見出しながら進んでいきましょう!
まずは3日間、お疲れさまでした!
—————————
東京藝術大学 美術学部特任助手
鈴木智香子
2015.07.27
2015年7月27日(月)、初回講座から1週間後。いよいよ鑑賞実践講座の「実践的」な学びが始まります。
今日のテーマは「対話を通した鑑賞法 VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)を学ぶ」です。
講師をお願いしているのはARDA(NPO法人芸術資源開発機構)の三ツ木紀英さん。
何年も前から、対話型鑑賞プログラムを開発してきており、それを伝える研修も行ってきていらっしゃいます。とびらプロジェクトにおいても、今年で4年目のお付き合いになります。
本日、4期生のみなさんとは初めまして。
ご挨拶代わりにさっそく。みんなでこの作品を鑑賞してみましょう!
鑑賞者と観察者の2グループにわかれ、三ツ木さんファシリテーションのもと、その場で何が起こっているか?を体験・観察しました。
次に鑑賞者と観察者と場所を交代して、2作品目を鑑賞。
3度目は、全員が鑑賞者となりさらにもう一作品を鑑賞しました。
あっというまに感じられましたが、三枚の画像を鑑賞し終わると1時間15分も時間がたっていました!
短い休憩をはさんだのち、3人組になって「ファシリテーターはどんなことをしていたか?それによって何が起こっていたか?」という問いを中心にをふりかえります。
三ツ木さんのファシリテーションから、VTSファシリテーターが行う3質問&7要素を読み解きます。
「この作品の中で何が起こっていますか?」
「作品のどこからそう思いましたか?」
「他にもっと発見はありますか?」
3つの問いを挟みながら、鑑賞者の一人ひとり、あるいは全員と向き合って、開かれた鑑賞の場をつくることを目指します。問いかけだけではなく、実は体の動きやファシリテーターの視線、指の差す方(ポインティング)によっても、対話の場に影響を与えることも気づきが得られました。
さらに、「VTSを体験してどんなことが起こったか?」を考えると、ファシリテーターが発言者の話をしっかり聞いているという態度を示すことによって「話してもいいんだ」という安心感が生まれ個々のコミュニケーション能力が高まったり、
「まずは作品をじっくり見ること」や「根拠を述べること」を促されることによって観察力や思考力が高まったり、「発言に対して中立性を保つこと」つまり「正解がある・ないということで判断しないこと」によって答えのない問いに対して考え続ける力・作品を見続けてしまう、などのことが挙げられました。
対話をしていくうえで大切なのは雰囲気づくりや姿勢、さらにVTSが鑑賞者にもたらす効果を確認したところで前半は終了です。
〜〜〜
午後の講座ではいよいよ4人組になって実際にVTSファシリテーターに実践してみます。
10分のVTS+5分のグループ振り返り+全体への共有、のワークを4回繰り返して、全員がファシリテーションを経験しました。
実際にファシリテートしてみて気づいたこと、ファシリテーターの良かった点や改善点、その場で具体的にどう感じたか、参加して疑問に思った事を共有していきます。
4ラウンドが終了したところで、最後にVTSが開発された根本にある、鑑賞者の美的発達段階について知識を深めて、本日の講座は終わりました。
6時間という長丁場でしたが、密度の濃い内容を体験してみなさん最後は興奮気味な様子でした。
これから学ぶVTSとは、知識に頼らずに作品をよく見ることからはじめ、「これは何だろう?」と一人ひとりに考えることをうながし、様々な意見を引き出しながら、作品の見方を深めていく鑑賞方法です。とびらプロジェクトではVTSを鑑賞の基軸に設定し、鑑賞の場をつくることを推奨しています。
いよいよVTSの基礎の基礎を学んだところで、ぜひその新鮮な驚きや最初に感じた違和感も大切にしながら、VTSの考え方を体得していってほしいと思います!
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東京藝術大学 美術学部特任助手
鈴木智香子
2015.07.20
2015年7月20日(月・祝) 世間は海の日を迎えるなか、今年度とびラーにとっての鑑賞実践講座がスタートしました。
まずは、本年度鑑賞実践講座を担当する東京藝術大学のプログラム・オフィサーである鈴木智香子より、ガイダンス。鑑賞実践講座の骨格について、まずは話しました。
そして今年度から新たに始めたのが、「鑑賞プラクティス!」。
とびらプロジェクトの活動の特徴は「実践・現場」があることです。
講座で学んだことを実践してみること、現場を体験してみることで、講座での学びの効果が10倍ぐらいになるといっても過言ではありません。鑑賞会への参加やファシリテーターの経験、「スペシャル・マンデーコース」(「Museum Start あいうえの」事業内の学校プログラム)などの実践への参加で「鑑賞プラクティス・カード」にスタンプを集める仕組みになっています。
その後からはいよいよ本題です。
「作品を見るってどういうこと?」という問いかけから、「自分の一番印象に残っている美術館体験」について書き出し、3人1組で共有していきました。
印象に残っている作品があるとしてら、どのようにしてその作品に出会ったのか。そこに「だれか」一緒にいたのか。印象に残るにはどのような要因が考えられるのか?を手がかりに考えてもらいました。
実際にとびラーからは、美術館そのもの(建物や庭、美術館から見える風景など)について、展覧会全体のキュレーションについて、美術館の行き帰りのプロセスについて、印象に残ったと意見がありました。
「作品を見る」ことは作品そのものだけではなく、美術館を取り巻く環境や行き帰りのプロセスまでの「美術館体験」を包括した行為なのだということを、全体で共有しました。
次に、鑑賞実践講座において重要な「実践」の場となっているスペシャル・マンデーコースの映像を見ていただきました。(リンク先より、同様の映像をご覧いただけます)
3人組で映像を見た感想を共有した後、東京都美術館のアート・コミュニケーション事業の学芸員の稲庭さんと、3人組で出てきた意見や疑問などを話しました。
「スペシャル・マンデーコース」において、とびラーがどんな役割を担っているのか。
こどもたちにとって、ここでのミュージアム体験がどのような意味を持っているのか。
その場づくりにおいて、どんなことが行われているのか。
とびラーから出た意見を、稲庭さんがつなぎつつ、みんなでその疑問点や映像のなかで起こっていたことを確認しながら、鑑賞実践講座が目指すところのイメージを共有しました。
さらにその後、TEDのトーマス・キャンベル(ニューヨーク メトロポリタン美術館 館長)の映像を見て、感想を共有しました。
本年度4月に第2回基礎講座でも見せましたが、「これから目指すミュージアム体験とは?」を考えたときに、たくさんのメッセージが込められている映像です。
これからこの仲間で、約1年間、講座を走って行きます!
良い学び合いの場をみんなでつくっていかれることに期待が高まった初回となりました。
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東京藝術大学 美術学部特任助手
鈴木智香子