東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

スクールマンデー:根津小学校

2013.02.25

根津小学校の6年生の皆さん30名がスクールマンデーにやってきました。根津小はご近所、歩いてご来館されました。スクールマンデーは特別展の休室日を利用した対話形鑑賞の実践の場です。今日も大勢のとびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんと一緒に鑑賞をします。東京都美術館(以下:都美)のスタッフの熊谷さんから展示室内でのマナーや本日の流れについて説明がありました。

 

今日鑑賞する展覧会は「エル・グレコ展」です。まずは、児童4名と、とびコーさん3名のグループをつくります。みなさん初めましてのご挨拶をします。

 

「エル・グレコ」展は主にキリスト教を題材にした宗教画が主に展示されています。キリスト教の知識が無いと理解することは難しい、、、なんてことはありません。子どもたちに鑑賞するきっかけを掴んでもらうことで、どんどん絵の中に入って行く事ができます。そのきっかけをつくるのが、とびコーさんたちとの対話です。

 

子どもたちと「まなざしを共有する」そして、お互い楽しんで鑑賞することがとても大切です。とびコーさんたちも楽しんで鑑賞すれば、その気持ちは必ず子どもたちに伝わります。

 

グループでの鑑賞を終えたら今度は子どもたちが個々人で鑑賞します。時々絵の前で友達と遭遇して、少しお話をする。そんな自然な体験何よりの鑑賞体験なのだと思います。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

 

 

 

スクールマンデー:松葉小学校

2013.02.25

松葉小学校5・6年生の皆さん56名がスクールマンデーにやってきました。スクールマンデーは特別展の休室日を利用した、対話形鑑賞の実践の場です。今日も大勢のとびラーのみなさんと一緒に鑑賞をします。学芸員の稲庭さんから展示室内でのマナーについて説明がありました。

 

今日鑑賞する展覧会は「エル・グレコ展」です。そして、今回の鑑賞授業のポイントは絵画の「色」です。展示室に入る前に1500色もある色のチップの中から各自自分の好きな色を選びます。みんな真剣に選んでいます。

 

各自色を選んだらグループごとにとびラー候補生(以下:とびコー)さんと一緒に作品を鑑賞します。自分の選んだ色が絵画の中に隠れているかじっくりと見つめます。そして、色をきっかけにとびコーさんと対話をすることで、ちょっと難しそう、、、と感じるエル・グレコの宗教画の世界へ徐々に入ってゆくことができます。

 

月曜日の休室日を利用したスクールマンデーの一番の特徴は、なんといっても展示室が自分たちだけの空間になること(場合によっては2校対応することもあります)。落ち着いてじっくりと鑑賞することができる、とても贅沢な空間を提供しています。

 

絵画を見る楽しさを少しずつ覚えてきたら、今度は一人で鑑賞します。広い展示室を自分のペースでブラブラしながら鑑賞して行きます。来館前から気になっていた「あの1点」にあう喜びを味わってもらえたら何よりです。

 

一番最後に展示されているのがこの「無原罪のお宿り」です。聖母マリアが聖アンナに宿る様子がモチーフになっています。3mを超えるこの大作には、いろいろなひみつが隠されています。とびコーの森さんと小笠原さんが、この絵についていろいろお話をして下さいました。「また美術館にきたいな」そんな風に思ってもらえる鑑賞授業にもっとなれるようにして行きたいと思います。
(とびらプロジェクト マネージャ 伊藤達矢)

VTS実践

2012.12.17

今回の「スークールマンデー(対話を通した作品鑑賞)」実践講座のテーマはVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)の実践です。講師の三ツ木さんから、VTSを行なう上で必要な「3質問&7要素」を前回の講座に引き続き再度確認して頂きました。もう既にとびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんも頭にしっかりと入っていることかと思いますが、何度となく基本に立ち返ることが重要ですね。

 

続いて、アメリカの小学校で行なわれたVTSの実践記録映像を鑑賞しました。自分が実際にVTSのファシリテータになることを想定した上でこうした実践記録をみると、ファシリテータの言葉の選び方や、対話の進め方など、参考になることをたくさんみつけることができます。この実践記録映像は字幕で日本語訳されていますが、とびコーのみんさんの中には英語が堪能な方も多く、映像を見終わった後のディスカッションでは、英語でのニュアンスと日本語でのニュアンスの違いや、それを補う工夫などについても話題が広がりました。気になった映像の部分は繰り返し再生し、確認することで、対話の流れやファシリテータのテクニックなどをつぶさに観察していました。

 

その後は2グループに分かれて実際にVTSのトレーニングに入ります。前回同様に、1)ファシリテータ役、2)講師役、3)記録役と、必ず1回のVTSに3つの役割を分担するトレーニング方法で進めます。VTSが終了した後、2)の講師役は、
「(ファシリテータに)実践してみてどうでしかた?学んだことは何ですか?」

「(鑑賞者に)〇〇さんのファシリテーションで、いいなと思った事はなんですか?」
「(全員に)何か驚いたこと予想外だったことはありますか?」
「(鑑賞グループに)〇〇さんに何か質問はありますか?」
「(ファシリテータに)これから取り組みたい課題はなんですか?どうしたら達成されると思いますか?」
などの質問を投げかけます。

 

こうしたやり取りを、VTSに参加したメンバー全員で共有し、さらに3)記録役がそこでの会話を記録することになります。また、VTSの様子は全て音声録音がされており、後で、自分のファシリテートが適切であったかを確認し、ファシリテータとしてのスキルを高めます。

 

こうした地道な努力が、とびらプロジェクトのクオリティーとエネルギーの源になっている様に感じます。引き続きとびコーさんたちの努力は続きます。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

スクールマンデー:星槎国際高等学校の鑑賞授業

2012.11.26

東京都美術館のスクールマンデー(対話による鑑賞教育)に星槎国際高等学校のみなさん14名が来館されました。みなさん展示室に入る前から展覧会について関心を持って下さっている様子でした。まずは、学芸員の稲庭さんからご挨拶がありました。

 

高校生のスクールマンデーははじめてでしたが、とびラー候補生(以下:とびコー)の皆さんと自然な対話を通して鑑賞を楽しまれていました。

 

来館された人数が少なかったこともあり、広い展示室でゆったりと鑑賞することができました。

 

最後は、とびコーさんと生徒さんがグループになり作品を鑑賞しました。子供たちとは違ったゆったりとした大人の視線での鑑賞体験もなかなかでした。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

スクールマンデー:日本橋小学校の鑑賞授業

2012.11.26

日本橋小学校の皆さん59名がスクールマンデーにやってきました。スクールマンデーは特別展の休室日を利用した、対話形鑑賞の実践の場です。まずは、学芸員の稲庭さんから展示室内でのマナーや本日の流れについての説明がありました。

 

展示室に入ると、全員で2階の最後のフロアまで移動します。展覧会全体のボリュームが掴めたところで、個別鑑賞の時間となりました。子供たちが手にもっているのは「つぶやきシート」と「開場マップ」。「つぶやきシート」には、気になった作品のちょっとした感想を言葉や絵で書き留めておきます。少し心の中のつぶやきを書き留めたりすることで、自分の気持ちを確認したり、言葉にしやすくなったりします。「開場マップ」には、展示室の中にある全ての作品の位置が写真で記載されています。「もう一度あの作品をみたい」、「美術館に来る前から気になっていたあの作品のところへ行きたい」という時にこ効率よく効果的に作品を鑑賞する助けとなります。

 

時々気になった作品が友達と一緒になることもあります。そんな時は隣り同士何となくお話をしてみます。「つぶやきシート」で少しだけ心の準備が出来ていれば、お互い作品について言葉を交わすことも自然にできるようになり

 

個別の鑑賞が終わった後は、グループ鑑賞の時間となります。VTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)の鑑賞方法を用いながら、一つの作品をグループで鑑賞してゆきます。「つぶやきシート」でウォーミングアップした成果もあり、いろいろな感想が積み上げられて行きました。

 

とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんも、VTSのファシリテータとして活躍して頂きました。もちろん対応は完璧でした。

 

最後は、もう一度自分が一番気になった作品に会いにゆきます。特別「つぶやきシート」に何かを書かなければいけないという指示は出していませんが、何か気になったことがあったのかな?心にのこる1日であれば、なによりです。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤 達矢)

 

スクールマンデー:荒川区立第三峡田小学校の鑑賞授業

2012.11.26

休室日を利用して行なわれる、対話による鑑賞教育スクールマンデー。本日は荒川区立第三峡田小学校5年生(25人)6年生(16人)の皆さんでした。「メトロポリタン美術館展」前のエントランスで、僕(伊藤)から展示室内でのマナーや本日の流れについて説明をさせて頂きました。

 

会場に入ると、一度2階の一番奥の展示室まで全員で移動しました。展覧会のボリュームを子供たちに知ってもらうためです。展覧会のボリュームが把握できたら、個別鑑賞の時間となります。
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今回の個別鑑賞はこれまでと少し違います。「メトロポリタン美術館展」で現在貸出し中の「どうぶつボード」を使って気になった作品をスケッチしたり、言葉をメモしたりしながら、楽しく鑑賞して行きます。

 

「メトロポリタン美術館展」は絵画だけではなく、彫刻やタペストリー、食器や写真まで、幅広い作品が展示されています。多種多様な素材と形状の作品を鑑賞するには、こうした自由に使える鑑賞アイテムが非常に効果的です。

 

こちら、児童の描いたエジプトの<猫の小像>のスケッチ。凄い上手です。奥は<聖餐用ハト>のスケッチ。手を動かして、形を確かめながら鑑賞することで、作品が持つ素材の魅力や、洗練された造形的美を、作者の視点をも顧みながら鑑賞することができます。

 

こちらはゴッホの<糸杉>です。本来縦構図の<糸杉>を横構図で自分なりに描いています。画面を構成する要素、この場合は「糸杉」、「雲」、「月」などの形や配置、または作品が醸し出している雰囲気を良く捉えています。描く時間は10分程度です。しかし、集中して一つの作品の前に10分立つというのは、美術の好きな大人でもあまりしないのではないでしょうか。
絵画には描かれている内容(図像)だけには留まらない魅力が潜んでいます。例えばじっくりみることで分かる絵の具の盛り上がりや輝き。さらには、形を辿ることでしか感じ取ることが難しい作者の筆運び(スピード・力強さ)から、<糸杉>を描いていたゴッホの心境までも感じとることができます。そうした奥深さを少しでも体験してもらうためには、気構えずに作品とコミュニケーションのとれる環境と、少しのアイディアやアイテムが大切なのだと改めて感じました。

 

個々人で「どうぶつボード」を使って鑑賞した後は、学芸員の河野さんやとびラー候補生(以下:とびコー)がファシリテータとなってグループで鑑賞して行きます。VTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)の手法を用いながら、一人ひとりが感じたことをグループて共有することで、個人の視点では見つけることのできなかった、気付きやより深い理解を得ることができます。

 

とびコーのみなさんは、これまでたくさんの時間をかけて培ってきたVTSのファシリテータのデビューの日となりました。さすが7ヶ月以上も何度となく基礎講座や実践講座を通じて知識や実践を積んで来たとびコーさんたちだけあって、最初のファシリテートとは思えない落ち着きとしっかりした進行でした。
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VTSが終わるとまた子供たちは一人で鑑賞する時間を少しとりました。お気に入りの作品は見つかったでしょうか。今日の体験を通して、「また美術館に来たいな」って思ってもらえれば、何よりです。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤 達矢)

スクールマンデー:慶応義塾大学幼稚舎の鑑賞授業

2012.11.12

休室日を利用した鑑賞教育の場、スクールマンデー。本日は慶応義塾幼稚舎6年生の皆さん36名が来館されました。はじめに学芸員の稲庭さんより、本日の流れや展示室でのマナーなどについて説明がありました。

 

展示室に入ると、まずは全員で2階の最後のフロアまで一気に進みます。展覧会全体のボリュームを確認できたところで、個別鑑賞の時間となりました。みなさんなにやらメモをとっている様子。実は、今回の授業には展覧会で作品を鑑賞するだけではない、課題が用意されています。それは、子供たち一人ひとりが、自分のお気に入りの作品を1点決め、その作品の音声ガイドを作成することです。36人分の作品のガイドが集まれば、子供たちからみた素晴らしい展覧会の側面が浮き彫りになることでしょう。

 

ゆっくり作品を鑑賞して、自分なりに感じたことをメモして行きます。もちろんキャプションの言葉だけでは十分ではありません。なぜこの作品を選んだか、どこに魅かれたのか、どんな風にみえたのか、誰かに教えてあげたい気持ちや、聞いてもらいたい言葉など、たくさんの要素を一つにして行かなければなりません。

 

個々人で作品鑑賞をした後は、とびラー候補生(以下:とびコー)2人と子供たち2人で4人一組になり、グループで鑑賞して行きます。それぞれが最も番気に入った作品を一つ決め、とびコーさんともう一人の同級生にその作品の素晴らしさを伝えます。とびコーさんもVTSで培った対話力を活かしながら、対話を通して、子供たちとともに鑑賞を深めて行きました。

 

とびコーさんとのグループ鑑賞の時間が終わると、子供たちはまた一人で作品を鑑賞する時間となりました。一人で鑑賞して、ブループで鑑賞する。そして、また改めて一人で鑑賞してみることで、一人では気付かなかった作品の魅力を発見できたりします。慶応義塾大学幼稚舎6年生のみなさんがつくる音声ガイド、凄く楽しみです。あくまで学校の授業でつくられた音声ガイドなので一般のみなさんには公開できませんが、是非聞かせて頂きたい!!と思う次第です。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤 達矢)

対話による鑑賞の実践と記録について VTS実践

2012.11.05

今回の「スークールマンデー(対話を通した作品鑑賞)」実践講座のテーマは「対話による鑑賞の実践と記録について VTS実践」です。ついにVTS(ビジュアル・シンキング・ストラテジー)の実践に入ります。今日は午前・午後と通しての実践講座、気合いが入ります。講師はNPO法人芸術資源開発機構のアートプランナーである三ツ木紀英さんです。

 

はじめに、VTSを再度おさらいする意味も込めてDVD「Thinking through Art 」(イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館)を鑑賞しました。

 

続いて講師の三ツ木さんから、VTSを行なう上で必要な「3質問&7要素」についてお話を頂きました。ここで午前の部終了。

 

午後は二組に別れてVTSの実践に入りました。とびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんは、これまで何度となくVTSを見てきましたが、ファシリテータとして実践するのは今回がはじめてとなります。ちなみに、VTSの実践では、たんにファシリテータの練習を行なうだけでなく、1)ファシリテータ役、2)講師役、3)記録役と、必ず1回のVTSに3つの役割を分担することになっています。VTSが終了したあと、2)の講師役は、

「(ファシリテータに)実践してみてどうでしかた?学んだことは何ですか?」

「(鑑賞者に)〇〇さんのファシリテーションで、いいなと思った事はなんですか?」
「(全員に)何か驚いたこと予想外だったことはありますか?」
「(鑑賞グループに)〇〇さんに何か質問はありますか?」
「(ファシリテータに)これから取り組みたい課題はなんですか?どうしたら達成されると思いますか?」
などの質問を投げかけます。
こうしたやり取りを、VTSに参加したメンバー全員で共有し、さらに3)記録役がそこでの会話を記録することになっています。また、VTSの様子は全て音声録音がされており、後で、自分のファシリテートが適切であったかを確認することができます。

 

 

一通りの流れを終えたおころで、三ツ木さんか学芸員の河野さんからコメントを頂きました。1)ファシリテータ役、2)講師役、3)記録役を配置したVTSの練習は実践講座以外でもとびコーさんたちが自主的に集まってVTSの練習をすることのできる仕組みです。
これからの上達が楽しみです。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤 達矢)

対話による鑑賞について:「スクールマンデー」実践講座3回目

2012.09.24

「スクールマンデー(対話を通した作品鑑賞)」の実践講座の3回目が行われました。今回の実践講座は学芸員の稲庭さんによるファシリテートのもと、9月10日に行われたスクールマンデー(多田小学校・青井中学校の訪問)の振り返りからはじまりました。小中学校が来館するにあたり、事前に行う先生方との打ち合わせの内容や、美術館での鑑賞が授業にどの様に位置づけられているのかなど、裏方の大切な部分をとびラー候補生(以下:とびコー)と共有しました。
続いて、NPO法人芸術資源開発機構のアートプランナーである三ツ木紀英さん(スクールマンデー実践講座講師)による、「聴く、応答するワークショップ」が行われました。
まずは三人一組になります。一人はお話をする人です。もう一人はお話を聴く人です。ただしお話を聴く人は、話題の一区切りごとに聴いたお話を自分の言葉で要約して、「今あなたの言っていることはこう言うことですね。」とパラフレーズしなくてはなりません。お話をした人は自分の意図がキチンと伝わっていれば○、間違っていれば×のサインを手でだします。例えば「朝食でコーヒーを入れるのですが、マメはやっぱり挽きたてが一番なので、毎朝欠かさず挽くようにしています。」というお話ならば、「挽たてのコーヒーマメの香りを味わいうことの出来る、朝のコーヒータイムがすきなのですね」と聴く人は返してあげます。それでお話の意図が合っていれば○と返答されます。○と返答された時だけ、会話を前に進めることができます。×が出た場合は再度パラフレーズをやり直さなくてはなりません。しかし、×が3回続いた場合は、お話をする人がそのニュアンスの違いについて補足修正し、「なるほど~」となれば、会話を前に進めることができます。そして3人目の人は、そこで行われている一連のコミュニケーションを見守る人になります。
ちなみに、会話にはテーマはが与えられます。1つのテーマに与えられた制限時間は5分間です。これを、役割を交換しながら3回繰り返し、一巡して終了となります。

 

ルールを覚えたら早速スタートです。はじめの出題は「あなたがすきなもの・こと」です。相手の話を聴いて、「こういうことですよね。」と要約して返してみると、意外に話し手と聞き手の間に、理解のギャップがある事に気付きます。さらに、話し手の意図を汲み取って、自分の言葉としてフィードバックすることの難しさに悪戦苦闘の様子でした。
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実はこれ、VTS(対話による鑑賞方)を身に付けるための一つのトレーニング方法なのです。VTSのファシリテータは何人もの参加者の言葉を一つひとつ受け止めながら、その都度、参加者各々が思考を深く掘り下げて行ける様に、受け止めた言葉を丁寧に整理して、個人の感覚や解釈が、全体の理解となる様な言葉に置き換えて、再度参加者全員にフィードバックする役割を担わなくてはなりません。大変です。。。

 

5分が経過したら、講師の三ツ木さんからストップの合図があります。会話は上手く進んでいたのか、いなかったのか、もしも上手く進まなかったのらなば、どこに問題があったなのかなど、少しだけ振り返りの時間を持ちます。こうした時、3人目の見守る人の存在が効果を発揮するのです。1ラウンド目が終了したあとは、2ラウンド目に移ります。テーマは「あなたがとびラーをやって見ようと思った理由」です。

 

そして3ラウンド目は「あなたが大切だと思うこと」です。みなさん少しずつ慣れて来た様でした。

「スクールマンデー(対話を通した作品鑑賞)」では、必ずしもVTSの手法を用いた鑑賞プログラムを実施するわけではありませんが、VTSの手法を学ぶことを通して、作品鑑賞について理解を深めることを期待しています。また、これは僕個人の感想なのですが、普段のミーティングを行う上でも、このVTSの実践講習を通して身に付けることのできる能力はのとても有効であると感じました。アートプロジェクトの現場などではよく、年齢も職業も違う人たちが集まり、喧々諤々と議論したりしますが、その場合、場を取りまとめる役の者は、都度言葉と議論の積み重なりを整理して、建設的な話し合いになるように、舵取りを行わなくてはなりません。同じことを言っていても、対立している様な話し合いや、全く違うことを言っていても、同意が起こったりなど、いまいち噛み合ないミーティングは意外と多いものです。そうした時、この言葉のパラフレーズ的手法が非常に効果的で、僕もそれとは知らず使っていた様に思います。鑑賞教育の実践だけでなく、日常のとびコーさんのミーティング能力の向上にも期待を寄せている次第です。

 

最後は、「勉強」と「学び」の違いについてお話を伺いました。美術館は正しい情報を持ち帰るだけでなく、分からない事を分かろうとする「学び」の場であり、個々人のホントのコトを探求する場であって欲しいとのこと。
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美術において何がホントであるかを明らかにするのはとても難しいことですが、作品を通して知る事の出来た個々人の真実「ホントのコト」の魅力は、きっと人の心を豊にしてくれる様に感じました。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

 

スクールマンデー:足立区立青井中学校の鑑賞授業

2012.09.10

午前中の多田小学校の皆さんを見送った後、続けて午後には足立区立青井中学校1年生のみなさん66名が来館されました。

 

美術館での滞在時間が1時間少ししかないという非常に短いスケジュールではありましたが、学芸員やとびラー候補生(以下:とびコー)のみなさんが一丸となり、出来る限り充実した鑑賞体験をしてもらう為に工夫をこらして対応させて頂きました。展示室の入口から出口まで、まずは一通りザッと案内をさせて頂きました。これで、生徒のみなさんもこの展覧会がどのくらいの規模なのかを掴むことができます。つぎは、グループ鑑賞へと移ります。絵の前に座って気持ちを落ち着かせてから鑑賞に移ります。

 

4グループに分かれて、それぞれのファシリテータ(稲庭、武内、河野、三ツ木)のもとでじっくりと作品を鑑賞して行きます。絵の中で起こっていることをそれぞれ言葉にしながら、感じたこと、思ったことを共有して行きます。今回も生徒のみなさんには、つぶやきをメモしておくことの出来るシートを渡してあります。

 

グループでの鑑賞が終わった後は、個々人での鑑賞に移ります。絵の前に座り込んで、じっくり見ることは、混雑する平日では到底できませんが、休室日を利用したスクールマンデーなら、こうした鑑賞体験が可能なのです。小中学生のみなさんが、絵と対峙し、ゆっくりとその世界観へ入って行くには、静かな環境と少しのサポートが必要なのではないかと思います。東京都美術館は小中学校の先生とともに充実した鑑賞教育の場をつくりあげて行きたいと考えています。

 

あっと言う間の時間でしたが、名画と対峙したこの体験を通して、何かを感じとってもらえていれば幸いです。
(とびらプロジェクトマネージャ 伊藤達矢)

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