東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

「漆と螺鈿に魅せられて」藝大生インタビュー2023 | 文化財保存学専攻 修士2年・胡詩琳さん

2024.01.19

まだ暖かな陽気の11月末、東京藝術大学(以下「藝大」)上野キャンパスの総合工房棟、地下1階。
研究室で「こんにちは」と笑顔で私たちを迎えてくれた胡詩琳さん。スリッパに履き替え足を踏み入れると、そこには障子戸の備わった和風の一室が。胡さんはここで修了制作に励んでいました。大学ということを忘れてしまうような空間で、胡さんにお話をうかがいました。

 

和風の研究室。以前は畳敷きだったとか。

 

 

―ご出身と、来日・入学までの経緯を教えてください―

 

中国湖南省から来ました。中国江西省の景德鎮陶瓷大学で4年間、陶芸の研究をしていました。景徳鎮市は古くから陶磁器の生産地として有名で、たくさんの陶磁器工房があり、焼くときに失敗したりして割れた陶磁器が多くありました。
卒業後、そうしたものを金継ぎする機会があり、その時初めて漆に触れました。それから漆や修復に興味を持つようになり、漆についてもっと勉強したいという気持ちと、修復についても学びたくて日本に来ました。

 

―中国の大学を卒業後、すぐに来日されたのですか―

 

大学を卒業後、中国の博物館に3年間勤務した後、4年前に日本に来ました。来日1年目は日本語学校で学び、2年目は漆の専門会社で働きながら、漆に関する技法を勉強しました。中国の大学で漆専門の勉強をしたわけではなかったので、修復を学ぶ前に、漆に関することを知らないといけないと思い、1年間学びました。そして、来日3年目に藝大の修士課程を受験・入学しました。

 

―修了制作について教えてください―

 

藝大美術館所蔵作品《輪花葡萄栗鼡螺鈿卓》(りんかぶどうりすらでんたく)の天板部分の復元模造です。これは李朝時代晩期の制作と思われる卓で「ソバン(小盤)」と言い、李朝時代の特徴的な家具です。日本語では「お膳」ですね。食べ物や食器を載せて台所から食事をする所まで運ぶものです。当時のソバンは漆塗りだけのものが多く、このように螺鈿文様が施された作例は少ないです。

 

修了制作作品《輪花葡萄栗鼡螺鈿卓》復元模造

 

―なぜ、この作品を選ばれたのですか―

 

私は螺鈿の作品が大好きなのです。藝大入試の作品も螺鈿の作品を制作しました。だから、今回も是非、螺鈿に関する作品を修復したり復元したいという希望を担当教授の北野珠子先生と直接、修復を指導いただいている松本達弥先生に伝え、先生と何点かの作品を見学・検討して、この作品に決め、修復から始めました。

 

―修復と復元模造の両方をされたのですね。では、まず修復について教えてください―

 

1年目に原作(収蔵作品)の修復をしました。あわせて制作背景、材料や道具について調べたり科学調査をしたりして、資料を読んだうえで素材や制作方法について推測するところから始めました。
最初に螺鈿の剥落箇所の補修をおこなったのですが、観察したところ、貝の表面から木地に墨で下書き(以下「置目」)したと思われる黒い線が透けて見えたので、おそらく貝は直接、木地に貼られたと考えました。こうした作品は、劣化すると表面素材の剥離・剥落が激しいのです。こういった作品をどのように修復するのかに興味がありましたので、実際に修復作業をしてみて、とても勉強になりました。

 

(左)《輪花葡萄栗鼡螺鈿卓》修復前、(右)《輪花葡萄栗鼡螺鈿卓》修復後
さまざまな調査後、螺鈿の剥落箇所の補修をおこなった。

 

 

 

―その後、復元模造の制作に着手したのですね―

 

はい。2年目に復元作業を始めました。

 

―《輪花葡萄栗鼡螺鈿卓》の復元模造について教えてください―

 

この工程見本を見ながら工程順にみていきましょう。

 

たくさんの工程が工程見本に整理されている。作品同様、とても美しい仕上がり。

 

まず、木地ですが、栗を選びました。原作の表面には漆が塗られていて木地を見ることはできませんが、裏面には木目が確認できます。目視では欅のように見えますが、欅は原作よりも重いことと、資料から、栗は李朝時代によく使われていた木材のひとつであり、原作に近いことから選びました。栗はとても軽いです。

 

<膠固め><貝貼付>
次に、原作はどうやって木地に貝を接着したのかを考えました。日本なら、ほぼ、漆を使います。でも、原作の螺鈿部分から、置目の黒い線が透けて見えるため、螺鈿を貼る際に使用された接着剤は漆ではないと判断しました。そこで、透明な接着剤だったら膠ではないかと考え、木地に薄く塗って、貝を貼付しました。

<炭+糊地付>
貼付した貝と木地との間のわずかな段差を埋めるためと、より螺鈿の輝きを引き立たせるための、黒色の下地の素材を考えました。原作の剥離していた漆塗膜と木地の間をルーペで拡大して見ると、黒い粒状のものが確認できます。制作年代および文献資料と合わせて考え、先生と検討した結果、炭粉ではないかということになりました。

 

「これで覗いて見てください。黒い粒が炭粉です」と言って、ルーペを貸してくださった胡さん。

 

とびラー 「粒?粒?どれですか?」
胡さん  「このへん、見えますかね?近づいて大丈夫。
      螺鈿が剥落して露出している木地の上です。」
とびラー 「エッ?木地の上?どれですか?」

 

なかなか見つけられないでいるとびラーに、胡さんは粘り強く教えてくださいました。胡さんは、きっと、こんな風にして先生や周りの方、研究対象と丁寧に向き合っていらしたのだろうと感じる一幕でした。
目を凝らして、ようやく、ポツッ、ポツッと微かな黒い粒を見ることができました。こんな小さな粒を手がかりにして素材を探るとは、一同驚きでした。

 

次に、炭粉に何を混ぜて塗付したのかを考えました。そこで、原作から剥落した塗膜片、漆と下地が付いた塗膜片の2つを使って実験をしました。この2片を湯の中に浸したところ、下地の部分が溶けてしまったことから、炭粉に混ぜたものは水溶性ではないかと推測しました。そして、韓国でよく使われた下地の材料の4種類「漆、膠、糊、柿渋」と炭粉をそれぞれ混ぜて、操作のしやすさや乾いた時の状態を観察した結果、一番作業性が良いと感じた糊を選びました。炭粉は、番数の異なる4種類のメッシュでふるい、その中から原作の細かさに一番近いものを採用して糊と混ぜ、下地として塗付しました。

 

―実験の繰り返しなのですね。工程としては、全部で何工程あるのですか―

 

最終的に展示用として整理したのは、13工程です。先生と検討を重ね、実験を繰り返したので、実際にはもっとたくさんのデータと工程がありました。
この後、<拭き取り>、<空研ぎ>、薄い生漆での<下地固め>、<透漆塗り>、<剥ぎ起こし>、<空研ぎ>、<毛彫り>、再び生漆での<固め>、<透漆塗り>、<剥ぎ起こし>をして完成です。

 

私たちが聞いて気の遠くなるような工程の数々について、笑顔でお話ししてくださった胡さん。その楽しそうな笑顔は、「苦労」を全く感じさせないものでした。

<剥ぎ起こし>とは貝の上に塗った漆を竹べらなどの刃の無い道具で削り取る作業。透漆を塗り、乾燥後の2日以内におこなわないと、漆塗膜が硬くなってしまい、作業しづらくなる。

 

―こうした工程見本作成は、胡さんのアイディアですか―

 

はい。これは必須のものではなく、私自身が面白いなと思って作りました。

 

―わかりやすいですし、とてもきれいです。貝の切り方についてもまとめられていますね―

 

原作から剥落した貝の厚さと同じ位の0.2mm厚の中厚貝で原作の虹色の光沢に一番近いものとして、韓国のアワビを採用し取り寄せました。カッターで切るには厚すぎて、糸鋸で切るには薄すぎる、微妙な厚さです。そこで今回は、中厚貝2枚を糊で貼り重ね、糸鋸で形を切った後、水の中に浸して1枚ずつに分けました。李朝時代晩期の作品は量産された可能性が高いので、1枚ずつ切るのではなく、効率的な作り方をしたと考えたからです。また、重ねることで強度が増して切断に耐えることができます。当時は、もっと何枚か重ねて切っていたのかもしれません。これが正しいとは言えないけれど、当時はどうしただろうと思いを巡らせ、当時の考え方、作り方に近づくような方法で再現しました。

 

 

―とてもたくさんの工程があることがわかりました。苦労された点は何でしょうか―

 

工程の大変さ以外で一番困ったことは、原作に使われた黒く見える漆の種類が黒呂色漆なのか、(茶色っぽい)透漆なのか、その種類がわからなかったことです。科学調査(蛍光X線分析および低加速電圧高分解能走査電子顕微鏡FE-SEM分析)をしましたが、結果が出ませんでした。縁の朱色のところは、科学調査によって水銀朱であることがすぐわかったのですが、黒の部分は漆自身の黒さなのか、あるいは炭粉下地部分から透けて見える黒さなのかは判断しづらく、使用された漆が黒呂色漆であるか透漆であるか、現段階でははっきりとしません。でも、工程から考えると、貝の上に漆を塗った後、貝の表面の漆を削って<剥ぎ起こし>をする必要があります。もし、黒呂色漆だった場合、塗ると真っ黒になって貝の位置がわからなくなってしまいますが、透漆だった場合は茶色いので、貝の位置がはっきりわかります。こうした工程から、透漆の可能性が高いと考えています。

 

(参考:漆を塗ってから螺鈿を漆塗膜から出す必要がある。螺鈿を出す方法について、よく使われる技法は「研ぎ出し」あるいは「剥ぎ起こし」の2種類がある。原作の漆塗膜表面には艶があることから、当時使用された方法は「研ぎ出し」でなく、「剥ぎ起こし」の可能性が高いと考えた。螺鈿表面の塗膜のみ剥ぎ起こすため、まず螺鈿の位置をはっきり見えるようにすることは非常に重要であり、透漆は透明な茶色の漆なので、黒呂色漆より工程に適すると考え、今回は透漆を使用した。)

 

―楽しかった点や、良かった点は何でしょうか―

 

文化財の保存と修復に関する考え方が変わりました。当初、復元模造はただ展示するためだけのものだと思っていましたが、実際に修復をしながら復元模造の制作をしてみると、原作に対する理解が深まり、そのうえで、どうやって修復・保存するかを考えるようになりました。

 

使っている道具。竹べらはカスタマイズしたもの。

 

卒展では、復元した作品と、工程を整理したパネルと貝の切り方実験のパネルの計3点を展示する予定です。

復元模造作品とともに展示するパネル。「伝えたい」という胡さんの思いが感じられる。

 

―今後の展望をおきかせください―

 

博士課程への進学を志望しています。博士課程で、もっともっと螺鈿に関する作品に触れて、中国・日本・韓国の3か国の螺鈿作品の関連性について調査をしたいと思っています。
修復については、原作のような作品は塗膜の剥離・剥落が激しいので、それに対して何か良い修復方法を見つけたいです。今回は芯張り*という方法により、膠の含浸*をして、塗膜の剥離をほぼ押さえましたが、塗膜から木地が露出している際の部分については、どうやって剥離を止めるか、それには何の材料が良いかと考えていて、まだわからないです。

*芯張り:剥離した螺鈿部分の圧着作業は芯張りという方法で施す。(膠や希釈した麦漆を含浸し、アクリル板と塩ビ板を螺鈿の上に置き、竹の弾力を利用し圧着する方法である。)
*含浸:中に浸み込ませて隙間・空間を無くすこと。

 

 

―修復の技術は完成されたものではないのですね。まだ課題がありそうですね―

 

そうですね。修復の場合、どのくらいまで手を加え、どこで止めるかが一番難しい問題だと思います。私は、できるだけ手を加えない方が良いと思っているため、今回、螺鈿の剥落箇所は補填せず、剥離や剥落を止めるため、際処理用の錆を作って可能な限り目立たないように補強作業をしました。特に、赤外線撮影により、木地に墨書きされた置目の様子や、置目をするための目印となる‘十字線’が確認できました。こうした線は貴重な資料の一部分ですので、貝を補填したり、漆の含浸をして線が見えなくなるようなことはしませんでした。

 

―将来、修復あるいは復元模造でたずさわってみたい作品はありますか―

 

今は特に決まっていませんが、今後も螺鈿作品の修復・復元について、もっと経験を積みたいです。将来的には文化財の保存・修復に関する仕事をしたいです。大変なこともありますが、自分が好きなことだから、辛いことも我慢できます。そして、作品が完成した時は、とても嬉しいです。

 

―インタビューを終えて―

復元模造は、ただ原作と同じものが作られているのではなく、原作についての調査・研究結果をもとに、制作当時となるべく近い素材・道具・方法で制作されていることを胡詩琳さんのお話から知ることができました。素材一つ一つを確固たる理由のもとに選定し、自身の手で再現する。たゆまぬ探究心と確かな技術で表現された作品には、私たちを当時にタイムスリップさせてしまう、そんな力が宿っていると感じました。

 

 

取材:長瀬あやり、猪狩麻里子、石井真理子(アート・コミュニケータ「とびラー」)
執筆:石井真理子
執筆協力:長瀬あやり、猪狩麻里子

 



無知な質問にも終始しなやかにアルカイック・スマイルで応えてくれた若いその人は真摯で明るく、そしてたくましく、何より愛らしく。心が洗われました、深謝。(長瀬あやり)

 

 


修復ってただ直すだけじゃない。奥深い作業、その難しさを知りました。好きを突き詰めている人の笑顔にこちらまで笑顔になる良い時間でした。(猪狩麻里子)

 

 


胡さんの穏やかな笑顔の中に、文化財を後世に伝えたい、という芯の強さを感じました。螺鈿のようなキラキラした輝きに魅了されました。(石井真理子)

「誰かのために〜色と線で紡ぐ重なり」藝大生インタビュー2023 | デザイン科 学部4年・坂田真紀さん

2024.01.18

11月16日、私たちは初めての藝大生インタビューに緊張しつつ、暖かい日差しが降り注ぐ中庭を通り、東京藝術大学上野校地美術学部を訪れました。現れた坂田さんはその緊張を解くようにとても柔らかな雰囲気で気さくにお話をしてくださり、インタビューが和やかにスタートしました。

 

アートの世界に進もうと思ったきっかけはなんですか?

 

親が音楽を日常的にかけていたり、美術館に連れていってくれたり、「絵の具を持って公園に絵を描きにいく?」と外に連れ出してくれるような、身近に芸術がある家庭で育ちました。美術は小さい頃から当たり前にあった楽しいことの一つで、中高生になると、モノをつくることが最大の楽しみになり、自分はどこにいたら楽しく生きられるかなと探してきた先に、藝大がありました。

また、例えば銀座のショーウィンドウを見ている人たちが楽しんでいるのを見て、誰かに感動や喜びを与えられる人が羨ましいと思ったことがありました。そうした機会を重ねて、自分だったら、人を楽しませるためにいったい何ができるんだろう、自分が楽しいことのその先で一緒に喜んだり楽しんだりしてくれる人がいたら素敵だな、と思いました。今は個人で作品を作っていますが、みんなで何か大きなものをつくることにも興味があります。それぞれができることを持ち寄って、掛け算で何か新しいことができたら楽しそうです。

 

 

卒業制作の作品に至るまでの経緯を教えてください。

 

卒業制作は、自分がやってきたことの点と線が繋がった集大成です。これまでの作品遍歴をお話しすると……。まず「縫う」ことのきっかけになったのが、2年生の時の、実在する特定の人のためにデザインをする、という課題の『ペルソナ』でした。私は祖母を取り上げたのですが、祖母を調べたり話を聞いて思ったのは、人はとても複雑だということです。そこで、綺麗な直線ではない線によって、いろいろなことがあった祖母の人生の輪郭を表現したいと考えました。足踏みミシンで線を縫ってみると、自分の思い通りに線をコントロールできませんでした。でもそれが面白いと思いました。ちょっと揺れがあったり、凸凹があったりして、線に息遣いを感じて、まるでおしゃべりしているよう。ミシンで線を縫うと、何かをちょっとずつ吐き出していくような感覚も面白く、縫った糸が手触りとして残っていくことにも惹かれました。

 

<卒業制作の最初のきっかけになった作品 >

 

 

 

等高線のようにも見えますね。布の下に線が透けて見えたり、線が曲がったところに何かあったんだな、悩みながら進んでいったのかなと、色々なことを想像させてくれますね。

 

<卒業制作のきっかけになった二つ目の作品 >

 

 

こちらは、作品に詩を添えて、創作の新たな表現として展開する『詩を注ぐ』という三年時課題で作ったものです。今度は、透明なオーガンジーの布に、エスキース(下絵)もなく思うがままに縫い進めていきました。制作過程で、担当教授より「線だけでなく、線の密度を上げて面になるところも作ってみては」というアドバイスがあり、1ヶ月ぐらいずっと無心でぐるぐると縫って、このような作品に仕上がりました。

私は色を大事にしていて、自分の表現の武器だと思っているのですが、この作品でも色の選択にこだわり、色鉛筆で色を重ねるように糸を縫い、表(上糸)と裏(下糸)の色を変えて混色するという表現も発見しました。

 

そのような経緯から、こちらの卒業制作の作品に繋がっていくのですね。

 

そうですね。オーガンジーをミシンで縫うと、ボコボコと立体になるのですが、作品を遠くから見ると平面にしか見えません。そのことが少し寂しいなと感じ、卒業制作では模様を立体にすることに挑戦しようと考えました。オーガンジーの布の真ん中に穴を開けて固定し、格子状の布目に対して斜めに放射状に縫っていくと、布目が伸びて波打つ形状になりました。

作品をさわってみてもいいですよ。

 

〈制作中の卒業制作の作品〉

 

-根底にはいつも手触りがあるんですね。硬めの和紙のような、不思議な触ったことのない感触です。生きているみたいです。

 

そう感じてもらえて嬉しいです。

 

無機質でなく有機質、自然に近い感じがします。見た目の柔らかさと実際に触った時のしっかりしている感覚のギャップが面白いです。緻密で、もはやミシンの線がコントロールできてますね。こちらの作品名は決めていますか?

 

意図的ではないのですが、植物っぽいところがあるので「脈」のようなタイトルにしようかなと思っています。

 

奥に飾ってある作品も卒業制作の作品ですか?

 

 

はい。こちらは、有機的で絵に近い感じの作品です。流木の木目や根っこの曲線のような流れのあるものをイメージし、菱形を歪ませることで凹凸を生み出しました。納得できないと途中で2時間かけて糸を外して、もう一度縫い直すこともありました。表に鈍い色、裏に少し鮮やかな色を使うことで、表裏の印象を変えています。特に緑の混色が好きで、表に暗い紺色、裏に鮮やかな緑色を使うことでペタッとしない奥行きを出しました。立体的に模様を楽しめるような作品にしたいです。

どちらの卒業制作作品も最後の追い込み中で、最近はずっと家に篭って、ご飯を食べるより制作に夢中になっているので、今日は久しぶりに大学に来ました。

 

 

ちなみに自然の中は好きですか?

 

好きですよ。自然の中が落ち着いて好きなので、新宿のような人混みの激しい街に行くと反動で山に登りたくなります。今回の作品も、森の中で大きな木を見上げたり、木漏れ日の中を歩いたり、枝の下をくぐったりするように、ぐるぐると360°回りながら鑑賞してほしいと思っています。布に光を当てて、壁や床に線(縫い目)の影が落ちるように展示しようと考えています。楽しみにしていてください。

 

〈 見る角度によって全く違う表情をみせてくれる 〉

 

 

 

卒業制作展に向けて、意気込みをどうぞ。

 

卒業制作では、これまで取り組んできたことの答えを出したいですね。見る方にも楽しんでもらえたらうれしいです。ここで着地せず、この表現技術を服とかさらに別の形におこすなど、次の展開につなげていきたいですね。

 

卒業後の予定は決めていますか?

 

大学院に行く予定です。もっと大きな作品をつくったり、他の人との掛け算による作品を手掛けられたらと思っています。あくまでも今回の卒業制作はその過程。自分がやりたいことを気持ちよく出し切れたらいいなと思っています。

 

今回インタビューさせていただき、卒業制作展がとても楽しみになりました。今日は本当にありがとうございました。

 

 

インタビューを終えて 

 

印象に残ったのは「自分のためというよりは、誰かのために楽しんでもらえるような作品をつくりたい。」という言葉でした。小さな頃から芸術に囲まれて育ち、自然の中や手触りのあるものが好きだという坂田さんが紡いていく線は、どこまでもしなやかで、選び抜かれた色合いが織りなす優しさとその線に費やした時が重なって生み出す強さがありました。時にコントロールできない線をも楽しみながら、変わらない芸術に対する想いを胸に、これからも作品を見てくれる誰かのためにその線を生み出し続けて欲しいです。

 

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取材:梅川久惠・後藤麻木・井戸智子(アート・コミュニケータ「とびラー」)

執筆:井戸智子

執筆協力:梅川久惠・後藤麻木

 

めての藝大生インタビューで、少し緊張もありましたが、出迎えてくださった坂田さんは私たちが理解しやすいように準備してくださっていました。お話を聞くうちに学生と言うより、一人の作家の作品や創作への想いにどんどん引き込まれました。

(梅川久惠)

 

 

作品のことを語り出すと止まらない坂田さん。「ミシンの縫い目が おしゃべりしているよう」と表現されていましたが、縫い目を目で たどっていると、本当に坂田さんの楽しいおしゃべりが聞こえてきそうです。これからどんな作品が紡がれるのか楽しみです。

(後藤麻木)

 

 

まっすぐな人柄と柔らかな笑顔で自然と場を和ませてくれる坂田さんの雰囲気がそのまま現れているような作品でした。これからもずっと紡いでいくであろう坂田さんの線がどこまでも伸びやかに広がっていくよう願っています。

(井戸智子)   

【開催報告】五感で楽しむ朝の都美さんぽ

2023.12.19

 

朝の空気の中で、美術館北側にある大銀杏の姿や歴史について参加者と対話するとびラー

 

◆はじめに

午前中のゆったりした時間に都美建築のみどころを紹介する建築ツアーとして、コロナ禍の2021年〜2023年の春まで、季節ごとに数回実施してきた「トビカン・モーニング・ツアー」のプログラム。2023年秋のツアーを準備しようと立ち上げられた新しいとびラボは、予期せぬ長い旅路をたどることになりました。

 

◆「トビカン・モーニング・ツアー」を見直す長い旅が始まった! 

2023年7月、「この指とまれ」で秋のツアー実施を計画するためとびラーを募ったラボが「トビカン・モーニング・ツアーを一緒に考えませんか」です。そのときのとびラー専用掲示板での呼びかけコメントを引用してみます。

 

”今回、タイトルを「トビカン・モーニング・ツアーを一緒に考えませんか」にしたのは、参加するみんなでもう一度しっかりと考えたいと思ったからです。

ツアーを実施するためのルートや時間配分の細かな流れ・作業的な話以外にも「そこにいる人みんなで場を作っていく」ことも考えてみませんか。

私にも明確なビジョンがある訳でもなく、どうなるんだろう?と手探りの状態でこれを書いています。結果的に出来上がるものは同じに見えるかもしれません。

でも、みんなで考えたらその過程は違ったものになるはず。一緒に、トビカン・モーニング・ツアーをつくりましょう。”

 

とびらプロジェクトには、恒例となっている継続的な企画も、プログラム実施が終わったタイミングや、あらかじめ設定した期限などでそのとびラボのプロセスをふりかえり、都度ごとに解散する仕組みがあります。次に同様なツアーやイベントを行う時も、とびラーの誰かが立ち上げを表明して改めて参加を希望するとびラーを募るのです。解散と新たな出発を繰り返すことで、毎回新しいとびラーや視点が加わってラボの内容を見直したり、意義を根源から問い直したりすることにつながり、新しいアイディアを生みやすい環境を作り出します。今回もモーニング・ツアーそのものの姿を問い直すところから始まり、新しい形のプログラムに脱皮するために、苦しくも楽しい道のりが始まりました。

 

◆アイディアを出し合った後、東京都美術館の朝を体感してみた!

「この指とまれ」の呼びかけに「とまった」(ラボに参加表明をすること)とびラーが最初に集まったのが8月15日。アイスブレイクとして、各自の朝のルーティン+好きな卵料理を紹介しあうことで、打ち解けました。その勢いで3つのことが提案されました。

①コロナ禍も明けたので、このツアーを新たに考え直そう!

②より自由度の増した活動ができるのでは?みんなでもう一度考えてみよう。

③ラボの醍醐味である、始まりから企画を作る楽しみをみんなで体験してみよう。

 

「どんな場にしたい?参加者に感じて欲しいこと、届けたい思いは?」をテーマに意見を出し合いました。そして、とびラーからこんなワクワクするような思いが次々とあふれてきました。

*「建築ツアー」にこだわらず、東京都美術館(以下、都美)の朝のゆったりとした空気感を体験してほしい。

*極力、朝早くスタートしたい。

*都美周辺の公園内の木立からスタートしたら楽しそう。

*朝をどう生かすか。人の少ない朝の都美の様子を感じて欲しい。

*時間と空間を楽しむツアー。アートラウンジで参加者とコーヒーや余韻を楽しみたい。

*陽のひかり・匂い 感覚をみんなで体験してみたい。

*モーニングならではのツアーを考えたい。公園にいるような感覚も感じて欲しい。上野の森との融合を考えたい。

*お茶+建築+アートの「とびかんモーニングセット」を参加者に提案したい。

 

アイディアを出し合った後、朝の時間の都美の魅力を実際に体感して、何ができるか考えてみようということになり、とびラー有志で朝の散歩を行いました。

 

東京都美術館に接する上野公園の園路。建物と木々の織りなす景色が素晴らしい。

 

東京都美術館の創設初期に建てられた谷文晁の碑に見入るとびラー。

 

美術館の北側から《my sky hole 85-2 光と影》が望めることを発見。モダニズム建築の特徴である広い窓が生み出す開放感に感動!

 

どこから見ても、木々に囲まれた美術館。朝の光が美しい。

 

朝の光を浴びて、しばし静寂を楽しむとびラー

 

◆「モーニング・ツアー」が「朝の都美さんぽ」に進化した!

 

都美の朝の魅力を体感した後もミーティングを重ねました。美術館の周辺環境を味わえる場所として、建物の北側や外周もコースに加えて、参加者に紹介できたら、朝の静けさや自然とのつながりが感じられるのではと、どんどん案が膨らみました。

 

Zoomでもミーティングを積み重ねました。

 

ここに至るまでに、プログラムの企画書をとびラー自身の手で作成し、とびらプロジェクト運営スタッフ(以下スタッフ)とやりとりを繰り返しました。スタッフからは「朝の魅力とは具体的に何?」「朝の美術館や建物を味わうために、どんな場づくりが必要?」とたびたび問いを投げかけられ、そのたびにとびラーは集まって、ミーティングを繰り返しました。議論が堂々巡りになり、振り出しに戻ってしまったことも度々ありました。

 

ミーティングに行き詰まり、体で朝を表現してみるとびラー。

 

また、プログラムの根幹となる「どうやって朝の都美の魅力を伝えよう?」というテーマでも何回もミーティングで討論し、とびラーの思いを交換しました。

 

話し合いを繰り返した結果、見えてきたものは、このラボが目指すのは建築自体の紹介が主体ではなく
・都美の建築空間に差し込むの朝の光や、朝の静けさや周辺環境からの音、朝しか見られない光景などを五感で楽しむこと。
・展示を見にくるための場所としての都美以外に、美術館の空間自体を味わう。そこに流れる静かな時間や空間を楽しむこと。
・いつもと違う一日の始まりで自分のための時間を過ごし、一日の終わりには「良い一日だった」と思ってもらうこと。
・これまで知らなかった朝の都美の魅力に触れ、「私の一推し」を見つけてもらうこと。

これらが、「都美が持っている“朝の魅力”を来館者へ伝えること」であり、それが都美のファンを増やすことにつながるという結論に達しました。

 

そして、ついにたどり着いたキーワードは「五感で楽しむ」。そして、ラボのタイトルも「五感で楽しむ朝の都美さんぽ」に進化しました。

 

次に、このツアーで大切にしたいこと(このツアーの核となるコンセプト)についても話し合いました。

・朝の都美の魅力は朝の光のコントラスト、建物と自然環境が織りなす風情。感覚がリセットされる朝に、それらの魅力を対話や五感で知り、ゆったりとした時間を過ごしていただくためのプログラムであるというベースをしっかりと持つ。

・対話、時には静かな時間、忘れずに。準備はたくさんした上で、出すものは必要最小限に。新たな魅力への期待を持って再訪いただくための余白を大切に。

・ これまでの建築ツアーは先にガイド役のとびラーが説明し、それを受けて参加者が発見していた。このラボでは参加者が五感を使って先に発見し、とびラーからの必要に応じたプラスアルファ(建築の観点からの話や木々が残っている心意気の紹介など)を紹介する。とびラーとの対話で、さらに感じたい、もう一度見てみたい、知りたい、と思ってもらえるようなやりとりをしたい。

 

以上を踏まえて、本番2日間で5チームのツアーを行うこととなり、早速コース検討に入りました。そして、朝の散歩でその魅力に惹かれた美術館北側(現在、来館者に開放されていないエリア)と美術館の外周の道もコースに入れることを検討しました。最終的には都美建築自体の魅力を伝えるということからも、二つの案のうち、北側エリアをコースに加えることに絞りました。とびラーは話し合いながら、「ゆっくり、欲張らない」「普段の建築ツアーより行く場所は少なめに」を共通項として、美術館北側を中心にエスプラナード(都美正門から建物入口に向かう開放的な空間)や公募棟を組み合わせた5コースを作成し、トライアル実施にこぎ着けました。

 

トライアル実施に当たって、何度も話し合って見出したプログラムの根幹、「朝の都美の魅力を伝えたい。それを五感で感じてもらい、対話で共有する」を体現するために、プログラムの最後にアートラウンジでのゆったりしたティータイムを共通ですべてのツアーに入れることにしました。

 

とびラーがガイド役とお客様役に分かれて、トライアルを実施。

 

コースに追加した美術館北側エリアにて、戦災を生き抜いた大銀杏に見入るとびラー。

 

さんぽの後のティータイムも念入りにトライアルで検証。

 

 

そして、とびらプロジェクトの公式サイトに参加案内を出したのは、プログラム本番を行う12月になってからでした。プログラムが本当にできることになったこと自体にとびラー一同、大きな喜びを感じた瞬間でした。

 

朝日に包まれた都美の魅力が伝わる広報ビジュアル

 

◆苦労の先は、楽しい楽しい本番が待っていた。

広報期間が短かったにもかかわらず、応募者にも恵まれ、本番2日間とも参加者ととびラーは本当に充実した時間を過ごしました。

 

◎日程

・第1回 2023年12月17日(日)9時45分~10時45分

・第2回 2023年12月19日(火)9時45分~10時45分

 

◎参加人数

・第1回 参加者12人 とびラー7人

・第2回 参加者6人 とびラー8人

 

 

実際巡ったコースを2例ご紹介しましょう。

① アートスタディルーム → 東門 → 美術館北側エリア → 公募棟 → アートラウンジ

② アートスタディルーム → エスプラナード → 東門 → 美術館北側エリア → アートラウンジ

 

いずれのコースも通常の建築ツアーより行く場所の数をぐっと絞っています。では、各チームどのように朝の時間を過ごしていたのでしょうか?そのいくつかを紹介しましょう。

・東門の木に囲まれているスペースでゆったりと深呼吸して朝のエネルギーを体いっぱいに取り込む。

・美しいタイルが貼られた建物の壁に体をぴったりと付けて目をつぶって1分間瞑想する。

・道ばたの枯れ葉を集めて、香りを嗅いでみる。

・鳥の声や遠くを走る車の音、かすかに聞こえる地下鉄の音に耳を澄ます。

・北側エリアにある、度々の被災を耐えてきた大銀杏をじっくりと見上げてみる。

 

その時々に、参加者の皆さんとの対話により感想を交換しながら進めました。実施した1時間はゆったりしていたように感じましたが、いざ終わってみれば楽しくあっという間に過ぎた印象を受けました。

予定時間が過ぎても、どのグループも余韻のおしゃべりが長く続いたことが、どんなにこのプログラムが楽しかったかを証明していました。 

 

では、当日本番の様子を写真でご覧ください。

 

 

朝の光と冷気を感じながら、普段は足早に通り過ぎてしまう中庭をゆっくり眺める参加者のみなさん

 

 

大銀杏の落ち葉の前で朝の音や香りを楽しむ

 

 

深呼吸して朝のエネルギーを体いっぱいに取り込む

 

さんぽの後のティータイムはいつ終わるともしれず・・・

 

ツアー途中や終わってからの参加者の皆さんからは「会話が弾んだ」「心の洗濯ができた」「子育てが終わった開放感で『自分の時間』を満喫した」などの嬉しい言葉をいただきました。「途中で料理のスパイシーな香りを感じた」というコメントもあり、レストランから漏れる微かな匂いを敏感に感じ取られた参加者もおられました。ご家族で参加いただいたグループでは、終了後のアンケートの時間にお子様が北側エリアの大銀杏や壁に貼られたタイルを色鉛筆を使って描いてくれたという、とびラーを感激させるエピソードもありました。

 

従来の建築ツアーを発展させた、初めての「五感ツアー」。約50年前、現在の建物を建てる際に考慮された「周辺の木を残す」「公園環境との調和」が今日まで守られてきた東京都美術館だからこそ、このツアーの価値を生んだものと思います。そして何よりも、ツアーを実施した全員が「とびラー」として都美を何よりも愛していることが、素晴らしい時間を創り出しました。

 

 

 

◆参加者アンケートより

 

・何度も訪れたことのある場所なのに、新たな気づきがありました。

・心の洗濯ができました。

・混んでいない静かな美術館は初めてでした。また散歩に来たいと思います。

・朝、早起きして来て良かったです。

・この散歩を体験したことで、何度も訪れていた美術館が、より身近で好きな場所になりました。

・今までにない都美の姿がみられ、心も体もあったかくなりました。朝っていいな~と感じました。

・美術館とそれを取り巻く環境を、五感を意識しながらガイドしていただいて、新鮮でした。

・歴史を感じる銀杏が愛おしく思えました。

・ふだん「五感を使う」ということをほとんど意識していない自分に気づきました。

 

他にも多くの参加者の方が、作品を鑑賞するだけではない美術館の魅力について書いてくださいました。アンケートにご協力くださった17人すべての方から「とても満足」の評価をいただきました。

 

第1日目の振り返りを終えて、充実した笑顔。

 

第2日目の振り返りを終わって、やり遂げた気持ちと少々の疲れが表情に。

 

 

◆終わりに

 

企画、準備、当日のプログラムに続き、最後のミーティングである「解散回」にたどり着いて、とびラーはこんな意見を出し合いました。

 

・ラボのプロセスが紆余曲折を経たけれど、とびラーの知恵が集まって形になった。大変だったからこそ、達成感も大きかった。

・通常のプログラムでは先にガイド役のとびラーが説明し、それを受けて参加者が何かを発見するという過程を経るが、このラボでは参加者が五感を使って先に発見し、とびラーから必要に応じたプラスアルファ(建築のことや木々などの周辺環境のこと)を紹介する。そんな「逆転の発想」が他のプログラムと違って良かったと思う。

・とびラー・スタッフ・参加者とたくさん話をした。参加者と対話をして、私たちが伝えたかったことを感じ取ってもらえてよかった。美術館が人と繋がる場・ひとと対話する場になった。

・「五感」とは何かをもっと深めてから、具体的なプログラムに落とし込みたかった。

 

当日のプログラム成功ももちろんですが、苦労の末にプログラム実現にたどり着いたプロセスにこそ「とびラボの醍醐味と達成感」を感じた半年間でした。

 

今年度、また次のとびラーが再度このラボを立ち上げて、みんなで悩み、より進化した「朝の都美さんぽ」を皆様にご案内できるものと信じています。ご期待ください!

 

 


執筆:12期とびラー 岡 浩一郎

民間企業を定年退職した半年後に出会った、とびらプロジェクトの募集のパンフレット。興味のままに応募して、縁あってとびラーになって、1年が経過しました。自分のための時間が沢山できた時にこのプロジェクトに巡り会ったのも運命と思って、毎週のように上野に通っています。

【開催報告】みえない人とみえる人が一緒に楽しむアート鑑賞 『みんなでみる美術館』

2023.12.16

「みえない人」も「みえる人」も、お互いがいるから、みえること、気づけることがあります。「みえない人」と「みえる人」そして「とびラー」が、作品鑑賞を通じて障害の有無に関わらずフラットに対話することで、新たな発見や気づきを分かち合いたい。この企画は、そんな思いからスタートしました。

 

半年近くにわたる活動では、とびラーは実際に「みえない・みえにくい」状況とはどういうことなのかを考えることから始め、みえる・みえないの垣根を越えてフラットに対話し鑑賞するにはどうすればよいか、議論を重ねていきました。

プログラムの骨格が決まると、当事者(視覚障害者)の方と一緒にトライアルを行い、そこで出た意見も反映しながら、安心・安全かつ、みんなで楽しめるプログラムへとブラッシュアップしていきました。

そして、いよいよ本番当日! 一般応募いただいた「みえない人・みえにくい人」と「みえる人」をお迎えしてプログラムを開催し、たくさんの気づきと発見に満ちあふれた時間となりました。

 

■開催日時: 2023年12月16日(土)

■参加人数: みえない人・みえにくい人(視覚に障害のある方):6名

       介助者:4名   

       みえる人(晴眼者):5名

       とびラー:17名

■会場:上野アーティストプロジェクト2023『いのちをうつすー菌類、植物、動物、人間ー』展、アートスタディルーム

■プログラム概要:「みえない人・みえにくい人(+介助者)」と「みえる人」、とびラーによる4〜6名のグループに分かれ、アイスブレイクを経て『いのちをうつすー菌類、植物、動物、人間ー』展の3作品をそれぞれ鑑賞。その後、一緒に鑑賞したことでの発見や気づきをシェアする。

 

 

<開催に至るまでのプロセス>

「みえない」「みえにくい」って、実際はどういうことなのでしょう?鑑賞会を企画するにあたり、まずは「みえない」「みえにくい」方がどのように作品を楽しんでいるのか、また、みえる人とどのように共有できるのかを考えました。そこでの気づきから「めざすゴール」や「実現のためのアイデア」を検討していきました。そこで「一緒に作品を味わい、お互いの違いを意識することなくフラットに対話することで、みえない人もみえる人も楽しめる場をつくる」ことを目指そうと決めました。

そうして作ったプログラムを、実際に視覚障害者の方を招いた2度のトライアルを行い、実践するうえでの意見や、アドバイスをもとにブラッシュアップしていきました。

本番の1か月前に展覧会が開幕してからは、実際に展示フロアでの作品鑑賞や移動の動線を何度もシミュレーションし、メンバー全員が各々の役割と持ち場で準備を進めていきました。

開催直前には、目指している対話の場づくりをもう一度思い起こして、「安心・安全な場」そして「楽しむこと」を大切にしようと確認し、開催当日を迎えました。

 

<開催当日の様子>

 

1.開会~アイスブレイク

 

冒頭でとびらプロジェクトとプログラムの概要を説明し、「言葉が大切なコミュニケーション手段なので、今日は感じたこと気づいたことをたくさんお話してください」と大切な思いをお伝えして、プログラムがスタートしました。

先ずはお互いのことを知り、発言しやすい場をつくるために自己紹介。話す人と聞く人を明確にして、触覚という共通の体験を入れて話すとよいのでは、というアイデアから、今回の展覧会のモチーフにもなっている鳥のぬいぐるみを持って話すようにしました。自然と和やかな雰囲気になり、鑑賞への期待感も高まりました。さあ、展示室へGO!

 

2.作品鑑賞

 

展覧会場は2つのフロアに分かれ、ゴリラ、鳥、牛、馬、キノコ、草花といった様々な動植物をモチーフにした絵画、彫刻、写真などの作品が展示されていて、各グループ毎に3つの作品を順番に鑑賞していきます。作品と作品の間の移動時間には、展示室全体の空間について、言葉で説明しながら、楽しくおしゃべりします。鑑賞作品が会場全体の中でどのように展示されているのかを伝えることで、みえない人の理解につながっていきました。

 

また、みえない方それぞれのみえ方に応じて、鑑賞時の立ち位置なども工夫するように配慮しました。参加者の状況を見ながら、適宜休憩も入れて鑑賞していきました。

ご主人や娘さんと一緒に参加された80代のみえない女性。介助者のご主人はアイスブレイクではおとなしい感じでしたが、アホウドリをみて「抱きしめたい」と思いがけない胸キュンの一言!グループ全体が打ち解けて、一気に対話が弾んでいきました。

また、あるグループのみえにくい人は、何とか作品をみてみよう、感じてみようと、作品に近づけるギリギリまで近づいて食い入るように鑑賞されていました。そのあまりの熱心さに、みえる方も感動されて、言葉でその場を補うように発話が増えていき、徐々に対話の場ができていきました。

 

最初は緊張していた参加者も、作品鑑賞が進むにつれて、みえる人がどのように伝えればみえない人にわかりやすいかを考えて一つ一つ丁寧に話しかけたり、みえない人も説明や問いかけに対して積極的に気づきや質問をするようになっていきました。2作品目、3作品目と鑑賞を重ねていく中で自然に発言が出るようになり鑑賞が深まっていく様子がはっきりとわかりました。そのような姿を見ると、「フラットに対話をし、みんなでみる」という鑑賞は実現できたと思われます。

それは何度も現場で確認した事前の準備と、みえる・みえないに関わらず相手に寄り添う気持ちを持って接したことにより達成できたのだと思います。

 

1時間の鑑賞タイムを終えて、参加者の皆さんも充実した笑顔でアートスタディルームに戻ります!

 

3.シェアリング~閉会

 

アイスブレイクと同じテーブルでのシェアタイムでは、参加者の皆さんの表情もイキイキとしていて、感想話に花が咲きました。例えば、ゴリラの作品では、「一つ一つの表情に喜怒哀楽があるように繊細で豊かに感じられるようになった」というグループもあれば、「みえにくい人にはゴリラの顔は黒い毛玉にしかみえなかった」という感想が出たグループもありました。

みえない人・みえにくい人がどのように対象を見ているのか、対話により得られる共通の体験を分かち合う喜びと難しさなど、他のグループの話を聞くことで、さらなる発見や気づきにもつながり、ふだんみえているようでみえていなかったものに気づいたり、みえていないものをありありと感じられた時間になったようです。

 

 

<参加者の感想>

 

終了後に記入いただいた参加者のアンケートから一部をご紹介します!

 

・「みんなの見る目が人によってちがう。自分1人だと絵を見ることが難しいけど、みんなと一緒なら見ることができる」(みえない人)

 

・「見える人から説明してもらうことで鑑賞のきっかけをもらえる。見える人→見えない人への一方向ではなく、会話の中から作品鑑賞が生まれてくる感じがした」(みえない人)

 

・「アートはみえる、みえないということは関係なく、一緒に鑑賞することで自分自身で発見があった。今までなかなかいけなかった美術館に行こうと思うきっかけになった」(みえにくい人)

 

・「見えていると思っていたら、実は大して見ていなかったことに気づいて驚きました」(みえる人)

 

・「見えない人に対して絵を伝えるために、分かりやすい言葉を選ばなければならないことに気づくことができた。見える・見えないの0か100ではなく、見えないのはグラデーションだと気づいた」(みえる人)

 

・「自分の見方の高さを少し変えるだけで、ものの見方、伝え方はこんなにも深くなるのだと実感しました。ちょっとした変化でコミュニケーションはもっと深まるのですね」(介助者(みえる人))

 

・「みなさんの感想をお聞きしていると、作家さんの「ここを見てほしい」という意向がちゃんと伝わっているんだと思いました。それをみなさんがきちんと受けとめていることに感動します。生命は美しいとあらためて感じます」(介助者(みえる人))

 

また、ファシリテーターを務めたとびラーからはこんな声がありました。

 


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「最初は見える人が見えない人に説明をしていましたが、鑑賞が進むにつれ、見えない人の質問によって鑑賞がさらに深まっていくことに皆が気づいて、見える人も見えない人もお互いの立場を平等に感じているように思いました」

 

「見える人の素直な感想が、見えない人の質問を生み出しだんだんと垣根のない空間なっていきました。和やかで温かい時間を一緒に過ごすことができました」

 

「描かれているゴリラのイメージについて話した時に「会社のボス的な存在なのでは?」となりました。

Aさん:「俺についてこい」 みたいな感じかな。

Bさん:う~ん…きっと部下には何も言わないと思う。

Cさん:背中で語るタイプですね。

皆さんの想像していたのは昭和タイプのボスだったのかもしれません」

 

「馬の作品の印象をみんなで話す中で、みえない人の「何となく不穏な感じを受ける」というひと言から競走馬の悲しいエピソードが引き出され、より鑑賞が深まる体験ができました」

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たくさんの感想をいただき、もう少しシェアタイムの時間があればとの声も多くいただきました。「みえる人」の中には、今回の体験をきっかけにアート・コミュニケータに関心を持っていただいたり、「みえない人」で、美術館でまた鑑賞してみたい、新しいことにチャレンジしてみたい、と前向きな発言をされている方がいたのが印象的でした。参加者それぞれが何かを感じて、新しい視点が生まれていたようです。

 

みんなでみて フラットに対話をして 鑑賞を楽しむ。

みえない人とみえる人の対話を通じて、お互いの視点によってよりよく作品を味わうことを目指した「みんなでみる美術館」。

みえる・みえないをハードルと考えるのではなく、その人の特性の一つとしてとらえ、お互いの違いを楽しむ、そんな場になる一歩を踏み出すことができました。

今回の実践を次のインクルーシブな場へとつなげていき、またみんなで一緒に分かち合えますように。

 

東京都美術館では、たくさんの参加体験型のプログラムや、障害のある方のための特別鑑賞会なども開催されています。また皆さんとご一緒できることを楽しみにしています!



10期とびラー 安東豊

アートを介して対話することで、人と人との多様な価値観や想いがつながり、新しい世界がみえてくる。そんな出会いや化学反応の場に立ち会い、寄り添える喜びを感じています。

 

 

 

10期とびラー 飯田倫子

「遠くに行くならみんなで行け」そんな言葉の意味を強く感じたラボでした。みんなで取り組んだからこそ、「みんなでみる」ことが実現できたと思っています。

【開催報告】エスプラナードで会いましょう

2023.12.16

 

東京都美術館には「エスプラナード」と呼ばれる空間があります。上野公園から正門を通ってすぐ、レンガ色の建物に囲まれた広くて開放的なスペースのことです。館内の建物に入るまでの散歩道となっているその空間は、この美術館の建築的な特徴にもなっています。

とびラーにとっては、来るたびに通るなじみ深いエスプラナード で、来館者に楽しんでもらえるような何かをしたい!と思い立ってとびラボを始めたのが8月のことでした。

具体的に何をするかやその目的については、とびラボに集まったとびラーみんなで考えることにしました。

 

 

まずはエスプラナードについて各々が思うことや期待することを話し合ってみました。「せっかくの素敵な空間なのに来館者にあまり意識されずに素通りされているのでは?」「野外彫刻がたくさん展示してあるのにあまり見てもらえていない」「美術館に来た人に展示を観るだけでなくプラスアルファの楽しみをここで提供したい」などの意見が出ました。

 

そして今度はエスプラナードでやってみたいことのアイデアを自由に出し合いました。

「パラソルや椅子を置いてのんびり過ごしてもらいたい」「レッドカーペットを引いてゴージャスな気分で歩いてもらう」「広い空間を生かしてファッションショーをおこなう」「建物の壁でナイトシアターをやる」「コーヒーを無料でふるまう」などたくさんの案が出てきました。エスプラナードという空間を舞台に、みんなで妄想を広げる時間がとても楽しくどんどんアイデアが広がりました。

 

 

次のミーティングでは、たくさんの案の中から本当に自分たちがやりたいこと、ここでやるべきことはなんだろう、と考えてみました。

そこでみんなの意見が一致したことは「エスプラナードを通るどなたでも気軽に参加できる」、そして「アートや美術館をより親しみやすく感じて欲しい」というものでした。

エスプラナードはこの美術館の入り口だからこそ、すべての市民にとってアートへの入り口になるような体験を提供したいと考えました。

 

 

その目的をはたすためにできることはなんだろう?と、今度はみんなで実際にエスプラナードに出て来館者の様子を観察することにしました。

 

美術館に来る多くの人は自分が観たい展示や用事を済ませるために、建物の中にまっすぐ入っていきます。帰りもあまり寄り道をせずに上野公園へと出かけていき、エスプラナードはその通り道となっています。

 

けれど時折、美術館の正門の前で記念写真を撮る人や、エスプラナードで一番目立つ大きな球形の彫刻《my sky hole 85-2 光と影》に興味を示して鏡のような表面に映り込む自分の姿を覗き込む人たちがいました。

 

その様子を見てみんなで考えたことは、わたしたちとびラーが来館者に声がけして少しの間立ち止まって話をしたり、エスプラナードを一緒に散歩してみてはどうか?ということでした。

 

会話を生むきっかけとして、記念写真を撮ってあげたり道に迷っている方の案内をしてみる。そこからコミュニケーションをとれたら、来館者に楽しい思い出を提供できて、美術館に親しみをもってくれるかもしれない。それいいね!とエスプラナードで自分たちがおこなうことを現場で決めました。

 

 

また、来館者に声をかける際に、他の来館者とは違うここで何かをする人だと分かる格好をした方が声をかけやすいのでは?と考えました。広いエスプラナードで少し目立つように背の高い帽子をかぶるのと、写真を撮る役割を示すカメラのマークを入れた腕章をつけてはどうか。

 

するとその場で持っていた紙を折って小さな帽子を作ったとびラーがいました。それをみんなでかぶってみることで、エスプラナードで自分たちがやりたいことのイメージが一気に固まりました。

 

そうと決まったら手先が器用なとびラーたちがあっという間に帽子や腕章を手作り。自分たちが衣装をまとうことで気分も大きく盛り上がり、これで来館者に喜んでもらいたい!と意欲満々で実施の日を迎えました。

 

 

その日は12月とは思えないぐらいの暖かい晴天で朝から美術館に来る人もちらほら。午前10時から声がけを始めました。

 

しかし最初は緊張し、まっすぐ建物に向かう人に足を止めてもらうことへ少し躊躇しました。けれどこれまでみんなで話し合ってきたことを実践する大きなチャンス、と勇気を振り絞ってエスプラナードを通る人にどんどん声かけをしていきました。そうすると意外と足を止めて話を聞いてくれる人がいました。

 

 

この日は特別展が開催されていない時期でしたが、市民が応募して作品を出品する公募展を観に来た家族連れや友人グループが多くいました。「記念に写真を撮りましょうか?」と彫刻や門の前で話しかけると「じゃあせっかくだから」とスマホやカメラを手渡してくれました。中には手作りの衣装をまとったとびラーと一緒に撮りたいと言ってくれるグループもいてうれしくなりました。

 

「はい、チーズ!」と撮影した後、「今日はなにを観に来られたんですか?」とうかがうと「孫の書作品が入選したので家族で観に来たの」「友達が撮った写真作品が飾られてる」などと話す方が多く、「入選おめでとうございます!」と伝えると照れくさそうにしつつ「ありがとう!」と喜ばれました。そこからアートにまつわる家族の素敵な話や作品への熱い思いを聞いたりして来館者と一緒に会話を楽しみました。

 

 

また、置いてある野外彫刻の説明をすると他の作品も観たいと言ってくださる方もいて、ぐるりとエスプラナードを案内しました。

 

声がけや会話の内容もとびラーそれぞれ得意な話し方があり、エスプラナードのあちこちで笑顔の輪が同時にいくつも出来ていました。中には一人の方とじっくり話し込むとびラーもいて、美術館に来たそれぞれの人のストーリーを聞けるとても良い機会になりました。

 

行きがけにお話しして展示を観た帰りにまた寄って話かけてくれる方や、「今日ここに来て良かった」と言ってくださる家族もいました。

 

 

二時間半の間に合計110組以上のグループとお話ししました。時間が来ても止めるのが惜しい気持ちになりましたがこの日は一旦終了。またやりたいね、とみんなで話しながらエスプラナードを後にしました。

 

 

 

 

今回の活動を通して、ミュージアムにある「場」から発想して、場と人、人と人を結ぶアートコミュニケーションについてとびラー同士で考えることができました。

 

また、実際に来館者に声がけして会話をすることで、いろんな方がアートや美術館を身近に楽しまれている様子を知ることができました。

 

美術館に来る方に楽しんでほしいと始めたことですが、私たちが来館者から美術館の魅力を教えてもらうという、とても良い経験になりました。

 

今回のとびラボでは最初に目的ややることを決めずにスタートしましたが、いろんなとびラーが自分で企画を提案したり衣装を持ち込んだりみんなで自主的に動いて一つのプログラムを形作ることができました。

 

例え少しのスペースでもアイデアしだいでコミュニケーションの「場」をつくる活動は、他の美術館や文化施設でもできるかもしれません。またどこかでいろんな人との出会いを楽しみたい、そう思えるとびラボでした。

 

 


 

10期とびラー 池田智雄

美術館・博物館・郷土資料館や音楽ホールなど、人が文化の楽しさを求めて集まる場所が好き。そこがもっと楽しくて親しみやすい場所になるようなことを自分たちでできたらうれしいです。

2023鑑賞実践講座⑦|「ファシリテーション研究」

2023.12.11

 

 


 

第7回鑑賞実践講座|「ファシリテーション研究」

日時|2023年12月11日(月)10:00〜15:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)
内容|テーマ:鑑賞が深まるとは。対話の構造を理解する
・共同的でクリティカルに思考する場のデザイン/構造
・作品研究を対話に活かす方法

 


第7回の講座では、Visual Thinking Strategies(VTS)による鑑賞のファシリテーションを分析することで、鑑賞が深まる対話の構造を理解することを目標に講座を行いました。

 

まずはじめに、VTSの基本的なテクニックを用いた鑑賞の資料映像を見ながら、VTSファシリテータのはたらきかけが、どのように鑑賞者に作用しているのか、対話の流れにそって書き出します。書き出すことで、対話がどう深まっていったのか、そのきっかけとなるファシリテーションの作用に気がつくことができます。

 

 

 

 

 

そのあとは、書き出した対話の流れとファシリテータのはたらきかけの言葉を元に、第5回の講座で行った、ファシリテーションの事前準備である「作品研究シート」を作っていきました。そうする事で、事前の準備をどのように実際のファシリテーションに生かしていくことができるのか、その構造を理解していきました。

 

最後は、全員がファシリテーションを実践し、VTSファシリテーションの基本的な要素を用いることで複数人での作品鑑賞が深まることを体験しました。

 

 


 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

【とびラボ活動報告】マイスカイホールLOVEのらぼ

2023.12.10

東京都美術館の正門を入ると一際目を引く大きな銀色の球体。
これは東京都美術館の収蔵品の一つ《my sky hole 85-2 光と影》。彫刻家・井上武吉の作品です。この大きな球体に映り込む風景や自身の姿を楽しんだり、大きく開いた穴から差し込む光に魅了される多くの来館者にいつも囲まれています。


東京都美術館で活動するとびラー(アート・コミュニケータ)も例外ではなく、これまでもこの彫刻を題材としたとびラボ活動が多く企画されました。とびラーは愛を込めて、「マイスカイホール」略して「マイスカ」と呼んでいます。マイスカ愛溢れるとびラーが集まったこの活動は、マイスカを通して野外彫刻作品の新たな鑑賞方法や魅力を発見するとともにとびラーどうしの親睦を深めるため、井上武吉の誕生日(12月8日)を祝う意味もこめて以下のような内容で実施しました。

・とびラーどうしの親睦を図る場づくりをみんなで考えて楽しむ。
・マイスカの魅力を語り合う。
・美術館の楽しみ方を考え体感する。

では、早速どんな活動だったのか、見てみましょう。

 


実施日 2023年12月10日(日)11:30~14:00


🔶流れの確認

マイスカには自然環境に影響される興味深い仕掛けがあります。その一つがマイスカに貫かれた穴から溢れる太陽の光が作る像(日射像)。作者の井上武吉さんの誕生日に太陽光がマイスカの穴を貫くように設計されています。

太陽の動きにつれて差し込んだ光が作る像はどんどん変化していきます。活動の最初はこの太陽光の観測、光の像の観測です。観測に先立って注目ポイントや観測の流れなどを全員で確認しました。


日射像

🔶観測

いよいよ実際にマイスカへ移動して観測です。少しずつ日射像が現れ、半月の状態に。刻々と変わる像に目が離せません。

1分ずつ写真を撮って光の円の「成長」を確認。半月から満月状態に、そしてまた形が変わっていく・・やっぱり地球は動いている。観測しつつマイスカトリビアを披露したり、マイスカから感じたことをおしゃべりしたり。

 

🔶誕生日会〜球体の食べ物を持って集まろう

 

観測の後はみんなでランチタイム。井上武吉さんの誕生日を祝う意味でマイスカのような球体の食べ物を持って集まりました。銀紙で包んだまんまるのおむすび、プチトマト、チョコレートや飴玉など思い思いの球体の食べ物が集まりました! マイスカを模して台座まで再現したチョコやマイスカの穴の部分を具で表現したおむすびなど楽しい工夫がいっぱいのまるい食べ物の数々についつい撮影会に。

 

🔶観測日記


ランチをしながらちょっと真面目に、マイスカを観測・鑑賞しての気づきをシェアしました。

・刻々と変わっていく日射像。穴を通ってくる光がとても明るくなる瞬間があった。

・日射像の周辺の渦が美しかった。

・マイスカの上に輝く太陽がちょうどマイスカに掛かって、ダイヤモンドリングのようだった。

・マイスカはその球体の上に周囲の風景や空が映り込む。そこまで含めての作品であり、時間や季節、見る角度によって常に新しい作品となっている。

・逆光になるマイスカはどこかから飛来している感じ!

・美術館に来た多くの人がマイスカで一旦立ち止まり写真を撮ったり写り込みを楽しんだりしている。こんなに愛される作品はないかも。

🔶もう一つの仕掛けのこと

マイスカには台座があります。ですが台座が作品の一部だと気づいている人は案外少なそう。
1年に2度、この台座とマイスカの影とが一致する現象を見ることができます。地球の自転と公転の関係で重なる日は毎年変わるようです。そして今回の活動でも体感したように刻々と変わる太陽の位置から、影と台座がピッタリと重なるのは一瞬。天候にも左右されるので、見られたらとても幸運です!

展示を見る他にも、東京都美術館でこんな楽しみ方もしてみてはいかがでしょうか。

 


🔶マイスカのミュージアムもあります


マイスカをモチーフに作品を創ることもあります。そんな作品を所蔵するため、「マイスカイホール・バーチャル・ミュージアム」をとびらプロジェクトの共有ドライブ内に設けて、随時とびラーが作品を収納しています。2022年2月22日22時22分に創設しました。下の画像のような作品が展示されています。

 


 

 

🔶マイスカからの贈り物


この活動を通じて、わかったことは、みんながマイスカのことが大好きで、そしてマイスカからさまざまなインスピレーションを得ていることです。
この作品の製作の歴史・作者についてなどの作品研究をしてみて、井上武吉さんによるマイスカ彫刻が全国のあちらこちらにあること、そして太陽の動きを計算に入れて立地していることなどもわかりました。仲間のことを思いながらマイスカから連想される球体の食べ物を考えたり、作品から受けたインスピレーションをもとに新たな作品を作ってみたりもしました。
たった一つの野外彫刻作品を観察する、鑑賞する、それだけのことからこんなにも豊かな広がりがあります。


野外彫刻作品の特徴でもある時間や空間の移り変わりで刻々と変化する美しさをじっくりと時間を追って見つめることで、その作品の奥にある独特の味わいにも気づくことができました。
一つの作品を囲んで、様々な角度から作品にアプローチすることで作品についてより深く知り、親しくなることができます。みんなで作品を見ることの楽しさも感じることができます。
他者の発見を知ることで、新たな視点が自身の中に生まれ、そこでの共感は人と人との繋がりも深くし、鑑賞の幅が広がります。これらはマイスカからの贈り物です。私たちのマイスカさん!ありがとう!


執筆:

矢野聡子(とびラー10期)

以前は美術館は1人で行って、誰にも邪魔されないことが好きでした。とびらプロジェクトに参加して「みんなで見る」ことの喜びを知りました。「みんなで見る楽しさ」や「アートに触れることは特別なことではない」ことを多くの人に知ってほしいです。

 

 

藤牧功太郎(とびラー10期)

とびラーになって作品の見方は多様であること、そしていろいろな楽しみ方があることを知りました。マイスカイホールなど屋外の彫刻作品が面白く、街中でも見かけたらついその周りのあちこちから眺めたり、いっしょに楽しむアイデアを思い浮かべるようになりました。

【開催報告】トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー2023

2023.12.08

◆はじめに

夜間開館日にライトアップされた東京都美術館の美しさ・建築の魅力をともに味わいたい、そんな思いでツアーを開催してきました。12年目を迎えるこのラボ、今までの良さを受け継ぎつつも、刷新してきたこの1年の様子をお届けします。

夜の公募棟。ヤカンツアー参加者だけが入ることができる。

 

◆実施概要

・開催年月:2023年6月・9月・12月(計7回)

・参加人数(延べ人数):参加者124名 とびラー59名

・開催時間:19:15-19:45(6月)19:05-19:45(9月~)

・テーマ及びコース:ガイドを担当するとびラーがおススメをご案内

 

◆ツアーの様子  

ツアーでは、夜ならではの建築や空間の見どころを30~40分で紹介しました。ここでは、2023年12月に2回開催した「トビカン・ヤカン・カイカン・ツアー@ローマ展」の様子をお届けします。

 

夜の空気感や光はもちろん、発見やまなざしをともにしているシーンなど、参加者の皆さんととびラー20名の一期一会のステキなひとときをご覧ください。

 

<開始前>

本番前の事前準備風景。コースの共有やチームごとの最終打合せも入念に

準備を整え、さあお迎え!

ぞくぞくとお客様がいらっしゃる。受付後に、各チームへご案内

 

<ツアー>

ツアーのテーマ・コースはガイドによってまちまち。ちなみに、ローマ展2回目で各ガイドが用意したテーマは
「夜のおしゃべり都美散歩/光に照らし出された都美空間を楽しむ/夜ならではのトビカンの陰影を楽しむ/100年保つ建物とその夜景/夜の都美をみんなでみてみよう!/色と光の調和」と多彩です。

ツアーテーマを伝えてスタート

反射する光を堪能

エスプラナードを散策

天井やライトを愛でる

椅子も愛でる

素材をジェスチャーで説明

通称おむすび階段にて何やら楽しそうな様子

公募棟より何やら発見

お話もはずむ!

素敵なツアーを終えて控室へ

撮影班もお疲れさま!

 

◆過去から受け継いできたこと

11年続いているラボの良さを継承する、特に①シンプルな運営②ツアーの知見を貯めていくことを改めて大事にしようと話し合い、スタートしました。

 

①シンプルな運営

とびラーも家庭に仕事に忙しい人が多いので「金曜夜に2時間だけぱっと集まって集中して準備→ツアー→振り返り→解散」という流れができていました。この流れをよりブラッシュUPして、短い時間で楽しめるようにしました。

 

②ツアーの知見を貯めていく

ツアー実施には、ガイドやサポートはもちろん、受付や撮影など各役割の連携が欠かせません。過去の実施例を集めて知見集をつくりました。自分たちの知見も加えつつ、秘伝のタレ化を目指して更新中です。

 

◆今年のメンバーで変えてみたこと

よりツアーを手軽に楽しんでいただくために、①アンケート廃止②ツアー時間延長③当日呼び込み、この3点を刷新。アフターコロナも追い風になりました。

 

①アンケート廃止+②ツアー時間延長

ツアー時間を10分延長。参加者から「もう少し長いと嬉しい」とお声をいただくことが多く、我々ももう少しご案内したいという想いがありました。そこで、準備時間を短縮し、アンケートもツアー後に感想をいただくことで代用。ゆったりと夜の散策を楽しむことに繋がりました。

 

③当日呼び込み

アフターコロナでツアー人数などの安全対策が緩和され、キャンセルされた枠を当日呼び込むことにしました。たまたま通りかかって、たまたま一緒になった人と楽しむ、そんな偶然のめぐり合いもデザインできました。

 

◆予行演習

今年は新たに8人のガイドがデビュー。本番により良い状態でお客様を迎えられるように、とびラーが参加者役となり模擬ツアーを実施しました。

6月の大雨の中、練習会に集まったメンバー

雨の夜も、地面に光が反射してとてもキレイ

模擬ツアー終了後に、本番に向け温かく愛あるフィードバック

 

◆終わりに

毎回終了後に、良い点・改善点を皆で共有し、次にきちんと活かす。よりよいチーム・ツアーにするために、密度濃い振り返りを繰り返しました。その積み重ね、のべ59名のとびラーで作ってきた2023年のヤカンツアーでした。

 

次年度以降も、メンバーや環境の変化に合わせて進化し続けるラボになりそうです。今後もこのヤカンツアーは続いていくことと思います。ぜひ、ご参加をお待ちしています。

ランチMTGで振り返り。ヤカンツアー@マティス展の解散回

新しいメンバーも増えました。ヤカンツアー@荒木珠奈展の解散回

毎年恒例のクリスマスコスチューム。ヤカンツアー@ローマ展2回目終了後

 

◆おまけ

一緒に建築を見ることが楽しすぎて、今年からラボメンバー限定「オマケツアー」を打ち上げとセットで開催。マティス展では神田駅~東京駅、荒木展では東京駅~有楽町駅の近代建築を巡りました。発見して、伝え合って。建築って楽しい。

オマケツアーの様子

 


10期とびラー 橋本啓子

古代~現代まで脈々とつくられてきたアート(絵画・建築等)との出会いをつくり、他者と一緒に味わうことが元気の源。次は、本業の人材開発とアートの掛け合わせで世の中を元気にしたいです

〈申込終了〉【参加者募集!】五感で楽しむ 朝の都美さんぽ
12/17(日)、12/19(火)

2023.12.08

朝ならではのゆったりとした光・時間・空間の中で、美術館そのものを楽しむ60分。
視覚、聴覚、嗅覚なども使いながら、参加者とアート・コミュニケータ(とびラー)で様々な発見をします。作品鑑賞だけでは気づけない都美の魅力を、五感と対話で見つける、いつもと違う朝を都美でスタートさせませんか?どなたでもご参加いただけます。

最後の感想共有の時間は飲み物を頂きながらふりかえります。ご自身で飲み物を持参頂くか、館内のカフェにて飲み物を購入することが出来ます。

【開催概要】

日時

・第1回 2023年12月17日(日)9時45分~10時45分(9:30から受付開始)

・第2回 2023年12月19日(火)9時45分~10時45分(9:30から受付開始)

会場東京都美術館

対象|東京都美術館に興味のある方

定員|各回12名 ※先着順。員に達し次第、申込み受付を終了します。

参加費|無料(感想共有タイムにお飲み物を購入される方は実費をご用意ください)

参加方法|事前申込制。下記、申し込みフォームにてお申し込みください。

12月17日(日)9時45分~10時45分の回


② 12月19日(火)9時45分~10時45分の回


【申込の際にお願い】

※複数名での参加を希望の場合、参加希望のそれぞれ1人ずつの申込が必要です。

※特別に配慮が必要な方はお知らせください。

※定員に達し次第、申込み受付を終了いたします。

※本フォームでのお申し込みが完了すると、「返信先Eメールアドレス」宛にメールが届きます。必ずご確認ください。

※お申し込み前に「迷惑メール」などの設定を確認し、「@tobikan.jp」からのメールを受信できるようにしてください。申込受付完了の自動返信メールが届かない場合は、お申込みされたお名前と電話番号を明記のうえ、p-tobira@tobira-project.info(とびらプロジェクト)宛にメールをお送りください。

※広報や記録用に撮影を行います。ご了承ください。

お問い合わせ|

● メール:p-tobira@tobira-project.info(とびらプロジェクト)
● 電話:03-3823-6921(東京都美術館代表電話にて「とびらプロジェクト」の担当者をお呼び出しください)

【開催報告】大人のOFF~アート・建築を介して、いつもと違う体験や交流を~

2023.12.03

◆はじめに

家庭や職場で忙しい大人を対象に、日常から少し離れ、美術館で心が豊かになる時間「大人のOFF」を一緒に楽しんでほしい。1回限りではなく2回会うことで、より繋がりを深めてほしい。この企画は、そんな願いを込めてスタートしました。

 

同じく家庭や職場で忙しいとびラーも、緩急つけて楽しみながら準備を進め、開催当日は参加者の皆さんと一緒に、美術館での「大人のOFF」を存分に味わい、繋がりを深めることもできました。準備~本番までの3か月の道のりをお届けします。

 

◆開催概要

◎日程・内容

STEP1:2023年11月26日(日)「とびラーお薦めのアート鑑賞

STEP2:2023年12月3日(日)「前川國男設計のモダニズム建築ツアー

◎参加人数

STEP1:参加者13人 とびラー19人

STEP2:参加者14人 とびラー17人

 

◆準備~本番までの3か月

1.どんな人に、どんなふうになって欲しいのか?

9月中旬、22名のとびラーが集い、方向性をすり合わせることからスタート。密度濃い話し合いを経て、目指すゴールは「忙しい大人に、美術館での楽しみ方を広げ心地よさや解放感を味わい、新しい発見や出会いを持ち帰ってほしい。そうすることで元気になって、また東京都美術館に来たいと思ってほしい。」となりました。

 

2.どんな内容にするか?

「忙しい大人」が参加したくなる内容とは?目指すゴールに到達するために、どんな経験をしていただくと良いのか?またもや、考えることが山積み。笑いながら考え、走りながら形を整えていきました。最終的には、「アート・建築を介して、いつもと違う体験や交流を」をテーマに、その機会を2日間で提供することにしました。

 

3.トライアルで内容を最終確認

用意した内容で、本当に参加者に楽しんで頂けるのか、不安と期待を抱えつつ、11月19日(日)にとびラー向けのトライアルを実施。参加者役のとびラーのおかげで、たくさんの改善点が見つかりました。

 

4.そして、本番

<STEP1>

①アイスブレイク(アートカードで関係探しゲーム)

 

オープニングで我々が「大人のOFF」を企画した想いを伝え、いよいよスタート。ゲームが始まるとあちらこちらから笑い声が。あっという間に皆さん打ち解けられ、また、作品をよく観るウォーミングアップにもなりました。

 

②「上野アーティストプロジェクト2023 いのちをうつす ─菌類、植物、動物、人間」展を鑑賞

いよいよ鑑賞へ。まずはグループで鑑賞、その後、個人で鑑賞しました。グループ鑑賞では、作品を介して感じたことや考えたことを伝え合い、作品をより深く味わう様子が見られました。

③感想共有

鑑賞から戻ってきて、心に残った作品の共有をしました。「ひとりで見るより、みんなで見る方が何倍もよく見られた」「とにかく感動!」「細かい描写がすごい」「今年見た展覧会で一番良かった」「もう一度行きたい」など、熱量高く語られていました。

終了後、ご希望の方と一緒にランチをしました。お弁当組5名はアートスタディールームで、レストラン組5名はMUSEへ。とびラーも一緒に、和気あいあいと色々な話に花が咲き、楽しいひとときでした。

 

<STEP2>

紅葉が美しく快晴の翌日曜日。リラックスしながらのお迎え準備。参加者の皆さんも前回と同じグループなので「久しぶり~」「あの後、展覧会行ってきましたよ」など、開始前から盛り上がっていました。そして、全員が揃ったことを拍手で喜びつつスタートしました。

①建築系カードで都美ツアーの準備

「都美カード」(各チームで用意した東京都美術館のイチ押し写真)で気になるカードを1枚選び、その理由を伝えあいました。また、「どこだろうカード」(建築部材等の写真、大吉くじ入り)もくじ引き形式で用意。ツアー前の準備も整いました。

 

②都美ツアー

選んだ「都美カード」と引いた「どこだろうカード」を手に、いざ70分の都美ツアーへ。上野公園にとけこむ前川建築で、まなざしを共有し、発見しあい、大人のOFFを満喫しました。

③感想共有&ティータイム→2日間を振り返る

ティータイムでほっと一息。ツアーの余韻を残しつつ感想を共有。「何度も来ていたが建物の良さを始めて知った」「前川建築の奥深さにハマった」「カードを持って美術館を歩き回り写真を撮るのが楽しかった」など、楽しそうにお話されていました。

 

エンディングは、この2日間の様子をムービーにして全員で鑑賞。皆さんとてもいい表情でご覧になり、誰からともなく大きな拍手で終了しました。終了後もしばらく歓談タイムが続き、集合写真を撮ることになりました。それが、冒頭の1枚です。

 

◆終わりに

参加者の皆さんがとびラーと一緒に良い場を作ってくださり、目指したゴールに到達できたように思います。アンケートも全員から「とても満足」を頂きました。2日間実施したことで、人と人、人と東京都美術館の繋がりがより深くなったとのお声も多く挙がりました。

 

最後に、少しだけ手前味噌ですが、我々22名はみんながフラットに持てる力を発揮するとても良いチームでした。

 

参加者の皆さんもとびラーも、家庭や仕事から少し離れて、東京都美術館で「大人のOFF」を一緒に楽しめたことを感謝いたします。また来てくださいね!


10期とびラー 橋本啓子

古代~現代まで脈々とつくられてきたアート(絵画・建築等)との出会いをつくり、他者と一緒に味わうことが元気の源。次は、本業の人材開発とアートの掛け合わせで世の中を元気にしたいです

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