東京都美術館× 東京藝術大学 「とびらプロジェクト」

活動紹介

2025鑑賞実践講座⑤|ファシリテーション事前準備

2025.10.13

 

 


 

第5回 鑑賞実践講座|ファシリテーション事前準備

日時|10月13日(月・祝)13:00〜17:00
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ
講師|三ツ木紀英(NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA))

 


 


10月13日(月・祝)午後、東京都美術館 アートスタディルームとスタジオを会場に、第5回鑑賞実践講座「ファシリテーション事前準備」を開催しました。講師は三ツ木紀英さん(NPO法人 芸術資源開発機構)です。

 

 

第5回は、第4回で学んだ展示室での場づくりをふまえ、鑑賞の実践に向けて、作品の魅力にどのように近づき、どのような準備を行うのかを学ぶ回として位置づけられています。鑑賞の場は、当日のふるまいだけでなく、ファシリテータが事前にどれだけ作品と向き合っているかによって大きく左右されます。この回では、その「事前準備」に焦点を当てました。

 

講座の前半では、VTSのファシリテーションに向けて行う作品研究の考え方についてレクチャーが行われました。作品研究というと、作者や制作年代などの情報を集めることを想像しがちですが、ここではその前にまず、作品をよく見て、鑑賞者が何を感じ、何を語るのかを想像すること、そしてその発言の裏付けとなる、より客観的な要素を作品の中から丁寧にたどることの大切さが共有されました。

 

また、鑑賞者が作品を見るときにもつさまざまな視点のバリエーションを想定し、視点を整理・分類しておくことで、作品の全体像や魅力をファシリテータ自身がつかんでおくことの重要性も確認されました。

 

 

続いて、グループに分かれて作品研究のワークを行いました。参加者は、作品画像を前にしながら、形や色、構図、モチーフなどに目を向け、気づいたことを言葉にしていきます。個人での観察と、グループでの共有を往復することで、ひとりでは気づかなかった視点や、見方の広がりを体験しました。

 

 

後半では、先ほどのグループワークで行った作品研究を、一人で行いました。とびラーからは、グループワークと違い、自分一人で作品をみる際には、視点の広がりや深さを自分自身で生み出す必要があるため、より難しさを感じたという声が聞かれました。VTSのファシリテーションには、ファシリテータ自身の鑑賞体験の豊かさも重要であることが、実感を伴って共有されました。

 

 

第5回は、ファシリテーションを「その場でうまく進める技術」として捉えるのではなく、事前にどれだけ作品に近づき、準備を重ねているかが鑑賞の質を支えていることを学ぶ回となりました。

次回の第6回では、ファシリテーションのスキルを高めるために不可欠な、実践のふりかえりに取り組んでいきます。

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

【開催報告】9月の「とびラーによる建築ツアー」

2025.10.01

日時  |2025年9月20日(土)
場所  |東京都美術館

参加者(事前申込)30名、とびラー16名

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まだまだ暑い日が続き、涼しくなるのが待ち遠しい9月。
そんな中、2025年度 第3回目の「とびラーによる建築ツアー」が実施されました。

東京都美術館を建築した前川國男や歴史についてお話しした後、東京都美術館の特徴や見どころの紹介をしました。

この建築ツアーは、決まったコースはなく、それぞれのとびラーが考えたオリジナルのツアーです。

 

ガイドごとに、違ったツアーを体験することができます。
東京都美術館の魅力や新たな発見をしていただけたら嬉しいです。
……
次回の開催は11月15日(土)を予定しています。
みなさんのご参加を心より楽しみにしています。
*「とびラーによる建築ツアー」は、原則として、奇数月(5月、7月、9月、11月、1月、3月)の第3土曜日に開催しています。
詳細、お申し込みはこちらから。
(とびらプロジェクトコーディネータ 大東美穂)

2025建築実践講座③|HAGISO 最小文化施設の取り組みについて

2025.09.28


第3回建築実践講座|「HAGISO 最小文化施設の取り組みについて」

日時|2025年9月20日(土) 14:00〜16:00
会場|東京都美術館 講堂
講師|宮崎晃吉(株式会社HAGISO 代表取締役)


谷中銀座商店街から路地を入った静かな場所に位置するHAGISOは、築68年の木造アパートを修繕し2013年3月に「最小文化施設」としてオープンしました。
カフェとギャラリーが併設されており、トークイベント、地域交流の場そして、コンサートを行うなど様々な活動をしています。
その活動と地域との繋がりやそこから生まれるコミュニティーについて、宮崎晃吉さんにお話を伺いました。

 

建築を再生することで、「人が集まり、過ごし、交わっていく場所」としての〈場〉となり、そこには新しいつながりが育まれ、地域にこれまでになかった価値が生まれていきます。
この取り組みは、ただ古い建物を残すのではなく、その土地に眠っていた価値を見つめ直し、人が関わることで未来へつなぐ試みでもあります。
HAGISO は、建物を再生することを通して、「谷中」というまちに新しい息吹と価値を与えてきました。
建築の再生から、人とまち、そしてコミュニティが生まれていく可能性を実感するきっかけとなりました。

 

 

こうした取り組みを聞いて、とびラーとして、また3年の任期満了後に自分の地域での活動につながるきっかけを考える時間になったことと思います。

 

HAGISOのホームページはこちらからご確認いただけます。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 大東美穂)

 

2025アクセス実践講座⑤|発達障害とは

2025.09.15

 


日時|2025年9月14日(日)13:30〜16:30
場所|東京都美術館 講堂
講師|柴田光規(川崎西部地域療育センター センター長)


普段、川崎西部地域療育センターで子どもたちの診療に携わる柴田光規さんにご登壇いただきました。

柴田さんは、元とびラーとしても活動し、任期満了後の現在では、川崎を拠点とするアートコミュニケーション事業「こと!こと?かわさき」のことラーとしても活動されています。

アート・コミュニケータの活動についてもよく知っている柴田さんに、発達に特性をもつ子どもへの支援についてご講演いただきました。

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などを総称する「神経発達症(いわゆる発達障害)」のそれぞれの症状の特性やそのときの子どもの心理的な状態について、専門的な立場からお聞きすることができました。

とびラーが伴走するMuseum Start あいうえのの学校プログラムでも、特別支援級や発達特性のある子どもたちも来館し一緒に作品鑑賞を行います。発達支援の基本的な考え方をお聞きし、迎える側にできることを知る機会をつくろうということで、今年のアクセス実践講座のテーマの一つとしました。

社会の中で子どもの「困った行動」に出会ったときの私たちの視点として、「困った行動」は実は子ども自身が困っている。対処法がわからなくてとった行動であることが多い。というお話があり、特性を理解することで、どのようなことに困っているのか、子どもの困りごとを想定し、情報の伝え方にあらかじめ工夫ができることがあることを療育センターの現場の具体的な対応を例に紹介がありました。

神経発達症の特性を持つ人たちには脳や神経の特性に由来する 独自の文化があると考える「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」についての紹介もありました。

とびラーの振り返りでは

「子どもにとって今どんな状況なのか?という目線で問題行動を見直し、否定しないで肯定的に具体的な指示を出す、視覚情報で再確認できるようにする、というのは、自閉症の子に限らず大切な関わり方だと感じた。」

 

「自閉症の方には、伝えたい情報に集中してもらうために、それ以外の動きを制御して混乱させないよう気をつける、というのは新たな学びだった。」

 

講座の後半では、東京都美術館の社会共生担当の工藤さんも登壇し、東京都美術館へ来館する際の展示室までの道のりを見通しを立ててあらかじめ知ることができる「ソーシャルストーリー」についての紹介がありました。制作の意図と大事にしているポイントを解説しつつ、ご尽力いただいた柴田さんにもコメントをもらいながら、ソーシャルストーリーのポイントと使う方の目線で解説しました。

 

とびラーからは

「自分自身、何の準備もなく初めての場所へ赴く際は、とても緊張しますし、初めての活動では、戸惑っていたことを思い出しました。ソーシャルストーリーをもう一度よく読んで、周りの人たちにも伝えたい」

というコメントがありました。

 

講座を通して、「発達障害」という子どもの状態を知ることができ、捉え方が変わることで、それぞれがこれからの対応にこれまでより少し視野を広く持って迎えることができるようになったのではないでしょうか。

 

柴田さんの講座の中での子どもたちの様子を表現するやさしい語り口からも、アートコミュニケータとして子どもたちを迎える際の視点を学べたような気がします。来館する子どもたちのその時の状況に寄り添って想像していくことが大事だともおもいました。

 

(とびらプロジェクト マネージャー  小牟田 悠介)

2025アクセス実践講座④|超⾼齢社会に対応した地域連携の取組み―台東病院とCreative Ageing ずっとびの事例から

2025.09.15

 


日時|2025年9月14日(日)13:30〜16:30
場所|東京都美術館 講堂
講師|野本潤⽮(台東区立台東病院/老人保健施設千束 作業療法士 )
   藤岡勇⼈(東京都美術館 学芸員)
   ⾦濱陽⼦(東京藝術⼤学 特任助手


2021年から東京都美術館で始まったCreative Ageing ずっとびでは、超高齢社会に入るこれからの日本社会において、高齢者だけでなく、若い世代も一緒に創造的に年を重ねることを考えていくプロジェクトとして始まりました。

Creative Ageing ずっとびでは、認知症が気になる方とその家族に向けた「ずっとび鑑賞会」を開催しています。

今回の講師には、「ずっとび鑑賞会」でも、ご協力いただいている台東区にある台東病院の作業療法士の野本潤⽮さんにお越しいただき、認知症の理解につながる基本的な知識と、台東病院と併設する老人施設千束について伺いました。

 

野本さんにはこれまでにもずっとび鑑賞会の開催に向けて院内での参加者のお声がけや当日の展示会場が安全で鑑賞しやすい場づくりとなるようアドバイスをいただいています。当日までにこうした準備を重ねて認知症の方も安心して来館出来る体制をつくることができています。

 

今年度は、10月に2回の「ずっとび鑑賞会」を開催します。そのうちの1回は野本さんの担当する老人保健施設千束から来てもらうことになっています。今回の講座を受けて、当日のプログラムに向けてスタッフととびラー、それぞれ認知症についてと来館する老人

保健施設の様子を学びます。

 

認知症とは、「さまざまな病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障をきたした状態」

ということで、認知症と軽度認知障害(MCI)を合わせると65歳の3人に1人がいずれかの認知障害があるというデータがあります。

認知症の中のアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症といったそれぞれの症状の紹介があり、記憶障害などの症状に伴って現れる、抑うつ・不安・幻覚・妄想・徘徊・攻撃性などの様々な精神症状や行動障害=行動・心理症状 (BPSD)について詳しく伺いしました。

 

そうした認知症の方と接する上での心構えについて丁寧なご説明があり、接する上で前提となるパーソン・センタード・ケアという考え方の紹介がありました。認知症の人を一人の人間として尊重し、その人の人生、性格、価値観、生活歴などを踏まえて「その人らしさ」を大切

にするケアの考え方です。

その人のすべての行動には意味があると考え、「問題だとされている行動」は、身体的不快感や感情的な苦痛の表現ではないだろうかと考えることで、その人のいまの状態をよく見ることにつながります。

鑑賞会の参加者と接する上で覚えておきたい考え方です。

とびラーの振り返りでは

「野本さんがおっしゃっていた「記憶に残らないけれど楽しかったとか嬉しかった感情は残る」という言葉や鑑賞会をきっかけに家族と医療者との関係性が良くなったというお話が印象的でした。」

 

「とびラーとして認知症の方と関わる上で1番大切なことはその方に関心を寄せることであり、本人の思いを聴き、掘り下げていくことだと思いました。」

 

「先入観を持たずにフラットな視線を持ち続ける冷静さも大切だと考えました。それが余白を持つということかなと思いました。また人生の大先輩として敬意を持って対応したいと思いました。」

というコメントがありました。

後半には、Creative Ageing ずっとびを担当している藤岡さんと金濱さんからプロジェクトについて、取り組みの最新情報についてとびラーに紹介がありました。藝大美術館での認知症の方に向けた鑑賞会だけでなく、来館しにくい高齢者もオンラインで東京都美術館で開催される展覧会をとびラーと鑑賞できる「おうちで鑑賞会」や、アーティストとも協働したアクティブシニアに向けたプログラムの紹介もありました。

Creative Ageing ずっとびでは秋の鑑賞会に向けて、地域の医療者、社会福祉協議会、包括支援センターとも協働して準備を進めていきます。

 

(とびらプロジェクト マネージャー  小牟田 悠介)

2025アクセス実践講座③|みえない・みえにくい⼈との美術館の楽しみ方

2025.09.08

 


日時|2025年9月7日(日)13:30〜16:30
場所|東京都美術館 講堂
講師|冨樫正義(公益財団法人日本ケアフィット共育機構)
   小川真美子(点字・触図工房BJ)
   峰岸優香(東京都美術館 学芸員)
   工藤阿貴(東京都美術館 社会共生担当)


講座の前半では公益財団法人日本ケアフィット共育機構の冨樫正義さんから、視覚障害のある方への理解と接し方の基本を学びました。

視覚障害といっても、全く見えない方だけではありません。
弱視の方、視野が狭い方、色の見え方に特性がある方など、状態はさまざまです。
だからこそ、その人に合わせた声掛けやサポートが必要になります。

講座では、視覚障害のある方への、声掛けの際のポイントを学びました。
声をかけるときは前から名乗ること、触れる前に必ず確認すること、
「こちらです」などのあいまいな表現ではなく、距離や方向を具体的に伝えることなど、具体的なポイントを整理して教えていただきました。

 

 

 

とびラーのふりかえりには、こんなコメントが寄せられました。

「見えない・見えにくいという視覚的な違いには様々な背景があり、当然ながら個人によって感じ方や考え方も異なる。そのため、対応するときには先入観を持たず、丁寧に向き合うことが大切だと改めて感じました。」

 

「社会は多数派に合わせて形成されているということで、少数派や障がいのある方の困りごとの多くは社会的障壁によるものであることをわかりやすく示してくださいました。タッチパネルが視覚障がいのある方にとっては不便であることに気付かされました。」

 

 

「実際の場面を想定してみると、相手の立場に立って理解することの難しさを痛感し、自分が本当に理解できていたのか疑問に思うところばかりでした。だからこそ、手助けとなる行動を躊躇せずに踏み出せるよう、まず「知ること」から始めたいと思います。」

 

 

次に、みえない・みえにくい方への情報サポートツールを制作している小川真美子さんにお話しを伺いました。小川さんは点字の表記やデザイン、街の中にある触れる案内図を手掛けるほか、近年では美術館から依頼を受け、手で触れて作品を理解するための触図(しょくず)を専門的に制作しています。

いまの仕事に専念し、独立するまでのお話を聞きながら、制作する時の小川さんの苦労や、大事にしているポイントをお聞きすることができました。

小川さんは東京都美術館で夏に開催された「アート・コミュニケーション事業を体験する 2025 みること、つくること、つながること「Museum Start あいうえの」12年と現在地」(2025年7月31日(木)~8月10日(日)開催) (通称AC展)で展示された作品2点の触図を制作してもらったご縁があり、小川さんの触図を体験したとびラーもいて、親近感を持ってお話を聞きました。
後半は展覧会担当のアート・コミュニケーション係 学芸員の峰岸さんと社会共生担当の工藤さんも登壇し、小川さんや作家と協働した触図の制作について紹介しました。

現代作家の作品の触図ということもあって、実際に作家のアトリエに伺って作品の意図を聞きながら触図を制作した際のエピソードや、そのプロセスを聞くことができました。

触れるからよいということではなく、伴走するアート・コミュニケータがどのように働きかけるかが重要であること、

作品制作者、触図をつくる人、それを伝える人がみえない人とみえる人が展覧会を楽しめるように試行錯誤したことをふりかえりました。

 

 

 

とびラーのふりかえりには、こんなコメントが寄せられました。

「実際に触図を使う方の意見を聞きながら、伝え方、作り方を調整して、相互に作り上げていく工程が、とても大事だということがよく分かった。」

 

また、実際に視覚に障害のある来館者と小川さんが制作した触図を鑑賞したとびラーも何人かいて、その様子を共有してくれました。

 

「私たちの目は、見たいものしか見ようとしない。AC展のコミュニケータとして活動した際に、視覚障害がある方と作品を一緒にみる機会がありました。そのことによって、そこにあった作品をきちんと見ていなかった、見過ごしていたことに気づくことができました。視覚障害がある方と作品をみることによって、自分が気づきを得ることができました」

 

講座の最後には、東京都美術館で定期開催している「障害のある方のための特別鑑賞会」にてアート・コミュニケータが視覚障害のある方に伴走して、展示室や作品について、言葉で伝えながら一緒に鑑賞する取り組みを紹介しました。

東京都美術館では、社会共生の取り組みの一つとして特別展ごとにUV印刷による凸版印刷で作られた触図を用意しています。

その触図を使った鑑賞を深めるとびラボ「触図ラボ」、会場の照明や展示方法により、障害のある方が見えにくい作品をiPadで拡大してみせる「iPadラボ」、そのほか、とびラーによって2023年に開催された 「みえない人とみえる人が一緒に楽しむアート鑑賞みんなでみる美術館」の紹介がありました。

 

講座終了後には、全盲のとびラーから自分の状況に関して共有するとびラボが開かれました。ご自身のことや、声をかけるときに気をつけてほしいこと、普段の困りごと、挑戦していることなどが話されました。参加したとびラーからも質問が飛び交い、他の皆さんの知り合う場となりました。

 

触図をつくる環境もできてきて、とびラーの仲間にも当事者の方がいる。みえない、みえにくい人との鑑賞をもっと試行錯誤し、取り組んでいける可能性を感じた講座でした。

 

(とびらプロジェクト マネージャー  小牟田 悠介)

2025鑑賞実践講座④|展示室で学ぶ場づくり〜スペシャル・マンデーを例に〜

2025.09.08

 

 


 

第4回 鑑賞実践講座|展示室で学ぶ場づくり〜スペシャル・マンデーを例に〜

日時|9月8日(月)14:30〜17:30
会場|東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ、ギャラリーA/C
講師|手代木理沙(東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手、Museum Start あいうえのプログラムオフィサー)
・・・新留璃子(東京都美術館専門家委託、Museum Start あいうえのプログラムオフィサー)
・・・越川さくら(東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手、とびらプロジェクトコーディネータ)

 


 

9月8日(月)、東京都美術館 アートスタディルーム、スタジオ、展示室を会場に、第4回鑑賞実践講座「展示室で学ぶ場づくり」を開催しました。講師は、Museum Start あいうえののプログラムオフィサーの手代木理沙さん、新留璃子さん、また、とびらプロジェクトコーディネーターの越川さくらが務めました。

 

第4回は、これまでに学んできたVTSやファシリテーションの考え方を、実際の展示室という現場に引き寄せて考える回として位置づけられています。学校単位で、小学生から高校生までが来館する、あいうえのの鑑賞プログラム「スペシャル・マンデー」を具体的な想定として、鑑賞の場をどのように準備し、どのように立ち上げていくのかを学びました。

 

 

講座の前半では、学校プログラムにおける事前準備から当日、事後までの流れを確認しました。子どもたちが美術館を訪れる際に、どのような情報や環境が必要か、鑑賞の時間や動線について、実際のプログラムをもとに共有しました。

続いて、現在開催中の展覧会「つくるよろこび 生きるためのDIY」(会期:2025年7月24日(木)〜10月8日(水))の展示室で、「スペシャル・マンデー」のプログラムの基本的な流れを実際に体験しました。展示室では、作品そのものだけでなく、空間の広がりや明るさ、音、人の動きといった要素が鑑賞体験に大きく影響します。これまでの講座から一歩進んで、展示室環境のなかで、来館者がどのような鑑賞体験を紡いでいくのかを、実際にプログラムの流れを体験することが目的です。

 

 

鑑賞体験の後には、チームで振り返るためのワークシートを使い、グループごとに振り返りを行いました。鑑賞の中で起きていたことを整理しながら、ファシリテータの声かけや立ち位置、参加者同士の関係性が、鑑賞の深まりにどのように影響していたのかを言語化していきます。ひとつの正解を探すのではなく、場で起きていた出来事を丁寧に振り返ることを重視しました。

 

 

後半では、自分がファシリテーションを行うことを想定し、自分ならどのような声かけや場づくりを行うかを具体的にイメージしながら、ワークシートに書き込んでいきました。鑑賞者一人ひとりが安心して作品と向き合えるようにするために、ファシリテータとしてどのように立つのか、声のトーンや動き、参加者との距離感など、細かな要素について考えました。その後、とびラー同士でお互いのシートを共有し、意見を交わしました。

 

 

第4回は、鑑賞やファシリテーションを「方法」として学ぶだけでなく、展示室という場の中で実際に起こる出来事をもとに、鑑賞の場をどう支えるのかを具体的に考える回となりました。9月には、実際の「スペシャル・マンデー」で、とびラーが学校の子どもたちを迎えます。プログラムに向けて準備を進め、当日の子どもたちの鑑賞を、より豊かな時間にしていきたいと思います。

 

次の第5回鑑賞実践講座は、9月末の「スペシャル・マンデー」や10月の「名品リミックス!を対話で楽しもう!(ブログリンク)」などの実践を経て、10月に行います。実践後のとびラーのみなさんの成長が楽しみです。このあとの講座は、鑑賞の事前準備や、スキルアップのためのふりかえり方法について考える回へと進んでいきます。

 

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 越川さくら)

2025建築実践講座②|建築ツアーをやってみよう

2025.08.24


第2回建築実践講座|「建築ツアーをやってみよう」

日時|2025年8月23日(土) 14:00〜17:00
会場|東京都美術館 ASR・スタジオ


 

第2回 建築実践講座では、とびラーがそれぞれ「建築ツアーを考えて、やってみる」をテーマに行いました。

第1回の建築実践講座内容(都美の建物と歴史)をふりかえり、建築ツアーの写真を用いて参加者ととびラーの間でどのような会話をしているのか、どのように来館者をお迎えしているかについて一緒に考えました。

 

 

その後は「15分間のMY建築ツアーをつくろう!」ということで、とびラーそれぞれがツアープランを考えました。

東京都美術館パンフレットトビカンみどころMAP、館内にある資料から読み解くだけではなく、実際に館内を巡り、一人ひとりが感じる「ここが好き!」「気になる!」をみつけてツアーを組み立てていきました。

それぞれがツアーを考えたあとは、3人組になって交代でツアーを実施しました。

ツアー後はやってみた感想や思ったことをシェアし、ツアーの構成や伝えたいことが伝わったのかについて考えました。

「とびラーによる建築ツアー」は決まったコースはなく、ガイド役のとびラーによって紹介するスポットはさまざまです。
ガイドによって内容が変わり、参加するたびに新たな発見があるツアーです。

今回の講座の学びが建築ツアーに活かされたらいいなと思います。

 

(とびらプロジェクト コーディネータ 大東美穂)

 

【開催報告】7月の「とびラーによる建築ツアー」

2025.08.01

日時  |2025年7月19日(土)
場所  |東京都美術館

参加者(事前申込)43名、とびラー21名

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

日差しが強くなり、夏らしい天気の中で2025年度 第2回目の「とびラーによる建築ツアー」が実施されました。
館内だけでなく、中庭を歩いたりしながら東京都美術館を楽しみました。

この建築ツアーは、決まったコースはなく、それぞれのとびラーが考えたオリジナルのツアーです。

 

ガイドごとに、違ったツアーを体験することができます。
東京都美術館の魅力や新たな発見をしていただけたら嬉しいです。
……
次回の開催は9月20日(土)を予定しています。
みなさんのご参加を心より楽しみにしています。
*「とびラーによる建築ツアー」は、原則として、奇数月(5月、7月、9月、11月、1月、3月)の第3土曜日に開催しています。
詳細、お申し込みはこちらから。
(とびらプロジェクトコーディネータ 大東美穂)

【開催報告】障害のある方のための特別鑑賞会:「ミロ展」

2025.07.30


日時|2025年5月26日(月)10時〜16時
展覧会|ミロ展会期:2025年3月1日(土)〜7月6日(日)]


・・

東京都美術館で開催された「ミロ展」にて、「障害のある方のための特別鑑賞会」を実施しました。この鑑賞会は、障害のある方がより安心して鑑賞できるよう、特別展の休室日に事前申込制で開催しています。

鑑賞会当日には、障害のある方とその介助者約815名が東京都美術館を訪れ、スペイン出身の20世紀を代表する巨匠ジュアン・ミロ(1893~1983)の初期から晩年までの傑作の数々をゆっくりと鑑賞されていました。

参加者を迎えるのは、アート・コミュニケータです。とびらプロジェクトで活動中の「とびラー」やとびラーの3年の任期を満了したアート・コミュニケータが数多く参加しました。アート・コミュニケータは、受付で参加者をお迎えしたり、館内のエレベータの乗り降りをサポートしたり、展示室で鑑賞体験をサポートするなど、館内の様々な場所で活動しました。

展示室では、アート・コミュニケータと来館者の間に穏やかな対話が生まれていました。来館者それぞれの鑑賞のペースを見守りながら、ときに言葉や表情を交わす場面からは、「ともに作品を楽しむ」というアート・コミュニケータが生み出す鑑賞の場の魅力が育まれていたように感じます。


ミロの作品と言えばカラフルで大胆な作風が印象的ですが、今回の大回顧展では初期作品の緻密な描写や、スペイン内戦期の作品の暗い色調など、細部に注目すべき作品も多く並びました。そうした視覚情報を補うために活躍したのが「iPadラボ」のとびラーです。作品画像を、手元のiPadで拡大表示しながら説明を加えることで、より明確に細部の特徴を伝えることができました。

この日はのべ200名以上の来館者をiPadラボとびラーが対応し、多様なニーズに合わせた丁寧な鑑賞サポートが行われました。


さらに、前回の鑑賞会から引き続いて、視覚に障害のある方の鑑賞をサポートするための触図(しょくず)を用いた鑑賞サポートも行われました。触図とは、作品の構図やモチーフを凹凸のある線や点で立体的に表わした図版です。

来館者が触図の線や点を手指でたどりながら、アート・コミュニケータとの対話を通して作品を鑑賞しました。

触図を用いた鑑賞を体験された方からは、

「ミロのやさしい線も感じられる。勢いでなく、ゆっくり描いている感じがする。」
「ミロの描く星の形がわかったのが嬉しい。」
「月は触ってみるとふくよかな感じ。スマートな三日月より余裕を感じて好き。自分は全盲で、月や星など変わらないもの、永遠のもの、そこに希望を感じる。」

といった感想が寄せられ、作品への新たな親しみや喜びが生まれていました。

今回の触図の活用にあたっては、事前に「とびラボ」の活動の中で、とびラー同士が触図を実際に使いながら、「どのようにしたらより深い鑑賞ができるか」を探る時間を持ってきました。
活動を行ったとびラーは、以下のように振り返ります。

「触図を使ってより深い鑑賞をしていただくために、事前にとびラー同士で対話をしながら、自分たち自身の作品鑑賞の質を高めておくことが大事だと感じました。その効果もあり、来館者の方に良い鑑賞の時間を過ごしていただけたと思います」

※触図は、ミロ展の会期中に常時使用し、希望する方にスタッフが説明をしながら作品を鑑賞していました。

・・


・・

次回は、2025年10月27日(月)、「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」展にて開催を予定しています。

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次の鑑賞会でもみなさまにお会いできるのを、アート・コミュニケータ一同楽しみにしています。

・・・
(とびらプロジェクトコーディネータ 越川さくら)


「障害のある方のための特別鑑賞会」は、東京都美術館の特別展ごとに1回ずつ開催しています。
詳細、お申し込みはこちらからどうぞ:https://www.tobikan.jp/learn/accessprogram.html


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